名無し 作:名無しのR
目覚めたと思ったらまた白い空間。僕が出てくるのか。じっと身構えるが、出てきたのは僕では無かった。
「そんなに警戒しなくていいよ」
出てきたのは黒髪の女性だった。
「もう一人の君は今日は出てこない。いや、一回乗っ取るのに失敗したから出てくる頻度は減ると思う」
それは良かった。でもこの人は誰なんだろう
「私はレン。精霊よ。貴方って自分の親、知らないよね?」
それを聞いて意味が有るのだろうか。
「実はね貴方ってかなり名の知れた貴族の末裔なのよ?」
何故、そうと言える。何故、会ったことも話したこともない貴女が知っている。
「それはね、私が貴女のーー」
開いた瞳に差し込んできたのは日の光だった。夢から覚めたようだ。顔を洗うと着替えて部屋から出た。
「おはよう御座います」
訓練場にはアイズがいた。挨拶をし合うと弓を構えた。昨日の治療室でのことから距離が近くなった気がする。でもアイズといるときの妙な胸の苦しさは何だろう。
「今日は弓なんだね」
実は昨日の戦いで刀が折れてしまった。そうしてアイズと話していると沢山の冒険者が訓練場に入ってきて僕の前に立った。よく見ると全員昨日戦った人達だ。そしていきなり全員が土下座をした。
「これまで本当にすいませんでした!!自分達、嫉妬してました!!」
驚いた。少し奥にいるアイズも目を丸くして驚いている。そして僕も土下座をした。
「昨日はやり過ぎてしまって申し訳ありませんでした」
あのあとかなりオーバーキルだとフィンさんに注意された。何故か二人供土下座している異様な状態にさらにアイズは動揺する。
「僕も悪いところがあったわけですしこれで手打ちにしましょう」
一番先頭で土下座をしている人の内ポケットに辞表と書かれた紙が入っている。
「だから辞表なんて書くのは止めましょうね」
そう言って訓練場から出た。そんな僕に早足でアイズが追い付くのであった。
朝食後、僕はリヴェリアさんに呼ばれていた。何を言われるのだろうと考えながら歩き、リヴェリアさんの部屋の前に着いて、ノックをした。
「時雨です。いらっしゃいますか」
「入っていいぞ」
失礼します、といい入っていく。リヴェリアさんの向かいに置いてある椅子に座った。何を言われるのだろう。
「単刀直入にいおう。お前の遠征の参加が決定した」
遠征というものについて、少しは聞いていた。でも参加できるのはレベル3に成ってからで僕はレベル2だ。
「まず、これまで三日間、二連戦だったが何れも勝利を修めている。しかも一回目の試合は3レベルも上で、さらにアイズとの戦いだ。二回目はレベル4、3の人も居る集団を相手に一人で戦って勝った。このことから、単数の強敵にも挑めて、多数のきょうてきにも柔軟に対応できると言うことからお前の遠征の参加が決定した。勿論、拒否することはできるが」
「行きます」
またとない機会だ。沢山の強い敵と戦いたい。
「では行くにあたって条件がある。まず、17階層にいるゴライアスを単独で倒してほしい。これはお前のランクアップのためだ。もう一つ。お前の強さだと半端な武器を使われると逆に駄目だ」
そう言ってリヴェリアさんは大きな袋を机の上に出した。
「この金で一緒に買いにいこう。最初はフィンとガレスとロキと私で出しあう予定だったのだが、アイズにも出してくれた。あと昨日お前と戦った集団がかなり出してくれた。暗に設立された時雨ファンクラブとやらのメンバーも沢山出してくれた。それとお前が戦った時の投げ銭を全て合わせて大体5億ヴァリスは有るだろう」
「そんな、悪いですよ!!」
そんな僕を見てリヴェリアさんは溜め息をはいた。
「お前のそう言う謙虚な所は良いところであるが、これは私達の厚意だ。厚意は受け取らないと逆に失礼だ。このお礼はお前が強くなることだ」
そう言われて少し困るが、ありがたく受け取ろう。そして今まで以上に強くなっていつか変えそう。
「済みません。出してくれた人を紙に書いていただけますか。お礼してきます。リヴェリアさん本当にありがとうございます。絶対に強くなります」
リヴェリアさんは僕を見て微笑むと紙を渡てくれた。全員にお礼をしにいったあとに武器を買いに行く約束をして全員のところへ向かった。
全員にお礼を言い終わって僕は部屋で服を選んでいた。お洒落してこい、と言われたのだが何がお洒落なのか分からない。結局、白い無地のワイシャツに黒いボトムスを着て、部屋から出た。
「来たか。では行こう」
リヴェリアさんから差し出しされてきた手を握って歩き出した。言いようもない気持ちになって尻尾が動いているのを見ると上品に笑った。
「可愛い奴だな」
そう言われて真っ赤になった顔を見て更に笑った。そうこうして歩いている内に石造りの建物に着いた。そしてリヴェリアさんと一緒に入っていった。
「いらっしゃいませ、、ってリヴェリア様!!」
エルフの店員が驚いたように言う。
「今日は何をしにいらっしゃったのですか?」
そう聞かれると後ろに隠れていた僕を前に出した。
「こいつの武器を作って欲しい」
すると僕に一人の神が近寄ってきた。
「お前、グレアノースの末裔か?」
グレアノースとは何か、首を傾げる反面リヴェリアさんは驚いていた。
「グレアノース、、まさか!!」
そしてまじまじと僕の顔を見て、目を見た。暫く見たあと、少し笑って言った。
「九魔姫、先程武器を造って欲しいと言ってたな。儂に造らせてくれぬか?」
「本当か!?」
何だか僕抜きで話しが進んでいるが、いい方向に話しが進んでいるならそれで良い。
「お前の得物はなんだ?」
「大太刀と小太刀です」
そう言うとさらにゴブニュと言う男神は笑った。
「分かった。刀なら特殊な製法を記した、極東の古書を持っている。期待していろ。急いで造るから大体一週間後に取りにこい」
礼を言ってゴブニュファミリアから出た。
ゴブニュの元に現れた白髪の隻眼の少年に重なるのは、彼に非常に良く似ていて刀を使う、壮年の男性。グレアノースの家系に絶対現れる白い、夜空の星のように斑に輝く綺麗な斑点。
「翠雨、お前の息子は生きているぞ」
リヴェリアさんと騒々しい昼下がりの街を歩く。
「時雨、何か食べたいものはあるか」
「ごめんなさい。始めて言いますが、僕は痛覚も死んでいますが、味覚も殆んど死んでいます。滅多に味と言うものを感じません」
「、、、、、、そうか」
物凄く申し訳なさそうな顔をする。何でリヴェリアさんがそんな悲しい顔をするんだ。何でそんな苦しそうな顔をするんだ。リヴェリアさんは悲しそうな顔で僕の頭を撫でた。
「ひゃあうっ!!!!」
耳を触られて変な声が出てしまう。そんな様子をみてリヴェリアさんは笑う。
「耳は、、止めて、、下さい」
頬を真っ赤にして言う、僕をみて抱きしめた。
「可愛い奴だな」
「んんんん!!!」
さらに変な声が出た。何も考えられなくなってリヴェリアさんに寄りかかった。
お前がどんなに悲痛な過去を過ごしていたとしても、これからは絶対幸せな過去にする、リヴェリアは密かにそう誓ったのであった。