ダブルアップバディ~僕のヒーローアカデミアIF~   作:エア_

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俺に日常を書かせるな。どうせよくわかんねぇんだから(正直、拳藤ちゃん入れたからズルズルしなくてすむだろうなと思ったら凄く面倒くさかった)

待たせた挙句こんなんだからすまない。ちゃんと書くから。


俺の知ってる男女の下校じゃない。

 

 

学生の男女ペアが帰路を歩くとは、一種のイベントのようなものではないだろうか。

 

互いが互い、肌の近さを感じ意識しだせば頬を赤く染めて会話もたどたどしくなるもの。最後にはまたねなど言葉を交わせば家に帰るなり部屋へ一直線。枕を抱きしめ自分の不甲斐なさに悶えるのだろう。相手の反応や自分の言葉一つ一つに赤面し、日を跨いでも目が覚め興奮を抑えられないのだろうか。羨ましい限りである。

 

そんな絶賛青春を謳歌しているはずであるこのオウゴンハリフキダシは何故嫌そうな顔をしているのだろうか全く持って不思議である。

 

隣を歩くのは赤毛のサイドポニー。目もキリッとしていれば、幼さを残しながらも大人っぽさも兼ね備えた将来がとても楽しみである整った顔。制服の上からでもある程度わかるスレンダーなスタイル。だけども出るところは出ているという世の男の理想に近い少女が隣を歩いているというのに何だその顔は。

 

寧ろ少女は自分が悪いと思い苦笑している始末。気に障ることでもしたのだろうか……したのだろうなと項垂れる拳藤一佳を無視し、オウゴンハリフキダシはため息を吐きながら駅へと向かった。

 

昆虫の名前のようだが、オウゴンハリフキダシとは爆豪勝己のことである。

 

住宅街からビル街へと顔を覗かせば、周りの視線が二人へ注がれ爆豪勝己の眉間の堀が深くなる。その殆どが少女へ向けられていればそれもそうなるだろう。ナルシストというわけではないがこんな顔でも立派にヒーロー志望。自分が活躍したわけでもないのに周囲の目が集まれば苛立つのも無理はない。例え自分に集まったわけでなくともだ。

 

だが、何よりもこの少女、拳藤一佳が周りの視線に気づかない。というよりも自分がそういう好意的な視線を向けられているのを理解していないのが問題だった。おかげで文句も言えず、件の彼女から先ほどよりずっと話しかけられている。いい加減気づけと内心舌打ちし、早足で駅構内へと入っていった。

 

「入学式出てなかったけどどうしたんだA組。クラス揃ってストライキとか?」

 

「うるせぇ」

 

「そういうなよ。折角の縁だし仲良くやろう」

 

「仲良しこよしがしてぇならそう思ってる奴らとしとけや」

 

「うーん、なんとも強情な」

 

終わらない、引き下がらない、諦めない、の三拍子が揃った拳藤の絡みに爆豪はため息をついた。自分に懐かれる要素があっただろうかとまるで相手を犬や猫のように扱ってまで考えるほどには理解できていなかった。謂れのない疑いをかけられたことなら多々ある彼だが、こんな状況は初めてだと新鮮なこの反応に頭を抱えてしまう。

 

雄英へ来たのはヒーローになるため。誰かとつるんでお友達ごっこをしながらだらけて学園生活を送るためではない。幼馴染をサイドキックに携え、最強のヒーローとしてオールマイトやエンデヴァーなどを薙ぎ払い玉座にでも座って高笑いし、社会貢献で歴史に名前を刻んでやろうかとさえ思っているほどに彼の野心は頗る燃え盛っていた。だというのに何故道端の石ころ程度にしか思っていなかった者にこうも絡まれているのか不思議に思ってもしょうがない。何せ彼の周りにいたタイプがタイプだったからだ。

 

「別に仲良しこよしがしたいって……まぁ仲良くなるのはいいことだろ? いずれヒーローになって現場で一緒になった時とか寂しくないぞ?」

 

「寂しがる暇あんなら働けやボケ。俺は一人でも充分なんだよ」

 

「すごい自信。確かに爆豪は強いけど、それでも一人じゃ無理なときってあるだろ?」

 

「そん時はうちのサイドキック使うわ」

 

