METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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スパリゾートアフリカ~輪廻の湯~ 後編

 反逆小隊に所属するAK-12にとって絶対に許せないことがいくつかある。

 

 

 一つ、身体も洗わずかけ湯の一つもすることなく温泉やサウナに入る者。

 

 二つ、サウナを上がった後に汗を流さず水風呂へ入る者。

 

 三つ……集団で動きサウナで静かな空間を壊し、水風呂を集団で占拠し、挙句の果てには外気浴中にまでベラベラしゃべり続ける者たちだ。

 

 

 サウナを堪能する時は誰にも邪魔されず、自由でなんというか、救われてなきゃあ、ダメなのだ。

 独りで静かで豊かで…。

 

 友人たちと共にサウナに来ることを否定はしない。

 だが最低限のマナーは守らなければならないのである。

 

 

 そして今日、AK-12は念願であったスパリゾートアフリカ~輪廻の湯~に念願叶い訪れることが出来、一人有意義にこの素晴らしいサウナと温泉を楽しむはずだったのである。

 だがこれはなんだ…なんなのだ…?

 彼女の目の前にいる二人…思いつく限りでは最もやかましい戦術人形の二人が、今まさにスパリゾートアフリカへ入館しようとしているではないか。

 

 呆気にとられるAK-12、さっそくやかましい戦術人形の一人エグゼが突っかかって来る。

 

 

「おうおう反抗期小隊、なんでお前がいるんだ? お仲間はこのオレ様に返り討ちにあって尻尾撒いて逃げたはずだろ?」

 

「お生憎様、私はあの二人とは別行動なの。あと反逆小隊よ、間違えんなメスゴリラ」

 

「口先だけは一丁前になりやがって」

 

 早速、険悪なムードとなる二人。

 険悪な仲といえばエグゼとM4が上げられ、二人の壮絶な戦い(ガキのけんか)についてはマザーベースにおいて伝説として語り継がれている。

 一方エグゼとAK-12はというと…実は大して接点も無いのだが、何故かいがみ合う。

 まあ、初対面の時にAK-12の特徴的な目の様子を【目を閉じたまま歩き回る変な女】と揶揄したエグゼに突っかかっていったのが理由にあるっぽいが…。

 

 

「というかなに? 一人で寂しく温泉ですか~あなたは?」

「一人でのんびりお湯に浸かりたいから来たのよ、勘違いしないでもらえる? ま、今日はラッキーね…アフリカに来てゴリラの水浴びを眺められるんだもの」

「寝坊助やろうがまた言ってやがる。意味わからないタイミングで瞼開いて…舐めプしてたらヤバいから今から本気出す! って魂胆が見え見えだぜ? 恥ずかしくねぇのかよ」

「あのね…わたしは不必要なものを見たくなくてこうしてるわけ。いちいち説明しなきゃいけないわけ? ま、鳥以下のゴリラ脳じゃ分からないわよね?」

「だったら視力検査してやろうか? はい、これ見えますか~? これは~? はいこの小さいのはどっち向いてるかな~? ハッハハハハ!」

「あんたいい加減ぶっ殺すわよ、くそメスゴリラ!」

「やれるもんならやってみろ! つーかメスゴリラ言うな! 傷つくだろうが!」

 

 

「やめんかあ!!!」

 

 

「!?」

「!?」

 

 ヒートアップ仕掛けた二人に喝を入れ黙らせたのはスコーピオンであった。

 二人の口論は必然的に周囲の注目を集めてしまっていた…というのもあるが、スコーピオンが許せなかったことは別にある。

 

「サウナを前にして心を乱すとは何たる軟弱か…サウナとは日々の疲れや悩みを忘れ、汗を流し水風呂に浸かり外気浴で体を休めるもの…サウナはリラックスするためにある、決して争いの場ではないのである」

 

「スコーピオンはん…! そうだな、そうだったな…ごめんAK-12」

 

「いや…こちらこそごめんね、なんかムキになっちゃって…」

 

