ロクデナシっ^2   作:3148

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魔術競技祭始まりました(第六話)

オリキャラ不在のストーリーですが、ウェンディとテレサメインですので割とぶっ飛んだ話です(笑)




魔術競技祭 第六話

 それぞれの思惑を胸に魔術競技祭が開催される。但し、そのスタジアムの中にラケルの姿はなかった。

「まぁ、人目についてもまずいからなぁ」

グレンが呟くと、それにへんとうするかのように腹の虫が鳴る。システィーナを中心にクラスのボルテージはマックスに近い。

「さぁ、全員で優勝するぞー!」

始まるとハーレイ教諭率いる一組と一位を競り合う形になっている。だが、どうしても劣勢を強いられる形になっている。

「さぁ、私の出番ね」

腕をぐるぐると回して、ステージに向かう。同学年の強豪達が競技が始まる時間を待ちわびている。

「ほう、ここでウェンディを使うのか、確かに単独で点数を取れる暗号解読なら、点数を獲得しやすいだろうな」

徐々にではあるが、点差を付け始めている一組は余裕の表情だった。それにシスティーナが反論する。

「ウェンディは絶対勝ちます! ここでしっかりと点差を埋めるんですから……」

そう言ってハーレイと向き合おうとするとグレンに首根っこを引っ張られる。

「な、なにするんですか、先生!?」

「ハーなんとか先輩のことは一旦置いとけ、じゃないと見逃すぞ」

さりげなくディスって行くグレンの瞳はステージの上のウェンディしか見ていなかった。

「はっ、仮に一位をとれたところで点差は然程埋まらんぞ」

一位から順に点数が振り分けられるこの競技では、勿論一位をとるだけでも優位に立てるが、それだけでは現在の点差を縮めるには心許ない。

「……お願い、ウェンディ」

両手を合わせ、祈るシスティーナ、冷めた目で見つめるグレン、思惑とは関わりなく、競技が始まる。

 

 「さあ、これより『暗号解読』の競技を始めます! 問題については僭越ながら私から出させて頂きます。なお、正解については私にも知らされておらず、回答者が正解した時点で問題用紙に反応するようになっておりますので、千里眼、精神探索の類での不正は事実上不可能となっておりますので、公正なジャッジが行われます」

解説兼出題役がマイクを持ち、ステージに立つ生徒達に準備はいいか、と確認をする。一組には昨年の優勝者が立ち、一位争いにどれだけ食い込めるか、そういった内容の前置きをして、出題へと移る。

「第一問 かみ―――」

「射程 三十メルトル」

出題から僅か二秒、ウェンディが解答する。出題者の手元の問題に変化が起き、解答が写しだされていく。一瞬の静寂がステージを包み、出題者の反応に注目が起こる。

「な、なんと……正解! 正解です!」

実況から数秒遅れて、スタジアムが歓声に見舞われる。他の参加者も驚き、ウェンディを呆然と見る。

「逆転出来ないのが残念だけど、しっかり一位は取らないとね」

ウェンディが一組を見下す。最早敵とすら認識しておらず、獲物として見ている。

 

 その後は全問正解とは行かず、十五問中五問をウェンディが得点する形になった。しかし、一組は完全にリズムを崩し、無理に得点を取るために早押しで取り逃したり、単純なミスで順位を落としていく。そうして迎えた十六問目。

「だ、第十六も―――」

問題文が出題される前に、ウェンディの解答が始まる。

「魔術競技祭の最終問題は最近の魔術、または来賓に関連のある問題が出される傾向があるわ。今年は女王陛下が来賓として来られている以上、王室関連の問題ね。暗号解読の講師と過去の出題傾向から、出されるのは『王族と魔術の歴史』から出題される可能性は高い。そして、出題者が出題前に一組を見た、つまりそれに関わる問題……去年に出された問題ということ」

長い前置きと一組にちらりと眼を向けるウェンディ、完全に戦意を失っている相手を更に叩きのめすかのように、正答を口に出す。

「『王族と魔術の歴史』第七章 引き継がれる固有魔術とその遍歴 それが答えですわ」

出題者が唖然とする。その驚愕に関わらず、問題用紙は無感情に正答を写しだす。答えはウェンディの言うとおりの内容だ。

「正解だー! 一体誰が予想したでしょうか! 二組ウェンディ選手の六点獲得による圧倒的一位です! 他の選手も健闘しましたが、異常とも言える解答速度に戸惑い、本来の実力を出し切れず、終わってみれば二位と二点差を付け、優勝候補はなんと三位に転落! 皆様、今一度、健闘した選手達に拍手をお願いします!!」

 

