それでは今回もよろしくお願い致します。
翌日の昼休み。俺はテニスコートが見えるベストプレイスで飯を食べている。妹の深雪は部室で雪ノ下達と食べている頃だろう。俺も誘われたのだが、女子4人の中に男1人で食べる勇気はないので断った。深雪はムッとしていたが、今度、一緒に食べるという約束で何とか機嫌を取ることは出来た。
「ベストプレイスで食べる飯は美味いな....」
ちなみに昼飯は妹の深雪が作ってくれたものだ。
「あっ!ヒッキーだ」
「ヒッキーはやめてくれ。由比ヶ浜」
「何でこんな所でご飯食べてるの?一緒に部室で食べれば良くない?」
「それは勘弁だ。美少女達と飯を食えるほど俺のハートは強くない」
「えへへ...美少女...」
「おーい、由比ヶ浜さん」
「へ?何?」
「お前は何しに来たんだ?」
「はっ!ゆきのん達のジュースを買うんだった!」
「パシリか」
「パシリじゃないもん。じゃんけんで負けて買うだけだもん」
「そうか...」
「あっ!由比ヶ浜さんに比企谷くん!」
「さいちゃん!やっはろー!」
「うん。やっはろー」
えっ...何これ、すごく可愛いんだけど....ってか、何で俺の名前知ってるんだ?
「2人ともここで何やってるの?」
「えっと....」
「俺はここで飯を食ってただけで、由比ヶ浜はパシリの途中だ」
「パシリじゃないもん」
「ふふっ。2人とも仲がいいね」
「そ、そうかな?それよりさいちゃんは昼練?」
「うん。うちの部、弱いから昼休みも練習しないといけなくて...」
ほー。熱心なことで....
「授業でもテニスやってるのに熱心だね」
「好きでやってることだから....授業といえば比企谷くん、テニス上手いよね」
「そうなん?」
「ああ...妹とよくテニスはやってたからな...」
テニスは深雪の趣味でもあったからな...
「だからフォームが綺麗なんだね」
「いやぁ...照れるなぁ....なぁ、由比ヶ浜?」
「ん?何、ヒッキー?」
「この子誰?」
「はぁっ!?信じらんない!?同じクラスでしょ!?」
「いきなり大きな声を出すなよ。びっくりしちゃうだろ」
「ヒッキーが覚えてないのが悪いんでしょ!?」
「あははっ...」
「同じクラスの戸塚彩加です」
「すまん、戸塚さん。俺、クラスの女の子と話したりするのあんまりないから名前とか知らなかった....」
「それはいいんだけど....僕、男の子なんだけど....な」
「は?由比ヶ浜、本当か!?」
「本当だし!まさか、女の子だと思ってたの?」
「はい....」
こんな可愛い子が男に見える方がおかしいんだ。俺は悪くない。
「しょうがないよ...僕、こういう見た目だから間違えられることとか多いし」
やっぱりそうだよな?しょうがないんだ。うん。しょうがない....
「次からは間違えないから許してくれ」
「うんっ!」
ああ...天使だ。
「それより、由比ヶ浜。雪ノ下と先輩のジュースはいいのか?」
「あ!!!!もうヒッキーのせいで忘れちゃってたじゃん!」
「俺のせいじゃないだろ....」
由比ヶ浜は急いで自販機の方へ走っていった。
「じゃあ、比企谷くん。僕は昼練に戻るね」
「頑張れよ。テニス」
「うん!」
戸塚と別れ、俺はベストプレイスを離れ教室へ戻った。
その後のテニスの授業は戸塚とやることに....
「やっぱり比企谷くんは上手いね」
「そうか?」
「うん。比企谷くんさえ、よかったらテニス部に入ってくれないかな?」
「俺が?」
「比企谷くんが入ってくれたら部員の刺激になると思うから....」
「すまんが、それは無理だ」
「え?」
「俺はもう部活に入ってるんだよ」
「そっか...」
「部長さんに相談してみるけど...ダメでも...練習とかなら付き合えると思うからそれでも良ければいいか?」
雪ノ下や七草先輩に事情を話せば何とかなるかもしれない。
「ありがとう。お願いしてもいいかな」
「それぐらい構わない」
とりあえず、相談してみるか....もしかしたら転部できるかも....
