METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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M950Aからキャリコ呼びします


ジャンクヤード編:マッドネス・ドールズ・カーニバル

国境なき軍隊(MSF)最強の戦術人形、処刑人さまの到着だーッ!スネーク、オレ様が来たからにはもう安心しな!」

 

 酒場のドアを豪快に蹴破り現われたエグゼ、どうやら彼女がストレンジラブの言っていた増援らしい。

 蹴られたドアは酒場の反対側にまで吹き飛んでいき、酒場の店主は怒り狂ってエグゼに詰めよっていったがそれがまずかった…顔面に一発拳を叩き込まれ、カウンターの向こうへ吹き飛んでいった。

 

「エグゼ! まったくあんたはもう…ゴロツキじゃないんだから礼儀正しくしなさいよ!」

 

「はぁ? おっさんが近寄ってきたら普通殴るだろ? お前もオセロットじゃなくてカズが詰め寄ってきたら殴るだろう?」

 

「ええ、そうね。じゃなくて…!」

 

 もう一人はWA2000、現状のMSFで高い戦闘力を誇る戦術人形の二人が、今回のスネークの増援として選ばれたわけだ。MSF内の特殊部隊FOXHOUNDにてオセロットに次ぐ実力者であるWA2000、鉄血生まれでヘイブン・トルーパーの大隊を率いるMSFの斬り込み部隊隊長のエグゼ。オセロットを除いて、これほどの実力を持つ人形は他にはいない。

 

「それで、スネークが手を焼く相手って言うのはどこのどいつなの?」

 

「実はかくかくしかじかで」

 

「ふざけないでちゃんと説明しなさいよスコーピオン」

 

 いい加減な説明をWA2000は許さない、仕方なく事情を説明するが、なにぶんスコーピオン自身もあのジャンクヤードでの出来事がぶっ飛びすぎていまだに信じられないでいるのだ。会話の最中にキャリコの自己紹介を済ませ、ジャンクヤードで暴れる狂った戦術人形の話しを二人にも伝える。

 奇妙な仮装で狂ったように殺しあう戦術人形、それを聞いてWA2000はやはりAIの異常を疑うが、キャリコとの話しで出てきた黒い箱(ブラックボックス)について聞くと神妙な面持ちで考え込んだ。

 

「まあ難しい話しはいいとしてよ、そのいかれた人形どもをぶちのめせばいいんだろ?」

 

「ただ倒すだけじゃないよ、全員生かしてフルトン回収だよ。ストレンジラブに調べてもらって、AIを直してもらうんだ」

 

「全くめんどくせえな。まあいいや、いつやりにいくんだ? オレは今すぐでも構わねえんだぜ?」

 

 エグゼはいついかなる時でも戦闘態勢は準備万端だ。戦場以外のプライベートな空間だろうが丸腰の状態だろうが関係は無い、そこが酒場でも街中でも敵さえいればすぐそこが戦場となるのだから。

 ジャンクヤードへ行くタイミングについてはWA2000もエグゼと同じ意見であり、スネークとスコーピオンもそれに賛同する。後は依頼者であるキャリコ次第…4人の視線が自分に集まったことにキャリコは息を飲む。やがて彼女は決心し、今すぐジャンクヤードへ向かうことを決めた。

 

「行こう。解決策があるのなら、これ以上待つ必要はない……みんなに会えて良かった、一人じゃたぶん、何もできなかった」

 

「そうは思わないわ。孤独な中で、アンタは自分を保っていられた。だれでもできるわけじゃないのよ?」

 

「ワルサー……案外、優しいんだね。ありがとう」

 

「ふん、どういたしまして」

 

 そうと決まれば現場へと急行だ。

 酒場の店主はエグゼが殴り飛ばして気絶させてしまったので、代金はカウンターの向こうへと置いておく。一応破壊したドアの修理代と殴ったぶんの治療費もいれてある。

 ジャンクヤードへの道のりを軽快に歩くエグゼとは対照的に、スコーピオンとキャリコの二人はまたあの狂気の宴へと入り込むのかと考えると、どんどん足が重たくなるのを感じていた。

