ロクデナシっ^2   作:3148

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小隊の話とギイブルのお話です。

一応、ギイブルは実力者枠で動かしたかったけど、思ったより動かし難い……気がする。

小隊長、お前の事は嫌いじゃなかったぜ(適当)


魔術競技祭 第八話

小隊が辿り着いた時には、既に兵士は倒れていて、血だまりができていた。折れた大剣は闘った跡なのか、血だまりに沈んでいる。出血量を見ると確認するまでもなく、致死量だと言うことが分かる。学院の講師と今回の処刑目標である二人は、小隊を一瞥して建物の屋根へと飛び上がり、逃走していく。

「……追うぞ」

大柄な小隊長が、小隊員に指示を出す。細身の兵士は壁を乱暴に殴りつけ、背が低く横幅の広い兵士は胸に十字を切る。

 追う二人の速度は速く、追いつくには時間が掛かりそうだ。仮に追いつけたとしても、再び逃げられる可能性がある。

「部隊を分けて、挟み撃ちにしましょう」

女性の小隊長が大柄な小隊長に提案する。

「承知した。二手に分かれて追い詰める。こちらの部隊の方が足が遅い、そちらで先回りを頼む」

その返答に頷き、女性の小隊長が部下へと指示を出す、その後確認するかのように大柄な小隊長に問う。

「ちゃんと冷静に判断出来てる? 口数が随分少ないけれど」

その問いに少しの間を開けて返答する。

「俺も人間だ、先ほどは動揺した。だが、今は冷静だ、任務を遂行するために最善と思われる行動をとっている」

まるで自分に言い聞かせるような言い方だったが、女性の小隊長はその言葉で満足したようだ。部隊を分ける前に告げる。

「貴方が冷静なら、それでいい。私は貴方が冷静かどうか分からないくらいには、激昂しているから」

そうして、小隊が分かれて行動を始める。大柄な小隊長は唇の端を噛み、血の味を感じる。

 

 小隊が離れてから数分後、ラケルは起き上がり、呪文を唱え、血糊と防具を素材として顔と体を隠すマントを作り上げる。

「一度ロッカーに戻って着替えと準備をしないと時間は……間に合いそうですね」

そう呟くと一瞬だけスタジアムの方に目を向ける。

「そろそろギイブル殿の競技の時間ですか、少し見ておきましょうか」

呪文を唱えるとスタジアム内に設置した魔方陣と網膜に刻んだ魔方陣がリンクし、スタジアムの映像が瞳に映る。

 

 「あ~っと、二組此処で一敗してしまったぁ! 逆転優勝を狙うにはもう一敗も出来ないぞ!」

会場を盛り上げるために解説が声を張り上げる、種目は最終競技、決闘となる。この競技が始まるまで、一組と二組は同点だったが、現在は一勝分一組が優勢だ。

「すまない、負けちまった……」

深々と頭を下げる、それに対しシスティは良い勝負だったと励ますが、ギイブルはいつもの調子で喋る。

「全く、君が勝っていたら僕がステージの上で優勝出来たものを……システィに渡すことになってしまうじゃないか」

そう言って、上着を預ける。

「そんな言い方――」

「いいんだ。ギイブルの言うとおりだ」

シャツ姿でステージに昇るギイブルが、システィに向けて言葉を放つ。

「システィ、優勝時のコメントの練習はしてきたか? どもったりすると女王陛下に見せる顔が無いぞ?」

そして、二人が気付く、ギイブルが一度たりとも負けたことをせめておらず、優勝することを疑いもしていないと言うことを。

「……言ってくれるじゃない、負けたら承知しないわよ!」

ギイブルがステージに立つと、相手の選手も既に立っていた。実況が前振りに選手の説明をし、一瞬の溜の後に試合開始を告げる。

「雷精よ!」

「炎よ」

ショックボルトがギイブルに直撃し、仰向けに倒れる。一方、一組の選手は何も変化は見えない。

「早撃ち勝負、ギイブル選手の敗北か!? しかし、魔術は発動したように見えましたが……炎のルーン、基礎魔術のようでしたが」

実況がそこまで言うと、一組の選手に異変が起こる。突然跪き、体全身を震えさせる。

「全く、ショックボルト対策していても、これほど衝撃があるとは、僕も研究不足だったらしい」

ギイブルが呟きながら立ち上がると服に付いたほこりを手で払う。平然とし、ダメージは全く受けていないようだ。

「こ、これは一体!?」

実況の疑問と共に、ネクタイの裏に潜ませていた銅線を外し、ズボンの裾、革靴の下まで伸びていたのを巻き取る。

「電気はより流れやすい方向に流れる。ショックボルト程度の電流なら、銅線程度で大幅の電流を地面に逃がすことが出来る、完全詠唱なら兎も角、一節詠唱ならなおさらね」

そう言うと相手の選手に近づくように歩む。

「僕たちの制服には魔術による温度調整が施されている。感知部分は主に脇下、首回り、股下の動脈がある部分だ。本来百度を超える高熱の場合、抵抗魔術と平均体温維持の魔術が発動するが」

