ロクデナシっ^2   作:3148

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今回は事件が終わった後のお話です。

ただ、めちゃくちゃデカイ魔術が行われて問題にならない訳がないんですよね~(´・ω・`)

もしもしポリスメーン? この人です(愉悦


ロクデナシ教師とロクデナシ錬金術師 第五話

 ほの暗い檻の中、そこには罪を重ねた者、或いは今容疑を疑われている者がかくまわれている監獄、そこにラケルの姿があった。響く足音と共に、現れたのはグレンだった。

「元気そうだな、檻の中だってのに」

それを言うと、ラケルは普段と変わらない声色で答える。

「ええ、自信の健康状態については特に異常は見当たりません」

嫌みが通じないのも普段通りだ。

「そんで、記憶は思い出せないのか?」

それに対し、ラケルは答える。

「ホーエンハイムの共有記憶に関する部分はアクセス出来ません。それと、それに関する部分で思い出すことが出来ない細部はありますが、大方記憶の消失は見られませんね」

そうラケルが答えた時、グレンは溜息をつく。

「まぁ、確かにお前は死んでなかったから他の連中とは違うんだろうな、ってのは分かるが。それでも、今お前が置かれてる状況は良くないぞ」

そうラケルは今、国家反逆罪の罪に問われ牢獄に囚われている。勿論、原因は先ほどの巨大魔術による異界への干渉によるものだが。

「世間的には、巨大魔術の失敗、ということになっていますね」

そして、その魔術の首謀者はラケル、という事になっている。ホーエンハイムに賢者の石によって意識共有体になっていた人間達の多くは生きた状態だったので、ラケルと同じように多少の記憶混乱はあるが日常に復帰している。

「つか、意識がはっきりしてるから主犯になるのも、どうだかとは思うけどな」

他にも現場証拠などもあったが、ラケルがその事件の主犯格と認識される原因で大きかったことは間違いない。何より、世間一般にはなにが目的だったのかすら明らかになっていない。ただ、周囲への被害はセリカによって防がれた、ということになっているだけだ。

「もうちょっと手回ししてれば良かったんだが……正直こうなるとは思ってなかったからな」

再度グレンが溜息を吐くと、ラケルは特に気にしては居ないようだ。

「そうですね、グレン教諭の責任では無いと思いますが、学園に戻れないのは問題ですね」

そう言うと、グレンが疑問をぶつける。

「そうなのか?」

「ええ、戻ると約束しましたので」

そう答えると、グレンは少し気分を良くしたようだ。

「それじゃ、何とか戻る方法を考えないとな」

だが、グレンからすると妙案は出てこない。しばらく悩んでいると隣から声が聞こえる。

「死ねば、助かるのに」

その言葉の主を探すと、先日の学園襲撃の犯人がそこに囚われていた。

「てめぇ、何が言いたい?」

意味ありげなことを言ったが、理解出来なかったからか怒りを顕わにするグレン。

「簡単ですよ。事件の首謀者、ホーエンハイムが死ねば、今回の件に関してラケル君が罪に問われることはありません」

ヒューイの言葉にラケルは理解を示したようだ。

「ああ、成る程。一度死ねばいいんですね」

 

 「死ねば良いって……そういう訳にはいかねぇだろうが」

グレンは会話の意図が掴めない様子だ。それに、ヒューイが答える。

「事件の主犯格が死んだ事になれば、裁判は終わる。晴れてラケルさんが疑われることはなくなるということですよ」

つまり、ラケルが死んだふりをすれば良いと言うことだ。確かに事件の主犯に明確な人物像があった訳ではない。主犯格を別人にして死んだ事にしてしまえば、ラケル自身がこの事件に関係していた事を追求される事は無いだろう。

「つったって……ラケルに自殺でもしろってのか?」

その言葉にヒューイが惚けた顔で応える。

「おかしいですね、あなたならそれが出来るし、する理由があったと思うのですが?」

 

 裁判所でラケルが被告として扱われている。観覧席にはちらほらと人気があるが、主に裁判をするためだけのようだ。

「それでは、国家反逆罪の罪でホーエンハイムを死罪と……」

そう裁判長が判決を下そうとした瞬間、観覧席から一つの影が飛び出し、ラケルの前に立つ。その瞬間にラケルが膝から崩れ落ち、倒れる。

「誰だ、貴様はっ!?」

裁判官達が驚き、その影の正体を見破ろうとする。だが、それを観覧席にいたセリカが止める。

「急に申し訳ありません。しかし、大罪人ホーエンハイムは、今命を落としました。判決の必要もございません」

セリカに対して、知識があった裁判官はセリカに理由を問う。

「ホーエンハイムは極めて危険な魔術を行おうとしておりました。今回は事前に防ぎましたが、他国の心ない人間達からも狙われるようなそういった代物です。秘密裏に処理しなければならず……裁判で処理されたとなれば、関わった人間が危険に晒されるほどの」

皆様にご迷惑の掛からないように、被疑者は突然死し、遺体も行方不明となったとする必要があると伝える。その言葉に、幾つかの人間は理解をしたが、一部の人間は法によって裁かれるべきだと訴える。すると、影が声を出した。

