G11の訓練期間も終了し、ここ最近は何ごとも無く平穏な毎日を送っているニート小隊こと404小隊。
416などはニートと呼ばれることに憤慨しているようだが、彼女自身も平穏な生活を謳歌しているので、むしろそんな反抗的な態度も相まってよく真面目なWA2000の標的にされやすい。
そのWA2000も、新兵訓練の教官任務が解かれたことに加え、戦場での仕事が増えてきたために今はいない。
もっとやかましい存在のオセロットも今は諜報任務で不在、スネークも戦場へ、エグゼは連隊の編成の最終調整でマザーベースを離れている…つまり、今のマザーベースには404小隊に対し口やかましく説教をするような存在がいないのだ。
さらに言うならば、部隊編成の影響でマザーベースには警備任務のヘイブン・トルーパー兵を除くすべての戦術人形が出払っている状態なのである。
MSF副司令のミラーはいるが、基本彼はUMP45らに甘く放任主義だ。
今は司令室に立てこもって、ここ最近増えてきた仕事の処理に追われている。
そう、今の404小隊は誰からの干渉も受けることのないフリーダム状態であった。
「うーん…極楽極楽…」
穏やかな海風が心地よいマザーベースの甲板にハンモックを設置し、G11が気持ちよさそうに寝ている。
隣では416が自身の銃を解体しメンテナンスを行っているが、傍にペプ〇NEXを置いてのんびり銃の整備を行っている…ちなみにだがマザーベースの糧食班が生み出したペ〇シNEXはカロリーゼロということで、体重を気にするスタイリッシュな戦術人形たちに大変人気だ。
コーラ好きのSAAはもちろんのこと、WA2000やスプリングフィールドも愛飲している。
「よし。G11、あんた銃の整備はやったの?」
「昨日終わらせたんだ。それより、45はどこ行ったの?」
「なんかヘリアンから仕事の依頼が来てたらしいわ。お願いだから手伝ってくれって、泣きついてきたって言ってたけど…」
「あのヘリアンが泣きつくとか、グリフィンも最近は大変なんだね」
二人は他人事のように話しているが、自分たちの本当の所属がグリフィンであることを忘れているのかもしれない。
それは小隊のリーダーもここ最近忘れかけていたようだが、何度もかかってくるヘリアンの依頼を今回は仕方なく引き受けるようだが…噂によると、ヘリアンがストレスで病院送りになったという話があるがはたして?
「あ、二人ともここにいたんだね。ちょっといいかな?」
そこへ、居残っていたUMP9が何やら機材を抱えて二人の元へとやってくる。
「G11ちょっと手伝ってもらいたいんだけどいいかな? あと416は前哨基地に行って、あの人たち呼んできてくれない?」
「あの人たちってなによ…まさかあのアホどもじゃないでしょうね?」
「アホかどうか分からないけど、45姉が必要だって。わたしとG11で次の任務に必要なものを用意してるから、ちょっとお願いね」
「気が重いわ…」
416にお願いされたのは|あの連中(・・・・)を呼んでくることだけだが、連中を嫌う416は心底嫌そうな顔をしている。眠そうなG11をさっさと引っ張っていっていくUMP9の背に悪態をつきつつ、416は重い腰をあげて前哨基地へと向かうのであった。
マザーベースよりヘリで移動し前哨基地へ。
基地はマザーベース以上に活発で、各地から搬入される資材や、戦場に送りだされる兵器や部隊が集まり喧騒に包まれている。そこは戦場ではないが、戦車の稼働音、行進する部隊の軍靴の音が響き戦場の空気を感じ取られる…ここを前哨として、世界中の紛争地帯へとMSFの部隊が派遣されるのだ。
「いつの間にこんな規模にね…まったく、45の判断も間違ってなかったわね」
正規軍に匹敵する武装、練度を誇る兵士たち。
整然と並ぶヘイブン・トルーパー隊の威厳は他にはないもので、新しく迎え入れる大隊長にも問題なく順応しているようだ。
精強な軍隊の勇ましい姿を横目に見ながら416が向かったのは、前哨基地を囲むフェンスの外、付近を覆う雑木林だ。
少し林を進んでいくとぽつりと建つ、古びれた木造の教会。
塗装が剥がれ、ツルが壁を覆うその協会はどこか寂し気な印象だ…しかし耳を澄ませば聞こえてくる微かな音色、教会から漏れる讃美歌の音色だ。
教会の扉の前で416は立ちすくみ、しんどそうな表情で扉に手をかけた…。
「お邪魔するわね…」
静かに扉を開けると、古びた木の匂いが416の鼻をくすぐる。
