ロクデナシっ^2   作:3148

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ジャティス対グレンに横槍を刺すお話です。

ジャティスの錬金術の弱点ってなんかあるのかな?って考えたら、逆算、解析に弱いってことにしました(笑)


レオン参上 第八話

 もはや変身の魔術を解いたジャティスが、グレンと相対する。その姿は余裕に満ちている。魔術の相性が悪く、グレンの固有魔術がほとんど機能しない。その上、遠近共に対応できる優秀な魔術に対抗しようとするには、グレンには魔力量も魔術適正もない。あるいは、戦闘経験と発想でジャティスを上回らなければならない。

「まぁ、それなりにやりますか」

 

 道具を扱う魔術と搦め手をつかっていくが、ジャティスも経験者であり実力者、機転を利かした攻撃も有効打にはならず、互いの体力だけが削られていくが、消耗戦になるとグレンの分が悪い。

「あぁ、どうやらもう限界の用ですね」

勝ち誇った顔で、ジャティスがグレンを見下す。膝をついてグレン、息が上がり、虚勢を張ってはいるが、顔色が悪くなってきていて、マナ量が減ってきているのは明確だ。

「……はぁ、やっぱ無理かぁ」

そういうと、全身脱力して、仰向けに倒れる。

「なんのつもりだ?」

ジャティスがその行動を理解出来ないでいると、グレンがそのまま答える。

「いやいや、やっぱり俺一人で出来る事って、たかがしれてるんだよ。今回のことでよーくわかった。やっぱり俺は一人じゃお前に勝てないんだよ」

「くっくっく、負けを認めておかしくなったか? まぁいい、諦めたのならそのまま死ね!」

そう言って、魔術をグレンに放つと、閃光が魔術を貫き、グレンを守る。

「なっ……!?」

「言ったろ? 俺一人じゃ、お前に勝てないって。ちなみに同じ錬金術師が言ってたぜ」

ジャティスが閃光が跳んできた方向を見るが、少なくとも目に見える範囲にはいない。

「お前の魔術は、アイツから見ると何考えてるかまでお見通し……らしいぜ」

 

 「ホントに当てるんですわね」

ラケルがスナイプライフルを構え、目をつぶってウェンディの声に耳を傾ける。

「ええ、魔術とは深層心理に働きかけ、別世界の理に則って行使するものです。常に魔術を発動している、スイッチ無しでの常時催眠下に自分を置くと言うことは、魔術を解析すれば思考パターンさえも相手に晒す、ということです」

それに対し、ウェンディが呆れる。

「それは出来ないと思いますわ……普通は」

頭を抱えるウェンディが自分の魔術に集中する。ウェンディが行っているのは、注視の魔術、遠隔で見えている風見をラケルに伝えるだけだ。

「東2 北東1・5 東1・8!」

その言葉を受けて、ラケルが照準を定める。狙いはジャティスが撃ち出した魔術。

「路地の中だと、狙い撃てませんわ」

悔しそうにウェンディが唇をかむ。しかし、ラケルはその意見を否定する。

「いえ、瓦礫と廃屋のおかげでテレサ殿の位置が把握されていません。このままで良いかと考えます」

ジャティスを倒すことに意識はない。むしろ、全体の安全を確保することに意識を向けている。そうして、躊躇うこともなく引き金を引く。爆発音と共に、大口径の薬莢が落ちる。弾丸が向かった先も確認せずに次弾を装填している。

「……必中ですわ」

 

 「はぁ、こんな役割でいいのかな」

ラケルに言われたとおりに、的を中空に浮かせているだけのテレサ。勿論、独りでいることに恐怖を抱いていないとは言えない。だがそれ以上に、ラケルに任されたと言う事実は、テレサをいつも以上に行動的にしているようだ。

「はぁ、ウェンディさんの役割の方がよかったかも……なんて」

ウェンディでは出来ない役割、だが離れた場所での作業という複雑な立場に、自分が敵に襲われてもおかしくないという立ち位置だと言うことを見失っていた。

 

 「やれやれ、どうして僕がこんなことを」

そういいながら、建物の上で全体の様子を双眼鏡で見渡すギイブル。状況は予想したとおりになっている。あとは自分に任せられた役割をこなすだけだ。

 

 余裕があったジャティスも、自慢の錬金術を次々と撃ち抜かれ、余裕が無くなってきた。勿論、マナが減ってきているということもあるが、なにより真正面でグレンが余裕綽々でいることが、負担になっているようだ。

「……怖い顔してるなぁ、っていいたいところだけど。この状態で楽観視するタイプでもないだろ」

グレンはようやく起き上がり、胡座を掻いて座る。単純な直感である可能性が高いが、ジャティスに声を掛ける。

「切り札……っていうよりは、増援か?」

その言葉に、ジャティスが応える。

「答える必要はないけれど、そうだよ。もうすぐお前達は数での不利で敗北することになる。僕の正義の前にね」

ジャティスの笑みが醜く歪む。

 