「既に独立してる体なのか」

 

「誰かの下につく気はねぇ。俺より下の奴の指示なんぞ聞けるか」

 

「確か入試の筆記は満点、実技もトップだったっけ。でも得意分野とかあるし、そういう場合にはその人の指示を聞かなきゃいけなくなるとか」

 

「ねぇ!」

 

「うわぁ即答」

 

観念してやっと話したかと思えば、なんとも色も花もない会話。これが青春を謳歌するはずの高校生の会話なのか。寧ろ爆豪は青春など送る気はさらさらないのだろうか。他者からの好意なんぞゴミ箱へ捨てちゃえとでも教え込まれたのか疑うレベルで他人を拒む爆豪勝己15歳。張り詰めた空気で3年間を過ごしたいと思っているのなら、まず彼は少し自分の身なりを確認してから物を考えるべきである。

 

「顔のパーツはいいのに、台無しだぞ」

 

「テメェに心配されることじゃねぇ!!」

 

この爆豪勝己という男、眉間の皺をとって静かにしていれば顔は良いほうだ。絶世のイケメンというわけではないし、いつも苛立っているように見えるため敬遠されがちではあるが、一度その顔が緩んだ日には何度もの女性が声をかけるほどに整っている。

 

彼の父親がデザイン系であり人との繋がりが必要な職業についているためか、そういう催しに参加することは少なからずあった。そこでスーツを着こなし大人しくしていれば、高額で身を包んだ女性達に囲まれるというもの。去り際に軽く手でも振れば、マダムたちは嬉しそうに手を振り返す。おいお前どこでそんな技を覚えた。

 

そんな人間が、無事に何も他者から絡まれることなく孤高に卒業できるなんて思っている時点であまちゃんである。世の中を甘く見下している馬鹿野郎である。

 

「どこまでも意固地だなぁ」

 

「うるせぇ。テメェは別クラスだろうが、自分のクラスでも世話しとけや」

 

「まぁまぁそう言わずに、あんた自身に用事がなくてもあたしにはあるんだよ」

 

「あん?」

 

入学式終了と同時に帰宅するからか、登校時よりも少ない人の駅の改札口付近。しかし地方の混雑時なみの利用者数に改めて圧巻された二人は、自然と足を止めてしまう。これより酷いのを毎日二回は味わえというのかと、早めに来たため東京の通勤ラッシュの恐ろしさを知らない彼は、たじろぎながら少女の方へ耳を傾けた。

 

「なぁ爆豪。一ついいか?」

 

「ンだよ。聞いてやっからそしたら消えろや」

 

「了解。そんでさ」

 

元々多くの利用者がいたのだが、個性の発達によってさらに大きくなってしまった都市の心臓ともいえるこの駅は、バリアフリーだ何だの関係で今では東京ドーム級の大きさになったとか。どうやって場所を用意したのか、金はどこから出したのかなど、当時の利用者ですら考えもしないそんな馬鹿みたいに広い場所。交差する通路やバカにならないほどのプラットホームの数。一度目にすれば圧倒されるその出で立ちに、入試の日に顎が外れそうになった拳藤は、自身記憶能力自体は割と高いほうだと思っていたらしく、どうやら覚えられない広さだったらしい。

 

「ここどこだっけ」

 

「ざっけんな!!」

 

近所迷惑も顧みず火を噴いたように怒りを顕にした男が羽をたたんでいた鳥たちの休息をその叫びによって台無しにしたのであった。

 

 

 

 

「いやぁ、ごめんな! あたし東京なんて来るの人生で2回目でさ」

 

「ガイドマップなんざ一度見りゃわかるだろうが!」

 

「無☆理!」

 

「死☆ね!」

 

あははと照れたように頭をかく赤毛の少女を、何でこんな事になってんだよと頭を抱える金髪爆発頭。プラットホームで何いちゃついているんだと周りの視線が痛く刺さるがそこはこの顔面凶器、ギロリと睨み返し辺りを凍りつかせ黙らせる。とてもヒーロー目指す奴の所業ではない。

 

