ロクデナシっ^2   作:3148

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今回で学園襲撃は終わり!閉廷!

いやぁ、正義の魔法使いの語りが好きですね(笑)

自分のやりたいことが、出来なくなったけど、諦められない、そんなストーリーが好きです(自分語

これからのシスティーナと膝をついたグレンの対比、だけどまだ二人ともこれからなのが、いいと思います(笑)


ロクデナシ教師と錬金術師 第六話

 「……勝った、のか?」

再び戻ってきたラケルに、おそるおそるグレンが尋ねる。

「勝つ、という概念が曖昧ですが、先ほどの剣使いは消滅しました。これでグレン先生は後顧の憂い無く、ルミア殿の元へ迎えますね」

そう言うと、頬に付いた返り血を拭う。

「場所はこの学院の転送陣のある部屋に、ヒューイ教諭といます。転送陣の書き換えがあと四分三十秒で終わります。それまでに辿り着いて下さい」

「先生! 私も行きます!」

一瞬躊躇したが、グレンはシスティーナの言葉を断る。

「白猫、お前は教室に行って他の皆を解放してくるんだ、万が一に備えてな」

システィーナは怒りを顕わにした。

「私だって、ルミアを助けたいんです! そんな遠回しに遠ざけようとしても……」

「そうですよ、教員以外の人間が入れないように結界も張ってありますし、転送方陣とサクリファイスの魔術を処理する技術はシスティーナ殿には無いと思われます」

割って入るラケルの意見に、二人は唖然とした。

「いや、なんでそこまで知ってるんだ?」

ラケルは答える。

「魔術協力を条件に、契約しましたので」

システィーナは問う。

「教員以外が入れないって、どうやってそんな結界を?」

ラケルは答える。

「今回の転送方陣書き換えについては、ヒューイ教諭の担当になりますので、万が一を備えての結界作成を魔術学院の教諭に該当する人間を感知し、それ以外を退ける形に構成しました。その形であれば、仮に数日間誰かがそれを見たとしても、違和感は覚えても追求はしない程度の不自然さなので」

再びシスティーナは問う。

「それを創ったのは?」

「僕です」

殴りかかろうとするシスティーナをグレンが止める。

「は、放して下さい! 一発ぶん殴らないと気が済みません!」

「気持ちは分かるが、今はルミアのことが先だろ!」

ぐぬぬ、と反論出来ずに大人しくなったシスティーナに、ラケルは無表情で詠唱する。

「集結せよ、生命の脈動、凝固せよ、円環の流動、奔り、拍動し、魂を満たし赤光せよ」

唱え終わると、システィーナがぐったりと倒れ込む。意識を失ったシスティーナをゆっくりと床に寝かせると、グレンが尋ねる。

「白猫に……何をした」

「システィーナ殿はマナの急激な消費によるショックで気絶しています。マナ欠乏症までは至りませんが、数分は眠っているでしょう」

そうして、ラケルはグレンに赤い宝石のような物を手渡す。

「かなり劣化した性能にはなりますが、触媒位には使えるはずです。どうぞ、持って行って下さい」

その対応にグレンは怒気を孕んだ問いをする。

「てめぇ、これもシナリオの内じゃないだろうな……」

それに対し、ラケルは淡々と答える。

「グレン教諭がルミア殿を助ける為に、現在のシスティーナ殿の行動は邪魔になると思われます。その為気絶させました、これはまぁ、気持ちとやらを汲むように努力した結果ですが」

どうにも失敗に終わったようです、と告げる。

「……くそ、あとでちゃんと説明しろよ!」

「ああ、行く前にアルフォネア教授の通話魔術器を貸して下さい、現状報告をしておきます」

振り向くこと無く走り出し、魔術器をラケルへと投げる。

「あー、あー、聞こえますか、アルフォネア教授……」

 

 「だぁらっしゃああぁ」

かけ声と共に、勢いよく扉が開かれる。

「グレン先生っ!?」

驚きと期待が混じった声がルミアからこぼれ出る。

「大丈夫、だったんですね……」

「いや、この姿が大丈夫に見えるなら眼科に言った方が良いぞ」

ある程度回復したとは言え、マナ欠乏症、腹部からの出血、万全とはとても言えない状況だ。

「まぁいい、これで悪趣味な試合も……」

「僕の勝ちです」

グレンが固有結界を構えると、前のめりにこける。ヒューイが言葉を放った瞬間、足下から魔方陣が展開し、ルミアを中心に五つ円が描かれ、その中心からヒューイに魔方陣が伸び、ヒューイを取り囲む形になる。

