世界が戦争で荒廃しきったこの時代において、争いから逃れるように大都市から離れたこの海辺で暮らす家族がいた。年老いた老夫婦と、その一人娘に馬が一頭いるだけの貧しい家族だ。
その家族は貧しいながらも、現在世界に蔓延する脅威や争い事からは隔絶された平穏な生活を送っていた。
ある日の事だ。
一家が経験したことのない猛烈な嵐に見舞われてその日の農作業を止めて、一家は家が吹き飛ばされないよう祈りながらその日を過ごしていた。やがて嵐が過ぎ去り、外に出てみた一家は驚愕する。
家から見える遥かな洋上に、それまで存在していなかった巨大な建造物が現れたのを見たのだ。
石油プラットフォームにも似たその巨大建造物からは毎日のようにヘリコプターが飛び立ち、何度か一家はその建造物からやって来た兵士と言葉をかわした。
争いに巻き込まれるのではないかと一家は危惧していたが、彼らは特に一家に危害を加えるわけでもなく世界情勢や地理の事をやたらしつこく聞いてくるのみであった。
一度魚を送った一家にその兵士たちは喜び、次に来たときは一家には有り余るほどの物資を返されたのだった。
以来、上空をヘリが飛び交っていくことは一家にとって日常と化し特に気にも留めることは無かった。
その日も一家の上空をヘリが通過していったが、いつもと違うのは数機が固まって洋上の巨大建造物に向かっていることであった。
ヘリの一機がマザーベースのヘリポートに降り立った時、そこにはMSFのスタッフほぼ全員が集まり自分たちのボスでありこの基地の司令官の帰りを出迎えていた。
歓声をあげる彼らMSFのスタッフに、スネークは手を振り笑いかけた。
「ボス、よくご無事で!」
「信じていましたビッグボス!」
「もうボスに会えないかと……ご無事で何よりですボス!」
歓声をあげ、中には涙を流しスネークの帰還を喜ぶ者も大勢いた。
スネークは彼らに近付いて肩を抱いたり声をかけていく。
誰もがこの伝説の兵士のカリスマに惹かれ忠を尽くすMSFという家族の一員、スネークは一人一人その名を呼んで労をねぎらった。
「スネーク」
集まったスタッフから少し離れた位置から彼の名を呼ぶ者がいた。
それに気付いたスタッフたちが場所を譲り道を開ける……そこにはマザーベースに一足先に帰還しスネークの出迎えを準備していたカズヒラ・ミラー、そして車いすに座り笑顔を見せるヒューイ・エメリッヒの姿があった。
スネークは二人のもとへと歩み寄ると、再度カズと固い握手を交わしヒューイにもまた手を差し出した。
「無事で良かったよ……スネーク」
「お前もな、ヒューイ」
ヒューイは一瞬、どこかぎこちない笑顔を見せたがスネークは特に気にも留めずこの再会を喜ぶ。
「スネーク、わたしのことは無視か?」
「ストレンジラブ、お前も無事だったんだな」
群衆とも、カズとヒューイの二人からも離れた場所に立っていた彼女の存在をスネークは見逃していた。
彼女の皮肉交じりの言葉も、今のスネークにとってマザーベースに帰って来た実感を味合わせてくれる。
「本当に無事で良かったよスネーク」
「突然嵐に巻き込まれ、訳の分からない場所に着いた時はどうしたものかと思ったぞ。お前たちもあの嵐に巻き込まれたのか?」
「あぁ、それはそうなんだが……スネークちょっといいか?」
「ん?」
なにやら深刻そうな声色でカズはスネークの肩に手を回し彼を少し離れたところにまで連れていく。
「どうしたんだカズ、何か問題があったのか? 見たところプラットフォームのいくつかは損傷が見受けられるが、直せないほどじゃない。心配するな」
「そんなことはいいんだが……」
「なんだ、もったいぶらずに言ったらいいじゃないか」
真剣な表情で、カズはサングラスのズレを直しちらりとどこかを見てからそっと耳元でささやいた。
「あのナイスな女の子たちはどこで見つけてきたんだ?」
「……は?」
「はっはっは、ボスもなかなかやるじゃないか。こんな非常時にあれだけの美女を連れてくるなんて、教えてくれどこで見つけてきたんだ?」
「………」
さきほどの真剣な表情はどこへやら、そこにはいつもスネークの頭を悩ませる悪い癖の出たカズのふざけた表情があった。
