せいけんづきの話   作:luckrock

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前回のあらすじ
 てらおかさんがびびりだったので多分地球滅びます。


結 てらおかさん、ぱんち

 流星の最接近まであと僅か。

 なんにつけても修行の季節である。

 まず、どんな状況が怖いか試してみよう、ということになった。

 

 それには多種多様な環境が必要で――故に遊園地である、と。

 

 真面目な顔で熊殺は言い切った。

 

 修行風景、そのいち。

 ジェットコースター。

 

 地上数十メートルからツイストしながら落ちてくるコースター。

 記念写真用の固定カメラのシャッターが落ちた。

(なんだこれ)

 巨人と一緒に、公開されているある写真を見た人がふとこぼす。

 少女が二人写っている写真。

 一緒に回ってくれることになった紙添さんは、泣きわめいてもかわいかった。

 てらおかさんは――

(すごく無表情)

「これは平気なヤツか……」巨人が呟いた。

 

 

 修行風景、そのに。

 お化け屋敷。

 

 出てくるお化けを総てあの妖星だと思え、といい含めて、女学生さんと弟子を送り出した。

 ふと、中から声が聞こえてくる。

 

(ともちゃんはさがっててください!)

(あ、あぶなーい!)

(ふぎゅ、み、みぎゃああああん!?)

(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいこれむりいい!?)

 

(熊せんせ―っ! ごめーんてらおかさんうごけなくなっちゃったー!)

 

 迎えに行った。

 など、など。その他、色々と試してはみたが……今のところ、芳しい結果は出ていない。

 

 

 ただ、少し。

 熊殺には、お化け屋敷の中での話を聞いて、少し、思うところがあった。

 

 この弟子、確かに、恐がりは恐がりなのだが。

(単純に、総ての脅威を恐れているわけではないような……)

 ああ、なんとなくわかりますと、紙添さんが呟いた。熊殺の背でうなされる少女の頬をつつきながら、

「つきこちゃん、どんどん先に行こうとしてたんですよ。怖がってはいたんですけど……」

 なお、結果的には行動不能なのだが。ばたんきゅー

「でもです」女学生さんは、年下の少女を見て笑いながら、

「でも?」

「でもでも。うん、この子、絶対私の後ろに隠れようとはしなかったんですよね。

 わたしが護らなきゃ、みたいな? うーん、ちょっとかっこよかったなあ。つきこちゃんがオトコノコだったら恋しちゃってたかも」

「ほほう」

 ちょっと面白そうに熊殺。

「だが、やはり修行が足りないな。このざまでは紙添さんは預けられん……」

「うーん残当!」ぷにぷに

 紙添さんは年下の少女の頭を撫でながら、 

「私が思うに、自分がコワイ!って思うものが、他の人のところにいくのが、いや、なんじゃないかなあ」

「……ふむ、なるほど。その認識、本人に自覚は……?」

「ないんじゃないですかね」

 まあ、この様子だしなあ……と、声に出さずに呟いた。

 そんな風に分析されてるとはいざ知らず、てらおかさんは寝苦しそうに、うーんうーんともちゃんにげてー、とか寝言を漏らしている。それを聞いて二人とも思わず苦笑してしまった。

 

「起きたら甘いものでも食べません? 頑張ってましたよ、つきこチャン」

 

「……そうするか」

 

 

 いくつかの修行がからぶった頃。

 熊殺は、休憩を入れることにした。

 てらおかさんの友人、紙添さんを呼び、また弟子の息抜きにつきあって欲しい、と頼み込んだ。

 

「頼まれなくてもそうしますー、なんか最近落ち込んでるみたいだし。

 それにしても熊せんせ―もすっかり弟子馬鹿ですねえ……ちょっとうらやましいなー」

「ん、弟子入り希望か?」

「ちーがーいーまーすー。もー」

「そうか。では、軍資金として、これを渡しておこう。使い切ってくれて構わない」

「あの、熊先生? まって、こんなに受け取れないよ! よくないよ! い、いいからって、え、ええ~!?」

 

