入学式の時間になり、俺たち新入生は講堂いへ向かい集まった。
そこで清隆と姫乃、耕助や四季さんとともに列に並び、式が始まるまで待つ。
――そして、
『皆さん、はじめまして。王立ロンドン魔法学園にようこそ』
学園長が姿を見せた。それに合わせて無人の楽器たちが音楽を奏でる。
学園長は新入生を見渡して何かを言っていたが……正直、学園長にはわるいけど、何を言っていたのかよく覚えてない……というか、聞き流してしまった。
昔から学校の行事では、偉い先生の話を聞き流すのが普通だったことと、今の俺の服装が完全なる場違いによる緊張というか……なんともいえない空気のせいで、全く話が頭に入ってこないのだ。
現に、隣に座っている清隆たちが何か喋っていたが、全く頭に入ってこない。
そのまま頭に入ってこないまま式は進み、シャルルさんが檀上に上がり、挨拶をしていたのを聞き、『シャルルさんは生徒会長』ということと、『俺たち風見鶏の生徒は、
シャルルさんは一通り話した後、壇上から去り、そして再び新たな生徒が壇上に上がってきたようだ。
『皆さん、はじめまして。本科1年生の……』
重要事項は後で調べれば良いし、早くこの空気感から解放されたいので、
(早く終わらないかなぁ……)
と思いながら、壇上に上がった生徒を確認しないまま、天井を見上げている。
しかし、それがいけなかったらしい。
(――ヤバいっ!)
俺の座っていた椅子に魔力が宿ったのを感じ、慌てて立つ。それに合わせ、急に立ち上がった俺を見て、周りの生徒が驚く。
そして俺が立ち上がって1秒経つか経たないかのタイミングで――椅子が天井に向け、物凄い勢いで飛んで行った。
そのまま椅子は天井すれすれで止まり、あった位置に戻ってくる。
……あのまま座っていたら、確実に俺は天井に頭をぶつけてたな。
俺は魔法をかけたであろう生徒の方を向く。
『これから壇上に上がる生徒や先生の話を聞かない奴は、こうなるのでよく覚えておくように』
その魔法をかけた人物――巴さんは、他の話を聞いていない生徒や話している生徒が、ややいるのを感じたのか分からないが……とにかく俺が話を聞いていない代表として狙われたらしい。
その効果もあってか、ほんの少しではあったが、聞こえていた話し声などが一切聞こえなくなった。
『では、早速、クラス分けを発表していきたいと思う。名前を呼ばれた者は、私の前に来てくれ――なお、呼ばれた者のは順次、支給品を渡していく』
巴さんはそのまま何もなかったかのように話を進める。
そんな態度の巴さんに文句を言いたい気持ちもあったが、俺が話を聞いていなかったのが悪いのと、過去の経験上……この人に逆らうと怖いので、黙って俺は巴さんに打ち上げられて戻ってきた椅子に座る。
清隆や姫乃も心配そうに俺の事を見ててくれたが、この静かな空気の中、話しかけてはこなかった。
『この三種類の品が風見鶏の生徒である証だ』
また狙われたら嫌なので、頑張って巴さんお話を聞く。
すると巴さんは三つの品物を手元に出す。
『ひとつ目はこれ。
まず最初に巴さんが示したのは、短い棒状の物だった。
初めて見たが、その棒状の物はおとぎ話に出てくる魔法使いが持っている杖にそっくりだと思った。個人的な感想だが。
『魔法に必ずしもこのようなワンドが必要というわけではない。特に海外からの留学生にはあまりなじみがない物だろう』
確かに、日本ではあんな杖を使って魔法を使っている人を見たことがない。
『だか、このワンドは、必ずや君たちの助けになると思う。大事に使ってやってくれ――次はこれ』
次に巴さんが取り出したのは、小さなブローチのようなものだった。
『これは、個人専用の
