たわわなJKは肉食系が嫌いなので純粋なショタッ子に恋をします 作:青ヤギ
……言った。
言ったぞおおおおお私いいいいい!
お母さん! 亜衣はやりました!
ついに思い人に告白してやりました!
恋したきっかけを語ることにより、私の思いがどれだけ強いかを伝え。
しかも恋愛のお約束である《回想》を活用したことで、場の空気は一気に恋愛一色に!
このシチュエーションで告白をされて、心を動かされない男の子はいないはず。
さあ返事を聞かせて悠莉くん!
「あっ、そうなんだ」
冷めてんなぁ、このショタっ子。
「え、えっと、悠莉くん? 一応わたくし告白というものをさせていただいたのですが。さすがにその反応は乙女心が傷つくと申しますか……」
予想外の返事がきたおかげで敬語になってしまう。
おかしいなぁ。
100%成功したと思ったのに、悠莉くんってばまるで無反応である。
オーバーなリアクションはさすがにクールな彼に期待はしていなかったけど、できることなら頬を赤く染めるみたいなキャワイイ瞬間を拝みたかったのに。
「高峰さんの気持ちはわかったよ。理由も聞いて納得はした」
「そ、それなら、いい返事を聞かせてもらえないかなぁ?」
「“納得”と“受け入れる”は違うよ高峰さん」
悠莉くんはそう言って、ベンチから降りて、私に背を向ける。
華奢な矮躯でありながら、達観した大人のような貫禄を滲ませて、彼は振り向く。
そして。
「気持ちはすごく嬉しいけど……」
耳を塞ぎたい衝動に駆られる。
だって、その言葉の次はどう考えても……
「ごめん。高峰さんとは付き合えない」
お母さん。今夜はパーティーしましょう。
娘の失恋を慰めるパーティーです。
いっぱいご馳走作ってください。
あと、久々に甘えさせてください。
私よりも立派なそのお胸の中でいっぱい泣かせて。
いやね、もう本当、泣きたい。
超泣きたい。
「ぐしゅっ」
泣いていた。
しかも子どもみたいに鼻水垂らして。
「ぜ、ぜめて、理由を聞がぜてくれましぇんか?」
とても好きな人に見せられない泣き顔を浮かべているであろう私。
正直、顔を隠しながらこの場を去りたい心境だったが、やはり尋ねずにはいられない。
「も、もじがじて好きな人がいるとか?」
「そういう人はいないけど」
「な、なら、どぼぢて?」
「とりあえず、一回涙拭きなよ」
ボロボロと泣く私の姿にさすがに罪悪感を覚えたのか、悠莉くんがポケットティッシュを差し出してくれたのでありがたく使わせていただく。
やっぱり悠莉くん優しい。
だいちゅき。
でも失恋しました。死にたい。
「ずびーっ」
しかも、つい思いきり鼻かんじゃった。
ますます死にたい。
「ううぅ。悠莉ぐぅん。なんでダメなのぉ? 私のどこが不満~?」
往生際が悪いことこの上ない。
いい女なら好きな人を困らせないよう、ここでキッパリと吹っ切るべきなのに。
でもやっぱり、私は見た目が大人だけの子どもみたいだ。
聞き分けの悪い幼児みたいに、悠莉くんにしつこく縋りつこうとしてしまう。
そんな私にも煩わしい顔を一切浮かべることなく、どころか申し訳なさそうな顔を向ける悠莉くんは、やはり大人だ。
「高峰さん。そう簡単にYesとは言えないよ」
「……どうして?」
「だって、僕は高峰さんのこと何も知らないもの」
「それは……」
「よく知りもしないで付き合うなんて、そんなの高峰さんに対して失礼じゃないか」
悠莉くんらしい断り方だった。
遠目でずっと悠莉くんを見てきた私は、彼がどういう人なのかは多少なりともわかっている。
でも悠莉くんにとって、私は一度もお話したこともない相手なのだから、そう考えるのは自然なことだ。
だけど、だったら……。
「だったら教えてあげるよ、私のこと。これからたくさん、知っていってよ」
そうだよ。
ゼロから始める恋があったっていいじゃない。
