しばらく、親睦会の席でクラスのみんなと話していると、俺の
これは、シェルと同じく魔法を使い文章……というか手紙を送るものだ。実際、映し出す物は広げると一般的な手紙サイズくらいだし、紙のように柔らかくて折り曲げても平気だ。……破れたら魔法で直さないといけないけど。
この手紙には名前が無く、俺は勝手に『魔手紙』と言っている。まあ『魔法の手紙』の略なんだけどな。
使い方は簡単で、これの持ち主(俺と恵子さんしか持っていないけど)が、『魔手紙』に直接文字を書き、書いた後、魔法で送る。
しかも、シェルとは違い、いつでも手紙の連絡が出来る。
なぜなら、送るための魔法を『俺の魔手紙と恵子さんの魔手紙のみ』という制限に『文章のみ』という制限も加えて、魔法を簡単にして魔力が少なくても届くようにしているからだ。……ということで、製品化および清隆たちもこれは持っていないのだ。
なので、俺はどこでも恵子さんとは連絡は取れる――訳なんだが……恵子さんがこれを送ってくる場合は、ほとんどが仕事の手伝いのお願いなのだ。
過去のこの魔手紙に保管できている手紙(少しなら送ってきた手紙を取っておけるのだ)を見ても、約8割が仕事の手伝いだ。
今回はどんな内容なのかなぁ……と思いながら手紙を開くと。
『修へ。学校は始まった? そんな始まってすぐで悪いんだけど、やっぱり私だけだと商品のアイデアがあまり出ないの。なので修も手伝ってくれない? 内容は――』
などと書かれていた。
よく見てみると、二つのお願いがある。
(……これ、一つはいいとしても、もう一つはすぐにでもやらないと終わらないんじゃないか?)
そう思い、仕方がないがこの場を早く切り上げて寮へ帰ることにした。
俺が風見鶏に行く際に、恵子さんとの約束で『アイデア出しだけは手伝う』というのをしてしまったのだ。
理由は、こういうのは大勢で考えた方が良いし、魔法づくりのアイデアにもなるかもしれないからだ。
もちろん入学費や生活費とは別に少しのバイト代も貰える。
授業料や生活費は全部恵子さんが出している。なので月々の仕送りにその分をプラスして、お金が俺に送られてくるということだ。
……生活費とかを出してるんだからいらない、と言ったんだが『生活費なんかは親のかわりである私が出す。それが私の義務なの。――仕事の手伝いも、修が手伝って働いたんだから、社長である私がお礼にお金を渡す。これも私の義務なの』と言っていたので、ありがたく受け取らせてもらっている。
なので極力、恵子さんから来た仕事はキチンと手伝ってあげたいのだ。それがお金を貰い……そして育ててもらった者の義務だと思うから。
そんな理由で、俺はリッカさんに許しをもらってから、清隆たちに声をかけフラワーズを出た。
リッカさんに了解をとり、親睦会を切り上げて俺の荷物の置いてある部屋に、早速届け物が届いていた物を見てみる。
それを見ながら、清隆に夜遅くになるかもしれないので、俺の荷物の置いてある部屋にある一畳半くらいのスペースで、俺の荷物を机にして紙を置き、考え始めた。……までは良かったのだが……。
「………………ダメだ。全然わからない……」
懐中時計で確認してみると、部屋に入って考えること約4時間。いくら考えてもいいと思うものは出ない。
恵子さんからのお願い――それは『外国人女性に似合う和服のデザイン』を考えてほしいというものだった。 確かに日本には現在、戦争が終わり外国人の女性が来てくれているが……普通の和服を着せるのはダメなのか? と恵子さんに聞いたら『送った和服の中からよく似合うのを数枚選んで』と返事が返ってきた。
なので俺は送られてきた荷物の中に入っていた紙(あらかじめナンバーがふられており、それにマルをするだけ)には、ほとんど何も書かれていない。
というか、実際に着てもらう人がいないと無理なんじゃないか、これ?
勝手に想像して悪いかもしれないが、リッカさんやシャルルさん、サラなどが着ている姿を考えても、行きつく答えは――『全部似合ってる』――この一言だった。
でも仕事なんだし、何枚かは選ばないとならない。でもだからと言って適当に選ぶのも気が引ける。
だから誰かに何回か着てもらう……というのが一番の理想なのだけど……実際それは無理なお願いかもしれない。
この和服のお願いは、遅くとも明日の朝までに仕上げないと間に合わない。
普通はもう一つのお願いのようにゆっくりでも良いか、数日は大丈夫なのだが……どうやら、荷物をココへ送る期間を計算に入れてなかったらしい。それに気づいたのは荷物を送った後らしく、魔手紙にもお詫びが書かれていた。
けど、俺に『遅くなるかもしれないんで、男子寮に来て和服を着てくれませんか?』なんて頼める外国人女子は、親睦会まで抜け出して来ているのでいるわけがない。
……どうせならもっと早く気づくべきだった。そうしたら、ラウンジなんかで……いや、どこで着替えさせるって話だよ。それにそんなところでお願いなんかしていたら、確実に変人だ。
「――ん~…………はぁ」
軽く伸びをして、頭を休める。……仕方ない、あとの事はご飯でも食べた後に考えよう。
考えたら速行動――という言葉かよく似合うほどに、俺は頭を切り替え、ご飯を食べるために食堂へ向かう為部屋の出口へ向かう。
まだ6時少し前だし食堂混んでるかなぁ、なんて考えていたら――出口の扉を開けようとしてふと気付く。部屋の奥に入るために積み重ねた荷物が、こちらに倒れてくることに!