「無理ね」
「八幡くんじゃ無理じゃない?」
「お兄様の意見を尊重したいのですが、お兄様は人付き合いに難があるので難しいかと....」
雪ノ下からアウト宣言。七草先輩からアウト宣言。そして、愛しの深雪からもアウト宣言。
スリーアウトチェンジってか....
「深雪さんの言う通り、八幡くんは人付き合いとか苦手だから部員の方とうまくやっていけないと思うの」
「七草先輩の言う通りだわ。比企谷くん、やめておきなさい」
「分かった。諦めるよ」
転部は無理か...昼休みに手伝うことぐらいしか出来なそうだな。
「八幡くんがこんなにやる気なのは珍しいわね。何かあったの?」
「比企谷くんがやる気を出すときは大抵、怪しい時ね」
「まさか、お兄様。女関係ではありませんよね?」
ピシッ...
部室内の気温がグッと下がる。深雪の固有魔法、絶対零度が発動したようだ....
「それ、本当?八幡くん」
「これは警察に電話を....」
「待て、雪ノ下....携帯をしまえ。警察はやめろ」
俺の目が相まって捕まっちゃうだろ。
「深雪。落ち着け....女関係ではないから安心しろ」
「本当ですか?」
「お兄ちゃんを信じろ」
「分かりました。お兄様を信じます」
ほっ....助かった。
「ゆきのん!先輩!ヒッキー!依頼人を連れてきたよ!」バンッ!
助かったと思ったその時、由比ヶ浜が勢いよく扉を開ける。
「久しぶりの依頼人ね」
「テニス部のさいちゃんです!」
そして、由比ヶ浜の後ろから知ってる人が現れる。
「比企谷くん」
「戸塚...」
「比企谷くんの部活って奉仕部だったんだ」
「おう」
「お兄様、やはり女関係だったんですね」
またもや、固有魔法の絶対零度が発動する。
「あら?紅茶が凍っちゃったわ」
紅茶を凍らせるほどの温度まで部室内は下がる。
「待て、深雪。誤解だ」
「やはり警察に...」
「だから警察はやめろって....」
「深雪、雪ノ下。戸塚は男だ」
「比企谷くん...分かりやすい嘘はやめなさい」
「そうですよ。お兄様」
「僕、男の子です....」
「「えっ!!」」
俺と一緒の反応をするのね....2人とも。
「戸塚くん。ごめんなさい」
「戸塚先輩。先程のご無礼、お許しください」
「雪ノ下さん。深雪さん。気にしなくていいよ。よくあることだから....」
「戸塚くんから許しを得たことだし....それじゃあ、本題に入りましょうか。依頼は何かしら?」
「はい。僕の部活はそんなに強くなくて....」
「なるほど、テニス部を強くしてほしいという依頼で良かったかしら?」
「はい。でも、まず僕が上手くなって...それで....それを見た部員の子も一緒に頑張ってくれると思うから....」
「分かったわ。まずは戸塚くんの技術向上を手助けするという形で依頼を引き受けましょう。雪乃さん、深雪さん、いいかしら?」
「構いません」
「私も構いません」
「八幡くんは聞くまでもないわね」
「うす」
「それじゃあ、明日の昼休みから特訓を開始しましょうか」
「お願いします」
「久しぶりの依頼だから.....お姉さん....頑張っちゃうわよ!」
「私も七草先輩の手を引っ張らないように依頼をこなしてみせるわ!」
お2人とも、張り切ってますね....
「お兄様、私達も頑張りましょうね」
「深雪も初めての依頼だから気合い入ってるんだな」
「はい!もちろんです!お兄様も一緒に頑張りましょう!」
「そうだな」
まぁ、戸塚の頼みだ....頑張るしかないよな。
そして、依頼解決に向けて動き出すのだが......
そうそううまくいかないのが、世の常である。
次回、一波乱がテニスコート内で起こる。
「お兄様への数々の無礼、許しません。その身に深く味わわせてあげます」
「ふん。その挑戦、受けて立つし!」
「七草先輩、どうしますか?」
「ここは深雪さんに任せましょう。本当は私が相手したいところだけど...深雪さんが適任のようだから....静かに見守ってあげましょう。雪乃さん」
「はい....」
「深雪、頑張れよ」
「お兄様、近くで見守っててくださいね」
「当たり前だ。全力で行ってこい」
「はい!」
【氷の女王VS獄炎の女王】
...続く
ここまで読んでくれた方々、ありがとうございます。
それでは、次回もよろしくお願い致します。