入学式も終わり、俺たちは予科A組の教室へと案内された。
そこでしばらく清隆、姫乃、耕助、四季さんと共に話していると――
「はい、皆、席について~」
と言って、リッカさんが入ってきた。
それと同時に、教室のざわめきが停止する。
「はれれ? なんであの人が……?」
そんなことを言う耕助と同じように皆も一瞬ぽかんと言う顔をしていたが、俺を含めあわてて席に着く。
「今日からマスターとして、この予科1年Aクラスを担当することになりました。リッカ・グリーンウッドです。どうか、よろしく」
「どういうこと?」
俺に小声で聞いて来る耕助に、
「分からん。――清隆、どうしてリッカさんは、なんでこのクラスに来たんだ?」
と返し、清隆に俺が質問する。
「本科生の成績優秀者の3人が予科のクラスを担当するんだって入学式のときに言ってただろ?」
「「そうだっけ……?」」
「お前らな……」
そんな俺たちのやりとりが聞こえたのか、リッカさんが補足を始めた。
「先ほどの入学式でも少々、説明があったと思うけど本学園のマスターシステムについて説明させてもらうわね」
その後のリッカさんの説明によると、予科の各クラスにはマスターと呼ばれる本科生が監督として付く。……これは普通の学校で言うところの、担任の先生みたいなものらしい。
この上級生の指導員が各クラスに一人付く理由は、女王陛下を通じてさまざまに舞い込んでくる依頼にあるという。
基本的に危険な任務は本科生の仕事だが、中には危険な依頼も存在し――また、簡単な依頼のように思えるものでも、命に関わるようなトラブルが発生しないことがないとは言い切れない。
なのでリッカさんたちマスターは、俺たち予科生のサポートするために配属されていると考えて良い……だそうだ。
そういう引率めいたものは、部屋に
ちなみに、B組にはシャルルさん。C組には巴さんがマスターになっているらしい。
「さて――ここからが本題よ。しっかり、聞いて頂戴ね」
一通り説明し終わったリッカさんがそういうので、少し話してざわついていた教室が再び静かになる。
「先ほどの入学式でも言った通り、予科のクラス分けは各クラスの総合力が均等になるように配分されており――A、B、Cというのは、クラスのランキングを示すものじゃありません。けど、クラスにランキングがないってわけではないから、安心しちゃだめよ」
……どういう意味だ?
「A、B、Cという3つのクラスは基本的に色々と競い合って、その
これもまたリッカさんのこの後の説明を聞いて分かったんだが――依頼が三種類舞い込んでいた場合などに、ランキングの高いクラスから順に依頼を選ぶことが出来るらしい。
つまりランキングら高いほうが、難しい仕事だろうが簡単な仕事だろうが選べるということだ。
そのランキングは、与えられた以来の達成率、その過程などを学園側が総合評価して、ランキングが決められるらしい……が。
しかし、最初のランク決めだけはクラス対抗試合によって決められる。
その対抗試合が、何の試合かっていうと――
「クラス対抗試合って何の試合ですか?」
清隆が、こうリッカさんに聞き、その答えが返ってくる。
「えーと、あなたは確か……葛木清隆くんね?」
「はい」
「日本から来たあなたが知っているかわからないけど、グニルックっていう魔法競技よ」
グニルック…………全く聞いたことないな。
でも、クラスの人たちは『ああ、あれか』みたいな反応を示しているので、こちらではメジャーな競技なのかもしれない。
「試合は今から一週間後。ルールを知らない子には、私がしっかり教えてあげるから、安心して授業に望んでちょうだい。ああ、そうそう――」
そこで、リッカさんは唐突に拳を握りしめながら、
「私がこのクラスのマスターになったからには、敗北は許されないわよ!」
と言ってきた。
今までのクールな感じを残しいていたが、瞳の奥に燃やすものを感じた。
「特に! シャルルのクラスに負けることがあったら、ただじゃおかないからね! ……ま、私の指導に従えば、負けるようなことは絶対にないって思っていいわ。ビシバシしごくから、バッチリついてきなさいよね!」
そう言ってリッカさんは、俺たちに向かってウインクをした。
とっつきづらそうな印象があったけど、案外、お茶目な人なのかもしれない。
と、クラスの緊張がリッカさんの笑顔で緩和したところで――キーンコーンカーンコーン――とチャイムが鳴り響いた。
多分、ホームルームはこれで終了、ということだろう。
「じゃあ、今日はここまで。みんな、これからよろしくね」
「およ? じゃあ、今日はもう解散ってことですか?」
「今日は入学式だけだから、そうなるわね。授業のこととかは明日以降、説明するから安心して頂戴」
耕助の問いに、普通に返すリッカさん。
「あ、でも――せっかくだから、この後、予科1年A組の親睦会を開きましょう。私が奢ってあげるわ」
リッカさんの言葉にクラスが盛り上がる。
「じゃあ、私はちょっと学園長室に報告してこなちゃいけないから、皆は教室で待っててくれるかな?」