「よし、仲直り出来たということで…早速行こうじゃないの、スパリゾートアフリカ輪廻の湯にさ!」

 

 スコーピオンのおかげで仲直りした二人、なんやかんやあってAK-12もスコーピオンらと一緒になることが決まり3人は意気揚々と、このアフリカの大地に誕生した最上級のスパリゾートへ向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわあ~ここがスパリゾートアフリカですか。いろんなお風呂がありますね」

 

 入館したばかりであるものの、早速3人はこの施設の完成度に驚かされている。

 リゾートというだけあって施設の造りは豪華で、入館手続きを済ませた先に広い中庭が存在し鮮やかな花を咲かせる植物やヤシの木が植えられ、常夏のリゾートを思わせる情景を見せてくれる。

 あとはしつこいくらいに主張が激しいこのリゾート施設のオーナーである【ある女性の像】が鎮座している…ドレス姿のスリットから艶めかしい生足を晒す姿の像に、人々は目を奪われているが、その正体を知っている3人はそれを無視し先に進む。

 

「フロアマップ見たら、水着着用の男女混合エリアの場所もあるみたいだな」

 

「せっかくなら水着持ってくればよかったわね」

 

「フロントで貸してくれるみたいだから気になるなら後で話してみると良いよね」

 

 ガーデンスパと銘打った水着着用のエリアも気にはなるが、3人が目指すはサウナのあるエリアだ。

 中庭を抜けた先で男女に別れ、3人は早速脱衣所で衣服を脱いでいく。

 

「ん? どうしたんだスコーピオン、そんな微妙な表情をして?」

 

「いや…あんたら見てると、世の中の格差というか…不条理さが身に染みるんだよね…」

 

「バカなことを言ってないで、早く入りましょうよ」

 

 悠々とお風呂場へ入っていく二人を見送り、スコーピオンは二人に比べれば貧相に見える自身の身体を眺めため息を一つこぼす。

 

「わお、滅茶苦茶広いねここ!」

 

 浴室はスコーピオンがこれまで見てきた中でもトップクラスの広さと思えるほど広々とした空間だ。

 洗い場のスペースも十分に用意してあるばかりか、入り口には清潔なタオルが積み上げられここを利用する客は新しいタオルを使い続けることが出来る。

 洗い場に用意されているアメニティも豊富だ。

 様々なアロマのシャンプーやボディーソープが利用できるのは、女性客にとって実に喜ばしいことだろう。

 

「へぇ、いいじゃんか…お、ネコにモテるマタタビシャンプーだって。使ってみよ」

 

「じゃああたしはこのシトラス系シャンプー。AK-12はどれを使うの?」

 

「そうねぇ…やっぱり私は王道を征く…ローズ系かしらね」

 

 思い思いのシャンプーなどを手に取り3人は洗い場へ。

 一つ一つの洗い場が仕切られ、横の人のシャワーを浴びにくい造りはとてもありがたい他、シャワーヘッドはすべてが強弱調整がワンタッチで可能なナノバブルヘッドとなかなかにお金のかかった設備だ。

 一つ一つの造りが凝っていて、洗い場の時点で満足度は高い。

 奇しくも同時に身を清め終えた三人…。

 

 

「それじゃあ…行くぞぉぉぉ!!」

 

 

 

 入浴の準備を終えた3人は、スコーピオンの気合いの入った声と共に大浴場へ。

 そこからは3人別れてそれぞれ気になった浴場へと足を進めるのだ。

 

「あら、炭酸風呂もなかなかね」

 

 AK-12が最初に目を付けたのは高濃度炭酸風呂だ。

 浴槽の縁にしゃがみ込み、お湯に手を入れて温度を確かめる…お風呂の温度は35~37度くらいか?

