安定のご都合主義、原作ベースです。
それでは、今回もよろしくお願いします。
「第3話 忍野メメは戦場ヶ原ひたぎと邂逅す」
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俺と戦場ヶ原は学校を出て、忍野メメのいる学習塾跡へと向かう。
もちろん、自転車に乗ってだ。俺が前で漕ぎ、戦場ヶ原が後ろの荷台に横になって乗っている。
「お尻が痛いわ」
「すまんが我慢してくれ」
「女の子に我慢させる気なの?」
「じゃあ、歩いていくのか?まだ距離あるぞ」
「じゃあ、比企谷くんと私の位置を交換しましょう」
「は?なんで?俺の自転車なんだけど」
「それじゃあ、鞄を貸しなさい。座布団代わりにするから」
「俺の鞄が潰れるから却下だ。スピード上げて早く着くようにするから我慢してくれ」
「しょうがないわね。比企谷くんの背中を借りることにするわ」
「え?」
ふにっ...と柔らかいものが俺の背中に当たる。
「いきなりどうした?」
「後ろは振り返らないで。比企谷くんは早く自転車を漕ぎなさい」
俺が後ろを振り返ろうとするが、戦場ヶ原に止められる。
「こうすればお尻に負荷がかからないのよ。それにこの方が速く漕げるでしょう」
「わかった。しっかり掴まっとけよ」
「ええ....」(比企谷くゆの背中って意外と大きいのね)
戦場ヶ原に背中を抱きつかれつつ、自転車を速く速く漕いでいく。高鳴る心臓の鼓動を聞かれないようにしつつ....
そして、10分程で忍野メメのいる学習塾跡についた。
「ここなの?」
「ああ、ここにいると思う」
「その...アロハシャツの人って随分と変わった所で住んでいるのね」
「そうだな。実際に変わってる人だと思う。名前だけ教えておくと忍野メメっていう中年のおっさんだ」
「怖い人ではないわよね?」(メメってなんか萌えちぎりそうな名前ね...あえて、口には出さないけれど)
「それは保証できる。お前よりは怖くはないから安心してくれ」
「それは心外ね、比企谷くん」
「いやいや、いきなりカッターナイフを口元にあてるやつが怖くないわけないだろ。あんなことするのはお前ぐらいだぞ」
「それは悪かったわね。それと私のことをお前って呼ぶのはやめて」
「戦場ヶ原でいいのか?」
「いいえ、私のことは戦場ヶ原ひたぎ様か戦場ヶ原ひたぎ殿と呼びなさい」
「同級生相手に何故、敬意を払わないといけないんだよ...」
「美少女相手には敬意を払うと親に習わなかったのかしら?」
「習わねーよ。それとちゃっかり自分のこと、美少女って言うなよ」
「本当のことなのだから仕方ないじゃない」
「それはそうだが...まぁ、いい。いくぞ」
「そうね...」(私が美少女っていうのは否定はしないのね...)
「おっと、その前に文房具類とかカッターナイフとかを預かりたいんだがいいか?」
「えっ...まさか、比企谷くん。私から武器を取り上げていかがわしいことをする気なの?」
「なわけないだろ。そんな危険なものを持たせたまま、会わせるわけにいかないだけだ。一応、忍野は俺の恩人だからな」
「....嘘は言っていないようね。分かったわ、ここに置いていくわ」
そう言ったのち、戦場ヶ原の制服の中から大量の文房具類が出てきた。物騒すぎる...いつもそんなのを持ち歩いているのかよ...
俺は戦場ヶ原が文房具類を身につけていないか目視で確認し、忍野メメのいる学習塾跡の一室へと向かった。
「比企谷くん、1ついいかしら?」
「なんだ?」
「不死身って便利そうね....って言われたら傷つく?」
「別に俺はどうも思わない。それに俺は不死身じゃない。傷が少しばかり速く治るってだけでほとんど人間と変わらない」
「そうなのね...」
「着いたぞ、ここだ」
「ここにいるのね」
そして、俺と戦場ヶ原は忍野メメのいる一室に入る。
「おやおや、誰かと思えば比企谷くんじゃないか。久しぶりだね」
「久しぶりだな。忍野」
「今日は委員長ちゃんじゃなくて違う女の子を連れているんだね。浮気はダメだよ、比企谷くん」
「変なことを言うな、忍野。俺は浮気などしてない」
「そうなのかい?それはごめんね。それで、今日は何の用だい?彼女が出来たから僕に報告かい?それはおめでたいね」
「だから違うって」
何回言えば分かるんだよ、忍野のやつ...
