リィエルが学園に合流するところからで、やっぱりリィエルは天使かな(笑)
システィーナとルミアはいつものように並んで投稿していると、噴水の前でグレンの姿を見つける。
「あ、グレン先生」
「よっす」
声を掛けられると、グレンは立ち上がり並んで学院へと向かう。
「毎日待って貰わなくてもいいのに」
少し困った顔でルミアが声を掛ける。魔術競技祭以降、グレンはいつもルミアとシスティーナの通学路に待っている形になる。
「べっつにー。偶々同じ時間に出勤してるだけだしー、待ってるわけじゃないしー」
ふわぁ、と欠伸をしながら間延びした声で返事をする。寝不足や疲労は普段のことだが、朝の登校時間に合わせるのは多少なりとも負担がかかるだろうことは想像に難くない。
「なんの意地をはってるんだか……」
システィーナがよく分からないと呟くと、二人の背後からの殺気にグレンが反応する。稲妻のように走り、身の丈程もある大剣を大上段から振り下ろし、すんでの所で白羽取りで受け止める。
「おはよう? グレン」
「いきなり何しやがる、リィエル!?」
リィエルの大剣を受け止めながら、叫ぶグレンそれに対し、普段通りの口調で返事をする。
「あいさつ? アルベルトからグレンと会ったらこうしろ、と言われた」
それで実行するやつがいるか! と怒鳴る
「しかし、軍が護衛を派遣するって言ってたけど、まさかお前が来るとはなぁ」
そういうと、グレンは不安そうに呟く。
「大丈夫、グレンは私が守る」
「いや、ちげぇよ! ルミアを守るんだよ!」
グレンの言葉は虚しく、リィエルには理解されていないようだった。
「大丈夫かなぁ……」
ルミアもシスティーナも多少の不安を残し、学院へと足を向けた。
リィエルの珍妙な自己紹介を終え、ルミアとシスティーナのおかげで徐々にクラスに馴染みつつあるリィエル。そして、講義の一つに攻勢呪文のテストがあった。
「おおー、全弾命中か。やるな白猫」
想像以上に訓練の成果が出ていたのか、歓びと驚きの感情を見せるシスティーナ。
「次は私」
リィエルが狙撃対象を前に立つとクラス全員に緊張が走る。片手を上げ、詠唱を唱える。
「雷精よ 紫電を以て 打ち倒せ」
ショック・ヴォルト、学院での教わる攻勢呪文だ。しかし、システィーナの命中精度と比べると、悲惨と言うほか無い。
「五発ともハズレ、なんだ期待外れか」
そう言ってクラスメイトが落胆すると、リィエルがグレンに提案する。
「攻勢魔術であれば、問題ない?」
その問いにグレンは答える。
「ああ、だけど学院で学ぶ魔術で威力と射程があるのはショック・ヴォルトぐらいだけどな」
グレンが返事を聞き、明らかに別の魔術を唱え始めるリィエル。
「万象に乞い願う 我が腕に 解き放て」
そう呪文を唱え、地面に拳を叩き付ける。それと同時に現れる魔方陣とその中心から錬成される大剣、それを軽々と片手で持ち上げ、回転を加えて投げ飛ばす。
「なぁ!?」
クラスメイト、グレンを含めて全員が驚き、狙撃対象が粉々に吹っ飛ばされる。
「六発六中」
「言ってる場合か!?」
むちゃくちゃなやり方に評価の付け方を悩むグレン。そして、次に現れたのはラケルである。
「よろしくお願いします」
「ちょっとまて、その棒と腰に差してるのは何だ?」
あからさまに違和感を放つベルトにぐるぐる巻にされた四十センチメトル程度の棒とおそらく手に持つであろう形をした金属の塊を指さす。
「はい、今回テストに使用する道具ですが」
「う、うん? 攻勢呪文に対するテストだぞ、大丈夫か?」
グレンが首を傾げる。一応道具をしようしてはいけない決まりはない。極論を言えば制服も魔道具としての役割を果たしている面もあるので規制はないが、能力を測る意味もあり、道具を積極的に利用する生徒は少ない。そうしてラケルが狙撃対象を見つめ、棒を取り出し、金属の塊を棒に差し込むとガチャリと言う音がする。