 おおよその予想を立ててそばにある水温計を見れば36度を指している。

 炭酸風呂は熱くし過ぎれば炭酸が抜けやすくなってしまいその魅力は半減してしまう、つまりベストな風呂の温度というわけだ。

 そしてAK-12はゆっくり、なるべく水面に波を立てないようゆっくりお風呂に浸かっていく。

 激しく動くことで炭酸が飛んでしまう事もAK-12は把握しているのだ。

 

「思った通りだわ…標準的な高濃度炭酸風呂の1000ppmを超える1300ppmもの濃度! 素晴らしいわ」

 

 入浴して数秒だというのに、浴槽に溶け込んだ成分が気泡となりAK-12の素肌を覆いつくすように付着している。

 それら気泡化した炭酸が小さくはじけ肌を動く感覚が、なんともたまらない至福の時間を与えてくれる。

 唯一心残りなのが…。

 

「せっかくだからAN-94も連れてくればよかったわね…」

 

 同じく温泉とサウナを愛する相棒の顔が頭に浮かぶのだった。

 

 

 

 

 そしてエグゼはというと…。

 

「やっぱりよぉ…風呂って言ったらがんがん熱くなきゃあな!」

 

 エグゼは選んだのは温度設定40~42度もの温泉だ。 

 しかしそこは名湯スパリゾートアフリカ、ただ熱いだけではない…浴槽は遠い東の国から買い付けてきたという樹齢数百年のヒノキを用いたヒノキ風呂。

 さらにお湯の出口周りに固められた岩石は天然のラジウム鉱石というではないか。

 ヒノキ由来の香りがリラックス効果を高め、そこへラジウム鉱石がもたらす効果により血流が良くなり新陳代謝も活発になるのだ。

 果たして戦術人形であるエグゼにそれら温泉の効能がどこまで効いているのか定かではないが、時に【情報】こそが人の心身の健康をよくすることがあるのだ。

 とはいえさすがに熱い風呂はなかなかにハードだ。

 一度風呂を上がり冷たいシャワーを浴びてクールダウン…火照った身体に冷水が心地よい。

 

「いいもんだな、まったく…今度スネークも一緒に連れて来るか」

 

 

 

 スコーピオンは露天風呂の圧倒的なクオリティにただただ度肝を抜かされていた。

 露天風呂に流れる温泉は天然温泉なのだが、その温泉は露天エリアから一望することのできるアフリカ最高峰の火山キリマンジャロ由来の温泉なのだ。

 実はキリマンジャロ火山由来の源泉がこの施設のほどんどの温泉に使われているが、この露天風呂以上の風呂はおそらくは存在しない。

 キリマンジャロからもたらされる天然温泉に全身を包まれながら、遠い彼方に見える氷河で頭頂部を白く染めたそのキリマンジャロを望む。

 今この時、スコーピオンはアフリカの大自然と心身を一体化させていた。

 

「あたし…生きてて良かった…」

 

 誰にともなくこぼしたその言葉…。

 おそらくこの露天風呂でキリマンジャロを見上げた者の多くが、同じ思いをしたことであろう…。

 

 

 

 

 

 

 

「んん~いい湯だったわ」

「そうだなぁ。じゃあさ…」

「行こうじゃん…サウナに」

 

 

 再び集まった3人。

 身体と心を温めサウナに入る準備は万端だ。

 

 スコーピオンを先頭にサウナ室へ入る3人…さっそく出迎える熱気に早くも三人は圧倒される。

 思わず声を上げてしまいそうになるほどの熱気…だがここからは声を出さない時間なのだ。

 まずは小手調べ、3人別々な位置に座るが同じ中段の位置に腰かける。

 

 サウナ室の温度は100度を超えている、彼女たちが座る中段でおそらく90度前後と一般のサウナと同じくらいの温度だ…最上段となれば一体どれほどの熱さなのだろう?

 既にへとへとなスコーピオンは無理をせず一つ下の段へ、すぐ後にエグゼも同じように一段下がるのだ。

 

(あっちぃな…AK-12のやつは…げっ、あいつ最上段に上がってやがる!!)

