METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

55 / 317
モルダー、あなた疲れてるのよ……


狩猟クエスト:うにゃー!にゃにゃにゃ、にゃーお!

 最近、MSFのマザーベースに新たなプラットフォームが誕生した。

 

 その名も、畜産プラットフォーム。

 MSFにとって終始付いて回る食糧事情を鑑み、かねてより食糧の自給自足を計画していた糧食班は副司令カズヒラ・ミラーとの協議の末、このプラットフォーム建造に至ったのである。

 畜産プラットフォームとは、読んで字の如く、動物を家畜として飼育し貴重なたんぱく源を得るというものだ。

 そのためにMSFでは他のプラットフォームより大きい施設を海上に造り上げたのである。

 さらに、この一大プロジェクトには研究開発班も加担する。

 家畜を飼うにあたり、成長速度というものがあるのでどうしても長期的な飼育を視野に入れなければならない。

 そこでこの世界でフルトン回収したとあるバイオ技術研究員の協力の下、遺伝子を組み替え、成長速度を早めた家畜を育成するという計画が進められていたのだが……その計画はとん挫する。

 

 スネークが、珍しく声を大きくして反対したのだ。

 

 MSFのためだと熱く説得するミラーに対し、スネークは凄まじい剣幕で拒絶し、普段見慣れない怒ったスネークの姿に兵士たち、とくに戦術人形たちは震えあがったという。

 その後はミラーが謝罪し計画を白紙にすることで和解となったが…。

 とはいえ、計画が白紙になった段階でプラットフォームは建造されてしまったため、何か別な利用法を見つけなければならなかった。

 

 生活スペース、研究開発棟、訓練場といった案が出されたが、どれもいまいち決まらず……そんな時、意見を出したのがヒューイである。

 ヒューイは二足歩行兵器…つまりはメタルギアZEKEの開発を担当していたのだが、バルカン半島の内戦でZEKEは破壊されてしまったため、新たな兵器の開発に着手していた。

 しかしヒューイは、新兵器の開発には現在マザーベースにある研究開発棟では広さに限界を感じていたため、今回作られてプラットフォームは都合の良いものであったのだ。

 

 そしてヒューイが新たに開発しているのはZEKEと同じメタルギアだ。

 

 まだ設計の段階で、なおかつ大量の資材を使用するようなので製造に着手してはいなかったが、ZEKEに替わる世界に対する抑止力が必要と判断し、スネークはその開発を許可したのだった…。

 

 

「―――サヘラントロプスはZEKEと違って、直立二足歩行兵器として開発してる。直立歩行をすることで武器の携行も可能となり、高い目線を活かして地形の高低差をものともしない視界の確保が可能だ。それと、これを見てくれスネーク」

 

 ヒューイは端末を操作し、モニターを切り替える。

 そこにメタルギアZEKEにも搭載され、非常に強力な兵器としてあらゆる敵を薙ぎ払っていたレールガンの図面が映し出される。

 

「これはZEKEに搭載していたレールガンよりも大型のものだ。レールガンはその非常に高い加速力で、理論上は世界のどこにでも射出物を撃ちこむ事が出来る。レールガンは原理的には大砲と同じだ。だからミサイルの噴射炎などを捉える警戒システムの盲点を突くことができるんだ」

 

「ヒューイ……それはまさか」

 

「そう、レールガンに核弾頭を搭載すれば、どんな警戒システムも探知できない完全なステルス核兵器となるんだ」

 

「ステルス核兵器…いつ、どこで核を撃つ込まれるか分からない恐怖は、抑止力としては極めて高い効果を発揮するな。よくこんな発想が生まれたな」

 

「え、あぁ…そうだね。実は、これ、この世界でのアイデアの一つなんだ…」

 

「また盗用か!」

 

「ち、違うよ…いや、ある意味そうなのかな? 実はこの世界の研究者が昔発表した論文の中にあってね、それからアイデアが生まれたんだ。でも実現にはレールガン用の核弾頭の開発とか、大量の電源の確保とか問題があったらしくてね、おまけに…最終核戦争の影響で研究成果も構想も全て無くなったらしい」

 

