ロクデナシっ^2   作:3148

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魔術競技祭始まります(唐突)

とはいえ、まだ祭の話は少し先ですが(笑)

ラケルが教室に戻ってきたけど、まぁ受け入れられないよね、ってお話。

ロクデナシ教師に無能の称号が増えるよ、やったね(略


魔術競技祭 第一話

 騒動から三日が経ち、グレンのクラスメイト達も徐々に日常を取り戻しつつある中、珍しくルミアとシスティーナが校門を一番にくぐった。

「偶には、早起きもいいね」

「流石に、早起きが過ぎたかもしれないけどね……」

システィーナの手にはバスケット籠があり、表情はどことなく眠たげである。

「システィ、教室に着いたら少し休んだらどうかな?」

ルミアはシスティーナを気遣うように話す。端から見てもシスティーナの体調は良いとは言えない状態だった。

「ありがとルミア。少し眠ろうかな」

昼食作りに時間を取るため早起きしたのは良かったが、早起きも過ぎれば睡眠不足になる。何より普段から規則正しい生活を努めているシスティーナのような人間こそ、生活リズムを崩したときの反動も大きくなるものだ。

「ふふっ、美味しく出来てるといいね」

ルミアが意味ありげな微笑をシスティーナに向ける。

「な、なによ。別に私が食べるんだから美味しくなくても大丈夫なんだから!」

システィーナはルミアが誤解していると言いたげな表情だが、別にルミアは誰が食べるとは尋ねてはいない。気恥ずかしさを隠すためか、足早に教室の扉を開けると、ラケルが教科書を広げて座っているのが見える。

「……は?」

ラケルは何事も無かったかのように机に向き合い、見たことも無い書物とノートを広げている。

「ラケル……くん?」

「はい」

「はいじゃないわよ! なんであんたがここにいるのよ!?」

システィーナが先ほどまでのだるそうな雰囲気から一転し、驚愕と怒りが入り交じったような表情で叫ぶ。

「学園の生徒ですので」

表情一つ変えずにラケルが答える。容器が膨張するように、言葉が溢れすぎてはき出すことが出来ない状態のシスティーナを横目に、比較的冷静なルミアが尋ねる。

「どうしてこの三日間、姿を現さなかったの?」

「先日の”天の知恵研究会”侵入事件について、詰問をされていたことと、謹慎処分を受けていたためです」

冷静に、端的にラケルは答える。

「あんたっ、あいつらの手引きをしていたのに、まだここにいられるつもり!?」

やっとのことで吐き出したシスティーナの言葉にラケルは応える。

「校則に、彼らについての規則は存在していませんので」

システィーナの血管が、ブチッと言う音と共に切れる。

「クラスメイトを危険に晒しておいてよくもそんないけしゃあしゃあと話せたものね! 学園もクラスもあんたなんかを受け入れると思うわけ!?」

いっそ殴りかかろうとするシスティーナを抑えるルミア。意に介した様子も無く、ラケルは変わらずに返答する。

「受け入れられるかどうかについては、個々の心象に寄るものなので分かりません。学園については詰問、処分の上で退学となってないことから、まだ利用価値があると判断されていると思ってます」

更に激昂するシスティーナとそれに対して、ルミアも怒りの色を隠さなくなってきた。

「ラケル君、あなたにどんな事情があったのかは知らないけれど、少なくとも私にはあなたがここに居て問題ない人間にはみえないよ」

そうやって睨みつけられると、ラケルは席を立つ。その事に注意し、システィーナとルミアは最大限の警戒を行う。

「なるほど、先日の事件を経て自分とクラスメイトの間に齟齬が出来ていることは理解しました。当事者二人がその反応であれば、他のクラスメイトも同様の反応が予測されますので、場所を変更します」

システィーナが叫ぶ。

「どこに行くつもり!?」

「グレン先生の研究室へ。生活安全の面の問題であればクラス担当教諭に相談するのが妥当かと」

ルミアとシスティーナは向き合い、疑問符を頭の上に浮かばせながらも、ラケルの後を追った。

 

