METAL GEAR DOLLS   作:いぬもどき

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熱砂の砂漠:旧市街の戦い

 地中海より吹く強風が砂漠の砂を巻き上げ、砂嵐となり吹き荒れる。

 何もかもを砂で覆いつくすほどの大きな砂嵐だ、こんな嵐は風を通さない家屋などに立てこもりやり過ごすのが一番だ…だが、そんな砂嵐の中を進軍するMSF第二大隊の機械化部隊だ。

 送電線の警備にいくつかの小隊を割き、砂嵐に紛れて現在この地域で激戦地となっている旧市街へ向けて進む。

 ヘイブン・トルーパー兵は視界不良の砂嵐の中を、ヘルメット内に内蔵された視覚センサー及び通信装置を用い現在地を把握、砂嵐の中を迷うことなく目的地へと進む。

 

 途中、砂嵐の音に紛れ機械の動作音が聞こえてくる、装甲車両の中で部隊の大隊長であるMG5は時計を見て、それから友軍への通信を行った。

 

 

「時間通りだなFAL、ようこそ中東へ。戦車部隊の調子はどうだ?」

 

『早く月光の大量生産をしてもらいたいわ。まあ、戦車の操縦は部下がやってくれるから構わないんだけど。こちらの部隊は準備万端よ、Vectorが西側から旧市街を目指してるわ』

 

「了解した。砂嵐が晴れると同時に攻撃開始だ。旧市街にはプレイング・マンティスの兵士も展開している、誤射をするなよ」

 

『市街地に突入するつもりはないわ。戦車って市街戦に弱いのよね? 自走砲も持ってきたから砲撃が必要な場合連絡をしてね。あぁ、そう言ってる間に…砂嵐がおさまるわ』

 

 

 

 

 

 

 

 地中海からの風が起こした砂嵐がおさまると同時に、それを合図としていたプレイング・マンティス社側の砲兵隊が旧市街へ向けて砲撃を開始する。

 それに呼応してFAL率いる戦車大隊が攻撃を開始、旧市街を見下ろす位置にある丘陵地帯を占拠する反政府勢力へ砲撃する。丘陵の反政府勢力は戦車の攻撃とヘイブン・トルーパー兵の迅速な展開に対応できずあっという間に包囲殲滅され、戦意を失った兵士たちが投降したことで制圧を完了する。

 FALからの丘陵奪還の報告を受けたMG5の大隊は旧市街へと突入、既に戦闘を開始しているプレイング・マンティス社と合流し、旧市街に立てこもり徹底抗戦の構えを見せる反政府勢力と交戦を開始した。

 

 

「進め! 旧市街の広場まで奪還するぞ、行け!」

 

 

 MG5が前線に自ら立ち、兵士たちを率い進撃する。

 反政府勢力側の民兵はいずれも素人に毛が生えた程度の練度であり、精強なMSFの兵士やプレイング・マンティス社の兵士たちの前に劣勢に立たされている。

 だが彼らもこの場所を死守する構えであり、地の利を生かした攻撃と数的優位性をもって抗戦する。

 

「機銃手だ、面倒な場所に陣取っているな」

 

「どうするリーダー、あたしが部隊を引き連れて制圧しようか?」

 

「いや、待て。折角FALの部隊がいるんだ、潰してもらおう」

 

 旧市街を見下ろす位置丘陵を制圧したことで、MSFは旧市街の全てを砲の射程におさめることができている。

 これを利用しない手はない。

 早速、MG5は厄介な敵陣地への座標をFALへと伝え、砲撃の要請を行う。

 それから待つこと一分後、砲弾が空を切る音が鳴ったかと思えば、次の瞬間、MG5が見据える敵陣地に砲弾が着弾し爆発を起こす…が、その威力があまりにも大きく、飛び散る破片がMG5の傍まで飛来し、とっさに頭を下げるのであった。

 

 

「目標沈黙、だが威力があり過ぎじゃないか?」

 

『知らないわよ、そもそも戦車と自走砲の違いがよく分からないし。さっきのなんだったの?』

 

『2S7ピオン203mm自走カノン砲です大隊長、旧式ですが敵を撃破するのには現在でも効果的です』

 