「わ、私は比企谷くんの彼女じゃないです」
「軽い冗談だよ、大体検討はつくさ。その前に自己紹介しようか。忍野メメです。よろしくね、お嬢ちゃん」
「戦場ヶ原ひたぎです。忍野さんのことは比企谷くんから少し聞いています」
「そうかい。なら話は早いね。ふーん、そういうこと」
「何か見えるんですか?」
「ん?いや、何も見えないよ」
「っ!!」
「それで、忍野。話があるんだが」
「いいよ。久しぶりに比企谷くんのお話を聞こうじゃないか」
「えっと、だな...」
「比企谷くん。私から話すからいいわ」
「分かった」
「その前に忍野さん。私を助けてくださるって聞いたのだけれど」
「ん?ああ、比企谷くんから聞いたんだったね。でも、ちょっと違うね。僕は助けないよ。君が1人で勝手に助かるだけだ、お嬢ちゃん」
「5人、私に向かって同じセリフを吐いた人がいるわ。その5人は全て詐欺師だった。忍野さんもその詐欺師と同じ部類なのかしら?」
「忍野はそんな奴じゃ...」
「はっはー!お嬢ちゃん、随分と元気いいねぇ...何かいい事でもあったのかい?まぁ、そう疑うのも無理はない。僕とお嬢ちゃんは初対面だからね。でも、話してくれないと先には進めないかな。もちろん、秘密は厳守するさ。僕は詐欺師じゃないんでね」
「戦場ヶ原。忍野は悪い奴じゃない。だから話してくれ」
「比企谷くんがそういうなら話すわ」
「随分と比企谷くんには心を開いているね、お嬢ちゃん」
忍野がそう言ったのち、戦場ヶ原は説明し始める。自分の身に起こった事を....(*詳しく知りたい方は原作を参照してほしい。本編では次回にて触れる予定)
「なるほど、それは「おもし蟹」だね」
「怪異絡みか」
「その認識で構わないよ、比企谷くん」
「おもし蟹...」
「おもし蟹っていうと、宮崎県の山間部あたりの伝承の話でしたっけ?」
「さすが、文学には詳しいね。比企谷くん」
まぁ、国語学年3位のゆえの知識ですよ。
「たまたまそんな本を図書館で見つけて読んだだけですよ」
「話を続けると、その地域では重いし蟹だったり重石蟹だったりと名前はバラバラで呼ばれていたり蟹と神もかかっているらしい。でも、それらには共通している部分がある。それは「人から重さを奪う」こと」
「なるほど、でもその話は関係ないんじゃ...ここは宮崎県じゃないし」
なんならここは関東だし。
「比企谷くん、場所は関係ないのさ。そういう「場」があれば生じてしまう...それだけの話さ。いたってシンプルだよ」
「それに蟹でも石でもこの際、どっちでもいい。兎って話もあるしね。でも、今回お嬢ちゃんが行き遭ったのが蟹だというのなら蟹なんだろう」
「そういうもんなのか」
「名前なんてどうだっていいと思うんですけれど」
「いやいや、名前は重要なんだよ。蟹とは言ったけど、元は神だったのかもしれない。思し神からおもし蟹に派生したとも言えるからね。まぁ、でも今回は運の悪い中でも運のいい部類だよ」
「なんでですか?」
「神様なんてどこにでもいるからね。どこにでもいるし、どこにもいない。お嬢ちゃんがそうなる前から周りにはあったし、無かったともいえる。不思議なものさ」
「なんか、禅問答ですね」
「それはまぁ、置いといて。君は勘違いしちゃあ...いけない。君は何かのせいでそうなったんじゃない....ちょっと視点が変わっただけだよ」
「視点?忍野さんは何が言いたいんですか?」
「つまりね...被害者ヅラしてんのが気に食わないって言ってるんだよ。お嬢ちゃん」
忍野の雰囲気がガラッと変わった。あの春休みのようなピリッとした感じの...
