ロクデナシっ^2   作:3148

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記憶を失ったラケルとウェンディとテレサのお話……のつもりです。

失ったと言っても、ちょこっとだけなので、日常生活は問題……あったりなかったりします(笑)


ロクデナシ教師とロクデナシ錬金術師 第六話

 「どうやら、記憶障害だな。ホーエンハイムの一件で不安定になってたのもあわせて、一時期の記憶が思い出しにくくなっているようだ」

セリカがぶっきらぼうに言い放つと、部屋の外でグレンを残し去って行く。グレンが部屋に入ると、システィーナやルミアがラケルを質問攻めにしていた。

「白金研究所の事は覚えているの?」

「ええ、ですが一部を思い出すことが出来ません。ホテル内の出来事と、研究所にいた人物に関する一部の記憶が思い出せないですね」

一部というのは、ホーエンハイムの事だ。そして、ホテル内のというのは。

「体育祭のこと、覚えてる?」

ルミアの問いにラケルが一瞬答えが遅れる。

「……体育祭があったことは、記憶しています。直接関わりがなかったので、競技に対する記憶はほとんどありませんが」

その言葉にグレンが質問をかける。

「まて、競技に関わってないって……ウェンディとテレサのことは覚えてないのか?」

その質問に対し、ラケルは惚けたように答える。

「ウェンディ殿とテレサ殿? 何か競技に参加されていたのですか?」

 

 グレンが中に入ろうとしたテレサを呼び止める。

「先生、どうしたんですか?」

「いや、お前はまだラケルに会わない方が良いんじゃ無いか?」

言葉に迷って、グレンはテレサがラケルと会わないようにと話す。そうすると、テレサは微笑んだ。

「分かってます。最近の事、思い出せないんですよね。仲良くなってからの、数ヶ月間のこと……でも、思い出すかもしれませんし」

グレンの言葉を聞いても尚、ラケルの部屋に入ろうと扉に手を掛ける。

「優しいんですね、先生。でも、思い出せなくっても、いいんです」

横目に見送るが、テレサにとって本当に良いのかどうか、迷っていた。ラケルが目覚める前と後、どちらが彼女にとって良いのかなんて、分からない。

「ねぇ、ラケルさん。体調はどうですか?」

そのテレサの言葉に、ラケルは無表情で応える。

「問題ありません。四肢も体機能にも異常は見られません」

いつもと変わらない言葉、何度通っても同じ。記憶を失う前のラケルであれば、少しは変化していたかもしれない。そんなことを考える度に、テレサの胸に針が刺さったように痛みが奔る。

「ごめんね、ラケル君。もうここに来るのは最後にするね」

きっと苦しむだけならば、最初の関係に戻った方が良い。周りにも迷惑を掛けているし、何より今のラケルと接することが苦痛でしかなくなってしまうことが、怖かった。

「ええ、分かりました」

何の感情も無い返事に、テレサは落胆する。だが、その後にテレサの顔を覗き込むラケルに疑問をもつ。

「ラケル君、どうしたの?」

「いえ、テレサ殿の表情が体調が悪そうに見えたので」

少し、寝不足でしょうか。とラケルが呟く。いつもと変わらない言葉に、動揺し、また落胆する。

「テレサ殿、原因に心当たりはありますか?」

テレサは溜息をついて、ラケルに逆に質問する。

「どうして、ラケル君がそれを聞くの?」

その問いに対し、少し迷って言葉にする。

「テレサ殿がそんな表情をしているのが……なんといえばいいのでしょうか。嫌だと、感じました」

自分が言っていることに違和感を感じている。しかし、理論的では無い言葉が、感情的な言葉をテレサはラケルから初めて耳にしたのかもしれない。

「あ、あははは。そっか、そうだよね」

記憶は失ったかもしれない。だが、過ごした日々は、時間は確かにラケルにも影響を与えていたのだ。忘れてしまったからと言って無くなってしまったわけではない。その事が、テレサの痛みを少しだけ和らげた。

「それと、大型魔術の日、テレサ殿と何か話していたことを、思い出せそうな……」

「思い出さなくて良いからっ!」

柄にも無く大声を出して、ラケルの言葉を遮る。顔を赤く染めたのは、過去を思い出したからか、夕日が彼女を照らしたからかは分からない。

 

 放課後、珍しくラケルとウェンディが図書館で向かい合わせに座っている。勿論、魔術について学んでいるのだが。

「ねぇ、本当に思い出せないんですの?」

ウェンディがジト目でラケルを見つめるが、いつものひょうじょうと変わらずに答える。

「はい、この数ヶ月間の記憶が曖昧ですね」

その言葉に、ウェンディは溜息を吐く。何か問題があるわけでも、何か日々が変わったわけでも無い。だが、期待していた予定が無くなってしまったような、そんな喪失感が残っている。それでも、ウェンディは言葉を続ける。

「まぁ、それでもこれからもラケルさんにお世話になりますし……今度私のおうちに来て下さいね」

そう言うと、招待状をラケルに手渡す。

「分かりました」

特に感情もなく返答するラケル。それに対し、ウェンディはつまらなさそうにしている。ただ、ラケルは少し嬉しそうにしていた。

「ウェンディ殿」

「……ん?」

表情は変わっていなかったので、ウェンディは少し違うラケルの様子に気付くことは無い。

「出来の良い果物が入ったので、それも持っていきましょうか」

その言葉に特に気に懸けることもなく、ウェンディは魔術の勉強を続ける。代わり映えのしない日々が続いていく。

 




これにてラケルの物語は第一部完です。

ウェンディとテレサとのこれからの妄想はあるのですが、まぁ、その辺はロクアカ二期が出たら書きます(書くとはいってない

ウェンディが正妻ポジなのに、ドジかわ枠をテレサにしたくなってしまった。批判はあると思う、だが私は謝らない。

ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。それだけで、作者冥利に尽きます、感謝です。

また次作を書く機会があれば読んで頂ければ幸いです。


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