「けっ、サクリファイスの魔方陣とはな。天の知恵研究会は趣味の悪い魔術を使いやがる」

グレンが悪態を吐き、ルミアが嘆く。

「ヒューイ先生、もう止めて下さい! あんなに良い先生だったのに、どうして!?」

その問いにヒューイは戸惑う。

「どうして、でしょうね。何故かと聞かれれば、ラケル君が関わったことも、天の知恵研究会の面々に収集のサインを送っても見たことも無い彼が現れるのも理解できませんが。答えを知らない私が答えるなら、仕方なかった、ですかね」

そういったヒューイの表情には、少しの戸惑いが含まれた、絶望が見えた。

「そんな……」

ルミアが、苦痛に顔を歪める。彼の表情から何を察したのか知る術は無いが、ヒューイを責める事も出来ないのだと、感じたのかもしれない。

「はっ、そんな表情をしてられるのも今のうちだけだぜ! 俺には取って置きがあるんだからな!」

そう言って、グレンはラケルから手渡された触媒を手にし、魔術方陣の解除魔術を唱える。

「消滅せよ!」

 

 「なるほど、現在の状況は分かった」

通信機器から、セリカ・アルフォネアの声がする。それに対し、ラケルが答える。

「はい、それで今、グレン教諭がルミア殿の救出に向かっています」

ラケルの言葉に、セリカの深いため息が聞こえるが、気を取り直すように咳払いをして、話を続ける。

「天の知恵研究会への接触、および協力については後で詰問させて貰うとして、現状グレンの協力をしているのであれば問題ない。ちなみにラケル、君は今どこにいる?」

「はい、自分の研究室です」

「はいじゃないが」

一瞬の沈黙が流れ、セリカが焦る。

「じゃあ今、グレン単独で転送方陣に向かっているのか!? 大丈夫なのか!?」

「お答えできません」

「はっ倒すぞ!? いや、返ったら間違いなく一発殴る! さっき、触媒をグレンに渡したと言ったな、あれはどれ位のマナと強度がある?」

「一回程度です」

「転送方陣と書き換えた箇所、そしてその解除方法はグレンに伝えたのか?」

「伝えてません」

「……残り時間は?」

「三〇秒程度ですね」

通話器の向こうから、声にならない悲鳴が聞こえてくる。

「いますぐグレンの元へ向かって、協力しろ! 私が戻るまでに何かあったら――」

セリカの言葉を遮るように、ラケルが返事をする。

「終わったみたいですよ?」

 

 「……なん……だと?」

グレンが握っている『賢者の石』が砕け、魔方陣の一つが消え、ヒューイが驚く。

「……しょぼ」

魔方陣一つ分の魔術にしか耐えきれなかった、それは今や砂になり、視認する事すら難しい。

「うっそだろ、おまえ!?」

グレンが驚きのあまり、困惑する。

「はぁー、つっかえ。辞めたら、魔術師」

ルミアも極限状態を突破し、普段間違いなく使わない言葉を発している。

「……あと四つ魔方陣があるんですがそれは」

一瞬の沈黙、転送陣の発動までもう数分あるかという状態だ。そうして、ルミアが悟った雰囲気で言葉を紡ぐ。

「先生、もういいです。私は大丈夫だから……先生だけでも逃げて下さい」

状況を鑑みて、恐らく今から逃げることすら不可能だろう。それでもなお、現状を理解した上で、ルミアは他人を気遣う。

「少し黙ってろ!」

グレンの咆哮に、ルミアはたじろぐ。

「関係ないんだよ、助かるとか、そうじゃないとか……勝手に正義の魔術師に憧れて、血みどろの魔術の世界に飛び込んで、絶望した俺には。人の命を語る資格なんてないんだよ……」

正義の魔術師、それは市販に出回っている絵本で、悪の魔術師に対し、正義の魔術師が何度倒れても、立ち上がり立ち向かっていく、魔術師が善であるという思想を創るために作られたものだった。その言葉で、その場の人間は察した。希望を抱き、その手に血を染め、それでもなお歩み続けたその先で、膝を突き希望を失った末路を。