 

 今頃ジャンクヤードでは人形たちが殺しあいを続けていることだろう…。

 進むたびに大きくなってくるジャンクヤードに、スコーピオンは余計な雑念を振りはらい銃の残弾をチェックしたりと、戦闘態勢を整える。

 そしてついにたどり着いたジャンクヤード……意外なことに、とても静かであった。

 

「おいおい、話しが違うじゃねえか。どこに狂った人形がいるって言うんだよ?」

 

「たぶん隠れてるんじゃないかな? それか、お昼ご飯食べて寝てるか…」

 

「ふざけんじゃねえぞキャリコ、こんなごみ溜め場に呼び出しやがって、無駄足だったら承知しないぞ?」

 

 戦う相手が不在でご機嫌斜めのエグゼだが、予測不能な行動をする相手であることはスネークも身をもって味あわされたため、油断せずに警戒することを促す。

 とはいえ、広大なジャンクヤードで戦術人形を探して回るのは骨が折れる。

 どうしたものかと悩んでいると、銃声の代わりに少女の楽し気に笑う声が聞こえてきた…。

 

「ネゲヴと、これはリーダーの声かな?」

 

 その声は徐々に近付いていき、やがて幼い姿のネゲヴを肩車するMG5がジャンクヤードの積み上げられた車両から姿を現した。

 

「ん? また変な輩が現れたか」

 

「わーい、キャリコ! 私今からここから突き落とされるんだって!」

 

 ジャンクヤードからスネークらを冷たい目で見下ろすMG5に、無邪気に笑う幼いネゲヴ。一見仲睦まじい二人に見えるが、二人とも衣服に血がべったりと付いており、ダミー人形の頭部をおもちゃのように抱きかかえるネゲヴの姿は相変わらずの狂気を感じさせる。

 

「なるほどね、いい感じに壊れてんな。だがよ、生憎オレにそんなハッタリは通用しねえよ。お前はどうだ、ワルサー?」

 

「気味悪いけど、気持ちの切り替えはオセロットに教わってるから」

 

 MG5らの狂気は、エグゼとWA2000にはどうやら通じなかったようだ。二人はすぐさま銃を手にし、相変わらず無邪気に笑う二人を見据える。

 

「ほう、君らも遊びたいのか? だが、お前らにその資格はない。酷い格好だな、出直してこい……メリークリスマス、見ろネゲヴ、トナカイがそりを引いているぞ」

 

「わー本当に? サンタさんサンタさん、もっともっと人を殺せる武器が欲しいな!We wish you a Merry Christmas、We wish you a Merry Christmas!」

 

「な、おい! 待ちやがれ!」

 

 二人は定番のクリスマスソングを口ずさみながら、ジャンクヤードの向こうへと姿をくらましてしまった…予想外の事態に誰もが戸惑い、急いで追いかけていったエグゼも二人を見失い、いらだった様子で戻ってくる。

 

「ちくしょう、なんだってんだ…急にいなくなりやがって!」

 

「酷い格好って言ってたけど、別に普通よね?」

 

「もしかしてさ、あたしらもあいつらと同じく仮装しろってことなのかな?」

 

 スコーピオンの発言にまさかとWA2000は笑ったが…。

 

「いや、あながち間違いでもないかもしれないぞ。キャリコ、あいつらはジャンクヤードであの衣装を見つけたと言ったな。それはどこにあるんだ?」

 

「えっと、あっちの方なんだけど…って、え? 仮装するの?」

 

 戸惑うキャリコにスネークはサムズアップで応えるのであった…。

 無論他のメンバーも反対するが、やたらとノリノリなスネークに押し切られ、ジャンクヤードの舞踏会が幕を開けるのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うぅ、何が悲しくてこんな寒い日に水着なんて着なきゃいけないのよ」

