エセルは勉学を終え、王宮を一人歩いている所であった。
一人と言うと語弊はあるとは思うのだが、仕事中の侍女や見張りの騎士を相手にするとつい、仕事中であると思って、一緒にいているという感覚が薄れてしまうのだ。
だから、こちらを見て、礼をする者を見るとつい、こちらも礼を返してしまうので、王宮の中とはいえ大変だ。
勿論、彼らを蔑ろにしている、というわけではなく、常にこちらを見守ってくれている人達に対して誇れる自分であれるか、という話だ。
中々これに関しては、自分で納得がいく、というのが難しい物です、と思いながら、エセルは目的の場所に辿り着いたのに気付く。
そこは王宮の中においても神聖さが醸し出されている扉
父の方針で、王宮は最低限の華美を保っているが、この部屋だけは別だ。
何故なら、この部屋の中にある物は王ですら讃える物。
伝説を空想ではなく、現実に存在したのだと証明する物がこの部屋に安置されているからだ。
「────────失礼します」
周りの騎士や侍女に一礼をした後に、自分はその扉に手を当て、開く。
開いた先には、王宮の中だというのに、緑の匂いと色が、目と鼻を刺激する光景が広がった。
そこは水と花々に囲まれた一つの祭壇のような場所であった。
王宮の中でも咲くよう特別にあしらわれた美しき花園。
豪奢という言葉は人間を表す言葉だが、清廉という言葉は自然である事こそと説明するような花園のような場所であり────────しかし、そこは花園ではなうやはり、神殿であり祭壇と言われるような場所であった。
何故ならその中央には、見慣れている私ですら思わず息を呑むような聖剣が刺さっていたからだ。
装飾も決して派手ではなく、刀身もよくある白金の刃であるだけだというのに────────強制的に惹きつけるような煌めきがその刃には存在した。
思わず、ホッと息を吐いてしまう。
そうでもしなければ、ふらふらと近寄り、抱きしめかねない程の清廉さが秘められているのだ。
それこそ、周りの風景を飲み込みかねない、人や自然からでは発声し得ない、幻想の美。
銘をファルシオン────────かつて、英雄王が暗黒竜メディウスを倒すのに使った聖剣とされる剣であった。
そんな剣を前に……………………自分の父親であり現国王であるアルベルト王は立っていた。
「来たか、エセル」
お待たせしました、お父様、と答えようとした口は動かなかった。
何故なら、お父様が、誰にでも分かるくらい腕を広げて、さぁ、胸に飛び込んでくるがいい娘よポーズをしていたからである。
先に言っておくと、別に私とお父様は不仲などでは決してない。
むしろ、王族の親子としてならば、破格なくらい仲が良いとは思う。
しかし、だからと言って一応、年頃の娘が父とはいえ異性相手に抱きつくのは少々無理がある。
だけど、万が一という事もあるので、一応、エセルは聞いてみる事にした。
「お父様? そのポーズは何でしょうか?」
「決まっていよう────────さぁ、娘よ。この偉大なるパパの胸に飛び込んで来い………………!! のポーズだとも」
どうやら父はご乱心らしい。
歴代最高の賢王と謳われた父も、年月の重みには耐えれなかったのだろうか。
もしくは、父曰く、年を経る度に亡き母に似ていくな、とボヤいていたから、遂にボケて母と勘違いしたか。
あ、でも、娘って言っているから、つまり娘と理解した上でこれか。
いえ、まぁ、冗談なのは分かって入るのですが、冗談の中での本気が垣間見えるので、一言断りを入れてからツッコミを入れるか決めようと思い
「あの、お父様。別にお父様が嫌いとかいうわけではないのですが、流石にこの年齢で抱き着くのははしたないと」
「家族のコミュニケーションだ…………躊躇う理由があろうか……………………!!」
これは駄目ですね、と思い────────持っている本の一つ、ウィンドの魔導書を手に取る。
「風よ…………」