 そういうことになった。

 いっぱい楽しんだ。今日のてらおかさんはボーイッシュで活動的な服装。脚線美かわいい。

 

 そしてその帰り道。

 

 また、あの交差点。

 また、あの街頭ニュースが、あの星のコトを流している。最接近は、近い。

 

 複数のブレーキ音。衝突音。悲鳴。

 

 そして、また暴走トラックが来る。

 大型車両の暴走であった。10トン積みのトラック。街中から現れたそれは郊外へ――少女達のいる交差点へ向けてブレーキが壊れたような勢いで突っ込んでくる。

 てらおかさんは。前回のショックも併せて思い出してしまって――

 動けない。

 

(――だめ。やっぱり、怖い――!)

 

 自己喪失の恐怖が、身を凍らせる――

 ふと、自分の体を保護するように回された、腕に気がついた。

(ともちゃん、さん)

 友人。女学生の。紙添さん。(あ、このままだと諸共ハンバーグ、かな)

 

 

 そして、いま、友人が、危機にあることを理解した。

 

 

(だめ。だめだめだめ)

 

 承服できない。受け入れられない。認められない。彼女が命を失うこと。怪我すること。脅威にさらされること。

 それは、自分の抱く死の恐怖を彼女も被ると言うことで、

 

(――それは、だめ。)

 

 ――その時、彼女はごく自然に、拳を握りしめたのだ。

 

 閉じていた目を開く。視界には、あの星に関する「ただの」ニュース、暴走する車両、街の風景、自分を守ろうとする友人の腕。

 問題なんて、欠片もなかった。

 

 封じていた力を解き放つ。

 月を握る、その万分の一にも満たない力で、そっと――――触れた。

 

 金属音

 ―――落着

 

 暴走していた車が、宙に跳んだのだ。なんの脈絡もなく、唐突に。空中で何回か縦回転し、車体前部から、落ちた。

 それは、落着まで総て無音。あえて言うなら顔面から車田オチして最後に力尽きたように、シャーシから反り返って破砕音を響かせた。

 

 詰めていた息を解く。

 てらおかさんは、知らず体勢を崩して尻餅をついた。動けない。腰が抜けている。

 浅く息をつきながら、自分に抱きつく友人を見た。

 大丈夫

 生きてる

 ふと、涙がこぼれた。

 

 

 紙添・朋子は元気が取り柄のごく普通の学生である。

 自称一般人の熊殺とは違って、正真正銘、ごくごくふつーの一般人である。故に、

 

(なあにこれー)

 

 現在の状況に、ちょっと思考が追いついていなかった。

 

 控えめに言って緊急事態ではあるのだろう。

 急ブレーキを踏んだような轍の跡。

 「なぜか」突如としてひっくり返った大型トラック。

 普通に考えれば、大惨事、であるだろう。

 辺りは騒然としており、警察や救急の車両も近づいてきている様子。

 傍には自分に抱きついて大声で泣いている年下の少女――てらおかさん。今日は活動的な服装で、これも中々似合っている。

 そして、大慌てでやってきて彼女らが無事と知るや、車田オチした車両から、素手でドアをむしり取って救助作業をしている顔見知りの通称「熊先生」。

 傷ひとつなく助け出される運転手を見ながら、確かめるように抱きつく少女を優しくあやしながら、そして、

 

(この子も大変だよね、また、こんな事故に巻き込まれるなんて)

(――まあ、熊先生いるし)

 

 特に問題ないんじゃないかな、なんて、巨大な背中をつい目で追いながら、無自覚乙女はそう思う。

 

 

 熊殺・鉄拳は仏頂面ながら、非常に嬉しそうだった。

 背中には、少年風の装いの少女が一人。腰が抜けた上に、泣き疲れたとかで、すっかり寝入ってしまっている。

 空を仰ぐ。

 やがて遠くない日に落ちてくる宙に笑う。

 

 星よ、彼女を見ろ。俺の弟子を見ろ。こいつの拳は――――今日、天に至ったぞ

 

 