「俺が目指した正義の魔術師の道は、人生は無意味だった。時間と労力の無駄だったろうさ……」

そう言うと、自らの手首をかみ切り、血管から血があふれ出す。その血を持ってルーン文字を結界に上書きしていく。

「自らの血液を触媒にするとは、恐れ入ります」

マナとは生命活動を行うに当たって発生するエネルギーである。血液を失うことは生体活動に著しく損傷する行為で有り、なおかつマナを消費する魔術を行使する事は、自殺行為に他ならない。

「原初の理よ、新たなる理を持って、散滅せよ!」

外枠二つ目の魔方陣が消滅していく。残る魔方陣は三つ。

「先生! 無茶です!」

ルミアの悲鳴染みた叫びに、グレンは耳を貸さない。

「無茶だろうが何だろうが、やるしかねぇんだよ! 例え俺が歩んできた人生が無意味だったとしても……」

そうして、血液を触媒にし、三つ目の魔方陣を消滅させる。

「無価値にだけはさせられねぇんだよ、文句あっかくそったれぇ!」

四つ目の魔方陣を解除し、残るは一つ。それと同時に、グレンの体に異変が起き、血を吐き地に伏せる。

「そんな……グレン先生!?」

「三つの魔方陣を解除するとは見事ですが、マナが尽き、体も限界のようですね」

ヒューイが複雑な表情でグレンを見つめる。彼の今の姿は紛れもなく、絵本に描かれた正義の魔術師では無かったのか。その現実がこれでは、あまりにも残酷すぎる。

「んぐぅ……先生」

魔方陣が一つになったことで、弱まった結界の中からルミアが手を伸ばす。仮に魔術体勢のある学院制服を纏っていても、その手には激痛が走り、皮膚は焼け、反発する力に関節が悲鳴を上げるだろう。

「そんな……まさか」

恐らくグレンには前は見えていないだろう。度重なる出血とマナの損失で碌に体を動かすこともままならないはずだ。それでもなお、体を引きずり、地を這いつくばってでも、前へと進む。目の焦点は合わず、血にぬれ体を引きずった跡には夥しい血の跡が残る。それでもなおグレンは、最期の一瞬まで正義の魔術師であろうと、進み続ける。

「っ……届いた、先生が諦めなかったから」

ルミアの手が、僅かにグレンの手に触れる。それは指先が擦り合う程度だったかもしれない、だがそれで十分だった。黄金の輝きがルミアから溢れ、グレンの体を包んでいく。

「感応増幅者……触れた者のマナを何倍にも増幅させる異能者。まさか本当に存在するとは」

そして、グレンが咆哮と共に立ち上がる。

「原初の理よ、生命の流れを断ち切り、霧散せよ!」

 

 「ルミア!」

システィーナが部屋の中央にいるルミアに向かって走り出す。そこには倒れたヒューイとルミア、そして意識の失っているグレンがいた。駆け寄り近づくと、ルミアにジェスチャーで静かにするように伝えられる。

「……お疲れ様、先生」

 

 屋上にはセリカとグレンが、風に当たっている。時刻は日が落ちていき、講義の時間が終わって生徒によっては帰宅したり、その他の施設を利用したり、各々の時間を過ごす。

「それにしても、お前が先生を続けるなんて、一体どんな心の変化だ?」

セリカがグレンに尋ねる。それに対しグレンはぶっきらぼうに答える。

「そんな大したもんじゃねぇよ」

そうして、生徒達の流れの中にシスティーナとルミアがグレンの姿を見つける。

「せんせー!」

「グレン先生! 先ほどの授業でお聞きしたいことがあるんですが!」

その言葉に、軽く手を振り、そちらに向かうことを伝える。

「ただ、あいつらの未来を見てみたくなったのさ」

その言葉にセリカは驚き、そして安心する。

「そうか……ちなみにラケルには数日の謹慎処分と先日の事件の取り調べと私直々のごうも……説教を行っているところだ」

「……そいつは寛大な措置だな」

セリカや他の講師達がラケルを囲んでいるところ想像したのか、苦虫を噛み潰したような表情をするグレン。しかし、それで凹んでいる姿を想像できなかったのか、更に複雑な表情となっている。

「悪意は無く、己が魔術にのみ没頭する……それは魔術師として正しい」

「魔術は外道、魔術師として正しい程、人の道を外す。覚えてるさ……教えるのに骨は折れそうだけどな」

そうグレンは言って、過ぎ去っていった。

セリカにも一抹の不安はあったのだろう、手すりに背を預け、青空を仰ぎ見る。

「お前はこうなることを知っていたのか……アリストテレス」

言葉は風に流され、虚空へと散っていく。

 

 




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