ロクデナシっ^2   作:3148

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魔術連帯戦後編の話です。

闘いが終わり、システィーナの受難は終わりかと思いきや、なにやら雲行きが怪しい……のか?


レオン参上 第六話

 「ん?」

リィエルが何かに気付き、目を覚ます。

「どうしたの?」

ルミアが心配そうにリィエルに尋ねると、直ぐさま戦闘態勢に切り替わる。

「ウェンディ、テレサ、ギイブル……来たよ」

そう呟いたリィエルは、風のように駆け出した。

「えっ、えっ、なにしてんの?」

グレンは何が起こっているのか分からないようだが、ウェンディとテレサの魔術に照らされ、何かが起ころうとしている。

 

 錬成された大剣を手に持ち、人外の速度で突撃するリィエル。その先には、同様に人外の速度で奔るラケルの姿がある。

「一撃……それだけでいい」

演習の残る時間は僅か、最早多くの生徒達は半ば終わったと勘違いし、気を抜いている者も少なくはない。一手を打つ時間もないが、その時間でも形勢揺るがしうる可能性は、ゼロでは無い。

「大将首……頂申す」

ラケルが狙うのは、大将首、つまりはグレンのノックアウトただ一つ。腰に掃いた刀の柄を握り、リィエルと一瞬の交錯、リィエルは大剣による一閃、必殺の一撃を放つ。

「……後は任せた、ウェンディ」

虚しく空を切る大剣をあとにし、ラケルは駆ける。

 

 「う、ウェンディ、これはどういうことだ?」

「うるさい! 黙ってじっとしてなさいな」

グレンとウェンディが密閉された空間で密着している。なぜこういう状態になっているのかというと、テレサとギイブルの協力魔術により、土で出来た人形の中に閉じ込められている格好になっている。

「はぁ……こんなことしか出来ないのですね」

「まぁ、これであいつの足止めが出来るなら上等だろう」

テレサが溜息をつき、ギイブルが興味なさそうに呟く。実際に限られた時間で対応出来ること自体が能力の高さを示している。

「あら、来ましたね」

テレサやギイブルには目もくれず、グレンとウェンディを包んでいる土人形へと接近する。

「……成る程」

二人纏めて攻撃することは可能だが、ラケルにとってはウェンディは自軍であり攻撃することは出来ない。レオンによる指示によりグレンのみ攻撃対象になってはいるため、攻撃手段が限られている。土人形に包まれていることで、視覚的に困難になり、また直接攻撃が出来なくなっている。また、ウェンディが密着していることにより、土人形ごと攻撃することが不可能になっている。また、攻撃手段が限られているため、更に少ない時間がより限られてくる。

「どうですの!? いくらラケルさんといっても、この状況が打開できますの?」

自信満々にウェンディが叫んでいると、二人を包んでいる土人形にヒビが入っていく。

「え……なに、どうなってぇぇぇぇえええ!?」

異変がグレンの周囲に集まっていく。

「オラ オラ オラ オラ オラ オラ!」

ラケルが土人形に拳を連続で叩き付けていく。一撃一撃を打ち込む毎に、短唱魔術が発動していき、拳の物理エネルギーを操作されていく。そのエネルギーはグレンに収束していく。

「う、うわああああぁぁぁぁぁああああ!??」

「演習、終了!」

演習終了の声と同時にグレンの身体が吹っ飛ぶ。土人形がバラバラになって、中からウェンディが現れる。

「流石にラケルさんでも、時間が足りなかったようですわね」

ウェンディが自信満々にラケルに語りかける。

「……ええ、ウェンディ殿達の作戦を超えることは出来ませんでした」

表情を変えずにラケルが答える。だがその声色に少し曇りがあったかもしれない。

 

 「結局、対決は引き分けだったね」

ルミアがそう呟くと、システィは胸をなで下ろす。

「おう、俺はボロボロだけどな」

グレンがところどころ大げさに包帯を巻いている。最後のラケルの一撃は勝敗には影響しなかったものの与えたダメージは大きかった。そうしていると、レオンのクラスからも声が上がっている。

「先生! 大丈夫ですか、先生!」

生徒に支えられてレオンが現れる。その姿は憔悴仕切っていると言ってもいい、目の下に隈ができ、顔色は悪い。

「……調子、悪そうだな」

グレンは、言葉にしづらそうにしている。

「今回は、引き分けだったか……だが、これで引き下がるつもりはない。システィを……貴様にシスティを任せるつもりはない」

そういうと、手袋を外し、グレンへと投げつける。奇しくも、決闘が申し込まれたときと真逆の構図となった。生徒達に支えられ、レオンが馬車に乗り込む。

 

 馬車の運転手がレオンに声をかける。

「あなた、もういいですよ」

そう呟くと、レオンの身体がゆっくり倒れる。元々、マナ不足によりふらついていたが、それとは別に、彼の命令で自らの意思で馬車から落ちていったようにも見えた。

「成る程、恐ろしいな」

もう一人、馬車に乗り込んでいた男が呟く。

「貴方ほどではありませんよ、大錬金術師殿」

そう運転手が答えると、馬車は走る速度を速める。その言葉に、馬車に乗っている男は返答する。

「ははは、大錬金術師とは恐れ多い。しかし、彼を簡単に切り捨ててしまってよかったのですか?」

その言葉に運転手はこう答えた。

「なに、ここまで来てしまえばどうとでもなりますよ」

 

 馬車が通り抜けた後に、死にかけている男が横たわっている。本人は既に死を確信しており、最早生き残ろうという意思は感じられない。

「ああ、ここに居られたのですね。まだ死んでいないようでなによりです」

まるで無感情に呟いたその言葉は、彼に届いていたのかどうかは分からない。

 




読了ありがとうございました。

レオンが死んだ!
このひとでなし!

まぁ、まだ死にきってはいないのですが(笑)

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