「イクイップ」
省略詠唱された呪文が起動し、鉄の棒に巻かれたベルトが解け、長方形で二層に分かれ、鈍く光る本体が現れる。それと同時にベルトがラケルの腕に巻き付き、まるでその本体と一体化したかのようになっている。
「ちょっとまて、ストップ! ストーップ!」
完全に誤解して居るであろうラケルにグレンが制止をかける。
~※講師説明中※~
「成る程、性能試験(テスト)ではないのですね」
「おう、実力試験(テスト)だ。耐久性とか連射性とか、そういうのじゃねぇから」
どうやらラケル自身はテストの意味合いを取り違えたらしく、新しい魔道具の試し打ちをしようとしていたようだ。
「承知しました。ただ、今回のテストの条件である、基本的なルーンに寄る構成の魔術を使用し、一定距離の狙撃対象を破壊することはクリア出来ると考えます」
どこか釈然としないまま、グレンはテストを行うことを了解する。その魔道具の形を見て、思い当たる節があるのだろうか。視線がそれに釘付けになっているが、明確な答えは出ないようだ。流石にリィエルの後となるとこれ以上は驚かないだろう、と高をくくるクラスメイトを前に、ラケルが呪文を唱える。
「ファイア」
ズドン、と轟音が辺りを被う。明らかな爆発音で、二層に分かれた上部がスライドすることによって、薬莢がはじき出され、銃弾が装填される。
「……銃じゃねぇか!?」
グレンがようやくその魔道具について理解した時には遅く、短い詠唱を唱えること五回、全ての的が撃ち抜かれている。
「六発命中……ですが、精度に難ありですね」
「どうやら、銃身の螺旋の魔方陣と衝撃緩衝具の調整がまだまだみたいだね。射出時の弾道にぶれが生じてる」
ギイブルが眼鏡を上げながら呟くと、確かに的に当たりはしているものの、ど真ん中を射貫いているものはない。
「はぁ、撃鉄と雷管を炎のルーンで代用してるのか。構造はよりシンプルに、なおかつ螺旋軌道と魔術補助を組み合わせて飛距離とブレ補正だな。因みに火薬はなに使ってるんだ?」
興味津々に銃と呼ばれたそれを眺めるグレンと平然と答えるラケル。
「爆薬は水を使用しています。薬莢内に水を込めた後に弾丸を込め、密封した後に雷のルーンに寄る電気分解で水素と酸素に分解、この時点で体積が上昇するので量を調整しつつ、酸素結合による爆発の衝撃で弾丸を撃ち出します」
銃と呼ばれたものを元の状態に戻し、専用のベルトへと取り付ける。そうして、グリップ部分にあたるものを操作し、弾丸を一つ取り出す。
「帯による銃との一体化、それと同時に魔方陣におけるベクトル操作により、帯部分からの反動エネルギーを吸収かつ横方向への分散を行っていますね」
調整不足のため、若干左右へのブレが生じていますが、とギイブルが付け足す。
「はっは~ん、成る程な。銃身のほうにもベクトル操作系の魔方陣刻んでもいいんじゃねぇか? 微調整出来るくらいの空きスペックはあるだろ。というか、俺も目から鱗だわ。これなら消費マナ少ないし、弾丸、薬莢のリサイクル、現地精製も可能だよな?」
腕を組んでグレンが魔道具の可能性を分析していると、システィーナから声がかかる。
「もうっ、ちゃんと講義して下さい、先生!」
時は移り変わり、二組は二台の馬車に揺られている。グレン含める男性陣と女性陣に分かれている。
「ほんっと、男って馬鹿ね」
システィが呟く先では、グレン筆頭にやましい考えを恥じることなく叫ぶ男子が居た。それに対し、女性の馬車の中では、別のトークが繰り広げられる。
「ねぇ、ウェンディ! ラケルと一泊したってホントなの?」
何気なく呟かれたそれは、ウェンディを明らかに動揺させ、周囲の注目を集める。
「ま、待って下さいまし。誤解ですのよ」
周囲がにじり寄り、後ずさるウェンディの背後には、テレサが座っていた。