ひとまずスネークは無言で彼の横腹を殴りつけ、悶絶するカズが暴走しないようしっかりと捕まえたままスコーピオンとスプリングフィールドのもとへとやってくる。
「とりあえずこいつは副司令官、以上だ」
「ま、待てスネーク……レディへの自己紹介は、もう少し…しっかり…」
「うるさい、色々話すことがあるから中に行くぞ」
「いや、オレ的にはそこのお姉ちゃんと……ぐふっ! わ、分かった……ボス」
「二人ともついてきてくれ話したいことが山ほどある」
「う、恨むぞ……スネーク」
目の前で知らない人がボコボコにされているという不思議な光景に、スコーピオンはポカンと口を開けてスプリングフィールドは無表情で固まっていた。それから顔を見合わせて特に何も言わずスネークの後をついて行くのであった。
マザーベース内司令室―――
「――――と、いうわけです。みなさん理解していただけましたか?」
「うん、概ね理解できたよ」
「にわかに信じられないがな」
スネークが以前スコーピオンにしてもらったように、今回はスプリングフィールドがこの世界の歴史や出来事、そして自分たちが人間ではなく戦術人形と言われる人為的に生み出された存在であることを説明した。
スネークはこの説明を何度も聞いたうえでいまだに理解できていない部分があったが、頭の回転の速いヒューイとストレンジラブの二人は一度の説明で納得するのであった。
「よく一回で理解できたな」
「ちゃんと人の話を聞いていれば分かるだろう? とは言っても理解はしたが、信じ切れてはいない」
「ぼくも同じ意見だ。君たちがその……戦術人形っていう存在には見えないな。人間そのものじゃないか」
「もしその話が本当なら、とても興味深い。わたしが知るAIの技術は、この世界でとてつもない発展を遂げているということだろう? 興味深い、本当に興味深い……」
あごに指をそえて、スコーピオンとスプリングフィールドの二人をまじまじと見つめる。どこか普通じゃないその様子に二人は何かよからぬものを感じてのか、後ずさりしスネークに助けを求めるかのように目線を送る。
もう一人、悪い癖を持った変人がいるのを思い出しスネークはため息をこぼしストレンジラブを二人から離す。
「ところで、今の説明で理解できたかカズ?」
「――――! ッッッ!!!」
部屋の隅には、椅子に縛りつけられ猿轡をかまされた哀れなカズヒラ・ミラーがいる。
何度も口説こうとして説明の邪魔をする彼をこうしたのはスネークだ……恨みがましく睨みつけてくる彼の姿に、スネークは呆れて言葉も出ないようだ。
「スネーク、二人のことはこれからどうするつもりだい?」
成り行きで助ける形になったが特に考えてもいないことだった。
そこでストレンジラブは提案し、しばらくの間マザーベースで彼女たちを保護しようということになった……二人がかわいいという理由以外に、ストレンジラブとしては二人の戦術人形に使われているAIにかなり興味があるようだった。
ヒューイも戦術人形の技術に興味を持ったようだが、それはストレンジラブに拒絶される……理由は言わなくても分かるだろう。
MSF副指令カズヒラ・ミラーも拘束されたまま激しく首を縦に振ることで賛成の意を示す。
「君らの部隊が見つかるまでとりあえずはここに居てもいい。だがこちらも余裕はない、君たちの力も借りることになる。それは構わないか?」
「うん、それでいいよ。何度も助けてもらった恩も返したいしね、スプリングフィールドもそれでいいよね?」
「ええ、微力ながら私たちもスネークさんたちの助けになります」
「よろしく頼む」
「わたしの事はストレンジラブと呼んでくれ、みんなそう呼ぶ。後で君たちの話を聞かせてくれ」
「ぼくはヒューイ。ここで開発を任されてる、何か必要があったら遠慮なく言ってくれ。出来るだけの事はするよ」
「――――!(せめて自己紹介ぐらいさせろスネーク!!スネーーーークッ!!)」
マザーベースpartはタイトルにマザーベースとつけるようにしていきますね。
MSF兵A「流石ボス、あんな美女を連れてくるなんて…」
MSF兵B「美少女がいればオレは頑張れる!ボス、一生ついていきます!」
MSF兵C「やっぱ巨乳は最高だぜ!」
パス「……」