 ヒューイはどこか暗い表情で、モニターを見つめていた。

 自身の生い立ちから、核兵器を酷く憎むヒューイにとって、核戦争で荒れ果てたこの世界と言うのは、まさに悪夢のような世界だった。

 ヒューイが核兵器に開発に携わっていたのも、核の抑止力によって、二度と核兵器が使われないことを祈ってのこと。

 

「ヒューイ、外に行くぞ」

 

「え? ぼくはここで研究をしなきゃならないから…」

 

「たまには外に出て気分転換も必要だぞ、ほら行くぞ」

 

 スネークは有無を言わさず、ヒューイの車いすを押して外へと向かった。

 

 薄暗い研究室を出て、太陽の日差しに照らされたヒューイはそのまぶしさに目を細める。

 徐々に目が慣れてきて、ゆっくりと目を開くと、どこまでも続く青く広い海が目の前にあった。

 海鳥たちの鳴き声や心地よい潮風は、研究室に引きこもっていたヒューイには久しく感じていなかったものであった。

 

 

「おーいスネーク! どこ行ってたんだよ! お、引きこもりヒューイじゃん、何週間ぶりだお前?」

 

「やあエグゼ、義手の調子はどうだい?」

 

「おかげさまで、今じゃ違和感もないね。つーか、こんな義手は作れるのに自分用の義足は作らねえのか?」

 

「ちょっとね…アハハ」

 

「相変わらず変な奴だな」

 

 普段研究室から出てこないヒューイが外に出てきた、それが人形たちにとっては珍しいのかスコーピオンや9A91、スプリングフィールドが集まってくる。

 ヒューイの足をネタにしつつも悪意を感じさせずむしろ親しみを覚えるスコーピオン、ヒューイの研究に興味深く尋ねる9A91、そしてとにかく優しいスプリングフィールド。

 一人で引き籠って研究していたヒューイは、親しみやすい人形たちにいつしか笑顔を浮かべて言葉を交わしていた。

 

 

「なあスネーク、さっさと狩りに行こうぜ。一応ハンターも誘ってあるんだからよ」

 

「ああそうだったな。良い狩場を知ってる、ハンターも気にいるはずだ。久しぶりのキャプチャーだ、腕が鳴るな」

 

「ダメですよ?」

 

 唐突に、背後からスプリングフィールドが肩を掴み引き留める。

 スネークが振り返り見たのは、いつも通り優し気な笑顔を浮かべるスプリングフィールドの姿であったが…スネークにはその背後にどす黒く禍々しいオーラが見えていた。

 

「ど、どうしたスプリングフィールド…」

 

「また変な生き物捕まえてくるつもりですよね? スネークさん、この間マザーベースで酷い害虫騒動があったの覚えてますよね?」

 

「あぁ。確かアレはゴキ――――「その名前を呼ばないでくださいッ!――――す、すまん」

 

 先日、糧食班のプラットフォーム、及びスプリングフィールドのカフェに突如として現われた黒く禍々しい生物。

 最初に気付いたのはスプリングフィールドで、マザーベース中の海鳥が飛び立つほどの悲鳴に、すぐさまマザーベースの警備体制は警戒フェイズに移行する。

 緊急出動されたスプリングフィールド親衛隊(カフェの常連)たちがすぐさまカフェへ駆けつけた時、スプリングフィールドは大量発生した黒き生命体に怯え震えあがっていたのだ。

 

「スネークさん、アレ…持ちこんだのスネークさんですよね?」

 

「あぁ、美味かったから生きたまま持って帰ってきた」

 

信じられない……とにかくスネークさん! この間はそれでみんな迷惑したんですからね!」

 

「いや、アレ栄養価が高いみたいだぞ。調べたら世界にはいろいろな料理があるらしいじゃないか、お前も食ってみろ、オレの言いたいことがわかるはずだ」

 

分かりたくありません!!