「......」
「.......」
そして、しばらく戦場ヶ原に鋭い視線を送り続けていた。戦場ヶ原も負けじと対抗していた。俺はどうすればいいか分からず、横を見る。するとジッと俺の方を見ている。吸血鬼の成れの果てである女の子と目が合う。俺は咄嗟に視線を外し、忍野の方を見た。
「おやおや?なかなかどうして....てっきり僕はただのワガママなお嬢ちゃんだと思ったんだけどね」
「何故、そう思ったんですか?」
「まぁ.....おもし蟹に遭う人間は大抵、そうだからだよ。それに会おうと思っても中々会えないし、通常はさわるような神でもないのさ」
「さわらない...」
「ただそこにいるだけで、お嬢ちゃんが何かを望まない限り実現しないんだよ。いや、もっともそこまで深入りする必要は現段階ではないから、別にいいんだけれどね」
現段階?どういう意味だ?俺には忍野の言ったその言葉の真意が分からなかった。
「まぁ、とにかく分かった。体重を取り戻したいというのなら僕が力になるさ。もっとも比企谷くんの久しぶりのお願いというか紹介だからね」
「私を助けてくれるんですか?」
「さっきも言ったけど、僕は助けない。手伝いをするだけだ。もちろん、比企谷くんも君を助けない。彼はいわば仲介人というべきかな。君が1人で勝手に助かるだけだよ」
「そうでしたね」
「それじゃあ、一旦帰って冷水で身体を清めて清潔な服に着替えなさい。そして、ここで0時に再集合だ。いいね?その間、僕の方でも色々と準備しないといけないから。分かってくれるね?」
「はい。それと最後に2つ程いいですか?」
「いいよ。何かな、お嬢ちゃん?」
「1つ、あそこにいる女の子は誰ですか?」
「戦場ヶ原、あいつは吸血鬼だ」
「吸血鬼?噂だともっと大きな女性だったはずだけれど、比企谷くん」
「説明すると長くなるから、簡単にいうと吸血鬼の成れの果てだ。その結果、あんな子供の姿になってる。名前もない、俺が血をあげないと生きてられない。そんな女の子だ」
「そう」
「比企谷くん。名前は昨日、僕がつけてあげたよ」
「は?」
「名前は忍野忍。刃の下に心あり、彼女らしいだろ?苗字は僕のを流用させてもらった」
「まぁ、いいんじゃないか?しっくりくるし」
「てっきり「名前のセンスねぇな....このおっさん」とでも言われると思ってたんだけど」
「そんなこと、思ってても言わないですよ」
「これでいいかな?お嬢ちゃん」
「はい」
「それで2つ目はなにかな?」
「お礼は?」
「は?」
「え?」
戦場ヶ原がお礼はと尋ねた際、俺と忍野は思わず変な声が出てしまった。
「とぼけないでください。こんなお願い、ボランティアで助けてくれる訳ではないのでしょう?」
「それがね、ボランティアでも助ける人がいるんだよ?君の隣にいる比企谷くんが」
「それはただのお節介焼きです」
「グサッとくる言葉を躊躇いなく言うねぇ...そうだなぁ。お嬢ちゃんがどうしてもというならもらっておこうかな」
は?どうしても?俺の時と対応が違うんだが。
「10万でどうだい?」
「10万円....」
「俺の時と全然、対応が違うな。やっぱり男子には辛い世の中だよな」
忍野は女の子に甘いんだよ。羽川の時もそうだった。
「そうだっけ?」
「俺の時は1000万だっただろ?学生にはキツイんだよ、この額は」
「そりゃあ、比企谷くんの時は吸血鬼だもん。仕方ないよ」
「仕方ないで済むか!?せっかく親父が宝くじで当てた1億を5等分して2000万円が俺の口座に入ったのに一瞬で半値になったんだぞ!」
「いいじゃないか。比企谷くんの口座には残り1000万もあるんだから」
「そういう問題じゃない!!」
「比企谷くんの話は置いといて、お嬢ちゃんは10万円払える?」
「はい。どんなことをしてでも払います」
どんなことをしてでもとか言うなよ。忍野と俺ならまだしも他の奴に言ったら変なことをされるのがオチだぞ。