 

 寒々とした空の下、WA2000は容赦なく吹き付ける冷たい風に身を震わせ、小さなくしゃみをした。

 ジャンクヤードの衣装投棄場を散策した結果、あらゆる業界から廃棄された衣装を見つけることができた。大部分は風雨にさらされて劣化していたが、ジャンクヤードの深層に埋まっていた衣装ケースからは質の良い衣装を手にすることができたのだ。

 

「まあ、こうでもしないとあいつら出てきてくれないみたいだし、いいんじゃないの?」

 

 そう言うスコーピオンの衣装はスカーレット色のドレスだ。当初は反対していたスコーピオンも衣装を見つけてからはノリよく着替え、眼帯も薔薇をあしらったものへと変え、髪もおろしていた。

 

「どうワルサー、アタシのドレス姿?」

 

「ふん、黙ってればかわいいわね」

 

 実際、胸元まで素肌を晒したドレス姿に髪を下ろしたスコーピオンの姿は、いつもの快活で元気な姿とのギャップもあってか、大人びた女性としての魅力が引き立っていた。わざとらしくウインクして見せるスコーピオンに呆れつつも、そのかわいさはWA2000も認めるところだ。

 

「待たせたな」

 

「あ、スネーク…! わぁ、似合ってるじゃん!」

 

 遅れて駆け付けたスネークは全身をタキシードでバッチリと決め、どこか得意げな表情で反応を伺っているようだ。結果は思った通り、スコーピオンを筆頭に似合っていると言ってくれたためにスネークも嬉しそうに顔を綻ばせる。

 

「うんうん、いつものワイルドな姿とのギャップが良いね。すごく似合ってるよ!」

 

「そうか!オレにタキシードは似合わないのかと思っていたが…似合ってるか…!」

 

 スネークはかつてタキシード姿を恩師に全力で怒られたこともあってか、思いのほか良い反応に感動していた。

 

「あとは、処刑人だけだね? どんな格好してくるのかな?」

 

「エグゼにはナース服とかお医者さんの衣装をお勧めしといたんだ。フフフ、エグゼのナース服姿を写真に取って小遣い稼ぎしてやる」

 

「あんたなかなかにゲスね」

 

 含みのある笑みを浮かべるスコーピオンの魂胆を読み、WA2000はほとほと呆れたようにため息をこぼす。

 エグゼのマザーベースでの人気は意外にも高い。基本的にスネーク以外の男性に懐かないエグゼだが、奔放でさばさばした性格と、時折スネークに見せる乙女の表情に心を射止められた隠れファンというのは多い。

 

「おい」

 

「あ、エグゼ……って、えぇ…なにその格好…」

 

 現われたエグゼは、パンクスタイルのレザースーツに全身を覆う黒のローブに身を包み、すっぽりと頭を覆う頭巾からはカラスのくちばしのようなマスクが覗かせていた。露出度どころか身体の輪郭すら分からない衣装に、スコーピオンは絶句している。

 

「なんだその反応は、お医者さんの格好をして来いって言ったのはお前だろ」

 

「あたしはナース姿を期待してたの! 医者は医者だけど、それペスト医師の衣装でしょうが!」

 

「結構気に入ってるんだけどな、似合ってるだろ?」

 

 黒ずくめのペスト医師の姿でぶんぶんとブレードを振り回す姿はたちの悪いホラー映画の怪物だ、ジャンクヤードの狂人形と違い、ストレートにホラーな姿は気の弱い人形が見たら一生もののトラウマになることは間違いない。

 

「よし、準備はいいねみんな。確認だけど、みんなを生け捕りにしてくれるんだよね? 頼んだよ」

 

「任せろ、四肢を捥いででも連れ帰ってやる」

 

「よしなさいよエグゼ。その格好だとちょっと…冗談に聞こえないから」

 

