ロクデナシっ^2   作:3148

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グレンが死んで……生き返る!(高速手のひら返し)

システィーナの初キッスはカットで(ゲス顔)


課外授業 第五話

 事情も碌に説明されないまま、ラケルは淡々と魔方陣を作成していく。

「……いや、何か言いなさいよ」

困惑が極まったのか、システィーナが疑問をぶつける。

「ああ、余裕があるならグレン教諭にマナを分け与えてあげて下さい。多量の出血によるマナ不足になっていますので」

どうしてそうなったのか、については一切説明せず、ただ顔色の悪さや破れた衣服を見てただならない状況なのは一目で分かる。渋々ではあるが、ラケルの言うとおりにマナを分け与えていく。

「ねぇ、何があったのか、説明してくれないの?」

システィーナの言葉に反応し、淡々と作業は続けている物の、返事を返す。

「あ、呼吸が止まったので人工呼吸してくれませんか?」

その言葉にシスティーナは驚き、グレンの容態を確かめる。脈は止まっていないが、呼吸はしていない。

「わ、私がするの……?」

勿論、治療について否定する気はないだろうが、マウストウマウスとなると、システィーナもまだ少女と言っても差し支えない年齢だ。躊躇いもあるだろう。

「ん、出来ませんか? それなら僕が……」

そういうとラケルが手を止めてグレンに人工呼吸を行おうとするが、その直前でシスティーナが止める。

「ま、待って! 私がする……から」

そう言うと素直にラケルは引き下がり、作業を続ける。システィーナは深呼吸をし、何度もグレンの顔を見て、覚悟を決める。

 

 アルベルトが扉を開くとシスティーナがグレンに魔力を供給し、ラケルは外に出る準備をしている。どうやら、グレンの肉体の修復が終わっているようだ。銃弾を受けたときよりも、顔色が良くなっている。