言葉を続けながら、相手の選手を横切る。一組の選手はまだ、体を震わせ、動くことすらままならない。

「単純な炎のルーンによる加熱、四十~五十度程度なら冷却魔術が働く。約二十秒程だからまもなく効果は切れるだろうけどね」

制服の内側で発動していた炎のルーンが消え、冷え切ったからだを魔術により暖められ動けるようになるが。

「く……そっ」

急激な温度変化に神経が耐えられず、ふらつきよろめく。倒れそうになり伸ばした手をギイブルが掴み、体をねじり込んで背負い投げの形で、引き手を放す。一組の選手は宙を舞い、ステージ外へと放り出される。

「土よ、水よ、沼と成れ」

ギイブルの詠唱で、選手が落ちる場所の土と水がかき混ぜられ、小さな沼が出来る。沼がクッションとなり、軽傷で済むが急激な温度差とショックで目を回している。

「常温の沼の中で少し休むと良い。目が覚めてから保健室に行けば後遺症もないだろう」

そう言って眼鏡を中指で上げ、ステージから降りる。

「な、なんとぉ! 二戦目はギイブル選手の圧勝だぁ!」

二人の元に戻ったギイブルは上着を渡され、着直す。

「ありがとう、ギイブル」

「選手として当然のことをしたまでだ。それより、二組が優勝する様をゆっくり見よう。ステージよりは少し遠いけど、観客席よりは良いだろ?」

そう言って、クラスメイトに声を掛ける。不器用だけれど、彼なりの気遣いかもしれない。それに対し、システィが口を開く。

「なによ、随分と言ってくれるじゃない」

「分かりきったことじゃないか、女王陛下の御前だ。美しい勝負を期待してるよ」

ギイブルのその言葉に怒りを顕わにするが、直ぐに深呼吸をしてステージに向かう。

「よし、優勝してくる!」

 

 市街地の中で、二人組を追い詰める王族近衛騎士団。挟み込まれたタイミングで、幻術を解く。

「な……んだと?」

「残念だが、お前達の探し人は別の場所にいる」

アルベルトが口を開くと、小隊の何人かが魔術を撃つ構えを取る。

「死体はダミー、近衛騎士団は一人も死んでいない」

リィエルが馬鹿正直に話すと、アルベルトが頭を抱える。それに対し、大柄の小隊長は部下達を制し、問う。

「それは本当か?」

女性の小隊長が、アルベルトを見つめ、真偽を確かめる。

「事実だ。それと私たちは宮廷魔導師団に所属している」

その言葉に対し、女性の小隊長口を開く。

「……うそはついていないわ」

大柄の小隊長がそれを聞くと、大笑いをしてから再び話す。

「それで、宮廷魔道師団がここに何のようできていたのだ?」

リィエルが答えようとするが、口をふさぎアルベルトが答える。

「王族近衛騎士団の動きが最近おかしいと報告があってな、それを調査していたところだ。思い当たる節はないか?」

それに対し、大柄な小隊長は答える。

「確かに、最近の任務に違和感を感じることはある。しかし、隊長直下の命だ、おかしいと感じるのならば外部からの情報操作が原因だろう」

はっきりと言い切る大柄な小隊長。

「……なぜ、隊長を疑わない」

「愚問だな、内部を疑わなければならない貴公らには分からないだろうが、そうで無ければ隊長の下に集いはしない。我らは既に女王陛下に命を捧げた身。ましてや王族の命に全て説明が出来るはずも無し、だ」

一瞬戸惑いの色を見せたアルベルトだが、大柄の小隊長の命令で、一掃に引き上げようとする王族近衛隊に口を開く。

「……今回の命は女王陛下の本意ではない。外部からの影響によるものだ。それももうすぐ、解かれるはずだ」

アルベルトの話せる内容を伝える。これ以上の情報と成ると、一介の兵士に伝えて良いものでは無くなる。

「ははは、ならば我らは厳罰対象だな。お前ら、戻ったら覚悟しとけよ!」

大柄な小隊長は今回の件があった後でも、隊長も女王陛下を疑わない。まっすぐ馬鹿正直に生きている。

「あの人に代わって礼を言うわ。少しだけ、部下達も安堵すると思う」

女性の小隊長がアルベルトに囁く、厳罰を受けることに変わりはないけれどね、と付け足し早々とスタジアムの方向へ向かっていく。予定通り事が進んでいれば、今頃グレンが女王陛下の問題を解決してるはずだ。

「どうしたの、アルベルト?」

リィエルが覗き込むように上目遣いになる。

「……いや、なんでもない」

在りし日の少年を思い出し、首を振って疑問を振り払う。そうして、もう一つの任務へと足を向ける。

「支えが無くならなければ……いや、それは言うまい」

もしもの話しをするつもりはない、なによりあのグレンが人として存在出来ていることが、最悪では無いことの証明なのだから。

 




読了ありがとうございました。

大方、魔術競技祭のストーリーは完了です。
ここはほとんど裏方の話ばっかりだなぁ、と後で思いました(小並感)
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