多分、あれが昨日葵ちゃんの言っていたボートで、あれを使って図書館島などにも行けるようになるわけだ。
『最後にこれだ』
最後に巴さんがかかげたのは、見たこともない物体だった。
化粧用のコンパクトのような意匠が施されているが、小型の通信機のようにも見えなくもない。
『これは便利な品物でな、一種のトランシーバのようなものだ。……といっても、当然のことながら電波で通信するものではなく、魔法の力を使用しているから、遮蔽物に関係なく通話することが可能だ。――これを我々は
つまりはどこにいても、それを使えば電話のように相手と話すことが出来る……ということらしい。
『しかし、シェルは残念ながら地上ではごく限られた区間でしか使えない。だが、この地下空間であれば、どこにいても通信可能だ』
……多分、外だと魔力が足りなくて使えないんだな。
けれど、この地下空間なら入った時から感じてるが、桜を咲かせるためだか、気温を保つためだかに魔法を使う為、常にかなりの魔力が充満している。
そのため、地下ではどこにいても使えるのだろう。
『これら三種の神器は、どれもこの風見鶏でも各園生活に必要へ可決なものになると思う。受領したら、大事に使ってくれ。…………ふむ、説明が長くなってしまったな。それでは、クラス分けに行きたいと思う!』
ついにきたか……。清隆たちと同じクラスだといいんだけど。
そして最初に呼ばれた人物は、
『サラ・クリサリス!』
サラだった。
「はい」
「サラ・クリサリス、君はA組だ。頑張ってくれ」
そう言って巴さんはサラに三つのアイテムを手渡す。
サラは名門に恥じない振る舞いでそれを受け取ったあと、壇上から降りる。
『次、イアン・セルウェイ!』
たしかあいつは、教室で騒いでいた俺たちに文句を言っていたキザな男。
容姿端麗ないかにも英国貴族、といった感じから見るに、どこかの偉い貴族……なのか?
「君はC組だ」
と言われたあと、男はいろいろと巴さんと先輩に対しての言葉の使い方などを話し、壇上をおりる。
……C組には入りたくないな。気分的に。
『次は……メアリー・ホームズ!』
巴さんが次の人の名前を呼ぶ。
『メアリー・ホームズはいないか?』
返事がなかったので、巴さんが再び名前を呼ぶ。……しかし新入生の中から返事はない。
「欠席……か? そのような報告は受けていないが…………ふ~ん。まあ、仕方がない。では、次」
と、次へ行こうとした瞬間――
「います! メアリー・ホームズいます!」
ドタドタ音をたてながら、元気な感じな女の子が講堂に入ってきた。
「ったく、あんたがもたもたしてるから遅くなっちゃったじゃないの!」
「ちょ、酷いなぁ。人のせいにしないでよ。のんびりしてたのはホームズの方だろ?」
そしてさらにもう一人、おしとやかそうな外見の女の子が遅れて入ってきた。
「う、うるさいわね。口答えしないの!」
「まったく、初日から遅刻なんて、勘弁してほしいよ」
「メアリー・ホームズだな?」
「あ、はい! そうです!」
「はやくこちらへ来い。渡すものがある」
「あ、すみません」
メアリーと呼ばれた女の子は、そう言って慌てて壇上に上がり巴さんから三つのアイテムを受け取る。
「メアリー・ホームズ、君はB組だ。覚えておくように」
「は~い♪」
「それと、ついでだ……そこの君……」
ついでと言い、巴さんは二番目に入っていた女の子に顔を向ける。
「僕……ですか?」
「名前は?」
「エドワード・ワトスンです」
「……その恰好は?」
「え? ああ、趣味みたいなものです。校則違反ではない……と、聞いていますが」
……なんだ、この会話。まるであの子の服装がダメだということのように聞こえるんだが……気のせいか?