 「ば……馬鹿な」

確かにウェンディは学年に十人いるかどうかの第二階梯の魔術師だ。しかしここまで大差で敗北することを誰が予想できただろうか。

「す、凄いわ、ウェンディ」

システィーナも唖然として、ただただ賞賛することしか出来なかった。

「確かに凄いが、流石にやり過ぎだろラケルの奴。誰がここまで極めさせろって言ったんだよ……」

グレンがため息交じりで呟く。元々素養があったとは言え、短期間でここまで結果を出すとなると、常人とはとても言えない。教える側も結果をだす人間も、だ。二組も結果に驚きが収まらない内にウェンディが戻ってきた。

「見ていましたか、私の活躍を! 私の手に掛かれば、この程度お茶の子再々ですわ!」

いつも通り若干調子に乗り過ぎなウェンディに対し、クラスメイトは安心し、囲んで褒め称える。

「すげーよ、どうやったらあんな事出来るんだよ!?」

「ウェンディ、一位おめでとー!」

クラスの皆から褒めちぎられ、満足そうに胸を張るウェンディ。

「……くっ、だが次の浮遊魔術ではそうはいかんぞ」

ハーレイ教諭が悔しそうに呟くと、グレンが答える。

「いや、それは諦めといた方が良いっすよ、ハーレム先輩。流石にアレに勝つのは、俺たちでも厳しいんじゃないっすかね」

「誰がハーレムだ!? 私は……何、今なんと言った?」

ステージに目を移すと、そこにはテレサの姿があった。

 

 「よろしくお願いいたします」

行儀良くお辞儀をするテレサに、周囲は少し戸惑いを見せる。見た目は地味だが、抜群のプロポーションと穏やかな雰囲気で隠れファンも少なくないという。そして、実況のかけ声と共に、浮遊魔術競技が始まる。まずは一番軽い物から、徐々に重くなっていく物体を一定時間、一定以上の高さに維持し続けられるかを競う競技であり、最終的には一番重い重量を持ち上げられた者、重量が同じの場合は持ち上げられていた時間で競う競技なのだが。

「まずは一つ目、全員が軽々とクリアしていますね!」

実況はそう伝えている。その通り、誰一人として危なげなくクリアしている。その中、教諭陣が驚いている。

「なんだ……あれは?」

「いや、俺も訓練ちょこっと見せて貰ったんすけどね。全くぶれない上に、魔力供給も魔術自体の安定性が段違いなんですよ」

グレンの頬に冷や汗が流れる。ハーレイが唾を飲み込み、スタジアムを見る目が変わる。

「ど、どういう事ですか?」

未だ理解が追いつかないシスティーナも、競技が進んでいくに連れてその異常性に気付く。ウェンディ程インパクトは無いが、徐々にそれはしっかりと目に映る様になっていった。

「……重量も増していき、脱落者がでて、残りの人数は四人となりました。なりましたが……これは、どういう事でしょうか?」

驚愕に上手く実況が出来ていない。他の三人の選手は重くなった物体をふらつかせながらヤッとのこと落とさないようにしているのに比べて、テレサは最初の時と同じように、全くぶれずに物体の高さを維持し続けている。マナの消費に疲労を見せていく選手を横目に、僅かたりともマナ減少による疲労を見せない。

「そりゃあ……テレサがマナの扱いが上手いのは知ってるけど」

システィーナが徐々に現れた異常に戸惑いを見せると、グレンが口を挟む。

「実践でも百%発揮出来る訓練も積んでたんだろうな。ぶっちゃけ、俺の安定しない魔術だとあそこまでは無理だわ、すげーな」

グレンは正直に浮遊魔術についてはテレサのほうが優れている事を認めた。ハーレイも口に出すことはないが、ただ眺めていることしか出来ず実力を認めているのは明白だった。そうして、最後まで一分の隙も見せずテレサが一位を取る。その得点を持って、二組が一組への怒濤の追随、そして逆転の目が見え始める。

「射程距離内に入ったぜ、ハー何とか先輩」

「……ハーレイだ、二度と間違えるな」

そう言い残すと、踵を返して戻っていく。二連敗を喫した一組を激励しに行ったのだろう。

「うん、二人とも……凄かった」

システィーナが正直に賞賛の言葉を口にする。そうして、戻ってきたテレサを二組全員で盛大に褒め称える。そうしたことに慣れないのか恥ずかしそうに遠慮するテレサだったが、やはり努力が実って嬉しいのか、表情の端々に歓びの色が見えていた。

 




読了ありがとうございました。

やり方、考え方が全然違う人間が加わることで成果が出るのはある意味ロマンだと思います。
勿論、実力があって、尚且つ努力しているという設定ですが(笑)
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