「世界の理を揺るがす魔術に、触れようというのか……?」

低く響く声に怯え、その場の人間がセリカの言葉に従う。その影がラケルの遺体を担ぎ、裁判所から姿を消した。

 

 場所はラケルの部屋。ベッドの上に眠らされているラケルは裁判以来目を覚ましていない。

「グレンの固有魔術で仮死状態にしたんだが……何時目を覚ますのか」

セリカが体調に関しては問題ないことを示唆する。ラケルが学園に戻ってから、毎日テレサは看病と共に、回復魔術をかけ続けている。ウェンディも毎日訪れ、様子を見ているが変化はない。

「帰ってきたって、眠ったままじゃ意味ないですのよ」

授業はいつも通り行われ、日々の喧噪は徐々に取り戻されていった。だが、少しだけ何かが足りないという違和感を残したまま。

「ウェンディ、大丈夫?」

ラケルの会社自体は、ほとんど父親がきりもり出来るようになっていった。勿論、業績が芳しいとは言い難いが、彼女達に出来る事は元からそう多くは無かったのだ。

「勿論ですわ、ラケルがいないからって何も変わりませんのよ」

その言葉は強がりだと誰もが感じた。親しい友人がいなくなれば、誰だって気が滅入る。だが、ウェンディは弱みを見せたくないとしている。

「テレサも、無理してない?」

ルミアがテレサの身を案じるが、テレサも笑顔で答える。

「ええ、大丈夫です。看病と言っても帰る前に少し様子を見る程度ですので」

よく見ると少し目の下に隈ができているだろうか。体調が万全とは言い難いが、周りには何も出来ない、そんな日々が続いていた。

 

 アルベルトが再び白金研究所に足を踏み入れる。事件があったことなど思えないように研究員が慌ただしく研究に没頭している。ただ少し、以前より効率が良くなったのか余裕があるように見える。

「ああ、お待ちしておりました、アルベルト殿」

アルベルトを迎えたのは、リィエル事件の主犯格だった。

 

 「少し、やせたようだな」

テーブルをはさんで向かい合う様に座る。それに対し、所長は笑顔で答える。

「ええ、この間のこともありましたからね。まぁ、研究を続けれる程度には体調は快復しましたが」

鷹のように鋭い眼が所長を貫くが、動揺した様子は無い。

「……経過観察の状態なのだが、こうも不審な点がないのは逆に怪しいな」

「はっはっは、隠すことも無くなってしまえば気楽になれますな」

一度はお縄についた局長だが、事件自体が表沙汰に出来ない為、監視下のもと職場に復帰している。以前ほどの権力はないはずだが、与えられた範囲内で研究に没頭しているようだ。

「それで、監視下の私を訪ねるとは、何か事情があったのでは?」

そうして、アルベルトはラケルの置かれている現状を説明する。

「なるほど、どうして目が覚めないのか……肉体的には問題がないはずだ、と」

藁にもすがる思いでグレンがアルベルトに尋ねたのだ。人間の体に詳しい錬金術師であれば、何か方法が分かるのでは無いか、と。

「長時間の仮死状態の弊害であれば、普通であれば植物状態になることも考えられます。ただ、ラケル殿であれば別の可能性も考えられますね」

アルベルトが続きを促す。

「彼は魔術による肉体制御を徹底しています。そして、脳さえ正常に稼働してさえいれば魔術を発動することが出来ます。言ってしまえば、覚醒状態でなくても、魔術を使用して覚醒出来るはずなのです」

何十年間も試験管の中で思考実験を繰り返していたラケルにとっては、造作も無いことだった。

「つまり、取り返しの付かない状態だと?」

その問いに所長が首を横に振る。

「その可能性はゼロではありませんが、単純に時間が掛かっているのでは無いかと考えられますね。なにせ、魔術の根幹にまで手を掛けたのですから」

是非、長い目で見守ってあげて下さいとアルベルトに伝える。その言葉をそのままグレンに伝えると返事をし、アルベルトは席を立つ。部屋を出る直前に、ふと浮かんだ疑問をたずねた。

「何故、我々に協力しようと?」

「知りたいと望むから、錬金術師になったのです。今、研究を続けるためには貴方達への協力が不可欠だと考えていますので」

何故か、未だ目の覚めない錬金術師の影を重ねてしまう。その原因に思いをはせながら帰路についていると、思い当たる節に辿り着いた。

「誇りも矜恃もない、飽くなき探究心故か」

 

 夕方が近く、ラケルの部屋で看病をしていると、うたた寝をしてしまったことに気付くテレサ。なんとなく、ラケルと魔術の訓練をした時のことを思い出し、恥ずかしいと首を振ると違和感を覚えた。少し、ラケルが動いたような気がした。恐る恐る近づくと、目がゆっくりと開く。

「ら……ける? ラケル!? 目が覚めたの!?」

テレサがラケルの肩を掴み揺さぶると、完全に意識を覚醒させたラケルが呟いた。

「テレサ殿? どうして貴女が此処に?」

 




読了ありがとうございました。

はい、ヒューイさんと所長は出したかっただけです。
死ねば助かるのにも言いたかっただけです(遺言

本編だったら所長タヒぬんだよなぁ(適当
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