なお、本人の設定はほとんど出てこない模様(笑)
システィーナは恋愛話は好きそうだなぁ、って思います。
まぁ、お年頃だと皆好きそうですが、イメージはルミアは聞き上手、システィーナは没頭しちゃう感じで……
そういえば、二話目で早々グレンの出番が無いんやが……(白目
お昼休みになり、学食で食事をとっているラケル。人の数は多いが四人掛けのテーブルに一人で座っている形だ。先ほどの講義の噂が既に広まっているのだろう、席がなかったとしても、誰も近寄ろうとはしなかった。
「ちょっとルミア! 正気なの!?」
「もう、システィは心配しすぎだよ。ねぇ、ラケル君、同席してもいいかな?」
トレイを持ったルミアとシスティーナが、ラケルの向側の席に移動する。
「勿論どうぞ、お構いなく」
言葉遣いに対してか、困ったようにルミアが笑いながら席に着く。システィーナも渋々ルミアの隣に座る。
「ねぇ、体は大丈夫なの?」
ルミアがラケルに話しかける。
「はい、異常ありません」
「他に言い方はないの?」
システィーナがどこか機械的なラケルの言葉に少し苛立っているようだ。
「すみません、話し方が独特と言われるのですが、中々直らなくて」
「ふ~ん……」
訝しむようにシスティーナはラケルを睨む。
「ラケル君の両親のこと、聞いても良いかな?」
ルミアが切り出す。ギイブルとの喧嘩の件の発端でもあったので、ルミアもシスティーナも身構えている。
「良いですよ。父はマグヌス家の現当主で、母上は成金貴族の末女で、12年前に結婚しています。八年前に弟を産み、今は三人で……仲睦まじくとは言えませんが、仲良く暮らしているはずです」
「なんかちょっと、ひっかかる言い方だね」
ルミアが苦笑いをする。
「ええ、父上の博打好きと放浪癖が続いているので、母上から見つけたら家に帰すように、と言われているので。魔術の才能も博打の才能もないので、借金ばかりで母上が困っていますね」
システィーナが顔を歪める。
「なんか、似たようなロクデナシがいたような……」
「グレン先生と気が合うかもね。二人が出会った経緯って、どんなの?」
あまりその話題を続けるとシスティーナの機嫌を損ねそうなので、ルミアが話題を逸らした。
「切っ掛けは政略結婚です、成金貴族が権力を得るために貴族と、没落貴族が足りないお金を求めて、互いに良い条件だったのでしょう」
「政略結婚ね……同情するわ」
システィーナが呟く、なにやら思うところがあるらしい。
「二人が始めて出会ったとき、母上は遅れる事を恐れて、馬車を早めに走らせました。丁度約束の二時間前に着いたと聞いています。その時には既に父上も食事の会場に着いていたようで、後に着いた事を謝りに馬車を降りたのですが」
「そ、それで?」
システィーナの様子が変わり興味津々に聞いている。
「父上はそれを見て直ぐさま駆け寄ってこう言ったようです。『婚約相手がこんな美しい女性だなんて、僕は世界一の幸せ者だ!』と」
それを聞いたルミアは、苦笑する。
「ちょっと、恥ずかしいね」
「そうですね。そして母上は思っていた貴族のイメージから大きく離れた父上の姿に困惑しました。それにも関わらず、父上は執事にこう告げました、『食事まで時間はまだあるよね、少し彼女とデートしてくる!』それに執事は『料理長にはいつ来られても大丈夫なように準備させておきます』となれた対応で返したらしいです」
システィーナが呆れて話す。
「きっと、日常茶飯事だったんでしょうね」
ラケルは頷く。
「マグヌス家の三男で、派閥間の争いがなければ跡継ぎにはなれませんでしたから、あまり貴族らしい振る舞いは教えられなかったと聞いています。争いで父上の父上と御兄弟が亡くなられなければ、父上が当主になる事もなかったでしょうし」
「成る程、それでロクデナシ貴族になったわけね」
システィーナがため息を吐くように喋る。
「ちょっと、言い過ぎだよ、システィ」
ルミアがシスティーナをフォローしようとすると、ラケルが返事をする。
「はい、世間一般に言われる貴族からしてみれば、ロクデナシに該当すると思います。ただ、母上を連れて馬車に乗り、自分の土地を回り始めた父上は嬉しそうに領地の特徴や料理屋さんを母上に話し始めました。まだ緊張の解けない母上はその意図が分からず、どうしてそんな話をするのか、と尋ねました。父上は、『これから君と一緒に、領民と協力して暮らしていくんだから、君にも皆の良いところを知って貰いたくてね。それと……』父上がそう区切ると、徐々に町並みを抜け、小高い山道にでました。そこは大きく広がる湖と閑静な住宅街、そして、それを囲む山が見え、雄大な自然をそこに映し出していた、と聞いています。少し照れくさそうに父上は『君にも、この最高の風景を見て貰いたかったんだ』まるで子どものように笑う父上に、母上は恋をした、と言っていました」
「素敵な……お父さんですね」
ルミアが微笑む。ラケルの話でどこまで想像できたかは本人にしか分からないが、ラケルの両親を尊敬する気持ちが、少し分かった気がします、呟いた。
「母上は成金貴族という家柄と末女に産まれたことを負い目に感じていました。きっと結婚した後も、つらい目に遭うのだろう、そう思いながらも親に逆らえずに行われた婚約でしたが、『あの人と結婚出来て、私は幸せよ』と言っていました」
システィーナがハンカチで目元を拭く。
「何よ、良い両親じゃない! 政略結婚なんて関係ないじゃない!」
「もう、システィったら……」
ルミアが一人感極まっているシスティーナに、落ち着くように宥める。
「そ、それで? 他に話はないの?」
どうやらシスティーナはラケルの話を気に入ったらしく、もっとないのかと要求する。
「あるにはあるのですが……システィーナ殿は食事を取らなくて大丈夫ですか?」
ラケルがそう話すとテーブルの上には完食トレイが二つ、まともに手を着けていないトレイが一つあった。
「システィ、今からならまだ間に合う、と思うよ」
ルミアが控えめに早く食事するように勧める。急いで食べるシスティーナの姿はリスのようだった。
「それでは、話の続きはまたの機会、ということで」
そういうと、ラケルは静かに席を立つ。そうして、午後の講義は、不穏な空気は残しつつも騒動が起こることもなく、その日を終えた。
読了ありがとうございました。