 全員の仮装が終わり、準備は万端。ちなみにキャリコの衣装はセーラー服だ。

 水着、ドレス、タキシード、ペスト医師、セーラー服姿の一行はジャンクヤードの中でとても浮いて見える。正常な者ならその姿を見て関わり合いにならない方が良いと判断することだろう。

 目立った衣装はもちろん敵の目を引きつけるが、それは願っても無いことだ。

 ゴミ山の中から興味津々で現われたFALとヴェクターに、一行はすぐさま戦闘態勢をとるのであった。

 

「あらまあ、奇妙なお客さんね。はっ、タキシード姿の男性がいるわ…! きっとわたしの伴侶に違いないわ!」

 

 タキシード姿のスネークに目をつけたFALが、ゴミ山を凄まじい速さで走破し一気に距離を詰める。だがFALがスネークのもとへ到達するよりも早くに、スコーピオンがFALの行く手を体当たりで阻む。小柄なスコーピオンであるが、助走をつけて肩からFALの腹部にぶつかっていったため、勢いのついていたFALには相当のダメージを与えたことだろう。

 

「スネークをあんたみたいな奴に渡すか!」

 

「ザコ人形が、わたしの恋路を邪魔しないで頂戴」

 

 マウントポジションをとったスコーピオンが有利に見えたが、FALはするりと拘束を抜け出すと、逆にスコーピオンの腕を掴み両足で首を三角絞めで捉えた。片腕を封じられ、なおかつ華奢でしなやかな素足に頸動脈を絞めあげられスコーピオンは苦しみに表情をゆがませる。

 

「私はエリートなの、あなたのようなザコ人形に私のヴァージンロードを封鎖できないわ」

 

「くッ……何がエリートだ、この、バッカやろう!雑草根性見せてやる!」

 

「あ、あら?」

 

 スコーピオンは三角絞めを受けたままの体勢で身体を起こすと、一緒に持ちあげたFALを豪快にパワーボムで地面に叩き付ける。叩きつけた衝撃で足元が崩れ、数メートル下の階層にまで二人は落下した…先ほどのタックルとパワーボムでFALのダメージは相当なようで、彼女は目を回してぐったりとのびていた。

 

「てこずらせて全くもう、フルトン回収の刑だ!」

 

 スコーピオンはFALが気絶している間に彼女をジャンクヤードの上層へと運び、万能回収装置フルトンをFALの身体へとくくりつける。

 

「よし、やったなスコーピオン!」

 

「アタシにかかればエリート人形といえどちょちょいの……あ、マズいベルトが絡まった! ちょ、ストップ! ヤバ、あぁ! うわああぁぁぁぁ――――――――」

 

 あわれ、スコーピオンはFALに括りつけたフルトン回収システムのベルトに絡めとられて空高く打ち上げられてしまった。その様子を一行と、敵であるヴェクターが一部始終をその目におさめてしまう。やがてお互い顔を見合わせるが、なんとも言えない気まずい空気が辺りを包み込む。

 

「えっと…トリック・オア・トリート。お菓子を寄越しなさい、お前たち面白いな」

 

「おいワルサー! いかれ人形に気をつかわれてるぞ、いいのかこれで!?」

 

「いいわけないでしょ! まったくあのバカサソリ!さっさとあいつも回収するわよ!」

 

 気をとり直し、WA2000とエグゼが二人がかりでヴェクターを狙う。するとヴェクターは一瞬怯んだかと思うと、一目散に逃げだしたではないか。

 

「トリック・オア・トリート! お菓子はいらない、怖いの消えろ!」

 

「待ちやがれコラッ!」

 

「寒いんだからとっとと捕まりなさいよ!」

 

 殺気だった水着姿のWA2000と、殺人鬼もドン引きするようなペスト医師姿のエグゼに、ヴェクターは恐怖に怯え逃げ回る。ジャンクヤードの遥か向こうにまで逃避行は続き、やがて大きな悲鳴が上がったかと思うと、ヴェクターが空高くにフルトンで打ち上げられていった…。