本に触れ、込められた精霊の力に願うように祈るとそれに呼応するように一瞬、魔導書が光り────────眼前から無形の風が衝撃波となってお父様の顎を見事に撃ち抜いてしまった。
あ、と焦るがもう遅い。
顎を見事に撃ち抜かれたお父様は一瞬、時が止まったように硬直し……………………数秒後にドサリと倒れてしまった。
やり過ぎた……………………とは思うが、本当にどうしたものか、とおろおろしていると
「ぐ……………………む……………………み、見事な魔導の使い方、だ…………流石、は、自慢の娘……………………」
流石の頑丈さに感心しながら、ふるふる震える父に対して、苦笑しながら首を振る。
「まだまだです────────謝って、つい、痴漢退治くらいの出力でお父様を撃ってしまいましたから」
何故か父の顔色が真っ青になっていくが、小首を傾げると何でもない、と応じるので大丈夫だろう。
「お父様。呼び出した要件は何でしょうか?」
「ふふ、父が娘と会話するのに要件が必要か?」
「いえ、執務のサボりがばれたら、ヒューズさんにまた叱られるのでは?」
「…………………………………………大丈夫だ。何も問題ない」
随分と間が置いてからの大丈夫であったが、本人が納得したのならばいいのだろう。
ならば、結局、此処に呼び出したのは本当に親子として会話したいからだけなのだろうか、と思っていると
「────────先日、抜け出した時は楽しかったか?」
ああ、その話か、と思い、エセルは素直に頭を下げ、謝意を告げた。
「────────勝手に行動して申し訳ありません。ただ、あの時、私に助力してくれた皆さんは私の願いを聞いて頂いただけなので、責任は全て私に……………」
「────何。一人娘のお転婆の一度や二度、許せぬ程、狭量になった覚えはないとも」
苦笑の響きを聞き届け、顔を上げると父は何時の間にか再び、聖剣の方に体事、視線を向けていた。
だから、私もそれに合わせるように父の隣にまで移動し、聖剣を見る事にした。
何度見ても見飽きない美しい宝剣。
これが生み出されてどれ程の年月が経ったかは、歴史書を引っ繰り返しても、明確な時期を割り出せないが、少なくともこの国が出来た当初からは既に存在しており、軽く数百年は存在している事だけは証明されており────────そして一度も抜かれた事が無い、との事らしい。
「────聖剣ファルシオン。彼の偉大なる英雄王マルスが暗黒竜メディウスを滅ぼすのに使った神剣。そして、今はただ飾られるだけの宝剣だ。歴代の王は元より私や、お前が抜こうとしても抜けなかった選定の剣────────逆説的に考えれば、私は王か、英雄には成れる器では無かった、という事なのかもしれんな」
父の言葉に思わず、父に視線を向けると父は何時もの顔のまま────────酷く疲れているような影を出しており、思わずといった形で私は父に言葉を作った。
「お父様は立派に務めを果たしております。お父様がその事を誇りにせねば────────今も傍にいるお母さまがお怒りになられますよ」
「────────そこで、妻を出されたら頷くしかないな」
私の言葉でようやく顔に笑みを作ってくれたことにホッとし、出来る限り自然体で父を笑わそうと言葉をつづけた。
「お母さまの事です。弱音を吐いたら、それこそ"まっ。貴方がそんな有り様になったら、私は王の器ではない男の妻となった見る目のない女になるって事ですか?"と苦言を口にしますよ?」
「おお………………再現度の高い言い回し…………………夢に出てきそうだ…………!!」
今度こそ心底から笑って頂いたので、安心して父の顔を見れる。
それを理解したのか。
父は今度はファルシオンにまるで負けぬように視線を真っすぐに向け
「ああ、その通りだ。私は己が成せる事を成して、民に恥じぬ王の道を進んできたという自負がある。無論、全てが完璧に行えたとは思わないが────────民を思う気持ちだけならば、彼の英雄王にも負けぬ、という気概を持って、この人生を歩んできた」
娘である私ですら思わず、胸の奥が熱くなるような言葉を父は今、ファルシオンに向かって語った。
