METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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マザーベース:幼女前線

「おい聞いたか? なんでも隊長のダミー人形が脱走したらしいぞ」

 

「あぁ聞いたよ。全部隊に捕獲命令が出てるようだな。月光の部隊も駆り出すなんて、隊長もずいぶん本気らしいな」

 

 

 マザーベース警備隊の要であるヘイブン・トルーパー隊の兵士たち、またの名をカエル兵たちは突然のダミー人形捕獲命令に緊急招集された。何がなんだか事情を把握しきれていないカエル兵たちであったが、月光まで稼働させているところから、余程隊長であるエグゼがキレていることは察していた。

 部隊員の中にはいまいち乗り気じゃない者もいる…ダミー人形とはいえオリジナルと遜色のない能力を持つというのが、この世界の戦術人形の常識だ。彼女たちヘイブン・トルーパー隊は隊長であるエグゼの戦闘能力とその恐ろしさを痛いほど理解している。

 エグゼと同等の能力を持つダミーを捕獲しろなど、やりたくないに決まっている。

 だが、上司からの命令があれば拒否できないのが彼女たちの哀しい性だ。

 

 

「ん? アレをみろ、何か近づいてくるぞ?」

 

 

 カエル兵の一人が、プラットフォームを繋ぐ橋の上を移動する奇妙な物体を見つける…ダンボールだ。

 

 このマザーベースに生きる者なら誰もが一度はダンボールの中に身を隠しながら移動する奇妙な人物を見たことはあるだろう。もはや伝統芸といってもいいだろう。

 さてそんなダンボールだが、通常大人が身を隠して移動しようとするとダンボールが地面から浮いて二本の足が露出してしまう問題がある。それはこの基地のカリスマ、スネークも知るダンボールの弱点であり、工夫してその弱点をカバーしなければならないのは常識だ。

 

 ところが今カエル兵たちが見つめるダンボールはどうだ…橋の上を猛烈なスピードで移動しているのにもかかわらず、ダンボール箱は地面から浮かずまた足も見えていない。まるで平らな甲板上をスライドしているかのような動きにカエル兵たちは困惑する。

 

 

「どう思う?」

 

「どうって…絶対怪しいが、足が出てないんだぞ? おそらく今日は風が強くてダンボールが滑ってるだけだろう」

 

「だがもしあの中にダミー人形が隠れていたら?」

 

「ばか、もし誰もいなくて隊長に見つかったらどうする? なに遊んでるんだって言われて怒られるに決まってる。いいか、あのダンボールは風に吹かれて移動してるだけだ」

 

「それもそうだな」

 

 

 結局、カエル兵たちはスライドして移動するダンボールから注意を逸らす(見て見ぬふり)

 

 精鋭たちのガバガバ警備を潜り抜けたダンボールはそのまま橋を渡り切り、居住区角の甲板上へと到着する。

 一人目のカエル兵が予想した通り、スライド移動するダンボールの中には彼女たちが捜索するエグゼのダミー人形"ちびエグゼ"がいた。ちびエグゼは低い身長を活かし、ダンボールの中に綺麗におさまり足を出さずに移動するという画期的なステルス技術を獲得していた。

 これには伝説の傭兵ビッグボスも、その目で見ればきっと驚くことだろう。

 

「おやおや? 何か怪しいダンボールがあるわね」

 

 そんな中、奇妙なダンボール箱に目をつけた者たちがいる…404小隊だ。

 彼女たちもまたエグゼの発令したダミー人形捕獲作戦に参戦していた。彼女たちの場合は報酬金目当てであり、怒りでなりふり構っていれらなくなったエグゼから報酬の確約を得た上で今作戦に混ざったのだ。

 404小隊、とりわけUMP45はグリフィンの特殊な部隊として数々の戦場で暗躍し続けたエリート人形だ、他の大勢が見逃そうとも、彼女たちの目を誤魔化すことはできない。

 

 

「ようやく見つけた! 45姉、わたしが捕まえてもいい?」

 

「ええ、いいわ。でも注意してね、ちびっこといえど相手は鉄血ハイエンドモデルの処刑人なんだからね」

 

 移動するダンボールを、通りを曲がったところで追い詰める。行き止まりの場所でダンボールは逃げ場を無くし立ち往生しているのか、それとも隠れてやり過ごそうとしているのかピクリとも動かない。

