名無し 作:名無しのR
日の光が差し込む美しい部屋の中で四人の人が話していた。正しく言えば一人は人ではない。
「僕も気付いていたよ」
フィンが言った。その言葉に額を押さえながらリヴェリアさんは言う。
「時雨をよく思っていない団員がいる。しかも影で執拗な嫌がらせをしているとは」
場の全員が悩む。別に嫌いな人がいることは普通だし、嫌いな人がいない人間なんて余程の善人だ。でもそれを理由に嫌がらせをするのは違う。
「一つ良い案があるんやけど。時雨を嫌う団員と時雨をぶつけてみればいいんやないの」
ロキが言った。確かに良い案ではある。
「でもそれでは力の差が多く開くことになる」
確定で時雨が勝つ。あの剣姫を倒したのだから。
「それは分かっとるで、やから時雨を嫌う全員VS時雨ってことや」
フィンリヴェリア、ガレスの眉が動く。暫く考えてからフィンは言った。
「良いだろう。僕はこの案、賛成するよ
その後に続いて全員が賛成していく。
「よっし決まりやな。時雨には連戦にさせて悪いけど明日決行や。別に大した準備も要らんし行けるやろ?エリクサーとポーションもまだ全然あるしな」
全員が頷いた。
眠るアイズさんの横に椅子に座る。フィンさんも、リヴェリアさんも、ガレスさんも、ロキまで見つからなくて結局アイズさんを治療室に連れてきた。そしてアイズさんの横に座っている。別に僕が見ていなくても大丈夫だろう、と考えて立った瞬間寝言が聞こえた。
「いか、、ない、で、、時雨」
席に戻った。でも僕がいても出来ることは殆どない。暫く座っていると隣から声が聞こえた。
「時雨?」
目覚めたようだ。
「大丈夫ですか?」
アイズは体を動かして確認するが、特に異常は無かったみたいだ。
「うん。時雨が運んでくれたの?」
頷いて答える。アイズは少し顔を赤くしている。この状況に何故だか耐えきれない。
「無事なら良かったです」
そういって治療室から出た。すると他の冒険者が歩いてきて僕にぶつかった。わざとらしすぎて最早笑えてくる。
「おい、御免なさいはねぇのかよ」
しかもこの執拗な絡み。こんなことの何処に利点が有るのか、と聞きたい程馬鹿馬鹿しい。数日前から僕の部屋に変な手紙が入れられていたり、おおよそ原因は嫉妬だろう。この怒り方(?)は嫉妬だ。仕方ないから謝るか。頭を下げた。
「すいませんねー」
するとアイズが出てきた。
「時雨、何で謝ってるの?」
これは僕とこの人達の問題だ。他人は巻き込ませたくない。
「いえ。僕が前を見てなくてぶつかってしまったんですよ」
するとアイズは若干疑問を残したような顔をしつつ去っていった。
「本当にすみませんね」
いやー本当にすみませんねー。前を見ていないから貴方みたいな嫌がらせしか出来ない無能にわざとぶつかりに来られているの気付きませんでしたぁー。と言いたいが言っても無駄だ。どうにかしてこの人達纏めて叩きたいな。そんなことを考えているとフィンさんがやって来た。
「やぁ時雨」
この人がニヤニヤしながら話しかけてくるとは。絶対何かあるに違いない。
「アイズとの対戦も有って疲れているところ悪いんだが君には君vs42人の冒険者のバトルをやってもらう。拒否権は無いよ」
大体なにがしたいのか分かったな。この人は僕と僕に嫌がらせをする奴らをぶつけようとしている。多分アイデアを出したのはロキだろう。
「分かりました」
ここはあえて乗せられよう。あの人達を一気に叩ける方法探していたところだったし。するとフィンさんから羊皮紙が渡された。そこには細かにルールが書かれている。
「明日の午前10時からスタートだ。準備はしておいてよ?」
フィンさんに頷いて返事をした。
スケイルアーマーを着て、レッグホルスターにポーションをさした。本拠に有った防具で一番サイズ合ったのはこれだがまだ短い。アイズとの戦いで結構損傷したがまだ使える刀を腰にさした。準備が完全にできたことを確認すると部屋から出た。
対戦の為に用意されたのは中庭より二回りほど大きい庭だった。そこの中心に立って意識を整える。今回も全団員が見ているのだろう。暫く立っている沢山の人の歩く音が聞こえて立ち上がった。