まるで、このファルシオンこそが自身が挑む敵なのだ、と言わんばかりの態度に、エセルは逆にそれでこそ、と思う事を己に許した。
聖剣ファルシオンが偉大な武器である事は理解しているつもりだし、英雄王マルスが歩んできた道に畏敬の念を覚えない、というわけではない。
だけど、それを理由に今を懸命に支えた父の方を尊敬しない理由にはならないのだ。
「はい。お母様もお喜びに────」
「────だが、そのせいで、私は、お前を幸福にしてやれん」
無理矢理に言葉を途切れさせられた私は、再び父の顔を除き見ると、父は苦い笑みを浮かべて、私を見ており
「…………もしも、お前が、この前、彼と密会した時……………彼と一緒に逃げ出していたならば、私は王として連れ戻そうと画策し……………父としてはそのままどこか逃げてくれても構わない、と思ったやもしれん」
父に言われた言葉を脳内で反芻し、言いたい事を理解した。
確かに、状況だけ見ればそんな風にも見えたかもしれない。
帰ってきた騎士に、まるで不幸なお姫様のように会いに行き、私をどこかに連れ去って、と願う。
まるで童話のような流れである、と思い、敢えてそれを無視して、その先の未来を思う。
成程。それは確かに、もしかしたら所謂、幸せの未来なのかもしれない。
女として全てを預けてもいい、と思える人に寄り添い、家庭を築く事が出来るかもしれない。
が
「────────そんな事をしたら、私、きっと心の底からは笑えない、罪悪感に満ちた人生を歩むと思います」
今度は私の言葉に振り返り、こちらを見る父に、私は出来る限り、自然の笑みを浮かべ、己の心を明かす。
「私は今の私を誇っています。父の娘として、母の娘として生まれた事を誇りに思っています。例え、今のまま、生まれを選ぶ権利を得たとしても、私は迷いなく、お父様とお母さまの娘として生まれる事を望みます」
何故なら
「だって────────私の人生は幸福に満ちていました。母が早くに亡くなった事だけは悲しかったですけど…………………でも、それも父が私に笑みをくれようと頑張ってくれましたから、あっという間に笑えるようになりました」
だから、大丈夫です、と伝わって欲しい。
これまでの幸せを支えてくれたのが父であり、母であり────────国であるという事くらいは理解している。
だから、自分はこれでいいのだ。
初恋の人と一緒になる事が出来ないのは辛い事だろう。
何時か、その事に泣く日が来るかもしれない。
だけど、その時は母を亡くした時のように、父が、いや、今度は自分で自分が笑えるように努力をするから。
だから、だから
「エセルはもう大丈夫です、お父様」
「────────」
娘の笑みに、アルベルト王は心の底からの驚きと共に瞠目した。
もう大丈夫、と笑う娘の笑みがどこかで見た事があって────────亡くした妻が浮かべてくれた一番見たいと思っていた笑みにそっくりで。
過去と現実が視界で混ざる。
今はお父様と呼ぶ少女が、舌足らずにおとーさん、と小さな体で自分の足に抱き着いていた時を見ながら、今は立派な淑女となった娘の姿を見る。
そんな風に過去と現実を見比べて、ようやく自分の娘がここまで成長したのだという、当たり前の事実に気付き、思わず、呟く。
「……………………もう、大丈夫、か」
「はい。もう貴方の娘は甘えるのが恥ずかしくなる年になってしまいましたから」
中々な冗談に苦笑しながら、娘の顔でも聖剣でもない、空を見上げる。
そこはステンド硝子で英雄王マルスが聖剣ファルシオンを手に入れた時の光景を想像で形作らせた物があったが、今はそんなのどうでもいい。
見るのは今は空の上にいる亡き妻だ。
もしも、今の娘の言葉を聞いたら、妻はどんな顔をするだろうか。
……………………いや、君の事だから、きっと………………
両手を腰に当て、勝気な笑顔で、どうですか? 私達の自慢の娘は? と言うだろう。