「はいはいは~い、了解です」
耕助が手をあげながら返事をする。……元気がいいな。相変わらず。
「うん、いい返事。じゃあ、ちょっと失礼するわね」
リッカさんはそう言って教室を出て行った。
――そして、しばらく清隆たちと話していると、再び扉が開いた。
「ああ、そうそう……男子ひとり、ちょっと手伝ってくれないかな」
リッカさんが入ってきて、清隆を指さし、
「え~と、ああ、じゃあそこの葛木清隆くん。頼める?」
と、お願いをしてきた。
「俺ですか? 別にかまいませんけど」
「じゃあ、ちょっとついてきて」
「はい」
「わたしも行きましょうか?」
清隆だけではと、姫乃もリッカさんに声をかける。
「ああ、ひとりいれば十分よ。ありがとね」
「じゃあ、ちょっと行ってくる」
そう言って清隆はリッカさんの後をついて行った。
その後少しの間、耕助や姫乃と喋っていると、サラのシェルに連絡がかかり、葵ちゃんの働いている『フラワーズ』に集合とリッカさんが言ってきたので、クラス皆でフラワーズへと移動。
すると――
「いらっしゃいませ~。予約なさったA組の皆さんですね」
バイトの葵ちゃんが出迎えてくれた。
クラスの皆がお店の中に入る最中、葵ちゃんが俺と姫乃を見つけて声をかけてきた。
「あ、姫乃ちゃんに修さん。お二人ともA組だったんですね。……清隆さんは違うクラスなんですか?」
「ああ、違う違う。清隆はリッカさんの手伝いで少し遅れてるだけだよ」
「そうなんですか? なら、あとで清隆さんにも出迎えなきゃですね」
「ああ、よろしく頼むよ」
「お願いね、葵ちゃん。お仕事頑張ってください」
という会話をして、俺たちも店の中にあるテーブルにつく。
すると耕助が、
「なあなあ! 今の可愛い子、姫乃ちゃんと修の知り合い!」
と、テンション高めでしつこく聞いてきたので、しぶしぶ葵ちゃんを呼んで自己紹介などをした。
葵ちゃんと耕助、四季さんの自己紹介が終わって10分くらいが経った頃。
「清隆さんがいらっしゃったようですよ」
四季さんが俺たちにそう言った。
まあ、魔力が近くに来てるということは、分かっていたのだが……姿が見えないうちに『来たぞ』なんて言っても、説明が面倒なので黙っておいた。
「お、来たな」
「兄さん……」
「ひどいな、先に行っちゃうなんて」
そういう耕助、姫乃、清隆の会話を聞きながら、俺は清隆の姿……というか、少し格好に違和感があることに気が付いた。
いや、恰好はぜんぜん変ではない。むしろ自然でいつも道理に感じられるんだが……どうにもいつもの清隆と
――そうやって俺が悩んでいると、耕助たちの会話の途中で四季さんが、気になる発言をした。
「あら、清隆さん、そんな首飾り、してましたっけ?」
……首飾り?
「何言ってるんだ。最初にあった時から、してたろ?」
「へ?」
耕助が四季さんにそう言い、清隆がヘンな声を出す。
「ねぇ、姫乃ちゃん? こいつ、最初から首飾りしてたよね?」
「え? …………ええ。多分――してた、と思います」
姫乃もその後、耕助に聞かれて不思議そうにするが、耕助の言葉を肯定する。……とは言いつつ、納得はしていないようだけどな。
(……なるほどな)
今のみんなの会話を聞いて、ようやく清隆の違和感の正体が分かった。
四季さんが疑問に思った首飾り。あれから魔力が感じられる。……多分、耕助たちや俺が一瞬気にならなかったことから、あの首飾りを清隆がつけても違和感が無いようにする魔法がかけられているのだろう。
だけど、四季さんは人形だから魔法の効果が薄いし、いつも一緒にいた姫乃にも違和感が残る……といったところだ。
俺も少し違和感を感じてしまったけど、一度分かってしまえば、頭がスッキリしたかのように、首飾りを清隆がつけていなかったことが分かる。
普通は魔力を詳しく解析しなきゃどういう魔法か、または使用者はだれか……などは分からないモノだけど、この場合は清隆が会っていたという人物――つまり、リッカさんだとみて間違いない。
――と、俺がそんなことを考えていると、
「やっほー、皆そろってる?」
そう言って、リッカさんが遅れてやってきた。
「そろってますよ」
「…………」
そしてそろっていることを伝えた清隆の方を一瞥する。
しかし、それは一瞬のことで、すぐに何喰わない顔に戻った。……俺も、ついさっきまでリッカさんの事を考えて、よく見ていなきゃ気づかなかっただろう。
「ふむふむ、よろしい。じゃあ、今日は私の奢りってことで、皆、存分に騒いで頂戴」
「は~~~い!」
リッカさんの言葉に、耕助が元気よく返す。
……仕方がない。皆の前で何があったのか聞くわけにもいかないし……後で清隆に部屋で聞こう。
――という結論にして、俺は席をシャッフルしつつやる自己紹介で、『どうして私服なのか』の理由を話しながら、新しい仲間たちと雑談をしたのだった。
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