「全員揃ったね」
フィンさんが言った。僕の目の前には沢山の冒険者達。その数42名。
「それでは、、、用意」
刀を抜いた。
「始め!!」
敵は3つに別れた。魔法で支援する後衛組、剣で戦う攻撃組、大盾で迫ってくる前衛組だ。意外と策は練られていて楽しめそうだ。大盾を持って迫ってくる前衛組に高速で直進していく。そして相手の盾を踏み台にして飛び上がった。飛び上がりながらくるくると回り、腰から弓と矢を取り出して構える。狙うは後ろで魔法詠唱をしている人達。大体18人位か。瞬時に撃っているが命中率がえげつないことこ観客達が沸いた。半分をうち終えると弓をしまって刀を出して、くるくると断頭台の様に落ちてきて真下にいる冒険者を斬った。
「駄目だ!!作戦2に変更!!!」
すると前衛組に変わって攻撃組が出てきた。これはリーダーを残しておくと厄介だから先に消そう。後衛組の後ろにいるリーダーを確認すると高速で進んでいった。まるで戦場に吹く突風の様に駆け抜け、戦場に迸る迅雷の様に戦う。42名の冒険者は各々震え上がった。今にもリーダーが消されようとしている。いや、消された。
「あとはただの掃除」
リーダーを潰せて良かった。丁度前には後衛組がいるからそこから掃除していこう。そんなことを考えた時だった。沢山の炎が僕の体を覆った。
「作戦2!!魔剣を出すぞ!!ぶっ壊れるまでぶちこめ!!」
更に沢山の炎。いくら受け続けても痛くは無いんだが、体は異常をきたす。段々と意識が遠退いていった。
「ほんっと弱いなぁ」
目の前の僕は僕に向かってそう言った。
「見ていてムカつく。ねぇ僕と変われよ」
変わるものか。意識を手放す前に舌を噛んで意識を戻した。取り敢えず体の至るところが黒く焦げているからポーションを掛けた。段々と直っていく。そして魔剣組を倒そうと駆けようとした、が其れを許さなかった。強力な重力魔法で動けない。先程じょ魔剣の攻撃で衰弱しきった体に思い切り力を入れると魔法はほどけた。するとまた脳内に声が響く。今度はもう一つの僕じゃない。
「全ての始まりの朝のように、闇を払い、人々を癒す光を我に与えよ」
脳内に響く声を声にすると、体が軽くなった。そして純白の光が庭を包んだ。
「闇と氷の時代は終焉を遂げ、全ての生物に希望をあたえよう」
先程の光で沢山の人が倒されたが、まだ半分は残っていた。そんな人達に大きな光の矢が飛んでいった。
「終わりが来れば始まりが来るように、朝が来れば夜が来る。この世に永遠など有らず、終焉を遂げるのが世の理」
光の矢でも倒れなかった人達が急に膝を地面に着いた。しかも物凄く苦しそうな顔をしている。さらに沢山の光が集まって、一つの大きな球体になると破裂した。もうそこには立っている人は居なかった。僕の勝ちだ。でも、体がくらくらして倒れこんだ。遠退いていく意識の中でフィンさんの叫ぶ声とリヴェリアさんが僕を抱き抱える感触伝わってききた。
治療室に運ばれて規則正しい寝息を立てる時雨の横にアイズが座っている。
「少しくらい、良いよね」
そう言って時雨の頭を撫でる。次に白くて大きい三角形の立ち耳を触った。傷だらけの耳はこれまでの過去を物語っている。すると時雨が寝言を言った。
「置いて、、かないで。独り、、になりたく、、な、い」
アイズは時雨を軽く抱き締めて言った。
「置いていかないよ。私はここにいるよ」
「アイズ?」
目覚めた。何とも言えない良い匂いがして目覚めると僕はアイズに抱き締められていた。当然嫌な気持ちには成らないがなんだかもどかしい気持ちになる。ふと、いい考えを思い付いた。あたふたと焦るアイズに抱きついた。
「一緒に居てくれてありがとうございます」
さらに焦るアイズだが、アイズを抱き締める僕の腰に手を回してきた。お互い恥ずかしくなって離そうとするがアイズが離れてくれない。
「時雨、私は居なくならないよ?」
「、、、ありがとう、、ございます」
突然目から水が出た。これが涙という物だろう。いま、僕は嬉しい。この気持ちは安心なんかではない。嬉しくなっている。そんな僕をアイズはずっと抱き締め続けた。