そんな彼を他所に、どこかへ電話を掛け始めた拳藤。嬉しそうに話す声を聞けば、母親に連絡でもしているのだろう。もうすぐ電車に乗るという言葉を耳にすればやっと開放されると安堵のため息を吐きながら踵を返した。彼女は千葉出身のため、静岡出身の彼とでは番線が全く違う。次は無視しようと心の内で決定すれば、あとはすたこらさっさと消えるのみだ。

 

が、

 

「どこ行ってんだよ」

 

しかし、まわりこまれてしまった。

 

「離せモブ女。俺はこれ以上テメェの迷子に付き合う気はねぇんだよ」

 

「そう言わずにさ、電車もまだだし話し相手になってくれよ」

 

「こちとらテメェのお守りで2本逃してるんだが?」

 

「顔こっわ」

 

無表情であるというのに、人間とはここまで他者を恐怖させられるのだなと拳藤は感心しながらも目の前の導火線にたじろぐ。そこまで振り回した覚えはなかったが、目の前の男からすれば散々だったのだろう。疲労が見えるその顔、震える肩、何度も骨を鳴らしている手。そして止まらない貧乏ゆすりで鳴り響く靴と御影石のタップ音。短気な彼の器用な苛立ちアピールに苦笑を隠せない。

 

「悪かったって。なんかさっき会ったとき凄く辛そうだったからさ。悩んでる感じだったし。ほら、考えるのも馬鹿らしくなったでしょ」

 

「……」

 

「あんたはオールマイトより凄いヒーローになるんでしょうも。何悩んでるのか知らないし、本来こんなことするのは余計な御世話かもしれないけど。似合わないことはするもんじゃないよ」

 

「……テメェ」

 

真剣に話し出す彼女に爆豪は何も言えず、寧ろ頭の中に彼女の言葉が反復された。考えるのも馬鹿らしいとは確かにその通りである。幼馴染が自身の個性を黙っていたのも、彼にとってはどうでもいいことではないか。自分が守ってやらなければならない対象であることに変わりはないのだからと。

 

そうとなれば話は簡単だ。寧ろ前進と言ってもいい。個性を発現したというのならそれを利用しない手はない。戦闘の幅は広がるし、コンビネーションのレパートリーは以前よりもはるかに大きくなるだろう。自損の可能性があるなら今まで以上に自分が特訓してやればいいし、最悪自損して動けないのであれば回復のあいだ盾にでもなればいいのだ。結局深く考えることなんてなかったのだと自分の先ほどまで費やしてきた本当に馬鹿らしい時間に嘆いてしまう。

 

言いたくなったら聞いてやればそれでいいじゃないか、時間が来れば向こうから話しに来るはずだから待てばいいじゃないか。あいつにとって自分は唯一の理解者じゃないかと、帰り道ずっと抱えていたモヤモヤが霧散していく。そうなれば自然と眉間の皺も綻ぶというもの。

 

先ほども言ったが、この爆豪勝己という男、眉間の皺をとって静かにしていれば顔は良いほうである。絶世のイケメンというわけではないし、いつも苛立っているように見えるため敬遠されがちではあるが、一度その顔が緩んだ日には何度もの女性が声をかけるほどに整っている。

 

その顔は先ほどまで吼えていた男とはかけ離れていて、とてもじゃないが人の目が集まらないわけがなかった。所謂ギャップってことだな!

 

「これでも、あのときのことずっとお礼言いたかったんだ。すーぐいなくなってさ。だからこれで借りは一つ返したってことで」

 

「ハッ! 出会って少ししかたってねぇ男に尻尾振るたぁ、ケツの軽い女だな」

 

「何とでもいいなよ。これがあたしなりの借りの返し方って奴さ」

 

良い顔も見れたし。と言葉を残した彼女は、ちょうどやってきた電車にスキップしながら入っていく。中に入り身を翻せば、まるで友達に見せるような笑みとともに手を振って別れを告げるのであった。BAKUGO is dachi

 

勿論爆豪が手を振り返すことはないし、寧ろ舌打ちをするまで予想できるほど。彼は素直に礼も言わなければ、場所が場所でない限り愛想なんてクソ食らえ! な人間である。そんなことわかっているのか、拳藤も満足して扉前から席へと移動した。窓際から口パクでバイバイと最後に伝え、電車は駅から姿を消した。

 

「……もう考えるのはやめだ」

 