「ああ、アルベルト殿ですか」

「アルベルトさん!? どうしてここに?」

着々と準備を続けるラケルと、対照的に驚きを隠せないシスティーナ。それに特に興味を持たず、アルベルトはグレンに目を移す。

「動けるのか、この馬鹿は」

少し目を細め、複雑な表情でグレンの様子を見ている。

「ええ、肉体的には問題なく。あとは意識を取り戻した時に、障害が残っていなければ問題ありません」

不吉なこと言わないで、横からシスティーナに口を挟まれる。特に二人とも気にしてない様子だが、グレンが僅かに動くと三人の視線が集まる。

「……ここは? そうだ、リィエルはどこだ!?」

目が覚めたばかりで、急激に起き上がったからか、撃ち抜かれた部分が痛みうずくまる。

「先生、大丈夫ですか!?」

システィーナが心配し、傾いたグレンの体を支える。

「錬成した肉体部分と白魔術で修復した部分に若干のずれがあったようですね。直ぐ痛みはなくなるでしょう」

その言葉に対し、グレンが怒り、ラケルを睨みつける。

「てめぇ、リィエルを撃っておいてよくそんなことが言えるな! 一体どの面下げてここに居るんだ!?」

その言葉に驚き、システィーナがラケルを見る。ラケルは否定をしない。

「そもそも、なんであの場でリィエルを止めなかった。あのタイミングで入ってきたってことは、見てたんだろうが! お前が全部しくんだ……」

ガン、と大きな音がしてグレンの体がベッドに叩き付けられる。アルベルトが思いっきりグーで殴ったからだ。

「先生!? 大丈夫ですか! 大変、鼻血が大量に!?」

隙だらけだったからか、綺麗に入った拳は鼻に直撃し、その奥の毛細血管を破壊したのだろう。元々からすでに荒らされていた部屋だったが、輪にかけて酷くなっていた。

「……いってぇ」

グレンが仰向けになったまま、ぼそりと呟く。

「少しは冷静になったか? 取りあえずこれで、私達の前から勝手に消えたことはチャラにしてやる」

そう言われるとグレンは何も反論出来ないらしい。同じような感情をリィエルにも抱いていたのかもしれない。

「はぁ、くそったれ。腹の虫はおさまっちゃいないが、頭の血はちょいと抜けたぜ。とりあえず、現状から教えてくれないか、ラケルさんよぉ」

起き上がりラケルを睨みつけるグレンだが、鼻血まみれの顔では迫力も何もなかった。

「まず現状として、リィエル殿とルミア殿は白金研究所の地下施設にいると思われます」

ラケルの言葉の後に、アルベルトが付け加える。

「敵は白金研究所の所長、エレノア・シャーロット、リィエルと錬金術師、そして」

アルベルトのその言葉の後にラケルが付け加える。

「ホーエンハイム、ですね。恐らく、エレノア・シャーロットはこちらが接近したことに感知した場合、戦闘を避けると思われます」

ラケルがそう言うとアルベルトがエレノアの捕縛、或いは討伐を提案するが、ラケルがその他の障害を説明し、苦虫を噛み潰したような顔で断念する。

「ちっ、仕方ないな」

その会話に、色々とついて行けていないグレンが口を開く。

「待て待て待て、色々とおかしいだろうが! リィエルが敵なわけがないだろうが。それにホーエンハイムってのは、この前の襲撃事件でラケルが倒したはずだろうが」

「ええ、ホーエンハイムは確かに学園で確かに倒しましたが、アレは意識共有体です。今回も同様ですが、前回と比べれば遙かに厄介です」

ラケルの返答に、グレンは嫌気が差したようだ。

「また面倒な……んで、リィエルが敵っていうのはどういうことだ?」

それに対して、アルベルトが返事をする。

「敵側の錬金術師と協力しているんだ。我々に敵意を以て妨害してくる事は間違いない。これは敵と見なすべきだろう」

アルベルトの説明にグレンは納得しない。グレンは吠える、アルベルトに対して。

「あいつは偽物の兄に騙されているだけだ! ちゃんと話せば敵になるはずがないだろうがっ!」

その言葉に反応したのは、意外にもラケルだった。

「だから?」

ラケルのその言葉に、グレンが意表を突かれる。混乱のままに、グレンは言葉を続ける。

「説得すれば、偽物に騙されていると分かったら、あいつが偽物に従う理由はないだろ!」

まるで氷の針を突き刺すようにラケルが言葉を返す。

「どうやって?」

本来のグレンであれば、その言葉は嫌がらせか、それとも相手が納得のいかない意見だと、割り切って耳を貸さなかっただろう。だが、それをしなかったのは、或いは出来なかったのは、ラケルの言葉がグレンが疑問に思っていた、遠回しに避けていた問題に突き刺さっていたからかもしれない。

「あ、操られてるわけじゃない、声も聞こえるだろう。話して説得すれば……」

「話になりませんね、グレン教諭は何故リィエル殿が離反したのか、理解出来ていない様です」

グレンの言葉を遮って、ラケルが突き放す。グレンはその言葉に、息を詰まらせた。それは、自分が言っていることに自信が無かったからかもしれない。

「どうしてリィエルが、裏切ったの?」

言葉に出来ないグレンに代わり、システィーナが問う。

「まず第一に、新しい環境と過去のグレン教諭との関係性において彼女自身どう対処すれば良いのか、分からずにいました」

ラケルが一つ指を立て、説明していく。

「二つ目、死んだはずの兄が現れ、困惑していた状態で選択を強いられました。急激に変わった過去の恩人と偽物かもしれない兄。しかし、そこで突きつけられたものは、『最愛の兄を二度裏切る』可能性です」

グレンがその言葉に、奥歯を噛み締める。あの時海岸でリィエルがグレンを裏切ったのは、可能性とはいえその恐怖に打ち勝てなかったからだろう。

「そして、最後に対話による解決が不可とするのは、既に一度ずつ両陣営を裏切っている意識をリィエル殿が持っているということです。仮に兄であることを否定する証拠があったとしても、リィエル殿自身が本物ではないという確証が無い限り、最悪の可能性を捨てきれないからです」