『だそうよ、MG5。次に砲撃が必要な場合連絡を…っと、敵の増援が来たみたいね。戦車隊、迎撃するわよ!』

 

 

 どうやら旧市街へ向けて反政府勢力側の増援部隊が出現したようだ。

 ここからは砲撃支援は期待できない、そもそもFALの部隊は砲兵大隊ではないため、砲撃支援はそもそもやらないはずだったのだ。

 ここから先はさらに入り組む路地が増え、近距離での戦闘が頻発することだろうし、砲撃も有効に使うことは出来ない…近距離での銃撃戦が増えていくはずだ。

 

「一気に攻勢を仕掛けるぞ、広場を制圧する!」

 

 大隊長の号令の下、指揮下のヘイブン・トルーパー兵は入り組んだ旧市街へと怒涛の勢いで浸透していく。

 MSFの研究開発班が開発し改良を重ねてきた強化服は、彼女らの身体能力を強化するとともに、壁や天井に張り付く動作も可能にする。

 つまりは、ヘイブン・トルーパー隊にとって建物は障害物にはならず、入り組んだ路地も屋根上を移動することで敵を容易く迂回、かく乱し敵の裏をかく。

 

「今まで気にしていなかったが、ヘイブン・トルーパー…こんな存在を主力にできるとはな…」

 

 MG5が常日頃見ていたのは、平和なマザーベースを警備する彼女たちののんびりした姿であったので、この戦場で見せる彼女たちの一方的な戦いぶりに目を見張る。

 MSFが鉄血工造の工場を獲得して以来、生産され続けてきた彼女たちは人員を増してMSFの主力となったが、それは装備や本来の資質よりも、この部隊を一人で鍛えぬいたエグゼの手腕が大きな要因だろう。

 

「リーダー! 敵の防衛線が崩れた、撤退していくよ!」

 

「頃合いだな…月光を出すぞ」

 

 

 

 

 

 絶え間ない銃撃戦、劣勢を悟り後退していく反政府勢力たち…追撃を仕掛けるプレイング・マンティスの部隊に混じり、WA2000は絶えず旧市街の建物へと目を走らせる。

 彼女が狙うのは一人、"魔弾の射手"と呼ばれる反政府勢力側に雇われているというスナイパーである。

 今のところ狙撃を受けたという報告はなく、WA2000もそれらしき影は見ていない…が、絶えず何者かに見られているような、不愉快な感覚を感じていた。

 

「WA2000さん! MSF側の進撃速度が速過ぎます、こちら側がついていけません!」

 

 そこへ、M590が悲鳴に近い声で叫ぶ。

 どうやらMG5率いる大隊と足並みをそろえて旧市街を進軍するはずが、大隊の進撃速度が尋常ではないようで、プレイング・マンティスの部隊が遅れているようだ。

 当初の作戦では合流し、市街地の広場に攻め込むはずだったのだが…MG5も初めての大隊指揮で加減が分からないのか、それとも自分たちで旧市街を制圧するつもりなのか…おそらく後者だろう。

 MSFとの連絡役を任されているM590は味方の司令部から色々言われているのだろう、少々焦った様子でWA2000に訴えかけている…それについ苦笑いを浮かべ、彼女がかわいそうになってきたが、折角勢いのある部隊をわざわざ止める必要はない。

 それに、先ほどから聞こえる牛の鳴き声のような稼働音…。

 

「月光を動かしたのね、いいタイミングだわ」

 

「あの、あまり活躍され過ぎると我々の立場が…」

 

「MSFに助力を求めるということは、そう言うことよ。まああなたの気持ちも分かるわ、手伝ってあげる」

 

 それまで戦場を俯瞰し、サポートに徹していたWA2000はその手に銃を握る。

 噂に聞くFOXHOUND、MSFの至宝と言われる隊員の出撃にM590はおもわず目を光らせる…その目には羨望の色が見て取れる。

 プレイング・マンティスの部隊が足止めをくらっているのは敵側が陣取る5階建ての建築物だ。

 陣地破壊のため、ロケットランチャーが運ばれてくると言う話だが、到着までの時間が惜しい…遮蔽物から顔を覗かせたWA2000は建物の窓から狙う狙撃手を瞬時に把握、5階に二人、3階に一人だ。

 