 そこには、乱雑に放置された書類といくつかの魔術の素材、様々な書物と……食べかけの生ゴミや包装紙、言ってしまえばゴミ屋敷一歩手前程度の部屋だった。

「なんであんたが勝手に入り込んでるのよ?」

グレン=レーダスと書かれた看板の部屋に無言で入り、あまつさえ中にあるものを物色しているラケルを見て、システィーナが尋ねる。

「グレン教諭が特に理由も無く鍵を掛けずに外出する事が多いので、それと中に複数人入るには、少々散らかっていますので」

そう言うと麻袋を何枚か取り出し、箒とちり取りで床を、手で机の上とソファの上のゴミを適当に片付け綺麗とは言えないが、座れる状態にする。

「……手慣れてるね?」

ルミアがどうしてそうなっているのか、よく分からない状態で、ひねり出した言葉だった。

「はい、何度かここには入ったことがあるので」

それに対して、システィーナが鋭い目を向ける。

「基本的に、教師の許可なく出入りは禁止なはずよ?」

「次期の論文作成について、必要があったのでグレン教諭の許可は頂いています」

システィーナがラケルの言葉に疑問を抱く。

「どうしてあなたが論文を?」

「……もしかして、グレン先生の?」

ルミアがほぼほぼ事情を察する。

「そうですね。グレン教諭名義の論文を作成するので。基本的には外部での情報管理は好ましくないので、必然的にここでの管理になります」

そこでシスティーナが盛大にため息を吐く。

「あのロクデナシ講師……」

システィーナが頭痛に頭を悩ませるが、早朝に来たとは言え、然程始業まで時間があるわけではない。

「あんた、どうしてあの連中に手を貸したわけ?」

システィーナの問いに、ラケルが答える。

「転送魔術方陣の書き換え、及び省略技術提供、内部情報のリーク、そしてその情報を学園側に伝えないことを条件に、錬金術に関わる実験データを提出して貰ったからです」

そして、ルミアが違和感に気付く。

「学園側に伝えない、引き替えにデータを貰った? どういうこと?」

ルミアの言葉にシスティーナが尋ねる。

「え、え? どうしたのルミア?」

「ヒューイ先生ですら、”天の知恵研究会”の操り人形だった。だけど、今のラケル君の言い回しが真実なら、対等に取引をしていることにならない?」

その言葉にシスティーナは畏怖を覚える。あの日に起こった事件の真相を知る術は無かったが、確実に自分よりも深入りしながらも平然と日常に戻ってきているラケルが異常である事を始めて実感する。

「そんなことって……」

「そうですね、対等と呼ぶに相応しいかは判断が難しい所ですが、一方的な提案ではなく話し合った末の同意ではありました」

システィーナが絶句する。あの事件で軍用魔術を扱う相手に、一歩も引かずにねじ伏せるだけの力をラケルは持っているのだ。

「どうして、先生と相談しなかったの?」

「少し長くなりますが、よろしいですか?」

システィーナとルミアが息をのみ、頷く。

「事の始まりはヒューイ先生の失踪、約二ヶ月前になりますね。学園は外部には秘匿としながら、内密に彼の行方を捜索し始めました。それに対し、生徒内部に対しても、心当たりがないか、調べられていたのです」

その言葉を聞いて、二人はヒューイ先生の失踪の直後を思い出す。他のクラスの先生が交互に来て、授業を進めつつ、ヒューイ先生について普段の様子等を聞かれていたからだ。その時は単に授業の為だと思っていたが、それ以外の意図があったのだと気付く。

「そこで『ヒューイ先生の失踪』をラケル君が調べ始めた、ってこと?」

ルミアが確認する。

「はい、私にはヒューイ先生が今どこに居るのか、何か見つかったら報告して欲しいと言われました」

「それで、どうしたの?」

「まずはヒューイ先生の失踪前の行動を半年ほど洗い出し、魔術用品や書物の入手ルートを探り出し、学園に持ち込んでいる書物の中に、一般ルートで流れていないものが幾つか確認出来たので、そこから辿ると、非合法で流している仲介人に当たったので、そこに確認を取りに行きました」

「いや、ちょっと待って、話が早すぎない?」

頭を抱えるようにシスティーナが頭を抑える。

「どうして、ラケル君がそこまで分かるの?」

純粋な疑問として、ルミアが問う。

「母上の実家が運送業でして、こちら方面の幾つかの支部を父上名義で僕が管理しているんです。ですので、流通経路については詳しく、またその仲介人も知っている人間でしたので、アポイントを取るだけですみました」

呆気にとられている二人を置いて、更に説明を続ける。

「仲介人は基本的に取引相手については話しません、賄賂を渡しても信用を失えば仕事どころか首ごと失ってしまいますから。なので、何を取引したのかで辿り着いたのが、サクリファイスと転送魔術方陣についての書物である事が分かりました」

その二つ言葉にルミアが反応する。両方ともヒューイから聞いた言葉だったからだ。

「サクリファイスでは追えませんでしたが、転送魔術方陣となれば、学園にあるものと関わりがあると考え、探りに行くとヒューイ教諭の魔術の痕跡を見つけ、そして何をしようとしているのかを大凡の検討を着け、幾つかの情報屋から情報を買っていくと、とある酒場で偶然見つけたんです」

「……誰を?」

システィーナが声を殺して問う。

「ヒューイ教諭と今回潜入してきた”天の知恵研究会”の人間、ですね。丁度良かったのでササッと話しかけました」

「良くないよ!? 丁度どころかタイミング最悪じゃない!?」

ルミアが悲鳴に似た声を上げる。

「ヒューイ教諭の居場所と失踪理由を知る絶好の機会じゃないですか、まぁそこで始めて今回の事件について全貌を知ることになるのですが」

「知ってたなら止めなさいよ!?」

今度はシスティーナが叫ぶ。

「その時点で計画を止めた場合、勿論中止になり、ヒューイ教諭は殺処分、目的も明確にならないままですよ?」

「……だから、協力した、と?」

恐る恐るルミアが尋ねる。

「内部情報と学園側に計画当日まで情報を漏らさない事を条件に計画全容を知り、転送魔術方陣の省略と引き替えに個人的に必要な情報を得られました。結果論ではありますが、事件当日に僕が自由に動けたこと、グレン教諭が彼らの想定外の魔術師であったことで、人的被害無しで済みました」

「つまり、”天の知恵研究会”に協力したことも、情報を学園側に伝えなかったことも事情があった。結果的に人的被害無しで済んだことと、その結果に貢献したことで退学は免れた……そういうこと?」

システィーナがそこまでの話をまとめる。それに対してラケルは頷く。

「その通りです、問題が無いなら生徒として通常通りの行動を行うつもりでしたが」

そうは行かないみたいですね、とどこか他人事のように呟く。

「それって、私たちが納得しても、クラスの皆は難しいんじゃ……」

ルミアが呟く。

「それどころか、私も納得いかないわよ」

釈然としない表情でシスティーナが話す。納得は出来ないが、責める事も出来ない、そんな複雑な態度をとっている。そうしていると、部屋の扉が開いた。

「あれ? なんでお前らがいるんだ?」

件のロクデナシ講師だった。

 




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