ロクデナシが二人に増えて前途多難ですが、生暖かい目で見守って頂ければ幸いです。
アニメの一話が終わった後、グレンとシスティーナとの対決が終わり、授業でグレンの評価が見直された所からのスタートです。
一応オリキャラの挿し絵(白黒)だけ出来たので投稿してます。
【挿絵表示】
「どうして、教師を続ける気になったんだ?」
セリカがグレン・レーダスに尋ねる。
「あいつらの……未来を見てみたくなったからな」
そういうと、下校するルミア・フィーベルと白猫ことシスティーナ・フィーベルを見送る。
「そうか、私も教師に推薦した甲斐があったよ」
自慢げに語るセリカにグレンは毒気つく。
「イクステイング・レイで消し炭になるのも嫌だからな」
フフッ、とセリカが笑うと少し考え込むような仕草をして、グレンに尋ねる。
「一人、任せたい生徒がいるんだが……いいか?」
露骨に嫌な顔をするグレンが、両手をクロスさせて拒否の意思を表す。
「まぁ、そう言うな。真面目で素直で、能力も魔力適正も問題ない。形としてはクラス替えになるのか、編入かは校長と話をしてからだが」
「素直で、真面目ねぇ……」
頭を掻き、屋上から校内に戻ろうとするグレン。
「どうせ断れないんだろ、別に一人や二人増えても問題ねぇよ」
そう言うと、すでにグレンの姿はなかった。セリカは手すりに背中を預けて、空に向けて呟いた。
「それと、お前に負けず劣らずの、トラブルメカーだ」
その言葉がグレンに届いていたのかどうかは、分からない。
『そう遠くない昔、大錬金術師と呼ばれる賢者がいました。百人が百人認める才能とその錬金術は周囲の尊敬を集め、東西南北あらゆる地から教えを乞いに来る者が後を絶ちませんでした。
「大錬金術師様、真理とはなんですか?」
ある日、一人の弟子に問われました。しかし、大錬金術師は答える事は出来ませんでした。
「真理とは、私にも手が届かぬ領域だ」
それから、大錬金術師は真理を追究し始めました。その途中で弟子達同士で争いが起こるようになりました。大錬金術師は呆れて人里離れた場所で静かに研究しました。
争いは続き、互いが取り返しの付かないほど消耗したところで大錬金術師がいなくなっていることに気がつきました。勝った側も負けた側もボロボロで、どうしようも無くなったときに始めて弟子達は気付きました。
「争いを起こしたことが、間違いだったのだ」
気付いたときにはすでに遅く、弟子達は衰退していきました―――』
「えー、新しく編入して来たラケル・マグヌス君です。皆仲良く……あれ?」
名前を紹介しただけなのに、教室がざわつく。
「あー! あんたは!」
ウェンディが席を立ち、ラケルに指を差し叫ぶ。
「ん、なんだ知り合いか?」
グレンの問いに、悔しそうな顔でウェンディが答える。
「私の領地で出しているワインを買って、各地で売りさばいているマグヌス家の一人よ!」
ウェンディの言葉に小声で返す。
「それは唯の運送屋では……?」
「唯のじゃないわ! 出来が良い時は、早く買って高値で売りさばき、不作の時は売れ行きが悪くなったところで安値で各地に運ぶ姑息な商人なのよ!」
「商売上手ですね」
「……まぁ、なんとなくわかった」
家業でぶつかり合う間柄なのだろう、とグレンが呟くと別の声が聞こえた。
「グレン先生、質問ですが、本当にマグヌス家をこのクラスに加えるのですか?」
ギイブル・レイダン、錬金術が得意の眼鏡君だ。普段は冷静だが、どこか不穏な空気を醸し出している。
「ああ、俺の意思じゃないが、上の指示には従うさ」
責任転嫁をさりげなく行っていくスタイル。
「……正気を疑いますね。あんな没落貴族をこの学園に入れるとは、どうせ成金にお金で無理矢理ねじ込まれたのでしょうが」