「――うわっ、あぶなっ!」
とっさに扉を開けて回避…………したは良いものの、
「……めんどくさそうだなぁ」
荷物があふれ、廊下にまであふれ出て来た。
不幸中の幸いだけど、壊れている物は無さそうなんだが……見るからにこれは片づけるのがめんどくさいのが分かる。
「うわぁ、盛大にやらかしたわねぇ」
「メアリー。ただでさえ男子寮に来ちゃいけないのに来てるんだから、そういうことは言わないものだよ。男子はあまり片づけしない人もいるんだし、メアリーが勝手に見たのにそんなこと言うなんて失礼だよ」
……いや、この件に関しては、誰だか知らないけどフォローしてくれるのは嬉しいけど、俺が悪い。
なので俺は声のした方へ向き、
「いや、これに関しては俺が悪いよ。……でもフォローしてくれてありがとな」
と声をかける。
「別にフォローのつもりじゃなかったんだけど……そう言ってもらえると嬉しいかな。……でも、ごめんね。メアリーがヘンなこと言っちゃって」
「いやいや、こっちの荷物の整理ができてなかったのがいけなかっただけだし……えーと……エドワード……って名前だったっけ?」
俺は見覚えのある二人の、フォローを入れてくれた方に聞く。
この二人、確か入学式で遅刻をしてきた二人のはずだ。
あの時は巴さんに『ちゃんと聞くように』と言われて少ししかたってなく、さらにあんな派手に登場していたので、名前を何となく憶えていたのだ。……名前にも少し興味があったしな。
「あれ……? 僕の名前知ってるんですか?」
俺に名前を言われて不思議がるエドワード。この反応を見るに間違いなさそうだ。
……それにしても、入学式の時は大勢の人がいたから気づかなかったけど、エドワードの魔力の波長って……。
「いや、入学式で目立ってたからさ。何となく名前を憶えてただけだよ」
「あはは、それはお恥ずかしい所を……」
「確かに、あたしたちも遅れたせいで目立っていたけど、あんたも相当目立ってたわよ。入学式に私服で、さらに一人だけ三種の神器を貰ってないんだから」
「うっ……」
エドワードの隣にいた、背の低い金髪の女の子が、人が気にしている所を的確に言ってきた。
顔は可愛いんだけど……俺の中で、この子の第一印象は『言葉に遠慮がない女の子』と決まった。
「こらメアリー、またそんなこと言って。ダメだろ、気にしてるかもしれないんだから」
そして先ほど同様に、すぐにエドワードがメアリーに注意を入れる。
エドワードはメアリーとは違い、第一印象は悪くはない……のだが、しかし先ほどから感じる魔力の感じのせいで、少し特殊な第一印象がつくられてしまっている。
それは『真面目そうな、女装して可愛い男子』というものだ。
魔力の波長と言うのは、魔法によって違う。
それは人も同じで、魔法を使う為に魔力の波長を変化させない普段の状態では、人によって違う。
さらに言えば、魔力……すならち魔法に必要なのは『想いの力』。なので、男女によっても当然違ってくるのだが、逆にいえば少しは性別ごとに共通した部分をあるということだ。
そして、エドワードからは明らかに女の子からは感じられない魔力を感じられた。見た目は女の子なのに。
「ごめんね。えーと……」
「あ、俺は日本から来て、名前は柏田修っていうんだ」
「修くん。――改めていうけど、ごめんね。メアリーがヘンこと言っちゃって……」
エドワードが申し訳なさそうに謝ってくる。
「いや、いいよ。誰だって入学式に私服でいたらおかしく思うから。……でも、今度からはあまりそこに触れないでいただけるとありがたい」
「わ、わるかったわね。よく考えもせずに言っちゃって……」
「いや、だから大丈夫だって……それより、キミの名前はメアリーであってる?」
「ええ、そうよ。あたしはメアリー・ホームズ、B組よ。で、こっちのがエドワード・ワトスンで同じくB組。まあなんというかエドワードとは腐れ縁なのよ」
「改めてよろしくね。修くん」
「ああ、こちらこそよろしく」
お互い握手をして自己紹介を済ます。するとその後にエドワードが再び申し訳なさそうな顔をして、
「それで修くん。さっきのメアリーの発言のお詫び……って訳じゃないけど、荷物も片づけを手伝っても良いかな? このままじゃ廊下を通る人にも迷惑かもしれないし」
「いや、でも……」
「三人で済ませた方が速いわよ。やるんだったら、早く片付けしょ」
「あ、メアリーもやってくれるんだ。……じゃあ、申し訳ないけど頼めるかな」
こうして俺は二人に片づけを手伝ってもらうことになり、ものの数分で片づけを終わらした。
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