「そうかい」(比企谷くん、君はここに残ってくれ)
「....」(分かった)
俺は忍野の心の声を読み取り、この場にとどまる。
「比企谷くん、行きましょう」
「戦場ヶ原、先に下で待っててくれ。俺は少し忍野と話すことがある」
「そう。なら下で待ってるわ」
「助かる」
戦場ヶ原は1人で、下へと降りていく。この場には俺と忍野と忍の3人だけとなる。
「比企谷くん。お嬢ちゃんからのお礼の件だけど、どうするつもりだい?まぁ、比企谷くんのことだから君がお嬢ちゃんの代わりに払うんだろう?」
「まぁ、俺が紹介したってのもあるし....戦場ヶ原の家庭状況の悪さ知っちまったから俺が払うのは当然でしょう」
「本当に比企谷くんは優しいんだね。君が払うのなら、お嬢ちゃんにはうまく話をしておいてね」
「そこは心配しなくていいですよ」
「そうかい。それじゃあ、お嬢ちゃんのところへ行ってあげなさい」
「はい」
俺は戦場ヶ原の待つ、下へと向かい戦場ヶ原を荷台に乗せ、戦場ヶ原の家まで自転車を走らせた。
「...青春だねぇ」
忍野メメは比企谷八幡と戦場ヶ原ひたぎの二人乗りを見送ったのち、0時から行う儀式の準備をするのだった....
そして、15分後。戦場ヶ原の家と思われる
「じゃあ、戦場ヶ原は忍野の言われた通りに頼むぞ。俺はその間、家に帰るから」
「一緒に居てくれないのかしら?」
「妹が家で俺の帰りを待ってると思うから、それは出来ない。それにまた出かけることを伝えないといけないし」
「そう...」
「すぐに戻るから、そんな落ち込むな」ポンポン
「っ!!別に落ち込んでなんかいないわ」
「そうか...それじゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃい」
俺は戦場ヶ原に一言残し、家まで自転車を走らせる。
「比企谷くんの手、温かったわね。それにしても初めてね....人に頭を撫でられるのは....」
戦場ヶ原ひたぎは自転車を漕ぐ八幡の後ろ姿を見ながらそう呟いていた。
「ただいま」
俺が家に入ると、火憐と月火はドタドタと玄関までやってきていた。
「お兄ちゃん、遅い!!!何時だと思ってるの!?携帯にも連絡したけど全然、出ないし!今日は部活も無くて早く帰ってきたからお兄ちゃんと遊ぼうと思ってたのに!」
「すまん」
「ハチ兄、心配したんだせ?帰ってくるのが遅いから、また事故にでもあってるんじゃないかと思って...」
「心配かけてすまなかったな。色々と事情があってな。この埋め合わせは、必ずするから」ナデナデ
「それなら許すぜ!ハチ兄」
「期待してるね、お兄ちゃん!それでお兄ちゃんはごはんはもう食べたの?」
「まだだ。それにこれからまた出かけないといけないから夜飯は置いといてくれ」
「また出かけるの!お兄ちゃん」
「おう」
「また人助けか?ハチ兄」
「まぁ...そんな感じだ」
「それなら仕方ないね。お兄ちゃん、頑張ってね!ファイヤーシスターズとして火憐ちゃんと共に一生懸命、応援するよ」
「ハチ兄!頑張って、困っている人を助けるんだぞ!」
「ありがとな、2人とも」
俺は思わず、2人を一緒に抱いた。
「ハチ兄、苦しい!」(お兄ちゃんの身体、温かい...)
「お兄ちゃん、嬉しいけど苦しいよ」
「すまんな。それじゃあ、行ってくる」
「「行ってらっしゃい!ハチ兄!(お兄ちゃん!)」」
俺は火憐と月火に見送られ、再び戦場ヶ原の家へと向かった。
...続く
あとがき
ここまで読んでくれた方々、ありがとうございます。
火憐ちゃん、月火ちゃんのファンの皆様、ごめんなさい。2人の登場シーンが少なくて申し訳ない。次回はちゃんと登場させますので今回はご了承ください。
ここまで読んでくれた方々ありがとうございます。
それでは、次回もよろしくお願いします。