苛立った雰囲気隠す様子もなく、ギイブルが眼鏡越しにラケルを睨む。それを感じてグレンがラケルに耳打ちする。
「おい、あんなこと言われてるけど……」
「ん? 大体合ってると思いますが、どうされましたグレン教諭」
頭の上にクエスチョンマークを浮かべたような顔でラケルが返事をする。その反応が意外だったのか、グレンは少し驚いたようだ。
「その行為が、恥曝しだと気付かない馬鹿親も問題外だと思いますがね」
ギイブルが不満を垂れ流しているのを、ルミア=ティンジェルが諫めようとしたが、それよりも早く、ラケルが反応した。
「これは僕個人の問題であり、父上と母上への侮辱は止めていただきたい、ギイブル殿」
ギイブルがラケルに反応しそうになるのをグレンとルミアが止める。
「まてまてまて! 早々にケンカを始めるな、面倒くせぇ!」
「そうだよ、ギイブル君も流石に言いすぎだよ!」
フン、と鼻を鳴らし、これ以上の諍いには発展しなかった。しかし、ギイブルが抱いている嫌悪感はクラスルームの皆も同様で、ラケルが座る席から誰もが離れて行った。
「はぁ……まぁいいや、授業はじめっぞ」
いつも通りにやる気のなさそうなグレンの言葉から講義が始まる。
「グレン先生、どういうことなんですか!?」
最初の講義が終わり、休憩の時間になる。次は錬金術の講義なので、皆がそれぞれ準備を始めているのだが、システィーナ=フィーベルがグレンを問い詰める。
「なんのことだ?」
「惚けないでください! 流石に言葉にはしませんが、ギイブルが言ってる事は正論だと思います!」
どうやらシスティーナも、ギイブルと同意見だったらしい。だが、それにグレンは真面目に答えようとはしない。
「俺はべつにいいんじゃね、って思うけどな。入ってくる奴の大概が金持ち貴族のボンボンってだけで、入学してはいけないルールはなかったはずだぜ?」
グレンの言うとおり、身分や経歴への規則はないが、それ以前に無名の者やいかがわしい者は審査で弾かれており、暗黙の了解という形にはなっていた。
「システィ、言いすぎだよ? 何か理由があるかもしれないし、もしかしたら本当に凄い人かもしれないんだらか、ね?」
ルミアが横からシスティーナを宥める。
「意外と良い奴かもしれんぞ? 俺は知らないけど」
「どや顔で何言ってるんですか! このロクデナシ教師!」
そう言い、怒りを顕わにしながらも、席に戻るシスティーナ。それに併せてルミアも席に戻った。そうしてまもなくチャイムが鳴り、錬金術の講義が始まった。
「え~、と言うわけで、これが錬金術の基礎となる詠唱になる。それぞれ、土、炎、水のルーンを現し、これを改変していくに当たって様々な物を作ったり、動かしたりしていく訳だが……勿論取り扱う魔術、物質に寄って、炎のルーンが詠唱省略に行われる傾向がある」
グレンがそう言うと、三小節の詠唱の真ん中の炎を現すルーン詠唱に丸を付ける。それに対し、ラケルが手を上げる。
「質問なのですが、どうして炎のルーンが省略されるのでしょうか?」
その言葉に、ギイブルが怒気を込めて答えた。
「過去に大錬金術師が『炎のルーンこそ、重要な要素である』と説いた事があるが、それはその時代での熱量のイメージが行いづらく、失敗例が多かった為で有り、現代における魔術において重要な要素とはなり得ない。錬金術の基礎の第七章に書いてある言葉だ! どうせその事を言ってるんだろう!?」
それに対しラケルが答える。
「あぁ、そんな本があるんですね。知りませんでした」
「てめぇん家の先祖が書いた文献だろうが! そんなことさえ知らずにここに来たのか! 馬鹿にも程があるぞ!」