薄暗い教会内には蝋燭が灯され、窓から差し込む木漏れ日が教会内を照らしている。
「――――我らの救いの主よ、私たちを救いたまえ。あなたの御名の栄光を輝かせたまえ。御名のために、我らを救い出し我らの罪を御赦しください…」
聖書を片手に礼拝を行っているのはあろうことか人間ではなく、以前UMP45がアメリカ大陸より連れ帰って来た米国製装甲人形たちだ。
UMP45にハッキングされ、UMP姉妹を尊敬してやまない彼らの扱いにはMSFも困っていたようで、無駄なトラブルを避けるために前哨基地の外に隔離されている。
そのうち古ぼけた教会を見つけて勝手に住処にしたようだが、こうしていつも礼拝を行っているのだとか…。
「――――――――我らはあなたの民、あなたに養われる羊の群れ。永久にあなたに感謝をささげ、代々に、あなたの栄誉を語り伝えましょう」
邪魔をしてはいけなそうな雰囲気に、416はそっと扉を閉めて手近な椅子に腰掛ける。
見てくれはごつい装甲人形たちが教会で祈りを捧げるシュールな光景だが、讃美歌と共に流れる説教には神秘的なものを感じられる。
「――――目覚めて御力を振るい我らを救うために来てください。UMP45神よ、我らを連れ帰り御顔の光を輝かせ、我らを御救いください」
よく聞いてみると何やらおかしなフレーズが…まさかと思い視線をあげてみると、教会のイコンとなる十字架にかけられた人物に衣装が着せられて、顔の部分にUMP45の写真が貼りつけられているではないか。
ドン引きする416であったが、更なる異変に彼女は気付く。
礼拝堂のあちこちにUMP姉妹の写真が貼りつけられており、壁にあった壁画と思われた絵画は全てUMP姉妹の写真であり、それが何百枚も集まることで抱き合うUMP姉妹のモザイク壁画をなしていた。
「――――彼らの顔が侮りで覆われるのなら彼らは主の御名を求めるでしょう! 彼らが永久に恥じ、恐れ、嘲りを受けて滅びますように! 彼らが悟りますように…あなたの御名は"UMP45"! ただひとり、全地を超えて、いと高き神であることを!」
「「「「アーメン」」」」」
「うわ、なにこのカルト教団……あんたらねえ、はっきり言って気色悪い悪質なストーカーよ?」
「む! 異端者だ、異端者がいるぞ! 吊し上げろ!」
「え!? あ、ちょっとなによ! 止めなさい、わたしに触れないで…嫌!」
416の存在に気付いた装甲人形たちの行動は素早く、あっという間に取り囲んで縄でぐるぐる巻きにしてしまう。
そのまま天井の木材に引っかけられ、哀れ416は拘束されたまま礼拝堂につるし上げられる。
「ちょっとアンタたち! さっさと下ろしなさいよ、ねえ!」
「これより異端審問を開く。被告、416は異端者にも関わらず我らの聖域を穢し説法を盗み聞きしていたのである」
「「「有罪」」」
「ちょ、意味が分からないわ! さっさと下ろしなさい!」
「静粛に! 被告人についてはさらなる余罪もこの場に置いて追及する。被告、416は先日UMP45姉に対し悪口を言うなどの名誉棄損的な発言が見られた」
「「「ギルティー、有罪ッ!」」」
「そしてこれは最も忌むべき罪である! 被告、416は悪魔のような巨乳の持ち主である!」
「「「Go to Hell! Go to Hell! Go to Hell!」」」
「このクズ共…! いい加減離さないと承知しないわよ!」
睨みつける416だが、狂信的な装甲人形たちの雄たけびにかき消されてしまう。
さあこれからどう料理してやろうか、などと物騒なことを話しあい始めたところで礼拝堂の扉が開く…やって来たのはUMP45、外からの光に照らされるUMP45を神秘的なものにでも見えたのか、装甲人形たちは跪き頭を垂れる。
「あらあら、随分酷い目にあってるのね416」
「これもあんたの指導不足のせいよ! 早く下ろしてよ!」
「あら、それが人にものを頼む態度かしら?」
「くっ……お、下ろしてくださいUMP45さま…」
「素直でよろしい」
相変わらず腹黒いUMP45に心の中で激しく罵倒しつつ、ようやく416は解放された。
「もう、あまりうちの416をからかわないの。こう見えても優秀な隊員なのよ?」
「おぉ、流石は45姉! こんな使い道の無さそうな巨乳にも弾除けの任を与えるとは、なんと慈悲深い御方であろうか!」
「ちょっとなによ弾除けって! それに変な名前で呼ぶんじゃないわよ!」