 勝利を確信したUMP9が楽し気にダンボール箱へ近付き、ツンツンと突く。

 相変わらず反応はない…ちびっこだから隠れていい気になっているか怯えている、そんな風に思っていたUMP9であったが、次の瞬間手痛いしっぺ返しを食らう。

 

 UMP9がダンボールを持ちあげた瞬間、そこに仕掛けられていた跳躍式の地雷が打ちあがり炸裂、強力な睡眠ガスが周囲にまき散らされる。至近距離で濃度の高い睡眠ガスを吸い込んだUMP9は一瞬で卒倒しその場に倒れてしまう。

 風下にいたUMP45と416は咄嗟にガスマスクを装着することで難を逃れたが…。

 

 

「416、危ない!」

 

「くっ!」

 

 

 頭上の物音にいち早くUMP45が気付く。

 二人の頭の上で吊り上げられていた建設資材を捕縛するワイヤーが切断され、勢いよく落下してきたのである。素早く危険に気付いたおかげで難を逃れたが…。

 

 

「あのちびっこ…! 冗談じゃないわ!」

 

「相手はあのエグゼのダミーよ。殺す気でやってくるに決まってる」

 

 一歩間違えれば圧死の危険もあった。

 ちびっこ相手だからと少々手を抜いていたかもしれない…。

 

 

「やーい! 404のあほしょーたい! ばーかばーか!」

 

「あのガキ…!」

 

「やめなさい416、挑発に乗らないの」

 

「45のつるぺたあほまぬけ! 416はM4もどきー!」

 

「「ぶっ殺す」」

 

 

 ちびっこの挑発に容易く乗せられるエリート二人…。

 追いかけてきた二人にちびエグゼは高笑いをあげながら素早く逃げ回り、狭いダクトの中へと入り込んでしまった。悔しがる二人はすぐさまダクトの続く先へと走る…が、ちびエグゼは二人が立ち去るとすぐにダクトから姿を現す。

 その手にはゴム弾が装填されたソードオフショットガンが二丁。

 口笛を吹いて二人の足を止めると、ちびエグゼは一気に二人へと詰め寄り、二人のがら空きの腹部めがけゴム弾を撃ちこんだ。ツインバレルから発射されたゴム弾の威力を受け、二人は吹き飛ばされた先で悶絶する。

 一発のゴム弾でもなかなかの衝撃だというのに、ツインバレルの二発斉射を受けたダメージは相当なものだろう。

 

「にっしししし、おれさまをなめるからだ」

 

「ぐっ……このちびっこめ…!」

 

「おまえたちはむかつくからそらでもたびしてやがれ!」

 

「ちょっ…! なにするのよ…! あ、コラ…! わたしのパンツ!」

 

 悶絶する二人から強引にパンツを引き剥がし、お返しにちびエグゼは二人の背にフルトン回収装置をくくりつける。装置が起動してバルーンが膨らみ、次の瞬間には勢いよく空高く打ち上げられるのであった…。

 あわれ、二人は救助部隊がやって来るまでノーパンで空を漂うことになってしまった!

 

 404小隊を撃破し、意気揚々と次なる獲物を捜すちびエグゼであったが、そこへ殺意に満ちたオリジナルのエグゼが怒涛の勢いで駆けこんでくる。背後に月光を二体引き連れての徹底ぶりだ。

 

「くそチビが! 大人しくオレ様に殺されろ!」

 

「なんだと!? おれがおりじなるだ、かえりうちにしてやる!」

 

 売られたケンカは買って行く、そういったところはダミーといえどオリジナルに忠実だ。オリジナルと同様強敵相手に勇猛果敢に挑んでいくちびエグゼだが、オリジナルエグゼと月光二体は流石に分が悪い。

 必死の抵抗もむなしく、月光のマニピュレーターに捕らえられ、エグゼに逆さまに吊り上げられる。

 

「観念しろよクソガキ。テメェはストレンジラブのところに戻ってAIを再設定されるんだよ」

 

「やだやだ、はなせあほ! たんさいぼー、めすごりら!」

 

「なんだとクソガキが!」

 

「いひゃいいひゃい! うわーん!」

 

 生意気なちびっこの頬をつねって引っ張ると、ちびエグゼは大声で泣きわめく。あれだけ大暴れしても中身は子どもということだ…しかし事情を知らない側からすると、幼子を苛めるエグゼという構図となってしまう。

