re.真・女神転生 Ⅲ Biginning king of chaos   作:ブラック・レイン

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遅れて申し訳ない……


第3話 殺戮と脱出

本当は、あいつらのことなんてどうでも良いのかも知れない。

 

殺すと言われたことは何億回とある。殺意もおんなじ数だけ向けられた。初めは怖かったもんだが、そんだけ回数重ねりゃあ、そりゃ慣れるわ。

 

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おかしな話だろう?想像してみ?日頃友だと信用してる奴にいきなり、本気で殺意を籠められて『死ね』と言われたら……何かしら心の傷を負うもんだ。そうだろ?

 

かつて俺も二人から死刑宣告を告げられて殺しにかかられた時はそりゃあ言葉に言い表せないほど傷ついたもんさ。悲しかった、はずだ。

 

はずだ……ってのはもう覚えてないからさ。情けないことに俺はもうその『悲しい』という感情が分かんねぇのよ。どうだったかってのも記憶にない。

 

つまり、だ。もう俺はあいつらに何を言われようが心が痛まない。つまり俺にとってあいつらはもうどうでもいいのよ。

 

現実世界の未練はあいつらだけじゃないだろうって?

 

俺はもう現実世界のことをほとんど覚えちゃいない。自分がかつてどういう名前だったのかも覚えてないんだ。

 

どう表現したもんか。砂の城のようにどんどん記憶と、人間にとって大切な『何か』が崩れていくんだ。最初はこの事実に恐怖した。このままじゃ自分が自分で無くなってしまうってな。

 

だがこのループを繰り返していくうちに……ふと思っちまった。このまま自分を語る全てが、何もかも無くなってしまえば楽なのにって。だというのに、かすかに残った、あの世界の暖かさが忘れられないんだ。

 

あぁ……どうせなら……いっそ今の世界のように……本当に何もかも無くなってしまえばよかったのに。

 

そうすりゃ……俺は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんども思うが……忌々しいという言葉しか出てこねぇなこりゃあ……」

 

「まったく……ねッ!!」

 

ピクシーは人修羅の言葉に賛同しながら瓦礫の山にジオを放つ。最下級の魔法でしかないそれは、瓦礫の山に焦げ1つ作れずに消えた。

 

シンジュク衛生病院本院一階エントランスホール。本来ならばここに出入口がある。が、何者かがその出入口を瓦礫に埋めてしまっていた。

 

ただの瓦礫じゃない。それに加えて瓦礫を固定する魔法がかけられている。これでは掘り進むことも出来ない。

 

「あのエイは……前はどうしたっけ?」

 

「人修羅が三枚おろしにして、カハクがそれを焼き魚にしたわ」

 

「……ん?ピクシーとシキガミがジオ連発して黒焦げにしたんじゃなかったっけ?」

 

「それは前の前よ」

 

「あぁ……そうか……」

 

ポリポリと頬を掻きながら人修羅はぼんやりと思い出す。あの時はとっとと病院を出たい気持ちが強くてエイに……フォルネウスに一言も喋らせずに瞬殺したような気がした。

 

「今回もそうしたいなぁ……」

 

「今回もっていうか……もう99回連続で私達、あのエイを瞬殺してるわよ」

 

「……よく数えてるな」

 

呆れた声をあげる人修羅。『だってそれぐらい面白く瞬殺していくんだもん』とピクシー。

 

その間にも二人は歩みを止めない。道筋はすでに分かっているのだから止まる必要はない。

 

フォルネウスがいるのは分院のエントランスホール。その悪魔はそこで病院から出ていこうとする悪魔を皆殺しにしている。

 

で、あれば人修羅は今いる本院から分院に行かなければならないのだが、現在2つある本院と分院の通路は塞がれている。

 

進むためには二階の本院と分院を分けるゲートを開けなければならないが、そのためにはゲートパスが必要になる。そしてそのゲートパスは本院にいるガキ達が持っている。

つまり、まず初めに人修羅がやらねばならないのはガキ退治ということになる。

 

「現時点で俺のレベルがあと10あればなぁ……ゲートをぶち抜くという手段がとれるんだが」

 

「無い物ねだりしてもしょうがないでしょ?さっさと行くわよ!」

 

「ん……」

 