 

「よし、後は二人だな」

 

「え、あぁ…そうだね。こんなんでいいのかな…」

 

 困惑するキャリコであったが、ひとまず人形たちの半分は攻略した。後はネゲヴとMG5の二人だ。

 

「注意してスネーク。ネゲヴもリーダーも、相当な強さだよ。ネゲヴに至っては今の症状になって予測がつかないから、なおさら危険だし…」

 

「油断するつもりはない。ここはあいつらのフィールドだ、どこから襲い掛かってくるか分からん。注意して進もう」

 

「オッケー、ボス。先を行こ」

 

 残す人形はネゲヴとMG5。狡猾で無邪気な殺戮人形と化したネゲヴに、部隊内で最強を誇っていたというMG5だ、敵に取って不足はない。だが今回は生け捕りが目的だ、ただ倒すよりもはるかに難易度は高くなる。

 

 ゴミ山の頂上に赤いサンタコス姿の銀髪の女性が姿を見せる……無表情で冷たい目で見下ろす彼女は、まるでスネークを品定めしているかのようだ。

 

「キャリコ、下がっていろ」

 

 拳銃とナイフを手に構え、スネークは背後のキャリコを下がらせた。

 MG5は視線をスネークから一切逸らさずにゴミ山の頂上からゆっくりと降りてくる。

 

「お前、サンタを信じるか? サンタを信じる者に悪い奴はいない。メリークリスマス、聖なる夜に血の雨が降る。メリークリスマス、では死んでもらう」

 

 狂気的な殺意にスネークは即座に反応し、MG5へと引き金を引く。銃弾は彼女の肩へ命中したが、怯まないどころかまるで撃たれたという認識もしていないかのように、機関銃を片手で構え嵐のような銃撃で応戦する。

 咄嗟に廃材に身を隠すが、凄まじい弾幕で廃材はあっという間に吹き飛ばされいくつかの弾丸は貫通しスネークの額をかすめた。

 

「スネークッ!」

 

 窮地のスネークを助けようとキャリコが走ろうとした矢先、突然足元の鉄板がめくれたかと思うと、そこからネゲヴが飛び出しキャリコの足を掴み転倒させた。

 

「ダメだよキャリコ、リーダーはあのお兄さんと遊んでるんだから。キャリコは、わたしと遊ぶのよ?」

 

 ネゲヴは転倒したキャリコを引き寄せると、キャリコの身体を覆いかぶさるようにして押さえつける。

 

「ネゲヴ、お願いだよもう止めて! あなたは病気なの、治療しないといけないんだよ!」

 

「んー?どうして?わたし今が一番楽しいよ? だって見てキャリコ、こんな素敵な世界ってないんだよ。綺麗なオーロラが見えるでしょう?小人の妖精が踊って、動物たちが楽しそうに駆けまわってるの。あぁ、素敵な歌が聞こえるわ」

 

 目を閉じて、歌を聞き入るネゲヴだが、そんな歌も夢のような光景も現実には存在しない。キャリコの見る現実と、ネゲヴが見ている世界はあまりにも違う……ネゲヴやMG5には、このジャンクヤードがおとぎ話に出てくるような光景が広がっているのだ。

 

「ここでクイズです。あるおじさんがとても大嫌いな夫婦を殺しました、でもおじさんはそこにいる無関係なペットや小さい男の子も殺しちゃいました。さあ一体なぜでしょう?」

 

「お願い、正気に戻ってよネゲヴ!」

 

 必死に訴えるキャリコの頬を、ネゲヴは殴りつけると、先ほどと同じクイズの質問を投げかける。

 

「制限時間がきちゃうよー、はやくしないと罰ゲームだよ?」

 