「「「黙れ巨乳」」」
「こいつら…殺す…!」
口をそろえて罵倒する装甲人形たちに思わず銃に手が伸びる416であったが、UMP45がそれをなだめる。
いまだ怒りが収まらないのかイライラした様子で礼拝堂の長椅子に腰掛ける。
「落ち着きなさい416・こいつらがアホなのは私も分かってるけど、こいつらにも使い道があるの」
「例えばどんな?」
「うーん、そうね…弾除けとか?」
「親分が親分なら、子分も子分だわ」
双方の主張にあきれ果てる416であった。
それはともかくとして、このまま416とUSA分隊と仲が悪いままではいけないと感じたUMP45のとりなしによって仲直りが図られる。
416としては面白くはなかったが、USA分隊は他ならぬUMP45のお願いということもあり快く受け入れる。
仲直りの握手を交わす…そして始まる彼らによるUMP45の賛美。
「巨乳…じゃなかった416、貴様の存在は一応認めよう。45姉が主であるのなら、貴様はイスカリオテのユダだ」
「裏切り者じゃないの…まあいいわ、じゃあG11や9なんかはどうだって言うのよ」
「ふむ。G11は敬遠なる従者、9は主の使徒である天使と言ったところか」
「あっそ。で、45が神ってわけね」
「少し違う。唯一神である」
「こいつらもうダメだ」
「フン、異端者に45姉の栄誉はわかるまい。おい巨乳、あの壁を見て見ろ」
装甲人形の一体が指し示したのは何の変哲もない壁である。
本当になんの変哲もない、とくに装飾や仕掛けがあるわけではない…それでも何か意味があるのかと注意深く見つめるのだが、何も見つけられない。
意味が分からないとでも言うように首をかしげると、装甲人形は怪しく笑う。
「あのなんの変哲もない真っ平らな壁…我らはあれを見て45姉を思い浮かべることができる!」
「え? あ、あぁ…そういう…」
「フハハハハ! それだけじゃない、例えばまな板、ある時は断崖絶壁、またある時はベニヤ板など…全ての平面で45姉を連想できるのだ!」
「うおおおぉぉぉっ! 45姉ーーーッ!」
「U・S・A!U・S・A!U・S・A!」
「オレは地平線や水平線を見て45姉を感じ取れるぞ!」
「すべての平面は45姉に通じる! 巨乳死すべし、貧乳こそ至上! 45姉を崇めたまえ、唯一無二の貧ny-―――」
「黙って聞いてれば…好き勝手言ってじゃないわよッッ!」
「ぐふぉっ!?」
好き勝手言いまくる装甲人形に対し、ついに45姉がため込んでいた怒りを爆発させる。
それは416の目をもってしても見事と言わざるを得ない、鋭い前蹴りが装甲人形の下腹部を撃ち抜き、装甲人形は本来あるはずのない男の弱点を撃ち抜かれた痛みに身もだえる。
ダメージを受けた装甲人形がよろめき倒れ、そこをUMP45は踏みつけて追い打ちをかける…股間を踏みつけられ、冷たい目で見下ろされているその人形の顔が妙に恍惚としているのは気のせいだろうか? おそらく表情はないので気のせいだろうが…。
「貧乳、貧乳って…何が悪いのよ?」
「いえ、むしろ……イイ、です…」
「黙りなさい…! バカで、マヌケで、鉄くずの、役立たずが…図体だけでかいだけのポンコツが、こんな風に踏まれて情けないと思わないの!?」
「すげぇ言葉責めだ」
「羨ましい」
「我々の業界ではご褒美です」
「やかましい!」
「「「はい」」」
UMP45の喝に、踏みつけられている装甲人形以外は自然と整列し正座する…いや、できる限り姿勢を低くしてパンツを覗こうとしている…!
じろりと睨まれ、すぐに覗くのを止めたが…。
「もう我慢ならないわ…! アンタたち、しばらくここに監禁よ! 私が許すまで、一歩たりとも出ることを禁ずる! 通信で私に連絡をとろうとするのも禁止よ! もちろん9にもね!」
「「「「監禁&放置プレイッ!? ありがとうございます!」」」」
「416、もう疲れたわ…あんたの気持ちがよく分かった」
「そう…分かってくれたのならそれでいいわ」
「はぁ…ったく、腹の虫が収まらないわ。マザーベースに戻って今日は飲むしかないわね」
「私も付き合うわよ」
ちょっぴり、親密な関係になる二人であった。
ほんとはUSA分隊が戦場で大活躍するところを書いて終わるはずだったんだけど、これ以上やると二人とも疲れて死ぬので止めました。
それにしても我ながらひでえタイトルだな…。
次回辺りから、MSFとしてのお仕事を覗いてみましょう…つまり戦場です、ハイ。