気の入らない返事をしながら人修羅は歩を速める。目的がはっきりしているなら、後は迅速に行動するのみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ここまで来たわけだが………」

 

人修羅とピクシーはとある病室の前にいた。病室から、『喰イテー』だの『マガツヒィ…』だのと常人が聞けば悪寒が走るようなうめき声が溢れていた。

 

間違いなく、件のガキ達がいる部屋だ。

 

「さて、いつも通りに頼むよ。ピクシー」

 

「はいはい」

 

ピクシーはそう言うとコホンと小さく咳払いし、病室に向けてガキそっくりの声をあげた。

 

「マガツヒ……持ッテキタ……イッパイ…アル」

 

「マガツヒ!!」

 

「食イテー!」

 

効果はすぐに現れた。知能の低いガキ達はピクシーの嘘にまんまと引っ掛かり、欲望の赴くまま食いつくように扉を開けた。

 

それが『作業開始』の合図となった。

 

「………!」

 

扉が開けられた瞬間、人修羅は目にも止まらぬ速さで病室に突撃、一番近くにいたガキの顔面向けて拳を振り抜いた。

 

グシャ!!

 

哀れ、扉から一番近くにいたガキの頭は弾け飛んだ。

 

残る2体のガキは突如の来襲に一瞬行動が遅れたが、目の前の侵入者を敵と認めるや否や人修羅に攻撃を繰り出す。

 

「………」

 

人修羅の思考は戦闘に入った時点で極限まで加速している。濁った金の瞳で敵の攻撃を見るや、速度を一瞬で予測、一番最初に攻撃が届くガキを蹴り飛ばす。

 

「グギャ!!」

 

悲鳴を上げて吹き飛ぶガキ。致命傷には程遠いが次に来るガキに対して反撃する時間は得た。

 

続くニ体目のガキの攻撃。小さいが鋭利な爪で人修羅の脇腹を狙う。狙い済ますガキの目は仲魔の仇討ちに走る復讐者の目ではない。空腹に飢えた、捕食者の目だ。

 

そういう手合の攻撃は人修羅にとって読みやすい。速度と力に任せた、単調な攻撃しか繰り出せない。

 

「シッ!」

 

「ギャ!?」

 

人修羅はガキの攻撃を掻い潜ると同時に足を払い、ガキを転倒させる。人修羅は転倒したガキに向けて足を振り上げると……

 

「ヘァアッ!!」

 

気勢とともにガキの頭を踏み潰した。

 

無表情の人修羅の頬に数的の血が付着するがそれに構わず最後のガキに視線を向ける。

 

「グ、ギギ……!」

 

蹴り飛ばされたガキはふらつきながら立ち上がる。壁に衝突した際に脳が揺らされたか。

 

ガキの目は憤怒に燃えていた。殺してやると言葉に現さずとも、凄まじいまでの殺意をありありと放っていた。

 

そしてガキは怒りのまま、人修羅に飛びかかろうと身構えた。その時だった。

 

ガクンと人修羅の首が右に傾いた。

 

その瞬間、一瞬前まで人修羅の頭があった場所に電撃が駆け抜け、ガキを撃ち抜いた。

 

「ギ……ア……ッ!!」

 

心臓部分を撃ち抜かれたガキは壊れかけの機械のような金切り声をあげながら絶命していった。

 

「ナイスアシスト」

 

「どういたしまして」

 

傾けた首を左右に軽く動かしながら人修羅はピクシーを称賛し、ピクシーはそれに答える。

 

人修羅は三体目に殺したガキの手からゲートパスをひったくるように取ると、それを上に掲げてまじまじとそのパスを見た。

 

「傷なし。曲がりなし……と。問題なく通れそうだ」

 

「それじゃ、ここからとっとと出るわよ」

 

「そうさな。あのエイをどう料理したもんか。考えながら行きましょうかね」

 

人修羅は無事なゲートパスをアイテムボックスと名付けている人修羅が作り出す謎の異空間に放り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは夢だ。薄れゆく意識の中、フォルネウスは目の前の現実を認められずにいた。だってそうだろう。七十二柱の魔神の一柱を担う自分がこんな、こんな惨めな最期を迎える訳がないのだ。

 

だとしたら……これはなんだ?

