ロクデナシっ^2   作:3148

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リィエル対リィエル、スタート!

三人に勝てるわけないだろ、いい加減にしろっ!(フラグ建築)


課外授業 第九話

 リィエルの行動にリィエルの兄が叫ぶ。

「リィエル、お前はまた兄を裏切るのか!?」

リィエルの兄はそう言って、再びリィエルの迷いを引き摺り出そうとする。だが、もう彼女の表情は変わらない。

「少しだけ、思い出した。イルシアとシオン兄さんに……思うとおりに、生きろって」

そう言って、再び剣を手に持ちリィエルの兄に突きつける。

「私は、私の意思で貴方を裏切る。仮に本当のシオン兄さんだったとしても、イルシアとシオン兄さんは、そうなることを、望んでいなかったから」

その言葉には決意と、悲しみが入り交じっているようだった。命を懸けて助けようとしてくれた、間違いかもしれないと憂いながらも、新しく生まれた命に罪はない、と優しく語ってくれたシオンに恩を感じていないわけがない。

「くっくっく、そうか。やっぱり君は失敗作だな! 僕にはもう必要ない、さぁ出てこい!」

リィエルの兄がそう叫ぶと、三つの研究用施設が解放され、中からリィエルとうり二つの女性が三人現れた。

「この子達はリィエル計画によって生み出された、完璧なリィエル達だ。感情などと言う無駄なものを省いた完璧な存在だ!」

そう言うと、いとおしそうにカプセルから出てきたリィエル達を撫でる。そうするとラケルがリィエルに問う。

「疑問、手伝うべきか」

そのことばにリィエルが短く答える。

「不要、私があの子達を否定する。グレンは望まないかもしれないけど、感情のない私を私は望まない」

承知した、と短く答えてグレン達の元へラケルが向かう。どうやら、傷ついた二人を回復させるようだ。

「ははは、三人に勝てると思っているのか!?」

 

 相手は同じ能力を持つ三人。尚且つこちらは体力もマナも消耗している。普通であれば、問答無用で敗北するだろう。だが、この状況は普通ではない。

「感情のない私に、負ける気がしない」

誰にも聞こえない声で呟く。感情がないということは、一定の思考ルーチンで動き、同じ環境では同様に動くということ。そして、その思考ルーチンもリィエルと同じだということ。三対一で一人を倒すための動きは、間違いなく自分と同じだ。だからリィエルはそれの少しだけ上をいく。一列で突撃してくる相手に、剣を投擲する。通常の攻撃ではなく、自分の剣で受ければ、真っ二つになる程度の威力で、だ。そうすれば予測通り、前の二人は判断が間に合い、回避する。最後の一人が間に合わず、剣でガードしようとする。だが、剣の耐久に頼ったガードではこの投擲は耐えられない。ガードしていた剣は折れ、そのまま胴を貫かれて壁に磔にされる。

「くっ、だがまだ二人いるんだ!」

リィエルの兄だけが、声を放っている。相手のリィエル達は何も疑うことなく、ただ命令の通りにリィエルを殺すことに専念している。だからこそ、理解出来る。一人は先に飛び出し地上から剣を横なぎにする。それを避け跳び上がる。そうするともう一人はどこに避けても追撃が出来るように空中で投げる準備をしていた。回避と同時に飛びかかるように突っ込んだリィエルに若干反応が遅れた。それもそのはず、追撃の為に跳び上がっていたのだ、逆に飛び込んでくる事は想定していない。

「鋼の糸 紡ぐ糸 束ね束ねて 円を為せ」

リィエルがそう魔術を唱えると、投げることを放棄し、飛び込んできた相手を薙ぐことを選択する。

「な……馬鹿なっ!」

リィエルが使った錬金術は、文字通り糸を紡ぐ魔術。一本は相手の剣から伸び、天井を経由してリィエルの右手に、もう一本はリィエルの左手から相手の首に細く丈夫な輪を掛けた。その結果、猛スピードで振るわれた剣に連動するようにリィエルは天井に引っ張られ、一瞬で背後に回る。そして、首に掛けられた輪は、移動スピードと同じ速度で回転し、その内部を切断する。リィエルは両手の糸を手放し、自由落下に身を任せ着地する。その後相手が持っていた剣を掴み、引き抜く。

「どうしたの? 貴女が握っているそれは、人一人殺すのに、余分な程の代物」

相手が想定していなかった状況、三対一で瞬く間に二人倒され、一対一になった。しかしそれでも相手は動揺しない、唯々命令の通りに動く。感情がないから。相手は剣を肩に担ぎ、突進の後に大上段から振り下ろす構えをする。相手の防御の上から真っ二つにする構えだ。それに対し、リィエルは同じ上段ではあるが、剣先は相手に向け横向きに構える。勝負は一瞬、一撃で終わるか、返しの刃で決まるか。どちらにせよ、リィエルの能力であれば、決着が長引くことはない。誰の声もなく、合図もなく、相手は動き始めた。加速は一瞬、振り下ろす剣に迷いも躊躇もなし。ただどんな盾であっても真っ二つにするような豪快な大上段。それに対し、リィエルは構えた剣を斜めに肩に当て、タックルの形で剣とは斜めにぶつかる。激しい衝撃にリィエルの持つ剣は砕ける、そしてその衝撃で僅かに剣の軌道がズレ、リィエルを切り裂くことはない。飛び散る剣の破片が互いの体を引き裂き、リィエルはその破片を掴み、握りしめ、相手の心臓に突き立てる。負傷しながらも、三人目を戦闘不能にする事が出来た。

「そ、んな。僕のリィエル達が……僕の野望が!?」

絶望にひさを付くリィエルの兄だが、それとは構わずに、最初に戦闘不能にした相手の元へとリィエルが向かう。腹部に剣が突き刺さり、大量の出血に息も絶え絶えと言った様子だが、まだ微かに息があるようだ。

「私は、感情の無いリィエルを否定する。イルシアもシオン兄さんも……私も、人として生きていくことを望んでいたから」

そう言うと突き刺さっていた剣を引き抜き、同時に大量に出血し、絶命した。

「終わった……みたいですね」

リィエルにラケルが声を掛ける。

「うん、だけど、体力もマナも……もうない。左肩はほとんど動かないし、両手もボロボロ」

その答えにたいしラケルはいつもと同じように、淡々と返答する。

「承知しました。ゆっくり休んで下さい。グレン教諭もアルベルト殿も時間が経てば目を覚ますでしょう。ルミア殿の救出は、任せて下さい」

そう言うと、器具の一部を操作し、ルミアの拘束が解ける。そっと跳び上がり、ルミアを抱え安全な場所におろす。

「あ、ありがと。ちなみに、あの人はどうするの?」

ルミアがそう言うと、ラケルとリィエルの視線がリィエルの兄の姿をしているライネルに向けられる。

「ひ、ひぃ、助けてくれ」

腰を抜かして、まともに逃げることも出来ない無様な姿を見て、ラケルが呪文を唱える。

「雷精よ 紫電を以て 撃ち貫け」

三節詠唱のショックボルトが直撃したライネルは、大した外傷も無く気絶した。

「あとは、アルベルト殿とグレン殿に采配を託しましょう」

そう言ってラケルはその場を離れた。

 




読了ありがとうございました。

プロジェクト・リヴァイヴ・ライフを巡った争いはここで一旦終わりです。
感情のない人間は、一定のパターンで動くだけ……なのかもしれません。

リィエルについてもうちょっと書きたいので、あと一話続きます!
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