「まあ、いいだろう。君もこっちに来たまえ」
「はい」
「君もメアリーと同じくB組だ」
「あ、わかりました。よろしくお願いします」
「遅刻に関しては、入学式が終了し次第、クラスの担当するマスターに報告するように」
「はい!」
「うむ、いい返事だ」
「失礼します」
そう言い、エドワードというらしい子はアイテムを受け取り、メアリーと一緒に申し訳なさそうに生徒たちの列に交じった。
『次、
「はい!」
それからしばらくは普通に点呼とクラス分けが続いた。
「ああ、早く名前呼ばれないかな~?」
「別に早かろうが遅かろうが、どっちでもいいだろ?」
「そうなんだけどさ、でも、結果は早く知りたいっていうか……」
という、先ほどの巴さんの魔法の静かさはクラス分けの為、消え失せていたので、清隆と耕助が無駄話をしているのを横で聞いていると――
『江戸川耕助!』
耕助が呼ばれた。
「はいはいは~~~い!!」
「返事は一度でいいぞ」
「はい!」
「君はA組だ。頑張ってくれ」
「おお~、A組かぁ……」
ということは、サラと同じか。
……あと、決まった後になぜか耕助はこちらに向かってVサインをしていたが……どういう意味でのVサインだったのだろうか。……分からん。
そんな耕助を見て、
「……はあ」
ちょっと憂鬱そうに、ため息の音がサラの方から聞こえてきた。
少しだが、彼女の気持ちが分かるような気がした。多分、清隆や姫乃も同じだろう。
それからしばらくは、また、知らない生徒の名前が続き、
『葛木姫乃!』
次は、姫乃が呼ばれた。
「あ、はいっ!!」
「姫乃はA組だ。精進するように」
「わ、わかりました。ありがとうございます」
そして、帰ってきた姫乃に、
「よっしゃぁ! 姫乃ちゃんゲット! 同じクラスだね、よろしくよろしく!」
と耕助がテンション高めで言う。
「あ、あはは……よろしく」
そんな耕助に向かって愛想笑いを浮かべた後、姫乃が俺と清隆の方を見る。
「………………」
その目は明らかに『兄さんと修兄も、A組になれるよね? 同じクラスになれるよね?』と問いかけていた。
(……そうであって欲しいな)
『次、葛木清隆!』
そんなことを考えた瞬間、清隆の名前が呼ばれた。
「はい! …………じゃあ、ちょっと言ってくる」
「うん」「ああ」
俺たちにそう言い、清隆はあわてて巴さんのいる壇上へ向かう。
「緊張しているみたいだね」
「ええ、まあ」
「できることなら、妹と同じクラスになりたいという顔だ」
「べ、別にそういうわけでは――」
と言っているが、絶対に一緒になりたいと思ってる顔だな。あれは。
「くす……。さすがに兄妹で同じクラスって言うのは虫が良い話だと思うぞ」
「そ、そうですかね?」
「なんてね、冗談だ。葛木清隆、A組。兄妹そろってA組だ」
「え、マジですか?」
「嘘じゃないって。清隆はA組。ホラ、ここに書いてある」
そう言って、巴さんは清隆に多分クラスが書かれているであろう紙を見せた。
「ありがとうございます!」
あの清隆の反応からして、嘘じゃなかったんだろう。三種の神器を受け取りながらお礼言ってるし。
そうして清隆は巴さんと少し話した後、俺たちの所へ戻ってくる。
「やりましたね、兄さん」
「ああ、同じクラスだ。あとは――」
姫乃が嬉しそうに清隆に声をかける。そして清隆は姫乃に一言言った後、俺の方を見る。
……分かってる。これで俺だけ違うクラスだったら、マジで少し泣きそうだ。
そして、名前はまたしばらく続きついに――
『えー、最後に柏田修!』
俺が呼ばれた。
「はい!」
俺が壇上に上がると、私服の為か生徒たちが少しざわついた。
「さっきの私の魔法を避けたのは見事だったな。よく気が付いた」
「まさか、入学式の最中にあんなことすると思わないから、驚きましたよ……。もう次は勘弁してください」
「ふっ……なら、今度からは真面目に話を聞くことだな。――それで、君のクラスなんだが……」
「はい」
「学園長から、清隆たちと同じクラスにするようにと言われていてな。手続きの遅れいるので、せめてものとの処置だそうだ」
「学園長……」
ありがとうございます。こちらが無理言ってお願いしたのに、そんなことまでしてくれて……。
今度お会いしたら、ちゃんとお礼を言っておこう。
「ということで、下がっていいぞ」
巴さんは、みんなのようにクラスを言った後、三種の神器を前には出さず、俺に帰っていいと言ってきた。
「……あの、巴さん」
「ん? なんだい?」
「俺のアイテムは?」
「ない。まあ、しばらくしたら来るだろう」
……そうですか。寮の部屋と同じく、三種の神器すら渡されないんですね。
その後、リッカさんが出ていて魔法使いの心構えについて語り、リッカさんが喋り終わると教員たちの軽い注意事項を伝達され、入学式は終わった。
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