 

 スネークの悪食は、以前のキャプチャー作戦で思い知らされていたスプリングフィールドであったが、よりによってあの生物を食うとは想像もしたくなかった。

 その後スタッフたちによって黒い生き物は一掃されたが、風の噂で半分が駆除ではなく捕獲されたと聞いた。

 捕獲された黒い生物がその後どうなったかなど、スプリングフィールドは考えたくもなかった…。

 

「スプリングフィールド、これだけは言っておく。好き嫌いはダメだぞ」

 

「あのですね…」

 

 手のつけられないスネークに、スプリングフィールドは降参したくなるが、これ以上マザーベースに変な生物を連れ込まないためにもきつく言いつける。

 "今度からは現地で食って帰る"などと言うスネークに、スプリングフィールドは全てを諦めた。

 

 

「スネーク! 大変よスネーク!」

 

 

 そこへ、WA2000が何やら大慌てで駆け付ける。

 息も絶え絶えでただならない様子に、一同に緊張が走る。

 

 

「どうしたんだよワルサー! 敵襲か!?」

 

「大変なの、変なのがマザーベースに来てるのよ! とにかく一緒に来て!」

 

 

 彼女の言うことはわけが分からなかったが、ひとまずWA2000の後をついて行く。

 彼女が向かった先にはたくさんの人だかりができている。

 WA2000の様子から異常を感じ、エグゼやスコーピオンは完全武装でスネークの背後に控えた。

 

 

「おい、どうしたんだ」

 

 

 スネークの姿を見たスタッフたちは、ざわめきながらその場を譲る。

 人だかりが割れていき、この騒動の原因がスネークの目に飛び込んでくる。

 

 ひざほどの高さにも満たない小さく毛に覆われた身体、ゴーグルをかけ頭にかぶったヘルメットからは二つの耳が飛び出している…。

 二本の足でしっかりと立つ、奇妙な猫の姿がそこにあった。

 

 

「お前は、トレニャーじゃないか!! お前もこっちの世界に来てたのか!?」

 

「うにゃにゃーお! にゃにゃ、うにゃー」

 

「ほう、嵐に巻き込まれてか…オレたちも同じだ。今までどこにいたんだ?」

 

「にゃー。んみゃーお、にゃにゃ、にゃー」

 

「そいつは大変だったな。しかしよくここまで生きて来れたな」

 

「みゃーお! にゃーにゃにゃ!」

 

「相変わらず大した奴だニャ」

 

「あのさ、スネークちょっといい?」

 

 奇妙な猫と親し気に話すスネークに、スコーピオンは申し訳なさそうな表情で声をかける。

 

「その猫、なに?」

 

「あぁ、そういえばお前たちは初対面だったな。紹介しよう、こいつはトレニャーだ」

 

「いや、そうじゃなくて……あぁもう、なんて言ったらいいのかな!」

 

 スコーピオンは頭を抱え込んで叫ぶ。

 他の人たちもスコーピオンと同じ気持ちであるようで、全員が引き攣った表情でスネークを見ている…若干の距離感を置いて。

 

「にゃーお!にゃーお! うみゃー、にゃにゃにゃ!」

 

「ん? ここにも怪物の島があるのか? そうだトレニャー、うちにお前が捜していたハンターがいるんだが…」

 

「うみゃー! にゃにゃにゃーお! にゃー!」

 

「よし決まりだな。エグゼ、準備をしろ」

 

「は? 意味が分かんねえよ、というかスネークお前ちょっと怖いぞ?」

 

「大丈夫だ、問題ない。さあ怪物狩り(モンスターハンティング)に行くぞ」

 

 




オセロット「現地語の習得は諜報の基本だ…猫語を話してみろ」

ワルサー「こ、これでいいのかニャ…?」(赤面)
スコーピオン「元気にいくニャ!」(ノリノリ)
スプリングフィールド「恥ずかしいです…ニャ」(赤面)
9A91「ニャ、ニャー……うぅ」(困惑)
エグゼ「シャーーッ!!」(威嚇)

ハンター「なにこいつら、やっぱ仲間にならない方がいいわ」(ドン引き)
IDW「……」(白目)

そして失われるIDWのアイデンティティ。


ドルフロ✕メタルギア✕モンハンのコラボを楽しめるのはうちだけだ!
次回狩猟クエスト、お楽しみに!

それにしても、ハンター違いも甚だしいですね(笑)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。