「援護射撃を…」

 

「必要ない、建物に突入する準備でもしときなさい」

 

 敵位置を把握したWA2000は、そのすべてを視界におさめる建物へと足を踏み入れると、小窓を少し開きスコープを覗く…まず狙いを定めたのは3階の狙撃手。躊躇なく引き金を引き、放たれた弾丸は狙撃手の頭部を撃ち抜き始末する。

 素早く狙いを5階の狙撃手へ、狙われていることを知らないその狙撃手は今も下に隠れる兵士たちに銃口を向けている…敵を狙っている時、すなわち自分も狙われていることを意識するべし、狙撃手とはいえ所詮素人に毛が生えた程度…自分が言った言葉を裏付けするように、WA2000は容易く二人の狙撃手を片付けて見せた。

 残すは一人…同じ階の仲間がやられたのに気付いたのか、その狙撃手は窓を離れ離脱するが…。

 

 

「逃がすわけないでしょう」

 

 

 廊下をって逃げる狙撃手の姿が壁の向こうに消えると、WA2000は狙いを狙撃手が走って行く先の窓へと向ける…数秒待ったのちに引き金を引くと、一瞬遅れて跳び出した狙撃手の胴体を弾丸が貫いた。

 厄介な民兵の狙撃手は排除した、WA2000もすぐさまM590と合流し、建物内へと突入する。

 入り口に近付いた際に銃撃を受けたが、閃光弾を放り投げて敵の視覚と聴覚を無力化し、素早く制圧…一階の制圧はプレイング・マンティスの部隊に任せ、WA2000は階段を駆け上がる。

 

「M590、ドアを破壊して」

 

「了解!」

 

 WA2000の指示で、彼女は散弾銃の銃口をドアへと向ける。

 一発の射撃で手のひらほどの穴が開くと、すかさずその隙間から手榴弾を投げ込む…数秒後に爆発が起き、ドアを蹴破り内部へと突入する。

 

「…クリア、次よ」

 

 室内の敵兵は手榴弾の炸裂で死亡したらしい、それを確認し次なる目標に向かう。

 ちなみに今のWA2000は本来扱うライフルではなく、MSFから特殊部隊向けに支給された拳銃だ…戦術人形本来の銃以外を不自由なく使いこなす、そんな姿もM590にとっては新鮮な光景であった。

 

(それにしても、ナイフと拳銃を同時に構えるなんて…変なの)

 

 先頭を行くWA2000の、ナイフと拳銃を同時に構える独特な構えを気にしているM590であったが、すぐにその意味を知る。

 隣の部屋に近付くと、物陰から民兵の一人が飛び出しWA2000に跳びかかる…が、WA2000は一切動じることなく、跳びかかってきた民兵の腹に膝蹴りを叩き込み、腕を絡めとる。

 民兵の腕を固めて人質とし、部屋から現れた別な民兵を牽制する。

 仲間を盾にされている状況に民兵は攻撃を躊躇する、その隙をWA2000は見逃さない…盾にしていた男をその民兵めがけ突き飛ばし、倒れた二人の銃を即座に蹴飛ばした。

 

 丸腰で、銃をつきつけられた民兵の二人は両手をあげて降参の意思を示す…その後一階から上がってきた兵士たちに身柄は引き渡される。

 

 

「お見事ですWA2000さん、噂に違わない活躍ぶりですね」

 

「努力は怠らなかったからね。さて、そろそろ部隊と合流しましょう…あまり遅れるとこっちが危険だわ」

 

「了解、すぐに伝えましょう」

 

 

 M590より、プレイング・マンティス社の兵士たちに連絡がなされる。

 部隊はすぐに補給を済ませ旧市街の奥へと足を踏み入れていく…。

 

 熱砂の戦いは、まだまだ続く。




M590がママ属性だと初めて知ったw
なんかここではわーちゃんに惚れちゃいそうだけど…。

というかわーちゃん強くし過ぎた、おのれオセロットめ!


わーちゃんに関してですが、オセロットの理想に近付こうとするあまり、実は人形たちの中で一番ビッグボスに近付きつつあるという設定があります。
その設定が活かせてるかどうかはともかくして……いや、お母さんのザ・ボスに近付いているのか?
分からん。
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