ロクデナシっ^2   作:3148

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リィエル登場回です。

今回限りのオリキャラ(名前はありません)もいますが、書きたかっただけです(白目)


魔術競技祭 第七話

 システィーナのサンドイッチを知らずに食べ、女王陛下との邂逅とルミアの複雑な反応に些かの不安を覚えつつ、グレンは午後の競技が始まっても姿を見せないルミアを探す。

「しっかし、白猫の奴も様子がおかしかったが、競技は大丈夫か?」

あいつにも点を取って貰わないと、と見当違いな言葉を発しながら、学院の中庭を見渡すと俯いてベンチに座っているルミアの姿が見えた。

「こんなところで何してんだ?」

グレンが声を掛けると、ルミアが返事をする。

「女王陛下がどうお考えになっておられるのか分からなくて……私の反応が正かったかどうかすら」

胸に着けているロケットを握りしめ、不安そうな、辛そうな複雑な顔で再び俯く。

「そんなに深く考えなくても良いと思うけどな。親子なんだし、言いたいことぶつけても良いんじゃ無いか?」

グレンのアドバイスでも、ルミアの表情は変わらない。複雑な立場に立っていることを自覚しているからこそ、縛られ動くことが出来ないのだろう。恐らくは、母親を思う感情もまた、彼女を縛る鎖となっているのだろう。

「ルミア=ティンジェルだな」

そうして、ルミアとグレンが話していると、王族近衛部隊が一小隊現れた。

「……近衛部隊様が、ルミアに何の用っすかね」

不自然さを感じ取ったのか、グレンが警戒する。その内の一人が一歩前に出て、口を開く。

「ルミア=ティンジェル、一市民の分際で女王陛下暗殺を企てた罪で処刑する」

そういうとグレンが反論する。

「馬鹿言え! 女王陛下が裁判も無しにそんなことを……」

「これは女王陛下からの勅命である。一講師に口をはさむ権限はない」

それ以上反抗すると貴様も国家反逆罪となるぞ、と近衛騎士団が警告する。

「一市民の分際で、女王陛下の暗殺を企てた罪、この身をもって償います」

淡々と頭を垂れ、片膝を突き、首を差し出す。ルミアが何を考えているのか、有りもしない罪を認めたのは、生まれ背負った業故か、本来なら愛情を持ち合わせるはずの親子に宣告させられたからか。

「貴様は黙っていろ!」

騎士団の一人に手刀をたたき込まれ、地面に伏せるグレン、そして手を引かれ連れ去られるルミア。抵抗もなく、その場は静寂に包まれる。

 

 場所は変わり、スタジアムの外森林区に連れて来られたルミアは一本の木に縛り付けられている。

「急所を切る、動けば苦痛が長くなるだけだ」

そう言って近衛騎士団が剣を構える。覚悟を決めたルミアは、目を閉じ、震える体を押さえる。零れた一筋の涙は、誰を思ってかは、知る術は無かった。そうして剣が振り抜かれる一瞬、突然の閃光が騎士団を襲う。

「な、なんだ!?」

困惑する騎士団の声と打撃音、閃光による混乱が収まる頃には三人の騎士団の倒れている姿とグレンの姿があった。

「ったく、思いっきり殴りやがって」

「先生!? どうして……」

困惑からか、言葉にすることが出来ず、喉を詰まらせるかのようにルミアは何も言えなくなる。

「こんなおかしな事が起こるはずがないんだよ、それにな」

一人閃光に動じず立っている騎士団が剣を構え、振りかぶる。

「先生っ!?」

動けぬ己のみよりもグレンを案じるルミア、だがグレンはその剣に見向きもしない。そうして、振り抜かれた剣はルミアを縛る縄を切り抜く。動きが自由になったルミアは、再び困惑する。

「落ち着けよルミア、お前もそろそろ面を外せラケル」

グレンのその言葉に兜を取り外すと見知った顔が現れた。

「ら、ラケル君!? どうして!?」

その問いにラケルが答える。

「遠隔で競技祭を観戦していたのですが、二つほど気になる点があったので、目立たぬ格好に扮し、忍び込んでいたのです」

きょとん、とルミアが頭の上にクエスチョンマークをを浮かべると、グレンがそれを無視し、ラケルにとう。

「お前は一体どこまで知ってる? 騎士団が女王に反して勝手に動くことはねぇし、ましてやルミアに手を出す理屈もないはずだ」

この事態の全てがおかしいと言うグレンに返答をする。

「現在分かっている事は、ルミア殿を早急に処刑することが女王陛下からの勅命であること、そして近衛騎士団総員で夕没までに速やかに実行すること、この二つです。経緯に関しては知るところではありませんが、近衛騎士団及び女王陛下以外からの外部干渉による異常事態である可能性が高いと思われます」