 

 いつの間にやらAK-12は最も熱いエリアにまで移動しており、いつも通りの涼しい表情でサウナを満喫しているではないか。

 対抗心からかエグゼが最上段に行こうとするが、スコーピオンが小さく首を横に振るのが見えてエグゼは思いとどまる。

 それから少しして…。

 

「はぁ…む、むり…」

 

 そんな声が聞こえたかと思うと、AK-12がサウナを飛び出していった。

 余計な対抗心を出さなくて正解であった。

 

 

「ふぅ~…なかなか攻めたサウナだねこりゃあ」

「死ぬかと思ったぜ…」

 

 

 スコーピオンとエグゼは共にサウナを出て水風呂へと向かう。

 きちんと汗を流して入るのは忘れない。

 水風呂もまた、キリマンジャロからの湧き水を利用しているため肌触りは滑らかでサウナで熱せられた身体を心地よく冷ましてくれる。

 嬉しいことに豊富な湧き水をそのまま使用しているため水量も多く、深さも適度にあって広さもあるために窮屈な思いをしなくて済むのだ。

 

「ねえエグゼ、露天風呂の方にはもう行った?」

 

「まだ行ってないな」

 

「じゃあ、スゴイ感動すると思うよ?」

 

 既に露天風呂からの絶景を見ているスコーピオンは、エグゼにも早く同じ感動を味わってもらいたい様子であった。

 そんな親友に笑みをこぼし、エグゼは外へ…。

 

「うわ…すっげ…」

 

 外へ出るなり目に飛び込んでくるキリマンジャロの絶景にエグゼは圧倒される。

 外気浴をするための椅子の配置も、この絶景を眺めることが出来るように配置されており、ここを利用する者たちに贅沢な時間を与えてくれる。

 二人が外気浴のため椅子に座ろうとすると、先に外に出ていたAK-12を見つける。

 

 椅子に腰かけ、アフリカの絶景キリマンジャロを…彼女はしっかり目を開いて眺めていた。

 

 この絶景は、彼女にとっても不必要なものでも無駄なものでもないのだ。

 

 エグゼとスコーピオンは微笑みあい、AK-12のそばへ静かに腰かけ穏やかにこの絶景を堪能するのだった…。

 

 

 

 

「————そういえばさ、ここ熱波師が来るんだってさ」

 

 サウナ、水風呂、外気浴…これらを繰り返すこと3セット目。

 ふと、スコーピオンは館内の広告で熱波師のイベントが書いてあったことを思い出す。

 

「熱波師ってなんだ?」

 

「えっと…サウナでロウリュをした後に、タオルとか団扇で風を仰いでくれるサービスよ。エグゼは体験したことないの?」

 

「実を言うとサウナは覚えたてでよ。つーか、ロウリュした後に風を送るって結構効くんじゃないか?」

 

「まあ、確かに熱いけれどすぐ慣れるわよ。わたしはけっこう好きよ?」

 

「そりゃあ楽しみだ。しかし結構お前物知りなんだな、じゃあさ――――」

 

 共にサウナに入り、素晴らしい時間を過ごしたエグゼとAK-12は入館前にしょうもない争いをしていたとは思えないほど、すっかり打ち解けている様子だ。

 サウナは人と人をつないでくれる、素晴らしい環境でもあるようだ。

 

「熱波師にも知名度はあってね。この熱波師が来るから行ってみようっていうサウナのファンもいるみたいね」

 

「へぇ、そうか…ここも熱波師は有名なの雇ってんのかな?」

 

「うーん、名前は書いてなかったと思ったけど…何だったかな?」

 

 スコーピオンが広告に書いてあった文字を思い出そうと頭を悩ませていると、そのロウリュを目当てにちらほら他のお客さんがサウナに入室してくる。

 もう間もなくロウリュサービスの時間というところで、スコーピオンは思い出す。

 

「そうだ、熱波の錬金術師って書いてあったよ。 凄腕の熱波師なのかな?」

 

「熱波の錬金術師かぁ、スゴイ肩書だな……ん?」

 

「どうしたのエグゼ?」

 

「ここってよ…あのボケの…ウロボロスがオーナーの施設だよな?」

 

