それでは今回もよろしくお願い致します。
戸塚の依頼であるテニスのスキル強化を昼休みで行う。期間は特に設けてはいないが近々、大会があるみたいなのでそこで成果が発揮できるようにするそうだ。
テニス経験は奉仕部全員あるため、全員で戸塚のテニス強化育成を行う運びとなった。
「まだ誰もいないか......」
どうやら俺が1番早く来てしまったらしい。とりあえず先輩や雪ノ下達が来るまでボーッと太陽の方でも見てるかな....
風が心地よくテニスコートを吹き抜ける。こういった穏やかな時間は嫌いではない。
「八幡くん。早いわね」
しばらくして奉仕部部長の七草先輩がやってくる。
「うっす。それって....ユニフォームですか?」
「うん。どうかな?似合ってる?」
「そうですね....」
ユニフォームを着てくるとは....かなり本気でやるつもりなのだろうか。
「馬子にも衣装って感じですかね」
「それって褒めてるの?」
ぷくっ...と頬を膨らませながら先輩は俺に聞いてくる。結構、先輩はあざとい......ファンも多いだろうな。
「冗談です。先輩のユニフォーム姿....すごく似合ってますよ。天使級の可愛さです」
ここは正直の感想を述べておく。
「えっ....あっ....ありがとう」
先輩は一瞬、驚いていたが....すぐに笑顔でそう答える。
そして先輩は念入りに準備体操を行っていく。
「八幡くん。手を貸してくれない?」
「手を貸すというと?」
「背中、押してくれない?」
「分かりました」
俺はゆっくりと七草先輩の背中を押して前にゆっくりと倒していく。
にしても、先輩の身体が柔らかいな....軽く押しただけでスッと奥までいったぞ....俺には無理だな。
「八幡くん、ありがとう。もう大丈夫よ」
「はい」スッ
俺は手を差し出す。
「え?」
「立ち上がる時に必要かと思いまして」
「ふふっ....ありがと」
先輩は俺の手を取り、立ち上がる。
「どういたしまして」
「八幡くんもストレッチやる?お姉さんがお手伝いするけど」
「大丈夫です。軽く自分でやるんで」
さすがに先輩に手伝ってもらうというのは気が引ける。
その後、雪ノ下と由比ヶ浜。戸塚、深雪が来たところで依頼開始となった。
とりあえず基礎からということで筋トレから始まり、打つフォームを改善しより強く打てるような指導を七草先輩から伝授する。そして、サーブレシーブやボレー、スマッシュ練習へと移っていく。
戸塚はのみ込みが早くみるみる上達していった。
5日目にして、強いサーブも打て、レシーブも完璧。強打や軟打を打ち分けれるようにもなりかなり成長しているように感じられた。
「それじゃあミニゲームをしましょうか」
シングルスとダブルスの両方やることになりダブルスは公正にくじでペアを決めた。七草先輩と雪ノ下ペア、戸塚と由比ヶ浜ペア。そして.......
「お兄様!頑張りましょうね!」
「そうだな。久しぶりにペアを組むことだしな」
「はいっ!」
俺と深雪ペアが出来た。最初は俺と深雪が審判に回り、ミニゲーム形式での実践練習を行う。
「1ゲームマッチプレイ!」
そして、ミニゲームが開始となる。時間の都合上、1セットではなく1ゲームマッチとなっている。
「雪乃さん、お願い!」
「はい!」
パーン!
「さいちゃん!」
「うん!」
パーン!
かなりの接戦となっている。
カウントは40-40。デュース。ここからは2点差をつけなければ決着をつけることが出来ない。
この後も一進一退の攻防が続き......