 フラフラとおぼつかない足取りで歩いていたシスティの前に、人影が浮かぶ。

「だ、誰!?」

その人影は、壁伝いにゆっくりと歩いており、システィの声を聞いて止まった。

「システィ……かい。よかった」

少しやせ、両のまぶたに眼帯をしているようで、一瞬見分けは付かなかったようだが、システィーナは気付いた。

「れ……レオンなの?」

真実を知らされていなかったシスティーナも幼なじみの変わり果てた姿を見て、自分が見ていた事に違和感を感じた。強引な結婚騒ぎ、急変した幼なじみ、そして安易に想像できる残酷な未来。

「ねぇ、レオン。体調が悪そうだけど……無理して大丈夫なの?」

残酷な未来が現実ではないと、そう信じ込みたいがための質問。しかし、現実は非情だった。

「いや、もう長くない。こうやっている間にもマナが体中から流れ出そうになっている。体中に刻んだ魔術でせき止めてはいるけれど。根本的な解決にはなっていないんだ」

その言葉に、システィーナが息を飲む。そして、気丈に振る舞おうと躍起になる。

「あ、あなたはレオンの名を騙る偽物ね! 私を騙そうとしたって……」

システィーナは最後まで話すことが出来ない。希望に縋り付く形の言葉で、信じこみたかったのだろうが、それは許されなかった。

「よく聞いて欲しい、システィ。僕は君を愛している。これは嘘じゃ無い。そして、君が魔導考古学を目指している事を否定したことも……嘘じゃ無かったんだ」

「いや! そんなこと聞きたくない! どうして、そんなこと、今更になって……私が犠牲になれば、済むんじゃ、ないの?」

偽物の甘言に騙され、鵜呑みにして行動することを止めた、それこそが正しい事だと自分に言い聞かせて、結局は自分が傷つきたくないだけだったのかもしれない。

「システィ……大丈夫かい? あっ!?」

システィーナに寄り添おうとしたのか、近づこうとしたが、瓦礫に躓き膝をつくレオン。

「レオンっ!?」

心配からかレオンに駆け寄るが、ずれた眼帯の奥をシスティーナは覗き込んでしまった。

「ひっ!?」

そこには何も無かった。本来あるはずの、白も瞳も、光を反射するものは、なにも。

「……簡潔に説明するとね、僕は魔術を掛けられて正気を失っていたんだ。それはとても強力で、一度掛かってしまえば、死は避けられないほどに……だけど、唯一正気を取り戻す方法が、五感のうちの視力を失うことだったんだ」

思考の根本を揺るがしかねない魔術ではあるが、脳が正常でなくなれば、その魔術も正常に働かなくなる可能性もある。対象を認識した際に発現する魔術だったので、今までと同じように認識できなくしたのだ。それで、これまで操られていた思考をあやふやなものにした。

「それで、両目を?」

だが、完全に正気に戻った、と言うわけでは無い。あくまで、術を掛けられる前に近づいたというだけだ。

「ああ、だがこれでいい。最後に君に話すことが出来るなら」

システィーナはレオンに近づけない。近づいて、一度手を払ってしまったから、レオンが見えないことをいいことに善意を振りかぶるような事になってしまいそうだから。

「こうなってようやく、気付いたんだ。魔導考古学に、天空城の謎に挑みたい、それが願いだって。お祖父様もきっと、同じだったんだ。叶わなくても、無理だと分かっていても、そうしないと自分が自分で無くなってしまうんだ、と。それを理解出来ずに君に酷い言葉で傷つけてしまった……謝らせて欲しい」

「そんな! 謝るなんて、必要ない!」

レオンの言葉に、嘘は無かった。システィーナが魔導考古学を探究することは、己を傷つける可能性も充分にあるからだ。

「だけど、僕は魔術にかかったから死ぬんじゃ無い。正気に戻ったから意見を変えるんじゃ無い……理解しなくてもいい、分からなくてもいい。ただ、覚えていて欲しい」

「……レオン?」

システィーナは、耳を傾ける。

「君を愛している、幸せになって欲しい」

 




読了ありがとうございました。

ジャティスの弱点は創作です、ついでに遠距離射撃してるのは以前作った拳銃ではなく、スナイプライフルを改めて製造してます。
ちなみに天使の粉の対処法も創作ですので、延命処置があるくらいに見てもらえれば幸いです。

システィーナの幼なじみポジションのレオンに意味のある死に方をしてもらいたいなぁ、と思って書いていたのですが、これやってるとシスティーナに負担がかかってくる仕様になってると気づきました。
いやぁ、楽しくなって参りました(愉悦)
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