「んー、はっきり書いてないけど…あの銅像とか【輪廻の湯】とかのネーミングだとあの人で間違いないよね」

 

「だったらよ…熱波の【錬金術師】って言えばよ…」

 

 そこまで言って、スコーピオンとAK-12はエグゼの意図に気付き青ざめる。

 一度撤退をしようとしたが、既に遅かった…。

 

 

「本日はスパリゾートアフリカ輪廻の湯をご利用いただき誠にありがとうございます。本日ロウリュを担当させていただきますアルケミスト(錬金術師)です、よろしくお願いします」

 

「や、やっぱり姉貴だ…!」

 

「あぁ? おうお前ら来てたのか、珍しい組み合わせだなぁ」

 

 

 エグゼとスコーピオンに気付いたアルケミストは笑う。

 しかしその笑顔はアルケミストが獲物を前に見せる表情そのものであり、2人の背筋に冷たい感覚が過る。

 

 

「あ、ちょっと急用思い出した~」

「オ、オレも…!」

 

「座ってろよ…な?」

 

「……はい」

「くそが…」

 

 

「よろしい…では始めます。本日のアロマは、白樺となっております……森の香りを心行くまで堪能してください」

 

 アルケミストは熱せられたサウナストーンに白樺のアロマが入れられた水をかけていく。

 焼けた石に浴びせられた水は瞬時に気化し、サウナ室内の湿度を一気に向上させる…体感温度もまた一気に上がり、それまでの室内が優しく思えるほどの灼熱の空間と化す。

 

 白樺の香りがサウナ室内に広がり、清涼感ある香りに包まれるが…サウナ初心者のエグゼにはそれを味わう余裕がない。

 もうやめてくれよ…そう願うエグゼと、アルケミストの視線が交差する。

 アルケミストはニコリと笑い、再びサウナストーンに水をかけた。

 

「それでは熱波を送らせていただきます」

 

 それから始まるアルケミストによる熱波。

 折りたたまれたタオルを振るい送られる熱波により、他のお客さんのほとんどがノックアウトされてサウナ室を出ていく。

 そしてスコーピオンにも彼女の熱波が襲い掛かる。

 

「ぐはっ…!」

 

「おい大丈夫かスコーピオン!?」

 

「次はお前の番だよエグゼ?」

 

「ちょ、待て…! まだ心の準備ぎゃぁぁああ―!!!」

 

 エグゼ相手には特に強烈な熱波を叩きつけてくる。

 身体を丸め込み熱波から身を守るエグゼを…アルケミストはそれもう惚れ惚れするくらいに恍惚の表情で熱波を仰ぐのだ。

 

「さて、珍しいお客さんだ。反逆小隊の…」

 

「AK-12よ…魅せてもらおうじゃない…熱波の錬金術師の技をね」

 

「その意気やよし」

 

 ニヤリと笑みを浮かべ、同様に熱波をAK-12に対し浴びせかける。

 AK-12は襲い来る熱波に身体を強張らせた。

 

(あ、熱い…! 鉄血ハイエンドモデルの義体から発せられる圧倒的風量…! それが私個人へピンポイントで浴びせられる…スゴイ熱波だわ…! だけど…)

 

 AK-12は薄目を開き、口角を曲げて見せた。

 暗にこの程度か、そう挑発しているかのような姿にアルケミストの闘争心も増していく。

 

 スコーピオンとエグゼの【余計なことするな!】という想いは届かない。

 

「では、二度めのロウリュを…」

 

 再びサウナストーンに水をかけ蒸気を発生させると、耐えきれなくなった他のお客さんが逃げるように出ていき…最終的に残されたのはスコーピオンら3人だけとなる。

 既にスコーピオンとエグゼは比較的緩い暑さの最下段に逃れていた。

 しかしアルケミスト(熱波の錬金術師)の支配するサウナに死角などは存在しないのである。

 

 タオルを手に取り先ほどのように熱波を…送るかに見えたアルケミストはまるでサウナ室全体の空気をかき回すようにタオルを振るう。

 タオルを縦横無尽に振るうその技により、サウナ室上部に滞留していた熱気が下層部まで行き届く。

 つまり、スコーピオンとエグゼが逃げ込んだ最下段は安全地帯ではなくなったのだ!

