名無し 作:名無しのR
「時雨たーーん!!ランクアップしたで!!」
嘘だろ!?あの程度でランクアップするのか!?ロキ様から渡された羊皮紙を眺めるが、そこには確かにレベル3と書かれていた。
「これで時雨たんにも二つ名がつくんか、、」
「そう言えば僕はさっきまでレベル2だったのに何で二つ名が付かなかったのですか?」
通常はレベル2に成ったら二つ名は付くらしい。
「時雨たんは違う都市でランクアップしとるからな」
そう言う理由か。ロキと話ながら服を着る。後ろからロキ様が迫ってきている。
「ロキ様。止めてください」
「えーー!!その腹筋触りたいーー!!」
くっきりと6つに割れた腹筋を見る。すると扉が開いた。
「時雨に変な事をしたら斬ります」
アイズだった。慌てて服を着て、部屋から出た。今日はアイズと一緒にダンジョンへ潜る約束をしていたから装備を付けに戻った。
装備を付け終わってアイズを待っているとリヴェリアさんが来た。
「時雨、ダンジョンへ行くのか。気を付けろよ」
静かに返事をする。するとリヴェリアさんは驚いた顔になったが直ぐに戻った。そうこうしているとアイズが居た。
「アイズも気を付けろよ」
二人で頷いてホームから出た。ホームから出ていく時雨の後ろ姿をみてリヴェリアは白髪の冒険者を思い出して言う。
「まさか、、な」
アイズと一緒にモンスターを斬り倒していく。野太い咆哮を上げたとしても数秒には黒い灰と輝く石に成っているだけだった。
「時雨、横、お願い」
見るとアイズの横にはオークが今にも斬りかかろうとしていた。アイズに返事をして、冷静に対処。一帯のモンスターを倒しおえてアイズに寄っていく。
「目標金額まであと何れくらいですか?」
「もう少し」
アイズと目標金額を設定してダンジョンに潜っているのだがもう少しらしい。意気込んでいる僕にアイズは近寄ると耳を撫でた。
「、、、、」
いい加減にしてほしい。変な声は出さないように頑張ったがくすぐったい。だが尻尾はフリフリと動いている。
「尻尾、、また動いてる」
それからは顔を真っ赤にしながらダンジョン探索を続けた。暫くして18階層のリヴィラの街に着いた。
「リヴィラの街に来たから水浴びして帰ろうと思うんだけど、、、」
「では僕は待っています」
アイズにそう言い、素材でも売り込もうと歩き出したがアイズに手を握られる。
「一緒に水浴び、、しない!?」
頭の中が真っ白になる。次に「アイズと水浴び」という文字が頭の中を網羅した。
「時雨は嫌だ?」
「別に嫌では無いですが、、」
じゃあ良いでしょ、そう言ってアイズは僕の手を掴んで湖に連れていった。着替えは流石に離れた所でして、湖に入った。
「、、、」
「、、、」
恥ずかしくて話す内容も思い付かない。
「時雨、、凄い体をしているんだね」
アイズが僕の体を見た。傷だらけの細い体だ。
「あまり見ないでください、、恥ずかしいです」
するとアイズが隣に寄ってきた。もう腕と腕がくっついている。
「酒場で言ったこと」
この際はアイズが僕の事を好き、と言ったことだろう。
「本当、、だよ」
この状況でそれを言われて取り乱した。
「僕も、、好きですよ」
湖の中に顔を突っ込んだ。何て事を言ってしまったんだ。勿論、本心だ。だから其を晒すというのは恥ずかしい嫌がってないだろうか。アイズの顔をみた。
「ありがとう、、。嬉しい、、!」
アイズの嬉しそうに頬を赤らめて笑うその姿が、何よりも綺麗で、忘れられなかった。
不思議なムードに成っていた水浴びも終わり、地上に着くと茜色が街を照らしていた。急いでギルドに換金してもらいにいくと、この間の白髪の冒険者がいた。アイズが換金している間に話そうと思って声を掛けた。
「こんにちは」
「あっ!!こんにちは!!」
すると白髪の冒険者は何かを決心したように僕に言った。
「済みません!!大変自分勝手なことを言っていますがお願いが有ります!!僕を訓練していただけませんか!?」
この人は強くなろうとしている。そして僕に教えを乞うた。なら教えよう。
「分かりました。でも決して弱音は吐かないで下さい。どんなに辛くても立ち上がってください。それは出来ますか?」
「はい!!」
即答だった。真剣で良い目をしている。
「明日の朝4時、市壁の上に来てください」
元気よく白髪の冒険者は返事をした。
「改めて、ベル・クラネルです。宜しくお願いします」
「改めまして、時雨です。宜しくお願いします」
ベルと名乗り合っているとアイズが来た。
「時雨、換金出来た」
ベルに一礼をしてその場から立ち去った。そして茜色の街を歩いている頃だった。アイズが唐突に言った。
「時雨、勉強教えて」
僕の教師デビューだ。
誰もが寝ている3時30分、僕は二対の刀をもって抜け出した。目指すは市壁の上だ。
少し早めに来た所為でまだ誰も居ない。そして胸から横笛を出した。楽器と歌は唯一許されていた趣味である。横笛の音色はオラリオの街へと流れていき、横風に掻き消された。
「時雨さん、遅れて済みません」
「まだ遅れてないですよ。僕が速かっただけです」
横笛をしまってベルの方を向く。
「初心者に一番効果的な練習法についてずっと考えてましたが戦うのが一番良いと判断しました。実際僕もこうして強くなりましたしね」
鞘のついた刀を構えた。
「遠慮は要りません。何処からでもどうぞ?」
「はい!!」
ベルがナイフで切りかかかってきた。それを避けながらアドバイスを言う。
「視野を広く」
「死角を無くして」
「楽に構えて」
ベルの息が上がっている。
「少し休憩にしましょう」
市壁の角に座ってベルと話す。
「やっぱり僕って才能無いですかね」
ベルが何だか申し訳なさそうに言った。
「そんなことはないですよ」
ベルは一つ何かを言う度に変わっていく。普通はこんなに吸収が早くない。
「普通は一回戦ったでけで変わることは無いのに、ベルさんはたった一回戦っただけで驚く程変わります。寧ろ才能はあるほうだと思います」
そう言うとベルは嬉しそうな顔に成った。ベルの疲れも癒されたようだし、また訓練を始めるのであった。