 そこへたまたま通りかかったハンターにも、ちびエグゼを苛懲らしめる彼女の姿は単なる小さい子どもを苛める様子にしか見えなかった。

 

「こら処刑人、小さい子を苛めるな」

 

「いや、違うんだよハンターこれには事情が…って、待ちやがれ!」

 

 一瞬の隙をついてちびエグゼはエグゼの手から抜け出し、パタパタとハンターの方へと走り寄っていくとその胸に飛び上がってしがみつく。

 

「おーよしよし、かわいそうに。まったくちびっこを苛めるとは貴様も落ちぶれたもんだ」

 

「そいつはオレのダミー人形なんだよ! ストレンジラブのアホがちびっこで造りやがってよ、とにかくそのガキを渡してくれ!」

 

「ほう、道理で貴様に似ていると思ったが…」

 

「うーん…ハンターのにおいだぁ。ハンターすきぃ」

 

「はは、オリジナルよりも可愛いじゃないか。おい、この子と立場を交換してみたらどうだ?」

 

「なっ、ふざけんな! なんでダミー人形に主導権握られなきゃならねえんだ! お、おい…オレもお前に抱き付いていいよな?」

 

「少しでも近付いてみろ、顔面に強烈な蹴りをお見舞いしてやる。フフ、それにしても可愛いな…こっちの処刑人となら仲良くできそうだ」

 

「そりゃないぜハンター!」

 

 ハンターに抱かれるちびエグゼは勝ち誇ったようにほくそ笑む。可能ならすぐにでも鉄拳制裁をぶち込みたいところであったが、ハンターが睨みを聞かせている状況でそうもいかず、唸りをあげて睨むことしか出来ない。

 いつもエグゼに憎まれ口を叩き素っ気ない態度をとっているハンターであるが今はどうだ…ちびエグゼを抱きかかえ、柔らかな笑顔を向けているではないか。目の前の光景に激情を抱くエグゼに恐れをなし、月光たちも心なしか安全距離を保っているようにも見える…。

 

 そんな時、ちびエグゼは何かを見つけたようでハンターの胸からぴょんと飛び降りる。

 ようやく離れたかとホッとするエグゼであったが、ちびエグゼが走って行った先を見てゾッとする…すぐさま追いかけるも既に遅く、ちびエグゼはヘリから甲板上へと降り立ったスネークの懐へと飛び込んでいた。

 

 

 

「スネーク、スネーク、スネーーク!」

 

「ん? なんだこの子どもは…? おい、誰が連れてきたんだ?」

 

 

 飛び込んできたちびエグゼを抱きかかえ、スネークは周囲を見回す。

 

 ちびっこをとられて不服そうなハンター、なんとも言えない表情で成り行きを見守るスコーピオンとスプリングフィールド、困惑する月光…そしてボロボロと涙を流してぐずるエグゼだ。

 

「ぅぇ……スネークがとられたぁ……」

 

「何を泣いてるんだエグゼ? お前が連れてきたのか、どことなくお前に似ているが…」

 

「スネーク、じつはそのちびっこストレンジラブが造ったエグゼのダミー人形なんだ。かなり我が強くて大暴れしててさ…」

 

「なるほど、だいたい事情は分かった。今日からお前も俺たちの家族ということか」

 

「ちくしょう、もううんざりだ! 早くそのちびっこを寄越せ、もっとマシなダミー人形にしてやる」

 

 先ほどのハンターに続き、スネークに可愛がられる様子にエグゼは発狂寸前だ。強引に引き剥がそうとするもちびエグゼは必死にスネークにしがみついたまま、べーっと舌を出して挑発するちびエグゼを微笑ましく見守っているようだが、スコーピオンはそんな中である異変に気付く…。

 

 エグゼがスネークに執心しているのは周知の事実だが……そんなエグゼとスネーク、そして胸に抱かれるエグゼそっくりのちびっこ……どう見ても夫婦とその子どもにしか見えないじゃないか!

 

 この日、エグゼはスネークを好む人形たちにとって共通の敵となってしまうのだった…。

 




あわれ404小隊…伝説の幼兵の餌食になってしまった…


スコーピオン「あたしにもちびっこダミー造れ!」
スプリングフィールド「いい家族写真が撮れそうですね」
9A91「いよいよ時代が追いついた、私のちびっこダミーを100体造ってください」
ストレンジラブ「やったぜ」


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