 

「やめてくれよ…!」

 

「いいや、ダメだね」

 

 エグゼの命乞いもむなしく、スコーピオンともどもとどめを刺されるのであった。

 

「まったくひ弱な奴らだ…AK-12、お前がこんなにタフな奴だとは思わなかったよ」

 

「フフ…この私を甘く見てもらっては困るわ。ま、熱波対決はわたしの勝ちってことかしらね?」

 

「おっと、まだロウリュはあと一回残っているぞ?」

 

 最後はアルケミストとAK-12の一騎打ちとなる。

 今頃スコーピオンとエグゼは水風呂に浸かり、外気浴で最上級のととのいを味わっている事だろう…。

 

 最後の一滴まで残すことなくサウナストーンに水をかけ、大量の熱気を生み出したアルケミスト。

 だがここまで耐えきったAK-12の表情は少しも崩れることなく、むしろ笑みすらあった。

 

「さあ、最後の熱波をいただこうじゃない」

 

「大したもんだよお前は…他のやつに気を遣う必要もなくなったし、特別にこいつで特大熱波を浴びせてあげるよ」

 

「フフ、なんでもかかって……って、ちょっと待って何それは?」

 

 不意にアルケミストが持ち出してきたもの…それはこのサウナ室に似つかわしくない電動ブロワーである。

 

「古くは極東の国、日本国の埼玉県草加市に存在していた伝説の健康センター…そこで行われていたロウリュこそが、こいつを用いた【爆風ロウリュ】さ」

 

「ちょっ! 待ちなさい、それはいくら何でも反則よ!? そんなの――――ッッッッッッ!!??!??」

 

 問答無用で叩き込まれる熱波が彼女を襲う、言葉にならないほどの強烈な熱波…それまでの熱波が強風だというのなら、確かにこれは爆風である。

 風速80mもの強烈な爆風がもたらす熱波が容赦なくAK-12の身体に叩きつけられる。

 

「あたしはねえ、あんたみたいな澄ましたやつの悶絶する顔が大っっ好きなんだよ!!」

 

「あああぁぁぁぁ!! 止め、本当に…! 冗談抜きで……あっ、縺薙・繝。繝シ繝ォ縺ッ 繝シ縺ョ逧・ァ倥∈縺ョ繝。繝・そ繝シ繧ク縺ァ縺――――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――本当にマジで死ぬかと思ったわ、いえ、あの瞬間確かにわたしは死んでいたと思うの」

 

 あの後、死人のようにサウナから出て、水風呂へ浸かり、外気浴でキリマンジャロの絶景を眺めながら極上のととのいを経験した末になんとか生還したAK-12。

 強烈な体験であったが、それで得られたものはとても大きかった。

 

 今は3人してこの施設の食堂で休んでいるところだ。

 

 サウナ上がりのサウナ飯もまた、サウナーの楽しみの一つだ。

 

「あたしはラーメンでも食べようかな。 エグゼは?」

「カツカレー一択だぞ」

「わたしは…唐揚げをいただこうかしらね」

 

 

 各々メニューも決まったところで店員を呼ぶ。

 

 

「そうそう、サウナ上がりのビールってすごい美味しく感じるけどさ。あんまり体には良くないらしいよね?」

「ん? あーそりゃあ、サウナで一気に身体の水分抜いたところにビール流し込んだら体には良くないだろうな」

「確かに。あまり体に悪いことばかりしていると、美容にも悪いものね」

 

 

「ご注文はお決まりでしょうか?」

 

 

「ビールで!」

「オレもビール!」

「同じくビールをいただくわ!」

 

 

 

 ちょっと珍しい、MSFのトラブルメーカーと反逆小隊の奇妙な一日だった




オマージュ多めで怒られそ


次回更新は未定ですが…。

なんか浮かんだら書きます

ほな、また…
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