そうなるとある程度予測を立てる事が出来るが、どちらにせよ真相に至るには遠い。

「推奨、現状維持のまま情報収集を行うこと及びルミア殿とグレン教諭の同行」

ラケルの提案に対し、グレンがぶっきらぼうに返事をする。

「んなことは分かってるんだよ。取りあえずスタジアムから離れすぎないように……市街地方面に身を隠すか」

「で、でも……先生?」

ルミアの不安そうな表情に、グレンが答える。

「安心しろ、お前が自分も女王陛下も信じられないなら、俺を信じろ。大丈夫だ」

ルミアは零れる涙と共に一度だけ頷く。

「数分後に改めて二小隊が此処に到達します。速やかな移動を提案します」

「言われなくても、よっと」

グレンがルミアを抱え、浮遊と肉体強化を合わせた魔術を唱え、軽々と城壁を昇り、市街地方面に走り出す。ラケルはそれを見送ると再び兜を被る。

 

 王族近衛騎士団二小隊がルミアとグレンが居た位置に辿り着くと、一人の兵士が立っていた。その目の前には三人の兵士が倒れている。小隊長と思しき大柄な兵士が部下に救護班の要請をだす。

「貴様、どうしてここにいる」

女王陛下の勅命は魔術師とはいえ、少女一人を処分する事、三人が倒れていることも、一人が呆然と立ち尽くしているこの状況も、不自然に映るのだろう。

「……学院の講師一人に、瞬く間に倒されました。一歩離れていた僕は襲われませんでしたが、追う事も……叶わず」

鎧の外からでは分かりづらいが、僅かに手が震えているのがわかる。もう一人に小隊長が耳打ちをする。

「嘘は、ついてないようです」

少し小柄な、声を聞く限り女性の兵士は、観察眼に優れ、体温の変化や僅かな挙動から偽装を見抜くことが出来るようだ。身体能力が然程高くなくとも小隊長に任命されたのも、その能力からだろう。

「処刑対象とその学院講師の行方は」

冷淡に大柄な小隊長が尋ねると、一人の兵士は答える。

「城壁を昇り、市街地方向へと逃亡するところまでは……確認しました」

その言葉と同時に二小隊が市街地方面へと移動を始める。

「任務を遂行出来なかった貴殿には後に厳罰が下される……だが、有用な情報を得られたのも貴殿のおかげだ」

すれ違う間際に大柄な小隊長が告げる。

「小隊に加われ、敵戦力を見たのはお前だけだ」

それに対し、兵士は遅れながらもはいと答える。そして、小隊の後ろに着くと軽いトーンで背の高く細身の兵士が声を掛ける。

「おい、どうせびびって闘えなかったんだろ? 安心しろよ、次びびってる時は、けつを蹴り上げてやるからよ」

その言葉に、背は少し低いが横幅に大きい兵士が諫める。

「軽口は慎み給え。重罪人とはいえ幼気な少女が対象だ、剣が鈍るのも仕方なしというものだ」

その言葉に背の高く細身の兵士が返事をする。

「そりゃあ、お前がロリコンだからだろ。一緒にすんな」

「ロリコンではない、フェミニストだ」

そんなやりとりをしていると、大柄な小隊長から小言が飛んでくる。二人は黙るが、緊張感があるとは言い難い雰囲気だ。

「良い部下ね」

大柄な小隊長は複雑な表情をする。

「良くも悪くもむらっけのある部下だ。余り落胆的にならないのは良いが、雰囲気が引き締まりにくい」

だから貴方が小隊長なのね、と女性の小隊長が微笑む。女王陛下の勅命というにはあまりにも緩い空気が流れながらも、一直線に目標に向かっていく。

 

 市街地を走ること数分、大凡の位置が掴めた。他の兵士からの連絡があったのだ。

「っ、先行します!」

合流した兵士は、風の魔術を巧みにあやつり、倍以上の早さで目的地へ向かう。

「馬鹿野郎、止まれ!」

続いて、細身の兵士が飛び出そうとするが、大柄な小隊長が止める。

「隊長!」

「既に一小隊を倒している相手だ、単独行動は命取りになる。任務を果たすためにも、団体行動を崩す訳にはいかない……あの馬鹿を助けるにも、隊列を崩すわけにはいかんのだ」

小隊長の言葉に、部下達は奥歯をかみしめる。女性の小隊長は部下を思う気持ちと不安からか、足取りが速く焦りが見える。

 