 星が回る。日が進む。

 熊殺しの道場では、今日も真白い少女と怪人が丁々発止の変則組み手稽古。最近は、女学生の紙添さんも放課後よく寄って、少女と二人話し込んだり遊びに行ったり、中々ほほえましい様子。

 

 道場隅の古いラジオが、今日も掠れ気味のニュースを吐いている。

 ――流星、間近。

 天文台が算出した、流星の最接近まであと僅か。天気予報ではその夜は晴れるらしい。皆さん是非是非、この世紀の天体ショーをご覧じろ――

 

 つい固まったてらおかさんが、防御を抜かれて数回縦回転してから、地面に落ちた。

 

 慌てて駆け寄る紙添さん。特に怪我はなかったが、目を回している様子。

 熊殺は、ため息をついた。

 

 そして、その夜のこと。

 

 静かな夜だった。街の喧騒も遠いこの道場では、なおのこと。 雲ひとつない空に、巨大な月が浮かんでいる。薄暗く、仄青い月影が、辺りをぼんやりと照らしていた。熊殺は、縁側で月を見ていた。脳裏には、やはりあの星と少女のこと。

 ふと、背後から近づく、いつもの巨岩のような気配を感じた。

 真白い少女は、月に惹かれるように裸足のまま跳びだして、

 ぴたりと、中空に着地した。縁に座る熊殺の肩ほどの高さだ。地に足がついていない。そして、その状態に気づいてもいないように、じっと月を見ている。

 彼女が振り返り、彼を見た。手を、差し出す。そして、困ったように、笑った。

(……―――)

 熊殺は、その手を取った。

 

 人外少女に手を引かれて、大男は自分の足で空を登っていく。

 程なく雲の高さを超え、飛行機雲を見下ろし、丸くなっていく地平線を二人で見て――

 

 いつしか、大気圏を越えて、真空の最中にいた。

 

(息が出来る。便利なものだ)

 

 少女の持つ念動力の応用編であった。実際に歩いているわけではなく、力で作り上げた足場と、その周辺の大気ごと、滑らかに違和感なく上昇させているのだ。上昇は続く。お散歩も続く。そして、いつのまにか――

 

 月軌道。地上から38万km離れた宇宙の縁だ。

 

 ここから見えるものと言えば、無限の虚空に、青い星。時たま通る人工衛星。

 てらおかさんの誘う声につれられて、熊殺は興味深そうに周りを見ながら。

 少女が流れるデブリを飛び石のように渡りながら。

 歩いて行く。

 そんな二人の「夜のお散歩」は、やがて目的地に辿り着く。

 

 月だ。

 

 並んで座る。そうしてしばらく、冷たい虚空を背に浮かぶ、青い星を眺めた。

 自然と、あの星の話になった

 天文台の観測だと、逸れる。衝突せずに、ごくごく至近距離をすれ違うだけ、なのだという。

 だが。

 

「来るか」

「来ます」

 

 てらおかつきこは、この星の化身を自称する少女はそう断言する。

 視線を感じる。殺気を感じる、のだという。

 

「どこが美味しいかな、とか、どう殺してやろうかな、とかそんな感じの」

 怖い、と、星を見ながら少女が言った。膝の上で握った手が、震えている。

 そういった視線には、なるほど、熊殺も覚えがあった。

 数年前にあの街で起きた事件の時だ。

 

「てらおか」

 

 丁度周りに聞くものも居ないし、伝えるべきことを言っておこうと、師匠として思う。

 (後方、ぎりぎり視界の縁を掠める辺りに宇宙服っぽい影があるが、多分聞こえないだろうし)

 

「恐怖を抱く、それ自体は機能として間違っていない。それは、お互いの戦力差を正しく把握して、脅威を測り、戦況を予測していると、そういうことだからな」

 自分も覚えがある、とこぼす。

 少女はびっくりした様子で振り向いた。

 

「俺だって、死ぬかと思ったさ。おまえの問題は、――その時に動けなくなっていることだ」

 少女が飲み込むのを待って、

「ここから先は、どう恐怖を掌握するかってコトになるが……」

 詳しく説明しようとして――やめた。

 

