名無し 作:名無しのR
黒い体に白い髪、見上げる巨体の咆哮が轟いた。僕は遠征に来ていて今は17階層だ。一人で立ち向かう僕の後ろにはリヴェリアさんや、フィンさん、アイズさん等がいる。
咆哮を上げる巨体、ゴライアスに向かって二つの刀を構えて走り出した。頭上から繰り出される拳を避けながら足下に走っていき、膝を蹴り、腹を蹴り、背を蹴り、と頭に向かって高速に登っていく。そして頭までたどり着いて、刀を頭頂部に突き刺した。再び咆哮が響き、鼓膜が破ける。刀を抜いて、頭を蹴って地面に下りる。
「
昨日の夜に覚えた魔法の名前だ。見ると僕の刀が青い雷を纏っていた。
「あの魔法、アイズと似ているな」
リヴェリアさんが呟いた。そしてまた僕の戦いに見入っていった。
ゴライアスを雷を纏った刀で切りつけていく。どんどんとゴライアスの体に傷が増えていく。このまま勝てるか、と思ったがそううまくはいかない。怒りを乗せた本気の一撃は僕に当たらずとも、異常な衝撃で空間を震わせ怯む。そんな僕の隙を見逃さずに僕を両手で掴んで投げるが空中で崩れた体勢を直し弓を構えた。矢筒から自作の、爆薬が仕込んである矢を取り出して大きく開いた口に五発程連続で打ち込んだ。大きな声で苦しがるゴライアスの頭まで登って、突き刺す。もう終わりだ。ゴライアスは倒れていった。そして地面に横たわるゴライアスに刀を向けて絶ちきった。
「予測はしていたが流石だ」
ポーションを耳に突っ込み、破れた鼓膜を治す僕にリヴェリアさん達が出てきて僕の頭を撫でる。
「大体20分か。一人でやってこの速度も凄いな。もしかしたらこんなのじゃランクアップしないかもな」
刀の使い心地は良かった。僕はフィンさん達に着いてダンジョンの深層へと向かっていった。
最初の方は会話が弾んでいたが、話す内容がとっくに尽きて、今では周りが無言になるなか、僕にエルフの女の子が話しかけてきた。
「すいません。時雨さん、ですよね?」
「そうですよ?」
そう言うと女の子は僕に挨拶をした。
「私はレフィーヤ・ウィリディスと申します。まだ話したことなかったから挨拶をしようと思いまして」
「ああ、すいません。普通は僕から挨拶をしに行くのが常識ですよね。僕は時雨です。名字は有りません。よろしくお願いします」
頭を下げる僕にレフィーヤさんはあたふたする。するとアイズが来た。
「二人とも、、、なに、しているの?」
「いえ、自己紹介をしあっただけですよ」
アイズさんが僕の話しを聞きなが頭を撫でる。そして耳を撫でた。
「ひゃうっん!!」
変な声が出た僕をみて、レフィーヤさんと、アイズが笑う。
「耳は、、、止めて下さい」
「でも、尻尾は嬉しそうでだよ?」
「本当ですね!」
後ろを見ると、長い尻尾がフリフリと動いていた。顔が熱くなって俯いた。
「可愛い、、、」
「可愛いです、、、」
俯いたまま歩いていると大きな広場に着いた。広場には山羊の頭を持つ怪物、フォモールが沢山いる。
「全員、攻撃開始!!」
フィンの合図とともに全員が走っていく。僕の周りには沢山のフォモールが寄ってきて、一体づつ確実に殺していく。するとレフィーヤの悲鳴が聞こえた。フォモールの斧が今にも降り下ろされる。フォモールの群れから抜け出してレフィーヤを襲うフォモールの首を落とした。
「時雨、持ち場を離れるな!!」
フィンさんの注意を無視して、レフィーヤの安全を確認すると、僕に着いてきたフォモールの群れに突っ込んで殺していった。
遠征の帰還途中、18階層で僕はフィンさんに怒られていた。
「なんで君が怒られているか、君なら分かるよね」
「はい」
少し冷静さを欠いていたかもしれない。あの状況ならもっとスムーズに対応出来た。
「君は強いから余りメンバーを困らすような行動は止してくれ。しかも君がレベル3になったらファミリアの幹部にしようと考えているところだ。いや、確定だ。もうすぐ幹部になるであろう君が冷静さを失った行動はするべきではない」
「でも先程のはレフィーヤの実力不足もあった。全てが時雨の所為という訳ではないだろう」
