「そろそろだね、スネーク」
「そうだな」
とある昼下がりのマザーベース。
滑走路とヘリポートを有する甲板上ではMSFの主だったメンバーと戦術人形たちが集まり、遠い海のかなたを…正確には空を眺めとある人物たちの来訪を待っていた。
やがて空の向こうに黒い点が見えた時、スコーピオンは喜びの声をあげ、その場でピョンピョンと跳ねてまわる。
空の向こうから飛来してきた数機のヘリコプター。
うち一機の貨物用ヘリコプターには、球体状の物体が吊り下げられていた。
ヘリコプターはマザーベースの飛行甲板へと着陸し、貨物用ヘリコプターに吊られていた球体状の物体もそこへと降ろされた。
甲板に着陸したヘリコプターからは、一人の少女がまず先に降り立ち、少女は後に続いて降りてきた女性の手を取ってサポートをする。
「スオミ!」
9A91が少女の名を口にしたとき、少女は天使のようにはにかみながら手を振る。
そのまま9A91は二人の元へと駆け寄り、再会を喜ぶように抱擁をするのであった。
「元気になったんだねスオミ!」
「ええおかげさまで、自分の声で話せるようにもなりました」
「また会えて嬉しいです。それに、イリーナさんも!」
スオミと共にやって来たのは、バルカン半島でMSFと共に戦ったパルチザンの若きリーダーのイリーナ。
ウロボロスの襲撃で生死の境をさまよっていたイリーナであったが、なんとか一命をとりとめ、身体が動くようになるやいなやすぐさま革命闘争に復帰した。
おかげでパルチザンは連邦に勝利し、新たな国家"ユーゴスラビア社会主義共和国"が誕生した。
「イリーナ、無事で良かった。お前は困難に打ち負けず、見事使命を果たしたんだ。お前は祖国の英雄だ」
「止してくれスネーク。MSFの力添えが無かったら、今頃まだ野山を駆けまわっていたゲリラに過ぎなかった…礼を言おうスネーク、アンタは我々と祖国を助けてくれたんだ」
「仕事を果たしたまでさ。それに、こっちも礼を言わなければならない」
二人は握手を交わし、ヘリと共に持ってきた球体状の物体に目を向ける。
球体状の物体は赤く点滅し、奇妙な音声を放っていた。
『マザーベース……帰還確認、メタルギアZEKE…任務終了』
合成音声で話すその物体はまさしく、MSFの守護神"メタルギアZEKE"のAIポッドであった。
バルカンの地で、ウロボロスの放った神の杖で破壊されたと思われたZEKEであったが、AIポッドのみとはいえ守護神の帰還にMSFのスタッフ一同歓喜した。
特にZEKEに特に愛着を持っていたヒューイは涙を流して帰還を喜んでいる。
「アルキメデスは観測衛星との併用で真の威力を発揮する。ウロボロスが放ったアルキメデスの鋼芯弾は精密射撃は出来ず、メタルギアは直撃を免れたようだ。それでも機体の損傷は激しかったが、AIポッドだけは無事だったんだ」
「オレたちも諦めていたというのに、よく調べてくれたなありがとう」
「どういたしまして、スネーク」
バルカン半島での主要任務が果たされ、メタルギアZEKEのAIポッドが帰還したことにより、MSFのバルカン半島でのすべての作戦が終了されたことになる。
いまだユーゴスラビアでは旧体制派との確執なども残っているが、それはイリーナたち新政権がこれから向き合っていくべき政治事情であり、MSFが兵士としてかの国で行えることはもうほとんどない。
「今や過激派は一掃され、軍部も味方についた。でも内戦で引き裂かれた民族の結束には、まだまだ長い道のりが必要だ。まだ民主的な政治はできそうもない、国内が安定するまでは武力による統治が続くだろう」
「今が最もかじ取りの難しい時期だ。何よりも優先するべきは、秩序の維持だ。最善な手とは言えないかもしれないが、性急な民主化は時に混乱を生む場合があるからな」
「その通りだ、不平不満は甘んじて受けるつもりだ。だが、もうこれ以上祖国に血を流させるわけにはいかない。私もいつまでも独裁者の座に居座るつもりはない、国内が安定した時、私は潔く身を引くつもりだ……チトーのように、終生政治に関わるつもりはないさ」
「オレからは政治についてのアドバイスはできないが、お前のこれからを応援する。頑張れよ」
「励みになるよ、ありがとう。それと、今回の仕事の報酬を払う時が来たようだ…受け取ってくれ」
メタルギアZEKEの帰還は友情の恩返しとして、仕事の報酬は別だとイリーナは言う。
パルチザンを勝利に導いた報酬として多額の資金が報酬として支払われる。
一体どこから工面したのかと聞くと、過激派と一部の特権階級の財産をぶんどってやったのだとイリーナは言う。
ぶんどった財産の全額ではなく、一部は国家運営のために回されたが、それでもMSFに渡された資金はバルカン内戦での負債を軽く帳消しにできるほどの額だった。
それに加えて連邦軍の武器・装備品の一部も手渡される。