「まあ、おまえなら、出来る。――なにしろ、俺の弟子だ」

 

 ぽかんとした顔(無表情)のてらおかさんの背をドヤして、熊殺は笑った。

 やるべきコトはやったと、安心させるような、男臭い笑み。

「まあ、にっちもさっちもいかなくなったら、明日のことでも考えてみろ。……案外、どうにかなるものだ」

 

 ドヤされてちょっとバランスを崩していた少女は、雰囲気不満そうに師匠を見た。

「……師匠の馬鹿」

「なんと」

 無表情ながらむすっとしたような雰囲気で文句をたれる。

「もーわかってないなー。こーゆーときは黙ってぎゅーっとするだけでいい……んだってトモちゃん言ってました」

「なんと……。じゃあベアハッグでいいか?」

 

 師匠の腕をぢっと見る少女。彼女の胴回りよりなお太いそれ。思わず真顔になった。

「それ、息の根が止まるヤツでは」

「そうだが」

「ぶー! けーち。師匠のけちー!」

「……うるさい」

「けーちー! もー。 じゃあ、師匠の時の話聞かせてくださいよ、熊殺しの話ー」

「………………。あまり、楽しい話じゃあないぞ。あれはー―」

 

 そうして、しばらく話し込むことになった。

 

 

 そして、結末がやって来る。

 翌朝、流星がその軌道を急激に変化させた。

 

 直撃コースである。

 

 「星食い流星」がやって来る。

 同胞()の血の味を覚えた同族食いが、真っ逆さまに降ってくる。

 かつて。古代において、杞という人が憂いたそのままに、

 今日、空が落ちてくる――

 

 

 破壊工作、失敗

 核ミサイル、届かず

 人類大混乱。

 

 

 総ての照明が消えた満天の星空の下、師匠が天を睨む。

 人のみでは抗いようのない、滅びの兆し。空が、宙が、星が落ちてくる。

 

 ――だが、まだだ。

 

 いま、落ちてくる空の下で、熊殺はそれを知っている。

 

 

 

――く。   くるなら、こいやあああ!

 

 死の恐怖に苛まれながら、彼女がそこにいた。

 

 月軌道上。

 

 てらおかつきこは星を見る。

 

 エーテルをかき分けて、こちらへと一直線に突き進む流星を。

 それは獣の星。

 同族を殺し、その血肉を啜らんとする死兆の星だ。幾つもの星を喰らい、その力は増大している。

 この星と比べれば、その差は丁度、華奢な少女と、血に飢えた大型の肉食獣のそれだろう。

 

 視線を感じる。同族に向けるものではない。エサを見る視線だ。この(少女)をどこから喰ってやろうかと、ただ食欲と悪意でもって測るそれだ。

 

 少女は震え上がった。本物超コワイ。

 ぎゅっと目を閉じ、縮こまってしまう。

(――ややややややっぱりこわぁい!? だだだだだめですこれ。動けない。死ぬ。ころされりゅ……!)

 やっぱり怖い。死への、獣への恐怖が体を縛った。

 にっちもさっちもいかなくなって、出る前の、師の言葉を思い出す。 

 

死んだ後(明日)のコトを考えてみろって、そんなこと言ったって――)

 

 (あれ)

 

 これまで我が身の心配ばかりであったけれど、ふと、師匠はどうなるのだろう、と。

 

 あのすっかり気に入ってしまった道場は。

 

 あの気のいい友人は?

 

 一緒に遊びに行ったあの場所は。

 

 それに、それに―――これまでこの()の上で続いてきた、その総ては。

 

(うん)

 

(それは――だめ)

 

 目を開く。

 背を伸ばす。

 月が通常軌道を外れ、完全に少女に掌握される。

 

 

 ()を握る。()を見つめる。交差軌道()を図る。

 

 

 星拳・月(少女の魂)が、目を醒ます。

 

 そして同時に、妖星が、衝突軌道、その最終段階へと進入した。

 

 

 ここからの結末は一瞬。

 星が真っ逆さまにかけ落ちて、

 月が唸りを上げて迎え撃つ。

 

 さあ、決着の時間(ショウダウン)だ!