「そうじゃな。急な出来事でもあったわけじゃし、それに結局何も問題はなかったのじゃったらそれでいいじゃろう」
リヴェリアさんとガレスさんの助け船に感謝するが、冷静さを欠いてしまったという僕の落ち度は大きい。反省しながらフィンさん達のテントから出た。するとティオネさんとティオナさんに会った。
「あー。かなり怒られちゃった?」
「耳が垂れてるもんね」
案外落ち込んでいるのだろうか。僕の感情は尻尾や耳にはっきり出るから困る。げんなりしている僕にレフィーヤさんが走ってきた。
「さっきは本当に済みません。しかも私の所為で怒られていたさせちゃってすいません!!」
「レフィーヤさんに怪我がないのなら大丈夫ですよ」
とは言え尻尾は垂れ下がったままだ。
「けっ。そんな奴ほっとけ。強ぇ奴は弱ぇ奴に構わなくてもいいんだよ!!」
ベートさんだ。正直この人とはどう接すれば良いのかよくわからない。悪い人ではないのは伝わってくるのだが。
「あー!!ベートがレフィーヤ泣かした!!」
ティオネさんが寄ってきた。何だか騒々しくなってその場から離れた。暫く歩くと見慣れた金髪が見えた。
「こんにちは。アイズ」
「うん。こんにちは」
アイズの横に座る。
「ねえ、時雨は何でそんなに強いの?何でそんなに強く成れたの?」
「僕は強くないですよ」
ただ、一人に成りたくないだけの臆病者だ。
「ううん。強い。強いよ」
「、、、そうですか。ありがとうございます」
「で、何で?」
何で、一人に成りたくないから、居場所を失いたくないから、自分を自分として認識して欲しいから。捨てられたくないから。
「捨てられたくなかったからです。結局捨てられたのですけどね」
自嘲する。それしか僕には出来ない。
「私達は捨てないよ。絶対に」
アイズの決心するような表情を見る。
「ありがとうございます。今は強くなる理由が無くて。だか何度戦っても変化がないんだと思います」
アイズにそういうと立ち上がって。そろそろ移動の時間だ。
「全然倒せなかったー!!」
僕の横でティオネさんが文句を言っている。もうそろそろで地上だ。そして大きな広場に差し掛かった時、沢山のミノタウロスが居た。ミノタウロスにティオネさんが近寄っていって蹴り殺す。僕も刀を構えてミノタウロスを殺そうとするが、いきなり逃げた。
「逃げてんじゃねぇ!!怪物だろうが!!」
「絶対見つけ出して殺せ!!」
フィンさんの指示に従ってミノタウロスを探す。
「アイズ、見つかりましたか?」
首を横に振るアイズミノタウロスを探していると、僕と同じ白髪の少年がミノタウロスに追われていた。
「居ました!!」
アイズと一緒にミノタウロスに切りかかっていく。アイズがレイピアでミノタウロスの足を突いて、怯んだ隙に刀で首を落とす、と言う完璧な連携をする。そして隅で怯える少年に近づいていく。
「大丈夫?」
「大丈夫ですか?」
すると少年は奇声を発しながら逃げていった。
「済みません、アイズ。追い掛けます」
少年の跡を走っていった。
犬人の鼻を使って白髪の少年を追跡した結果、ギルドに着いた。案の定中に居た。
「見つけました」
「あ」
白髪の少年に話しかける。
「助けて貰ったのにすいません!!」
「いえいえ、頭を上げて下さい。アイズも別に気にしてなさそうでしたし」
少年は僕がアイズと呼び捨てにしている事に目を輝かせた。
「アイズ・ヴァレシュタインさんと仲が良いんですか!?」
「普通に良いと思いますよ」
「アイズ・ヴァレシュタインさんの好きな男性のタイプとか知りません!?女の子同士でそんな会話しません!?」
この人はどんな勘違いをしているんだろう。
「僕は男ですけど」
「、、、えええええええええ!!」
そんなに驚くことは無いだろう。流石に傷付く。
「では聞きたいんですけど、アイズ・ヴァレシュタインさんとはどんな関係ですか?」
「どんな関係、、、分からないです」
そう言ってギルドから出た。後ろで固まっている少年は放って置くことにした。