由比ヶ浜と戸塚が連続でミスをしてこの1ゲームは幕を閉じた。
「ごめんね。さいちゃん」
「ううん。気にしないで。僕ももう少し面を上にして打ってればネットを越してたかもしれないから」
「とりあえず、休憩を取りましょう」
10分の休憩を挟み、もう1ゲームを行うことになった。
先輩と雪ノ下が近くの自販機でジュースを買っている間にちょっとしたハプニングが起きた。
クラスの上位カーストに君臨する葉山グループのトップに属する獄炎の女王こと三浦がテニスコートを独占支配したのだ。葉山隼人の忠告を振り切ってだ。
俺も注意を促したりしたのだが、効果なし。悪口に近い暴言を吐かれる始末となった。
それに食ってかかったのが我が妹の深雪だった。俺に放った悪口に近い暴言が気に障ったのだろう。
三浦vs深雪の口論戦が勃発。俺達ではどうすることもできなかった。
(すまない、比企谷。俺じゃどうにもならない。力不足を痛感しているよ)
(いや、葉山は最善を尽くした。ここはなんとかする)
(頼む。本当にすまない八幡)
(気にすんな)
そして、ようやく口論戦は終わったのだが.......
「お兄様、申し訳ありません。ちょっと厄介なことになりました」
口論戦では決着がつかなかったとのことでテニス対決に発展したとのこと。
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*会話抜粋
「お兄様への数々の無礼、許しません。その身に深く味わわせてあげます。たとえ先輩であろうと...」
「ふん。その挑戦、受けて立つし!」
→三浦からの主張でテニス対決に発展....
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「まぁ、仕方ないだろ。最悪、こうなることは予想してた。まぁ、先輩には上手く言っておくから勝ってこい」
「はい!」
「これは何事なの?」
「説明を求めるわ。比企谷くん」
このタイミングで七草先輩と雪ノ下が戻ってきた。
「それはですね......」
事の顛末を2人に話す。
「そういうこと......この勝負は受けた方がいいわね。後処理は生徒会長の私に任せてもらっていいわ」
「ありがとうございます。七草先輩」
「本当にいいんですか?先輩」
「ここは深雪さんに任せましょう。本当は私が相手したいところだけど...深雪さんが適任のようだから....静かに見守ってあげましょう。雪乃さん」
「はい....」
「深雪さん、頑張って」
「貴方ならやれるわ」
「妹ちゃん、ファイトだよ!」
「深雪、頑張れよ」
「お兄様......近くで見守っててくださいね」
「当たり前だ。全力で行ってこい」
「はい!」
そして、深雪はコート前に華麗に立ち.......
深雪VS三浦のバトル......
【氷の女王VS獄炎の女王】
の戦いが始まった。
" Yumiko!!Huh!! Yumiko!!Huh!!"
"深雪さん(様)!!頑張って!!"
コート外からの声援がものすごく、大声で両者の名前を呼び合うまでとなっていた。いつの間にこんなギャラリーが増えてんだよ......
まぁ、いいんだけどね.....盛り上がれば盛り上がるだけこちらとしては好都合。
そして、互いに点を取った際には.....
「「「「「うおおおっっ!!!」」」」」
驚きの歓声もあがり、興奮度はMAX....頂点に達していた。
「凄い声援ね」
「本当ですね。先輩」
「妹ちゃん!頑張れ!!」
由比ヶ浜も必死に俺の妹を応援している。
俺は深雪が勝つと確信しているのでそこまでは応援はしない。見届けはするがな。
この試合は1セットマッチ。先に6ゲームを先取すれば勝ちとなる。
最初は拮抗していたが......
「くっ......」
三浦は徐々に深雪に攻められ点を取られていく。
奇しくも三浦の打ったボールはネットにかかる。
「ゲーム!」
審判の戸塚がCALLする。
ゲームカウントは5-3。深雪が2ゲームリードしている。
「後1ゲームで私の勝ちです。三浦先輩、負けを認めてはどうでしょうか?もう体力も残っていなさそうですし.....」
「そうだよ、優美子。十分に楽しめたんじゃないか?もう終わろう」
葉山の言葉に首を横に振る。先輩として負けられないのだろう。
「では試合を再開しましょうか、三浦先輩。お兄様に無礼を働いたことを悔いてもらいます」
「こっからだし!」
試合は再開され、このゲームは三浦の意地もみせた結果、デュースに持ち込みアドバンテージポイントとデュースを繰り返し.......
そして..............