激高したギイブルが指を指し、ラケルを睨みつけ、更に続ける。
「やっぱり、親が親なら、子も子ってことだな! お前の自慢の親も、とんでもない馬鹿なんだろうな!」
その言葉にグレンが反応し、ギイブルの元へ走り出す、しかしそれよりも早く、ラケルがギイブルの正面に立ち、首を締め上げる。
「……警告は、しましたよね?」
ギリギリと締め上げられ、ギイブルの口から泡がこぼれ出す。
「くっそ、俺より喧嘩っぱやいなんて聞いてねぇぞ!」
そう言いながら、ポケットにあるカードを手にし、固有魔術『愚者の世界』発動させる。勿論、その効果範囲内にギイブルとラケルも含まれており、あらゆる魔術の発動が制限される。
「……えっ?」
次の瞬間、ラケルが崩れ落ち、床に倒れ込む。解放されたギイブルは咳き込み苦しそうにしているが、大事には至っていないらしい。
「せ、先生! 流石にやり過ぎじゃ!?」
グレンは急いで固有魔術を解く。
「い、いや、そんなに大したことはしてないはずなんだが……」
グレンは少々驚きながらも、ラケルの状態を確認する。
「……息してねぇ、心臓も止まって脈も止まってる」
教室が一瞬で混乱の渦と化した、なにせ教師が生徒を殺したのだから、当然の反応だろう。
「……ゲホッ、ゲホッ」
しかし、その数秒後には息を吹き返したようだ。意識は失ったままだが、呼吸も正常で脈もある。
「と、とにかく俺はこいつを保健室に運ぶ、悪いがあとは自習だ」
そう言ってグレンが気絶しているラケルを背負い、運び出す。
「……くそっ、これだから野蛮人は」
「おい、ギイブル。それ以上は止めとけ貴族様の選民思想は分からなくもねぇけど、今のお前じゃ見苦しいだけだぞ」
グレンはそう言い残し、教室を後にした。乱暴に拳を机に叩き付けたギイブルは、その後一言も発しはしなかった。
一面ほぼ真っ白な保健室、窓にはカーテンが掛けられており、ベッドが二つと移動式の仕切りがある。担当は不在のようでグレンがラケルをベッドに寝させる。
「……ん、ここは?」
「おっ、目が覚めたか。ここは保健室だよ、ぶっ倒れたお前を運んでやったんだ、感謝しろよ」
グレンは軽い感じで返事をした。
「ありがとうございます、お陰様で記憶障害もほぼなさそうです。一部筋繊維と関節に異常がありますが、それも問題無い程度ですので」
ラケルが当然のように頭を下げる。セリカの言ったとおり、真面目は真面目だが、色々とおかしい。
「んで、なんで倒れたのか教えて貰ってもいいか?」
ラケルは、勿論と返す。
「生まれつき体が弱く、内臓も筋繊維、果ては筋繊維や皮膚細胞、神経系も貧弱ですので、魔術で体を動かせるようにしてあるんです。ついでに、魔術を常に行使し続けなければ、体の一部の機能がストップしますが、流石グレン教諭の固有魔術には恐れ入りました。まさか、全て止められるとは思いませんでしたから」
ラケル本人は笑い事のように話すが、グレンは真剣にラケルを見る、いや見定めている。
「確かに、筋は通ってるな。んで、壊れた一部ってのは何時までに直せそうだ?」
グレンの問いに対して、直ぐにと返事をした。
「ア・ブラ・カ・タブラ」
その詠唱と共に、ラケルの全身に魔術陣が浮かび上がる。
「はい、直りました」
グレンが驚き、口を開く。
「お前、便利だなそれ」
「そうですか? マナも消費しますし、体内に魔方陣を刻まないといけないので、多用はおすすめ出来ませんよ?」
「げぇ、中に刻んでんのか。魔術制御が不安定な俺には無理だな」
そう言うとグレンは腰を上げる。
「どうせ午前の講義は自習だ。飯食う元気があるなら、食堂に直行していいぞ」
そうしてグレンは手を振りながら保健室を出て行った。
読了ありがとうございました。