名無し 作:名無しのR
薄暗く、冷えた古城の中を何人もの冒険者が歩いていく。先頭は金髪の小人族の男性でその後ろにドワーフの男性、エルフの女性と続いていく。自分達が歩いているのは牢獄で隣の牢屋にはもう息をしていない人だったものが静かに寝そべっているだけだ。生きているものはいないか、そう思い次の牢屋、次の牢屋と見ていくがそこにあるのは死体だけだった。あまりの光景に声も出ず、ただただ白い息だけが立ち上る。
やがて一つの牢の前に辿り着いた。中には口が鉄製の器具で封じられて、声も出せない。手枷足枷で歩くことも出来ない雪のように白い少年が木製の質素な椅子に座っていた。少年は目の前の存在に気付いたのか、顔を上げた。そして大層恨めしそうな目で、片方は開いていない目でを見た。
「生存者だ!!すぐ牢からだして手当てを!!」金髪の男性は叫んだ。直ぐ様、牢屋の鍵が壊されて自らを繋ぎ止める鎖も切れた。最初は物凄く警戒した。また拷問が待っているのかと、もう痛みすら感じてないと言うのにまだやられるのかと、警戒した。でも窶れて冷えきった身体でできることなんてなく、椅子からずり落ちていくだけだった。金髪の男性は少し仲間達と話したあと僕を簡易的な担架に乗せた。そこからは意識がない。
「ここは?」背中にあたるふわふわとした感触。長らくベッドに寝転がるなんてことは無かった。目の前に広がるのは見たことがない天井。僕はどうなって、、、すると扉が開く音が聞こえた。
「ああ、そう警戒しなくて良いよ」入ってきたのは金髪の小人族の男性。ニコニコと笑顔を浮かべながら入ってきた。その後ろにドワーフの男性、エルフの女性、赤髪の女性と入ってきた。
「ここはどこですか」金髪の男性に聞いた。
「ここはロキ・ファミリアのホームだよ」ロキ・ファミリアのホーム、ということはここはオラリオなのか?
「自己紹介をしよう。僕はフィン・ディムナでこのファミリアの団長だ」
「リヴェリア・リヨス・アールヴだ。このファミリアの副団長をしている」
「ガレス・ランドロックだ」
「ロキや。このファミリアの主神やで」この流れは自分が自己紹介をしたほうが良いのだろうか。でも、、
「名前は、、有りません。生まれつき、、軍で使われてきたので」痛々しい事実に皆が顔を歪めた。未だに自分の状況が分からなくて少し混乱しているとフィンが話した。
「丁度一週間前にラキア軍の陣地の古城を制圧しにいったときに君を地下牢で発見した。酷い状態の君を。栄養失調、低体温症、感染症、身体中に深い切り傷と身体中のほとんどの部分が複雑骨折をしていた。左目は既に失明していた」成る程、この人達は僕を助けてくれたのか。この人たちが助けてくれなければ早い内に死んでいただろう。すると赤髪の女性、ロキ(?)が口を開いた。
「なぁ。お前、ウチのファミリアに入らん?」ファミリアというのは軍みたいなものだろうか。だとしたら嫌だ。もう、もう苦しみたくない。僕を軍に入れて苦しませるくらいなら今此処で殺してほしい。小刻みに震えてそんなことを考える僕に答えるように、宥めるようにロキは言った。
「ファミリアっていうのはなぁ家族みたいなもんや。お前が考えてる怖いもんでないで。きっと気に入る」僕の頭を撫でながらそんなことを言った。
「本当、、ですか?」ロキは満面の笑みを浮かべて頷いた。
「もう僕を苦しめる拷問もないですか?」さっきと同じように頷いた。
「こんな僕でもずっと居れますか?」さっきよりもずっと笑って頷いた。
「もう一回聞くで、お前、ウチのファミリアに入らん?」ロキの方を向いて頷いた。上手く笑えてたかは分からない。しばらく表情を変えることなんてなかったから。でも自分は笑ったつもりだ。