 

いきなり現れたこの悪魔は、何体も悪魔を従えていた。数にモノを言わせた作戦を行うその悪魔を弱者とフォルネウスは判断した。群れるのは、弱者の行うことだ。

 

だとしたら……これはなんだ?

 

電撃魔法を何発も撃たれるのは予想の範囲内だった。弱点をついてくるのは基礎の基礎だ。その後に前衛が突撃してくるのも予想の範疇だ。フォルネウスは前衛も後衛もまとめて得意の氷結魔法で一網打尽にするつもりだったのだ。

 

だというのに……これはなんだ?

 

電撃魔法を撃たれ、痺れて動きが鈍くなったのを狙ってきた悪魔はあっという間にフォルネウスの体を爪でズタズタに引き裂いたのだ。

スキルでも、魔法でもない。純粋な力のみでフォルネウスは八つ裂きにされてしまったのだ。

 

あり得ない……あり得ない!!

 

この病院にこんな化け物がいたことに気付かないなんてあり得ない!

 

フォルネウスは否定したかった。自分の死を、目の前の悪魔の存在を夢だ嘘だと否定したかった。

 

だが耳に残る悪魔の言葉が焼き付いて離れない。

 

「瞬殺百回目。おめでとう」

 

何のことかは分からない。だが心胆を底冷えさせる無感情なその言葉にフォルネウスは隠しきれない、底なしの残虐性を見た。

 

恐怖と戦慄に震えながら、フォルネウスはその意識を永遠に閉ざした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、つまんね」

 

「まぁ、楽しめるわけがないんだけどねー。飽きるほど相手にした相手なんだし」

 

フォルネウスの骸に胡座をかく人修羅とその肩に座るピクシーの言葉である。

 

二人は分院に突入したあと、そこにいた悪魔達を殺し、あるいは仲魔にしたあとフォルネウスを急襲、これを惨殺した。言葉にするのは簡単だが、シンジュクに出没する脆弱な悪魔にそれをやるのは至難である。

 

それを行った人修羅とピクシーはこのシンジュク衛生病院の主のようになってしまった。一言で言えば、この衛生病院にいた悪魔は人修羅とピクシーを恐れて逃げてしまったのだ。

 

「ここでのマガツヒ集めはもう期待出来ない。とっととシブヤに行きますか」

 

「そうね。私達には、時間がないものね」

 

「無限に繰り返す時間に閉じ込められているのに、時間がないんだもんな。笑えん話だ」

 

そう嗤う人修羅に肩をすくめて答えるピクシー。フォルネウスの死体の上に座してしなければ、仲良しの二人組といった光景だった。

 

その周囲で、人修羅が仲魔にした悪魔達はフォルネウスが溜め込んでいた宝を嬉々として集めていた。集めてくれたら、何割か譲ってやると人修羅が言った瞬間から仲魔達はやる気を出して回収作業に入ったのだ。

 

「あー、外に出たらチンに突っつかれる……」

 

「アイツらね……うるさいのよね。声が」

 

「あと羽ばたきな」

 

「バサバサギャーギャーとはっきり言って害悪なのよね……」

 

愚痴る二人だが、決してただ無為な時間を過ごしているわけではない。椅子にしているフォルネウスのマガツヒを吸っているのだ。椅子にしているのも、そうすれば体に触れている面積が増え、マガツヒを奪う効率が上がるからであり、決して死体を椅子にする趣味があるわけではない。

 

「人修羅~、集め終わったわよ~!」

 

そのうち宝集めのメンバーの一体である地霊 カハクが回収終了の声をあげた。

 

「こっちも終わるところだ……おっと」

 

フォルネウスの死体からマガツヒを抜ききるとフォルネウスの死体が溶けるように消え、その上に乗っかっていた人修羅がストンと床に落ちた。

 

「きゃっ!もう何やってるのよ~」

 

「すまん。ぼんやりしてた」

 

間抜けをさらすそんな人修羅を先程まで生きていたフォルネウスが見ていたらきっと目を疑うだろう。それほど戦闘体勢の人修羅とそうでない人修羅には差があった。

 

集めた宝から何割かを約束通り仲魔に渡し、残りをアイテムボックスに放り込むと人修羅はルンルン気分の仲魔達を率いて病院の出口に向かった。

 

人修羅のX回目の物語は、まだ始まったばかりだ。

 

 

 

 

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