全く……………………女性には勝てないな、とは思うが、それ故に男として、父としてならば、と思う事がある。
そんな娘を、応援するのが私の役目か
空を見上げていた視線を再び、目の前に刺さっているファルシオンに目を向ける。
輝きを保った剣は、しかし、こちらにはまるで見向きもしていないようにも思えたが……………………今の自分には鼻フンをする余裕があった。
過去の光よりも、今の
エルスは神は実は信じてはいないが、天罰、だけは信じてもいいかもしれないっと現状を見て、思った。
「さぁ、諸君………………!! 今こそ最強を決めるためのパーティの時間だ………………!!」
壇上の上で、叫ぶは我らが賢王、アルベルト王。
物凄くテンションを上げて、腕を振り上げるまでがワンシークエンスだが、それにおぉぉぉぉぉぉぉ……………………!! と乗る観客はまだ許せるが、騎士団はいいのか、と思う。
更には
「さぁ…………………!! 我が娘の手の甲に唇を落とすことが許される騎士は誰だ……………………!!!」
最早、王が言う事とは思えない事を叫ぶ王を見ながら、壇上で、こっちは影に座っている王の娘────────エセル王女を見る。
相も変わらず月のような娘は、しかし日の光に負けないくらいに微笑み、観客や騎士に対して手を振っていた。
王女に手を振られている事に気付いた馬鹿&観客達は更に盛り上がる始末。
「やっべ! 今、俺に手を振られたよ………………!!」
「ばっか! 俺に決まってんだろ!? このモブ風情が…………………!!」
「見向きもされない不細工共は黙ってろ!! この見た目イケメンの俺の方が姫様も見ていて気持ちいいだろうしな……………………!!!」
「貴様ぁ……………………!!!」
この騎士団は実は犯罪者の温床では無いのだろうか、と時々思う事があるが、辛い現実は見ない方がいい。
思わず、どうしたものか、とボーーッとエセル王女殿下の王を見ていると偶然か、気のせいか、目が合った気が感覚がした。
結構、距離は空いているが、自分の視力は良い方である。
王女殿下の表情まで見える目には、エセル王女殿下が、まるでこちらに向かって手を振っているように見える。
こちらとしたら、どうしようもないので、困っているのだが……………………周りからの殺意が酷く濃くなっている。
「おう、こら…………あん?」
「ああん……………………んん? あーーーん?」
「へーーーーーー? ほぉーーーーーー?」
擬音でこちらに喧嘩を売ってくる馬鹿共に対して、ぶちのめしてやろうか、と思うが、仮にも王の前ではやれない。
後で、終わったら叩きのめしてやる、と思いながら、無視するのみである。
ちなみに、うちのチームメンバーも周りにいるのだが、全員がハンドサインで”自業自得”と伝えてくる。
そんなハンドサインを作った覚えはないのだが、何故皆、一致団結して同じハンドサインを作り、そして何故僕は読み取れるのだろうか? コミュニケーション能力が意外と自分は高いのか……………………。
いや、別に今はそれは良い。
問題は今、王がテンションを挙げて息を吸い
「さぁ!! ────────騎士団強制参加によるバトルロワイヤルで生き残れる猛者は一体誰だ……………………!!」
と、ここに集う理由を叫んでいる事だろう。
さぁ、今日も街の巡回に行って人々の平和を守ろうと意気込んでいた自分を返して欲しい。
狡猾な事に、騎士団強制参加とは言っても全員ではなく、しっかりと王都を守れる人数を実はしっかりと残している辺りが有能である。
賢王に続いて、お祭り王と言われるだけある………………
悪い事ではないのだから良いとは思うのだが……………………いや、王も王女も、民も笑っているのだから良い事なのだろうと僕は納得して笑おうと思い
「ただし────────娘の手に口付けするような野郎は目の前で処刑してやるから覚悟していろ……………………!!!」
というダブルスタンダートな言葉に思わず、周りにいるメンバーと一緒に真顔にいる中、王の傍で座っていた王女がどこからか取り出した本……………………法律関係だろうか。