「クロアチア軍の正式採用アサルトライフルVHS-2、過剰生産で余っててな…君らのヘイブン・トルーパー隊の正式装備にしてみてはどうかな?」
「さりげないビジネスの話しとは上手いじゃないか?」
「フフ、一応連邦は軍事産業が盛んでね…まあ、これらは試供品として渡す、現場の意見が好評なら是非ともこちらに発注してくれ」
イリーナはユーゴスラビア内の兵器メーカーの資料を手渡す。
連邦お抱えの軍事会社であったが、政権が代わった今は現政権の管理化に置かれている…まあ、武器商人というのは昔から売れれば主が誰であろうと構わないのだろう、結局のところ重要なのは利益なのだから。
「さてスネーク、ここに来たのは再会を喜び報酬を支払うためだけではない。今後の仕事について話しあうために来たんだ」
「仕事の話しなら、うちの副司令もいた方がいいな」
ビジネスと言えばカズヒラ・ミラー。
呼ばれてやって来たミラーが早速イリーナを口説こうとしたので、スネークはその尻に一発蹴りを叩き込み再度商談を開始する。
「内戦で埋められた地雷が多くてな、それの除去を頼みたいのと、平和維持活動の手伝いをしてもらいたいんだ。内戦は終わったが、国境地帯には人間以外の脅威もある…それに他国の干渉も心配されるしな」
「前世紀の内戦の地雷もいまだ残っていると聞く。地雷が残っている以上、人々が安心して外を歩き回ることもできない…か。スネーク、オレたちは戦争を生業としているが、こういう平和に貢献する仕事があってもいいんじゃないか?」
「報酬はあまり期待できるものではないかもしれないが…是非ともMSFに請けてもらいたいんだ」
「いいだろう。カズ、うちにトラップの類に詳しいスタッフが何人かいたよな。どうせならそいつらに、地雷の除去について教育を任せて見たらどうだ?」
「それは名案だな。イリーナ、MSFとしては地雷の除去を行いながらその効率的なやり方を教える、というのはどうだ? そうすれば国内の地雷の除去も捗ると思う」
「そうだな、それもありかもしれないな。あともう一つお願いがあってな…スオミ、こっちに来なさい」
イリーナは、9A91と親し気に話すスオミを呼ぶ。
ぱたぱたと駆け寄ってきて、丁寧にお辞儀しはにかむ天使のようなスオミ…スネークは発情しかけるミラーの足を思い切り踏みつけ、なんとかMSF副司令の風格を纏わせる。
「もう一つの依頼はな、うちのスオミをちょっと預けて訓練してもらいたいんだ。いや、わたしからというよりスオミが望んだことでな」
「いいのか、内戦が終わったら銃を捨てて民生人形に戻ると聞いていたが…」
「はい、そのつもりでした。でも、イリーナちゃんのそばで支えていくにはこれからも戦術人形として生きていく方がいいと思ったんです。イリーナちゃんは昔からよく危険な場所に飛び込んでいくので、わたしとしてはもっともっと家族を守る力が欲しいんです」
「そうか、だがうちで訓練を受ける以上は甘えは許されないぞ。厳しい訓練もあると思うが、そこら辺の覚悟はできているのか?」
「はい」
スオミの決意に満ちた表情を見て、スネークは頷く。
気弱な一面もあるが、イリーナと共にバルカン半島の内戦を潜り抜けてきたスオミの芯の強さはなかなかのものなのだろう。
MSFへの留学、ということになる形でスオミはしばらくイリーナとお別れとなる。
「スオミ、元気でやるんだぞ」
「イリーナちゃんもね、わたしがいないからと言って泣いちゃダメだからね」
「そんな子どもみたいな真似はしないさ」
「それからちゃんと栄養バランスを考えて一日三食とるんだよ。ジャンクフードばかり食べないでね?」
「分かってるよ」
「あとちゃんとおうちの掃除もね。ほっとくといつまでも散らかしっぱなしなんだから…」
「分かってるって…」
「短気も起こさないこと、すぐケンカするんだから。ダメだよ?」
「ハイハイ…」
「ハイは一回。あとお酒は控えてね、お医者さんから注意されてるんだから」
「あーもう分かってるってば! お前は私の母親か!?」
「だってイリーナちゃんの小っちゃいころから見てるから、いつまでも心配なんだよ?」
「全く…いつまでも子ども扱いするなよ。スネーク、スオミをよろしくな」
ぶっきらぼうに言ってはいるが、イリーナの目が潤んでいるのをスネークは見逃さなかった。
強がってはいるが、世界で唯一の家族であるスオミと離れることは、一時的とはいえとても寂しいのが本音なのだろう…。
イリーナは最後に一度だけスオミを抱きしめ、しばしの別れを告げる。
「短い間ですけど、よろしくお願いしますねスネークさん!」
「
復ッ活ッ!!
メタルギアZEKE復活ッッ!!
メタルギアZEKE復活ッッ!!!
ZEKEの意思はサヘラントロプスに移されるのだ(至高)
スオミの限定的なMSF加入です!