嵐のように消え去った女の顔を脳裏に焼き付けてしまった金色のライオンボーイは、本日何度目になるかわからないため息を吐き。プラットホームに備え付けられている階段を下りていった。不思議と怒りも何もかも消えた彼の穏やかな顔は、すれ違う者達を尽く振り返らせる。初めからそんな顔しておけばいいのに勿体無いやつである。

 

(どうせ、自分の個性すら研究し終えてねぇんだ。他の事にかまけるわけにもいかねぇか)

 

喉に詰まったものが消えたような気分になった爆豪は、ちょうど鉢合わせした幼馴染と共に同じ電車に乗った。静岡行きのため何度か乗換えをしなくてはならない距離ではあるが、そこまで時間がかかるほどの距離ではない。そのためか緑谷出久による必死の弁護? を延々と聞かされても苛立つことはそこまでなかった。結局何が言いたいんだお前という返答を持って黙らせてしまったのはまぁ別の話で語られるやも知れない。とりあえず言えることは、緑谷出久に文章構成能力はなかったということである。

 

 

 

 

時間が経ち、既に日が落ちた時間に新聞にまで載っていたゴミの消えた海浜公園に爆豪勝己は来ていた。その後ろには緑髪モンジャラの幼馴染。毛根が捩じ切れているらしい彼は首をかしげながらこのオウゴンハリフキダシの後をついてきたのである。

 

「マジでなくなってんな」

 

「10ヶ月間くらいかけたからね。正直思い出したくないくらい疲れたよ」

 

「それで連絡しなくて入試直前まで俺に捜索させたんだな?」

 

「いつもほんとうにありがとうございます!!!」

 

最敬礼を越えた90°の拝をやらかす幼馴染のM。もう終わったことだから別にいいけどなといいつつもネチネチ言うみみっちい男代表の爆豪勝己の機嫌をとりあえず損ねないようにしなきゃと思考をめぐらせた。お前ら本当に友達なんだよな?

 

「とりあえず、あのゴミの山を片したくらいだ。超パワー? が出てもおかしかねぇってことにしとくか」

 

「……え? 今なんて」

 

「こっちの話だ。とりあえず――」

 

海の方へ掌を向けた金髪ボーイが個性を発動させる。手の中心に熱と光が集まり収縮していく。手の指を折り曲げ指先から青白くバーナーのように個性を調整して放てば、第3中手骨の中に先ほどよりもさらに煌びやかに光が灯っていった。

 

「コンビとしての範囲も増えたんだ。俺もうかうかしてられねぇってこったろ?」

 

赤い光が白く変わり、そして青く変わっていくのを確認した出久の顔は、好奇心によって上がっていた口角を段々と下げていき、ついには驚愕で顔をゆがめていった。

 

「かっちゃん……何を」

 

「まぁ見とけ」

 

 

――その日、轟音と共に海浜公園の地形が変わる事件が起きたらしい。目撃者は一人もおらず、詳しく調べると、轟音とともに強烈な光が放たれたという情報が入った。直後確認に向かった住民によると、数秒の間ではあるが、直径10mほど球状に抉れた海を見たという。

 

翌日の朝刊やニュースでは大騒ぎになるほどの事らしく、それを見た出久が慌ててチャンネルを変えたこと以外、緑谷家ではおかしなことはおきなかった。

 

 

 

 

 

 




3回(も書き直したのに)書けるわけねぇだろ。

馬鹿野郎俺は書くぞお前。

って頑張って書いた。本当は痴漢にあう拳藤ちゃんを助けたりとか、ナンパに囲まれた拳藤ちゃんを助けたりとか、電車に乗ってハグしてしまったりとか書きたかったんだけど、それは本当に爆豪勝己なのか? と既に出久との関係をおかしくしてるくせに考えてしまったためボツになった。

よって拳藤ちゃんに助けてもらう形になりました。ありがとう姉御肌ちゃん。おかげで爆豪君は考えるのはやめたらしいから。


爆豪勝己は負けず嫌い。だから相棒に突然超パワーを発揮されたので、とりあえず俺も負けてねぇと新技を披露したらしい。おかげで地図の書き換えが起こったけどな!

この新技は多分体育祭で出るな。うん。

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