 

 流星が一直線に激突へのルートを取った。。急所・秘所を真っ直ぐ食い破ろうとする、外連味のない殺害軌道。捕食者としての最適解。

 星を喰って取り込んだ力を、ほぼ総て、食い殺すその捕食器官に、仮想の顎門につぎ込んでいる。

 少女の、この星の力を総て防御に回したとしても、一瞬で食い破っただろう。

 他の星々も、抵抗したであろう冥王星もそうだった。

 慢心、とすら呼べない、単なる事実。

 

 だが。

 そう。

 

 ――それは、相手がこの星拳・月(この少女)でなければ、の話だ。

 

 今、月とはすなわち拳である。

 収束した力の塊。防御を捨てて、月の質量を合わせて、一点に集約したそれ。

 その一撃は、捕食器官の一番柔っこいところならば。貫くに、足る。

 

 足りるのだ!

 

 力を収束する。動作を選択する。

 

 それは、最初に習った動作。師に教わった最適動作。

 

 

 せいけんづき!

 

 

 カウンター!

 

(食いちぎられる前に、)

 

(その内部をぶっこ! わす!)

 

 少女に、獣を殺すことは出来るのか!?

 

 出来る。出来るのだ。

 

 あの男の技を受け継いだ、この少女なら!

 

 

 顎門を貫き、獣の頭蓋を砕くように、その拳は星をも砕く!

 

 

 爆砕した。突入コースに斜めに侵入したその()は、妖星のその三分の一程度を突入軌道の外へと弾き飛ばし。

  そして残る半分を、微塵に粉砕。返り血のように降り注ぐ微塵を、残心のようにまとい直した力が焼き尽くした。

 

 

 それは、地上から見れば、時ならぬ流星群。

 

 熊殺は、にやりと笑った。

 紙添さんは、友人達とその美しさに思わず喝采をあげた。

 各国天文台は月が星がと大騒ぎ。

 事情を知らされていた国のお偉方も、胸を撫で下ろして、椅子からずり落ちそうになっていたり。

 

 

 残心――

 月軌道上のてらおかつきこは、残心を説かぬまま注意深く辺りを探る。

 あの星の欠片は―――問題ない

 死に体となった残り半分は――しばらくは、軌道を制御する余力すらないだろう。

 次なる脅威は――いない。

 

 

 少女は、見開いて、睨みつけていた目を、苦労して閉じた。

 指の一本一本を剥がすように、握りすぎて血の出ている拳を解いていく。 

 同時に、集約していた力をゆっくりと解放し、月の制御を手放していく。

 

 真空の最中だが。深呼吸をひとつ。とたんに震えだした体を自身の腕でぎゅっと抱きしめ、

 足場にしていた仮想の地面にぺたん、と尻餅をついた。

 

「こ」

 

「こわがったあああああああああ!」

 

「もうやだああああああ! やだもうううううう!」

 

 ごろごろばたたぐすんぐすん

 お勤め完了。開放感からか、しばらくぐずっていた白い少女だが、ふと、思いついたことがあった。

 

(師匠がぎゅーっとしてくれないのなら、抱きついてしまえばいいのでは? お役目果たしたんだからそのくらい許されるのでは?)

 

 天才的な発想だ、と少女は思った。

 こうしては居られない。すっくと立ち上がり、地球を見下ろす。 

 跳んだ。

 大気圏を真っ直ぐに降りていく――帰って行く。

 

 

 こうして守護者はその最初の勤めを終えた。

 この後師弟がこの後どうなったか。お役目を果たしてテンション上げた少女がどんな風にアタックしたか。テンション上げすぎて月を片付け忘れていたこの人外少女が師にどんな風に怒られたか。

 その辺りはまた、別の話、ということになる。

 

 ともあれこの、師匠と弟子のはなしは。

 

 

 せいけんづき(星拳月)の話は。『星が月の拳を振る話』は、これにて幕引きである。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※本編中、月基地の方々には特に被害はありませんでした。


お粗末様でございました。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。
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