「これで最後です。三浦先輩」
三浦がふわっと上げてしまったロブボールを深雪が渾身のスマッシュを放つ。
「ゲームセット!」
それは見事、決まり.....この勝負は深雪の勝利で幕を下ろした。
「お疲れ様、深雪さん」
「さすが、深雪さんね」
「妹ちゃん、すごーい!」
「由比ヶ浜先輩、少し離れてください」
照れ臭そうに深雪は由比ヶ浜の抱きつきから解放しようとしていた。
「さすが、深雪だな。いいゲームだった」
「はいっ!もっと褒めてほしいです!」
「それは後にして.......だ。先輩、三浦をどうしますか?」
「そうね。コートの無断使用、部員に対する中傷は決して許されることではないわ.....」
生徒会長.....七草先輩の発言にこの試合に敗北した三浦はビクッと肩を震わせていた。やっと気づいたのだろう。
「とりあえず、反省文3枚と......戸塚くんの特訓の相手にしばらくなってもらいましょう。彼女は選抜に選ばれていたみたいだから戸塚くんのいい特訓、練習相手になるだろうから.....戸塚くんはいいかしら?」
「はい...それで自分が強くなる可能性があるのなら.....」
「それなら決まりね。三浦さん、貴方への処遇はこれでいいかしら?」
「はい」
「葉山くんも協力してくれないかしら?」
「構いません。この騒動を止められなかった自分にも非があるので俺にも協力させてください」
三浦は深雪に先程のことを詫びていた。深雪はそれを受け入れた。
そして、三浦と葉山も加わり戸塚の特訓が数日間に渡り行われた。
その結果、戸塚は力をつけ直近の大会で見事優勝を飾った。
奉仕部にて.......
由比ヶ浜は友達と遊ぶ約束をしているため、部室内には俺を含め4人だ。
「戸塚くんの依頼、無事に完了出来たわね」
「色々とトラブルはありましたけれど、完了出来て良かったです」
「その節は申し訳ありませんでした」
「深雪さんが謝ることではないわ。貴方は悪くないのだから...ね?八幡くん」
「七草先輩の言う通りだ。深雪は何一つ悪くない。こういう風になってしまう社会が悪い」
「また始まったわね....」
「しかも言ってることが意味不明ね」
「妹さんの前では八幡くんはこうなるのね」
「ポンコツ化....まぁ、いつものことだけれど」
言いたい放題言われているようだが、気にしない。気にしたら負けだ。
「それでお兄様」
「ん?」
「まだ深雪はお兄様から十分に褒めてもらっていません!」
「そうだったか?」
「はい!」
という訳で....俺は部室内で深雪を可能な限り褒め続けたのだった。
その光景を部長の七草先輩とは優しく見守り、雪ノ下は羨ましそうにみているのだった......
.......続く
次回.......
葉山からの依頼を解決し、職場見学が開始されるにあたり一枚のプリントが配られ、俺はそれを記入した。
*原作より引用。
希望する職業:専業主夫
希望する職場:自宅
古人曰く、働いたら負けである。
労働とはリスクを払い、リターンを得る行為である。
畢竟、より少ないリスクで最大限のリターンを得ることこそが労働の最大の目的であると言える。小さい女の子...つまり幼女が「将来の夢はお嫁さん」と言い出すのは可愛さのせいではなく、むしろ生物的な本能にのっとっているといえるだろう。よって、俺の「働かずに家庭に入る」という選択肢は妥当であり.....かつ、まったくもって正当なものである。
従って、今回の職場見学においては専業主夫にとっての職場である自宅を希望する。
「平塚先生からこのプリントを預かっているわ」
「な....なんだと!!!」
「比企谷くん。これはないわ....」
「お兄様、せめて公務員を目指しましょう。家事などは全て深雪がやりますからお兄様は家のことは気にせず、働いてくださいね!お兄様が仕事から帰ってきたら.....毎日、温かいご飯とお風呂を家で用意して待っておりますから」
「そっちなんだ!!妹ちゃんも妹ちゃんでおかしいよ!」
「いえ、おかしくありません。これは至って正常です。由比ヶ浜先輩」
またまた奉仕部内で一波乱が起きる.....かもしれない。
ここまで読んでくれた方々、ありがとうございます。
今回は戸塚の依頼回でした。次回は職場見学編となります。
それでは、次回もよろしくお願い致します。