付き合いながら、お互いのことをもっと深く理解していけばいい。
「だから、ためしに……」
付き合ってみようよ。
と言おうとする私を、悠莉くんは手を差し出して制した。
「高峰さん。『ためしに』とか、そういうのは一番いけない」
厳しい顔つきで、悠莉くんは言った。
「そんなの絶対、うまくいかないよ」
……うん、知ってた。
悠莉くんなら、きっとそう言うって。
誠実な彼は、軽々しいお付き合いを、とことん嫌うはずだって。
知ってた、はずなのにな、私。
……ダメだ。
フラれて当然だ。
恋は盲目っていうけど、本当に私、自分のことしか考えてないや。
初めての恋で、舞い上がってた。
これだけ好きなんだから、相手だってきっと好きになってくれるなんて、思い込んじゃった。
恥ずかしい。
情けなさを自覚して、私はようやく冷静になる。
「ごめん、悠莉くん。わがまま言っちゃって」
「謝るのは、全面的に僕のほうだと思うけど」
「ううん。悠莉くんの言ってることが正しいもん。だから……」
振り回してごめんなさい。
そう言って私は頭を下げた。
初恋は実らないって、本当なんだな。
勢いで押し切ればいけるなんて思っちゃったけど、早まりすぎちゃったみたい。
恋愛ってやっぱり、いろんなものを築け上げていって初めて成就するものなんだ。
横恋慕ばっかりして積極的に意中の人と関わろうとしなかったのが、私の敗因だ。
でもよかったじゃない。
初めて好きになった男の子が、悠莉くんみたいな人で。
いままで私に告白してきた男は、結局カラダだけが目当ての、下心が丸見えな奴しかいなかった。
でも悠莉くんは、最後まで真面目に私に向き合ってくれて、ちゃんと私のことを考えて、断ってくれた。
流れに任せて告白を承諾するような中途半端な人間とは違う。
本音を言えば、諦めきれない。
この先、悠莉くんほどに好きになれる男性と巡り合えるのかも、自信がない。
だけど、やっぱり好きな人の迷惑にはなりたくないから。
ここでキッパリ、終わらすべきだろう。
せめて、お友達に。
という言葉も飲み込んだ。
告白をフった側からすれば、それが最も困る提案ということを私自身がよく知っている。
負い目を感じる相手とその後フレンドリーに接するなんて、そうできることじゃない。
特に真面目な悠莉くんは人一倍、罪悪感をかかえるに違いない。
そんな風に彼の負担になりたくない。
だから口にすべきは。
「ありがとう悠莉くん。お話聞いてくれて」
感謝の言葉だ。
初恋をありがとう。
この思いは、きっと一生の宝物になると思う。
だからありがとう。
どうにか笑顔を作って、そう言うことができた。
結局のところ、強がりなんだけどね。
あ~。今夜は部屋で号泣するんだろうなぁ。
私が無理に笑顔を作っているのを、さすがに悠莉くんも察したのか、無表情の顔にわずかに哀愁の色が滲んだ。
「ごめんね、高峰さん。本当に、ごめん」
「ううん。気にしないで」
そんなに謝らなくてもいいのに。
余計、辛くなっちゃうよ。
「でも、僕と高峰さんじゃ、釣り合わないと思うから」
わかってるよ。
見た目は小学生だけど大人な悠莉くんと、見た目は大人だけど子どもな私じゃ、きっと迷惑ばかりかけちゃうのは。
でも、そうハッキリ言われると、さすがにキツいな……。
「
「え?」
私にとって聞き捨てならないことを、悠莉くんは口にした。
もしかして、悠莉くんは……
俯いていた顔を上げる。
悠莉くんと視線が重なる。
そこには、今日初めて見せる、悠莉くんの笑顔があった。
それは、とっても物悲しい笑顔だった。
「笑われちゃうよ? こんなチビが、彼氏なんて」
どうやら、まだ引き下がるわけには、いかないみたいだ。
だって、伝えきれていないもの。
私の好きになった人が、どれだけ、素敵な人なのかを。