とんでもなく分厚い本の角で思いっきり王の後頭部を叩きのめすのを目撃し、更に沈黙が広がった。
コホン、と可愛い仕草で空気を入れ替えようとする王女だが、騎士団メンバーの中には冷や汗を流しながら震えている男もいる……………………一部はアレが良いんだよ……………………!! と手を握っている業が深い男もいたが。
「お父様の失言、申し訳ありませんでした。父に代わり私が謝罪させて頂きます。お父様も最近、年で頭がおかし……………………お疲れのようで」
今、頭がおかしくなったって言おうとしなかったか……………………とアインが呟くのを見たが、隣でヴァイスが気のせいだ、と肘鉄を食らわせていたので良しとする。
ナイス行動に、今度、酒を奢ろうと決意する。
「倒れた父に代わって私からも説明を。父はどうやら今の平和を保てている事を良しとしていますが…………………同時にそれを支えている騎士団の人達の力を皆さんに知って欲しいと思って、今日の段取りになった、という事らしいです、騎士団の皆さんがいるから、皆さんも安心して生活をして欲しい、と」
おお……………………、とエルスは感嘆する。
流石、アルベルト王。賢王の名に相応しい人だと改めて実感する。
あの御方がいるから今日まで平和の世を維持できたのだと思うと、誇らしさに一杯になる、とエルスは感激し
「……………………まぁ、後は何か楽しい事もしたかったのだと思いますけど」
エルスは王も人……………………人なのだ……………………!! と自分を強く戒めた。
そう思っていると闘技場に集まっている騎士団の内、一人が代表として前に出、膝を着きながら王女に言葉を作っていた。
「エセル王女殿下。ご確認させて頂きたいのですが……………………つまり、今回の目的はある種のパフォーマンスであり、ルールとしては味方無しのバトルロワイヤルのような形式。勿論、鍛錬と同じような感覚で、という事でよろしいでしょうか?」
「はい。それで良いと思います。皆さんの活躍をご期待します……………………後………………」
再び、自分と彼女の目線が合ってしまったことに気付く。
いや、大丈夫……………………仮面がきっと僕の目線を隠してくれるはずだ………………と。
しかし、淡い希望は空の向こう。
エセル王女殿下はわざとらしくこちらに流し目らしきモノを送りながら、一言
「────────格好いい所を、見せて欲しいですね?」
今ほど、この透き通る美声を恨む時があるだろうか。
それ程、強く言っていないのに、この通りよう。もしかしたら、風の魔導書とかを使って、音を届けているのだろうか。
ちりちり、と首筋を焼く殺意を感じながら、アイン達がこそこそと僕から離れていくのを見て、この人でなし共、と思っていると先程、代表として皆の前から出ていて人間が急に腰の剣を抜く。
おかしい。
今日はこういうパーティというかイベントというか、まぁ、ほのぼの系だから、使う武器は加工した、殺す獲物にはならない、切れ味のない剣を使う予定だった筈なのに、彼が持っている剣はとても綺麗な滑らかさで自分の切れ味を主張している。
更には、何時の間にか、並ぶように立っていたはずの騎士団員は、まるで僕を囲うように立っているように見えて不思議だ。
ちなみに、こちらも武器は簡単に人を切れそうな感じである。
嫌な予感が広がる仲、代表として皆の前に立っていた騎士がこちらに振り返る。
異様に美しい笑みを向けられ、あ、これは駄目だな、と思った瞬間────────号令が発された。
「そこの仮面馬鹿をぼっこぼこにしろぉーーーーーー!!!」
もういいけど、私怨を叫ぶのは不味くないかな? と思いながら、周りの騎士達が一斉に獲物を抜き放つのを見て、エルスは溜息を吐いた。
神を信じたことは無いけど、やっぱり、天罰は有りそうである。
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