「うぅ…殺したのは、大嫌いな夫婦の子どもと、ペット…だから?」

 

「ブッブー残念! 正解は、あの世で再会させてあげようとしたからでした。罰ゲームだよ、全身滅多刺しの刑です」

 

 ネゲヴが手を振り上げ、銀色に光る物体がきらりと光ったかと思えば、それを一気にキャリコの肩へと振り下ろす。

 

「ぅああッッ! い、いたいッ!」

 

「アハハハハハハハハハ! ダメだよキャリコ、笑顔笑顔! 笑ってるキャリコが好きなんだから、ね? だからほら、もっともっと笑ってよ! キャハハハハ!」

 

 ナイフを引き抜く際にわざとねじって傷口を広げ、再度同じ個所にナイフを突き刺す。キャリコの悲痛な叫び声とネゲヴの狂ったような笑い声がジャンクヤードに響き渡る。

 何度もナイフを突きさされ、キャリコは喉が枯れるほどまで悲鳴をあげ続けた……血と涙で濡れたキャリコの頬にそっと手を当て、ネゲヴは優し気な目で微笑みかける。

 

「キャリコ、もう止めて欲しい?」

 

「や…嫌……お願い、許して…」

 

「だーめ。キャリコが笑ってくれるまで滅多刺しにするもんね!」

 

 意地悪くニヤリと笑い、再度ネゲヴはナイフを振り上げる。もはやキャリコは大声で泣きわめくこともできず、痛みと恐怖に怯え目を閉ざすことしか出来なかった。そして、銀色に光る凶刃がキャリコの胸元めがけ振り下ろされる…。

 

「あれ…?」

 

 そんな、気の抜けた声を聞き、キャリコはおそるおそる閉じていた目を開く。ネゲヴが振り下ろしたナイフの刃先は、寸でのところでキャリコの胸元を突き刺していなかった。

 ナイフを握るネゲヴの手は震え、驚いたような表情で固まっていた。

 

「キャリコ……お願い、今のうちに…」

 

 頬に落ちてきた雫にキャリコはハッとしてネゲヴを見上げる。震える手でナイフを握るネゲヴは、唇を噛み締め涙を流してキャリコを見下ろしていた…。

 

「ネゲヴ…正気に戻ったの…?」

 

「ごめんなさい、キャリコ…いつまでも持たない、早く…早くなんとかして!」

 

 ネゲヴが正気を微かに取り戻した…彼女が自分の身体を制御していられるうちに、彼女を取り押さえなければならない。キャリコは痛む身体に喝を入れ、なんとかネゲヴの拘束から抜け出した。そして逆にネゲヴを地面に押し付け、用意していたロープでがんじがらめに拘束する。

 

「ありゃ? どうなってるの…? あれ、わたしいつの間にキャリコに捕まってる…変なの」

 

「はぁ………ありがとう、ネゲヴ…すぐに治療してあげるからね」

 

 ネゲヴを攻略したキャリコは、一気に疲労と痛みがどっと押し寄せ、その場に大の字に倒れ込む。

 

 残すは、MG5。

 

 

 

 嵐のような銃声がジャンクヤード一帯に響きまわる。合間に撃ち返す拳銃の発砲音もかき消してしまうような猛烈な弾幕、足場の悪いジャンクヤードを縦横無尽に駆けまわる身のこなし、何よりも予測不可能な行動にスネークは苦戦する。

 有利な接近戦を仕掛けようにも、MG5は弾幕をはってスネークを寄せ付けず、また逃げ足も速いため中距離での銃撃戦が主体で行われる。マシンガンの弾が尽きてリロードするも、MG5は信じられないような速さで給弾を済ませ嬉々として襲い掛かってくる…キャリコの言う部隊内最強という言葉も嘘ではない。

 

「隠れてばかりではこの私には勝てないぞ。む、そろそろプレゼントを配らなければ、受け取れ!」

 