そこまで話を聞いて、グレンは項垂れる。

「……あの時、お前が俺を撃ったのはそういうことか」

もし仮に、リィエルがあの場でグレンを刃で貫いていたとしたら、グレン達を裏切ったではなく、殺したということになる。そうなってしまえば、剣を向けた相手の言葉を聞く余裕など、無いに等しい。裏切った相手の優しさなど、傷口をえぐる行為にしかならないのだから。

「それでも、リィエルが騙されているのなら、助けたい!」

グレンが落ち込んでいてもシスティーナが叫ぶ。その言葉にグレンは反応し、立ち上がる。

「……そりゃそうだ。どっちにしたって、あいつが俺の生徒って事には変わらないんだよ。どんな理由があろうと、助ける」

グレンのその言葉に、システィーナの表情が僅かに変わる。

「ええ、グレン教諭のその意思は間違っていないと思います」

ラケルの淡々としたその台詞に、グレンがこけそうになる。

「お前、一体どっちなんだよ?」

「方法について否定しただけですよ。グレン教諭の意思について僕が干渉するつもりはありませんが、教諭の指示に不備がある場合は検討する必要があったと感じましたので」

ラケルは一貫していると宣言するが、言葉も状況も選ばない為、その場の誰も頷かなかった。

「ルミアとリィエルを助けに行くんですよね? それなら私も行きます!」

システィーナが前のめりになりながら、言葉にする。

「白猫、お前は残ってろ。危険すぎる」

「そんな!」

グレンの言葉に、反抗する。

「システィーナ殿、来ないで下さい」

「……仕方ないわね」

ラケルの言葉に、項垂れて諦めるシスティーナ。その様子に違和感を持ったグレンが叫ぶ。

「いや、なんでラケルが言うと頷くんだよ! 普通は先生の言うこと聞くだろ!?」

そう言って、混乱しているグレンに、アルベルトが諭す。

「落ち着け、グレン。お前はいつも他人を案じすぎる、それだけのことだ」

「うん、先生は私のことを気遣って言ってくれる可能性があるんだけど……」

そう言って、ラケルの方を見つめるシスティーナ。

「はい、システィーナ殿が同行された場合、保護を優先してグレン教諭の機動力が削がれる可能性があります。勿論アルベルト殿も一般人が犠牲になることを良とはしないでしょう。なにより、何をされたか分からないまま死に至るか、或いは実験の材料にされる可能性が十分にありますので」

淡々と語られる言葉は確かに事実だったのだろう、グレンが話す内容とは全く違った。片方は身を案じた言葉、片方は純粋に目的遂行の為に良とされないと否定する言葉。

「良くも悪くも、ラケルは嘘を吐かないので……」

システィーナが小さく呟くと、一目見るだけでも分かるほど、落胆しているのが分かる。本音で話しているのであれば、躊躇いもなく役に立たないと告げられたも同然だからだ。

「そんな落ち込むなって、誰だってそんなときはあるさ。俺にもどうにも出来ないことは山ほどあるからな、そんなことの一つや二つで落ち込むぐらいなら、次に何をすればいいか考えろ。白猫が目指す未来に辿り着く為に、落ち込んでる暇なんて無いはずだろ?」

そう言ってグレンはシスティーナの頭を撫でる。その言葉に一瞬呆けるような顔をしていたが、直ぐにその手を振り払う。

「も、もう! 子ども扱いしないで下さい!」

顔を赤らめながら、そっぽを向くシスティーナ。

「うっし、じゃあ行ってくる。ささっと終わらせてくるから、此処で待っててくれよ」

まるで食事に出かけてくるような軽い口ぶりで部屋を出る。向かう先はけして楽な道のりではないはずなのに。

 




読了ありがとうございました。

ラケル君のロクデナシゲージが上がって行くぅ!(当社比調べ)

割と死ねば助かるのに状態でした、グレン先生にはあと何度か死んで貰いたい(ゲス)
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