「ね、ねぇ、テレサも何か言って……」
「ラケルと、一泊……したのですか?」
ひぃ、とウェンディの悲鳴が小さく上がる。テレサの目が明らかに笑っていないのだ。
ひとまずルミアの介入により、暴動は避けられたものの、周囲の興味は以前変わらず、ウェンディが話し出すのを待っている。
「一泊したと言っても、学院のあの部屋ですのよ。それも、帰る時間が遅くなってしまったから仕方なく……」
「帰る時間が遅くなった!?」
周囲からの反応は更に大きく、期待はふくれあがる。ルミアやシスティーナは最初こそ抑える側に回ってはいたものの、今ではウェンディを急かしている。
「い、いやその……工業地域に行った際に誘拐されそうになりまして……」
「誘拐!?」
これまた別の意味で波及が広がる。周囲は驚きのワードが飛び出しすぎて、次の言葉が待ちきれない、と言った所だ。ウェンディは困惑しながら、なんとか周囲を納めようと言葉を選んでいるつもりだろうが、実に逆効果だ。
「そ、そこをラケルさんに助けられましたの」
「王子様キター!」
「おめでとう!」
「お姫様抱っこですか!?」
他の女子からの質問攻めでウィンディがもみくちゃにされているのを、ルミアとシスティーナは一歩引いた所で見ている。
「へ、へぇ……ウェンディとラケルが、そういう関係だったなんて」
顔を赤らめながらシスティーナが呟く。冷やかす側に着いていたが、あまりこういった話に耐性ははないようだ。
「でも、ラケル君は誤解されやすいけど根は真面目で正直だし、ウェンディもちょっとドジなところもあるけど、何でも出来るから意外と相性いいのかも?」
少し気分が高揚しているのか、ルミアの声も少しトーンが高い。いくら貴族とはいえ年頃の少女だ、浮いた話に興味が無いわけではないのだろう。一泊と言う言葉を呟きながら、更に顔を赤らめているシスティーナを余所にルミアはテレサに声をかける。
「ねぇ、テレサはどう思う?」
最初こそ関心のあるような素振りだったテレサだが、途中から興味を無くしたのか、窓の外の景色に視線を移していた。
「大体察しました。当たり前ですけど、一泊したっていうのは、本当に一晩一緒にいただけでしょうね」
溜息と一緒に呟いたその言葉は、落胆か安堵か。
「や、やっぱりそうよね!?」
何故か敏感に食いついてきたシスティーナ、ルミアは若干首を傾げている。
「どうしてそう思うの?」
やや突っ込んだ質問に、面白くなさそうな顔で答える。
「良くも悪くも、ラケルさんにとってはウェンディはクラスメイトですからね。というか、ラケルさんがそういう感情を持ってるかどうかが疑問ですけど」
工業地域ということは、職人崩れもいるし、あまり素行の良くない人間も見かける。そして、ラケルが支部を営んでいる事を知っているテレサは、どうしてそうなったのか、想像に難くなかったのだ。あの日、ウェンディにはなしかけられているので尚更。
「そっか、テレサはラケル君と以前に会ったことあるんだっけ?」
ルミアのその言葉に、思い出を探っているのか、遠い目をするテレサ。
「ええ、直接お会いしてはいないけれど。幼少の時に何度か姿を見たことはあります」
転入してきて気がつくまでに時間は掛かったけれど、と付け足す。その後ろではウェンディがまだ質問攻めに遭い、もう一台の馬車では別の話題で盛り上がる。その中で、テレサは一人、誰にも聞こえない声で呟く。
「……思い出の魔法使い、か」
幼少時に思い浮かべたそれは、余りにも幼稚で思い返せば馬鹿馬鹿しいものだった。だが、切り捨てるには余りにも、純粋で、透き通った輝きがある。素直に喜べず、安易に落胆も出来ず、複雑な表情で目的地へと近づいていく。
読了ありがとうございました。
テレサが昔の話を思い出しました(オリジナル)
実は昔に出会ったことがあったのだ!ってエロゲの王道ですね(笑)