 MG5は手榴弾を複数手に取ると、それを一気に放り投げる。放物線を描きスネークの頭上を通過していくそれらにMG5は銃撃を加え、手榴弾の一つに銃弾が命中し炸裂、他の手榴弾も連鎖爆発を起こす。爆発によってスネークのいた周囲一帯が煙に覆い隠される…。

 煙が北風に吹き消されようとした時、MG5が見据えていた場所から数メートル離れた瓦礫の中からスネークが姿を現す。引き金を引いたスネークに、MG5は足元の廃材の板をめくり盾にしたかと思えば、それをスネークめがけ蹴り飛ばす。

 蹴り飛ばされてきた板を間一髪避けると、MG5が再び逃走していくのが見え、急いでその後を追う。

 

 

「待てッ!」

 

「待てと言われて待つものがいるか!それは私だ」

 

 

 かと思えば、突然踵を返して跳び蹴りを放って来る。相変わらずの予想できない行動に反応が遅れ、MG5の跳び蹴りによって弾き飛ばされる。

 

 

「フハハハハ! プレゼントが欲しければ追ってくるがいい!」

 

「くっ、逃げるな! 待て!」

 

 

 そして再び逃走するMG5……スネークのスタミナ切れを狙って行動しているようにも見えるが、おそらくは何も考えていない思い付きの行動。無限のように思えるMG5のスタミナに付き合いきれなくなったスネークはその場に立ち止まり、息を整える。

 

「オレも歳をとったもんだ…ん?」

 

 そうしていると、逃げていった先からMG5がきょろきょろと辺りを伺いながらとぼとぼと戻って来たではないか。彼女のカオス過ぎる行動にスネークもまともな思考で対応できず、近付いてくるMG5をただぼんやりと見つめていた。

 

「すまんが、ここらに私の小包が落ちていないか?良ければ一緒に探してもらいたいんだが」

 

「うん?あ、あぁ…」

 

「助かる」

 

 スネークは、考えることを止めた。

 

 先ほどまで苛烈な殺しあいをしていた相手と、ジャンクヤードに落とした物を一緒に探して回る…。救援のためにやって来たエグゼとWA2000も、その摩訶不思議な光景に困惑する…。

 

「おい、これが落とし物か?」

 

「おぉ、それこそ私の探し求めていたものだ。感謝する、あなたはいい人のようだな。この出会いに感謝しよう、ではな…また会おう」

 

「あぁ、達者でな……って、そうはいくかバカ野郎!」

 

「くっ、何をする! 離せ!」

 

「やかましい! ワルサー、スネークそっち押さえろ!」

 

 三人がかりでMG5を押さえ込み、暴れるMG5に引っ掻かれながらもどうにかフルトンをくくりつけて空に打ち上げる。代わりに落ちてきたのは、先ほどMG5が探していた落とし物の小包だ。

 

 

「やぁ、みんな捕まえたんだね? ありがとう、こっちもネゲヴを捕まえたよ」

 

「ずいぶんやられたみたいだな。すぐに迎えのヘリを呼んで治療をしてやる」

 

「ありがとうスネーク、感謝するよ」

 

「気にするな。それから、これを…リーダーのMG5のものだ」

 

 

 スネークから小包を受け取り、へとへとのキャリコはその場に座り込み、MSFの迎えのヘリを待つこととなった。戦いを終え、かりそめの衣装から着替えている間に、キャリコはそっと小包を開き中に入っていた一枚の写真を手に取ると、小さな微笑みを浮かべた。

 

 

「リーダー…おかしくなっても、これだけは忘れて無かったんだね……すぐに元通りになれるからね、みんな」

 

 

 

 写真には、仲睦まじく肩を組む5人の人形たちが写っていた。




たった一話でシリアスとギャグを行ったり来たり……人形たちも狂ってるけど話しの展開も狂ってんなこれ。

スタート画面のMG5すこ。崇めろ(脅迫)
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