 スタジアムから遠くも近くも無く、市街地の一角でルミアを降ろし、グレンはセリカへと連絡を取る。

「セリカ、どうなってんだ!?」

「グレンか、私は何も言えないし、何もできない。いいか、私は何も言えないし、何も出来ない」

グレンが状況を告げる前に残酷な言葉が突き刺さる。状況は分かっているのかと聞くと、短く理解していると返事が来る。

「ふざけてる訳じゃ……ねぇな」

「ああ、この状況を打開できるのはグレン、お前だけだ。なんとかして女王陛下の元まで来い」

セリカはそれだけ告げると通信を切った。苛立たしそうに暴言を吐くグレンだが、女王陛下の隣にいるはずのセリカですら対応出来ない状況ということに焦燥感を抱く。そして同時に、気配を感じ、攻勢魔術を唱える。

「……なんだ、てめぇら」

大柄の男と小柄な少女、のように見えるシルエットにグレンの攻撃を大剣で受け止め、折れた大剣を投げ捨てると、錬金術によって大剣を再び創製する。

「ちっ……」

舌打ちするとグレンはルミアを庇う様に前に出る。小柄な少女は飛び上がり、大上段から大剣を振り下ろす、それと同時に後方の大柄な男が軍用魔術の構えを取る。

「く……そっ」

避ければ軍用魔術、庇えば恐らく受けきれない大技のコンビネーション。体勢が不十分な現状では、有効な奇襲だ。振り下ろされる大剣が、袈裟斬りに振るわれ、血飛沫が舞う。

「……うそ」

大剣に割り込んだのは兵士の格好をしていたラケルだった。肩から腹部まで切り裂かれ、鎧の為傷の深さまでは窺えないが、出血量は多い。

「……なっ、アルベルト、リィエルどういうつもりだ!?」

グレンが疑問をぶつけると、リィエルと呼ばれた少女答える。

「私とグレンの決着、まだついていない」

「言ってる場合かぁ!?」

グレンがそう言うと頭部をゲンコツでグリグリとお仕置きをする。

「イタイイタイ」

二人のやりとりを余所にアルベルト呼ばれた男が口を開く。

「王族近衛騎士団の様子がおかしく、監視任務として動いていた。唐突な学院の生徒を襲うというやり方には疑問を持っているが、どうやら内部も全員が状況を理解しているわけではないらしい」

そういうと、恐らく現状で理解しているのは、女王陛下、側近の隊長格、セリカ教授ぐらいだろう、と続ける。

「そうですね、少なくとも二小隊の会話を聞く限りは女王の勅命としか聞いてないようです」

何事も無く起き上がるラケルが返答した。それに対し、ルミアは驚く。

「ラケル君!? 無事だったの!?」

「はい、切れ味は想定の範囲でしたが、エンチャントの質の高さには驚かされました。複製しようと思うとかなり時間が掛かると思います」

見当違いの返答をするが、とりあえず無事である事に安心したのかルミアが胸をなで下ろす。グレンが呆れたように、それが目的かよ、と呟く。

「はぁ、とりあえずまだ情報は出そろってないってことか。それで、お前らは協力してくれるのか?」

グレンがアルベルトとリィエルに尋ねる。その眼光は、今までに無く鋭いものだった。

「私個人も、グレンお前に言いたいことは山ほどあるが、今は任務中だ。近衛騎士団の暴走を止めるのであれば、協力できるはずだ」

そう言って、協力の意思を告げると、グレンが提案する。

「セリカとの通信じゃあ、女王陛下の前まで来い、とさ。競技祭の優勝した組の講師には受賞する際に謁見出来る権利がある、なんとかしてそのチャンスを活かしたい」

その案にアルベルトが答える。

「そうなると、グレンとルミアには身を隠す必要があるな。それに、近衛騎士団の襲撃も避けなければならない」

それに対し、グレンが口を開く。

「そこで、だ。俺たちとお前達二人、入れ替わってくれないか? 幻術で姿だけで良い逃げ回っててくれ。その間俺たちはお前らの格好でうちのクラスに接触しておくから」

悪巧みをしている顔でグレンが提案する。しかし、冷静な提案をルミアがする。

「でも、幻術だけで騙せるでしょうか? それにお二人の格好でクラスに近づくのも違和感が……」

そういうルミアにわりいってラケルがしゃべり出す。

「それなら、僕が死んだふりをするので、もうすぐ来る二小隊の前で逃走してください。それで上手くいくはずです」

アルベルトとルミアが頭を抱えるが、結局は二人の案で行うことになった。

 




読了ありがとうございました。

ラケル君がちょこまか動いたせいで、色々と誤解が生まれていますが、まぁ大丈夫でしょう(適当)
近衛兵って、これから出る機会ってあるんですかね?
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