ゲゲゲの鬼太郎 もう一人の末裔   作:朝ノ陽

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お待たせいたしました。本編に突入します。
相変わらず下手ですが温かく見守ってください。


復活妖怪襲来の章
悪夢再来、牛鬼復活


ある島には昔から言い伝えによって立ち入る事を固く禁じられた地があった。。

長年島で暮らしてきた住民は決して立ち入らないようにし、次の世代にも必ず伝えることで受け継がれている。

だが時が経つとともに人間たちから畏れの心は文明の進歩とともに薄くなっていく。非科学的だ、作り話だ、といった言葉で片づける者たちがほとんどになってしまった。そして今そんな彼らによって禁断の地と言われた場所の開発が行われようとしていた。

見えている世界に囚われ、習わしを無視し、結果禁断の地に踏み込んだ彼らに恐ろしき魔の手が迫っているのをこの時はまだ誰もきづいていなかった…………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本のどこかに人間の世界とは切り離された妖怪の世界がある。

ここはたくさんの妖怪たちが集まって暮らす街、妖怪横丁。

そこでは 様々な妖怪たちがお互い協力し合いながら生活しており、のどかでありながら、どこか活気ある雰囲気に満ちていた。

そんな横丁の周りにはゲゲゲの森と呼ばれる森林地帯があり、その森の奥に彼は住んでいる。

青い学童服に黄色と黒の縞模様のちゃんちゃんこを身につけ、右目にかかるほど長い茶色の髪が特徴の少年が卓袱台に乗った茶碗に急須でお湯を注いでいた。

 

「父さん、湯加減はどうですか。」

 

彼は茶碗の中のお湯に浸かっている手足が生えた目玉(父親)に声をかける。

 

「うーむ、もうちょい温かくしてくれないかのう、鬼太郎。」

彼-鬼太郎が父さんと呼んだその生物は目玉おやじといい、鬼太郎の父親だ。

 

「はい、わかりました。」

 

そういうと彼は手元に置いたやかんを持って、お湯を少しずつ足し、丁度良いと言われた所でやめ、それを卓袱台に置いた。

 

「しかし、本当に平和になりましたねぇ…。」

「全くじゃ、まさかこんな日が本当にくるとはのぅ。」

 

そういうと彼らは思い思いに手足を伸ばした。

妖怪の中でも名門といわれてる幽霊族という種族があり、鬼太郎はその唯一の末裔である。

あの日、ぬらりひょんが率いる日本悪党妖怪、バックベアードが率いる西洋妖怪、チーが率いる中国妖怪との戦いに終止符を打ってから十年以上が過ぎ、平穏な日々が続いた。

もちろん、妖怪と妖怪、妖怪と人間とのトラブルが全くなくなったわけではない。

しかしそれでも今までと比較すればだいぶ少なく、鬼太郎を始め、横丁のみんなものどかな毎日を送っていた。

だが、鬼太郎親子にはぬらりひょんが天狗ポリスに連行される際に告げたあることが少し気がかりだった。

そのあることとは…………

 

「鬼太郎ー!」

 

鬼太郎がふと思い出し、その事について目玉おやじに尋ねようとした丁度その時、自分の名を呼びながら我が家に駆け込んできた者によって中断されることになった。

鬼太郎と同年代と思われる少女で頭につけたリボンが特徴的だ。

そしてその容貌はどこか猫を思わせるものがあった。

 

「やぁ猫娘、一体どうしたんだい?」

 

鬼太郎はいつものようにのんびりと振り返ったが猫娘はとても深刻な表情を浮かべており、手に何やら手紙が握られているのを見て、すぐに何か重大なことが起こっているのを察した。

 

「人間たちの街が大変なことになってるの!実は---------。」

 

その後、猫娘から告げられた内容は衝撃的なものだった。

その後読み終えてすぐに、鬼太郎はカラスたちを呼び、猫娘に仲間の妖怪を呼ぶよう言った後、先に目的地に向かって飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

鬼太郎が訪れたのは蜘蛛島という瀬戸内海に位置する島であり、数十年前にも妖怪の件でここを訪れたことがあった。

島に降り立った鬼太郎は言葉を失ってしまった。

ここ数年で有名な観光地へと発展した島だが、町のいたるところで家や道路が何者かに破壊されたまま残っており、その痕が、事の惨状を生々しく伝えていた。

鬼太郎は住民が何処かに避難してないか、敵の存在に用心しながらも島中を探し歩いた。

それから数十分後、ある場所の無事を確認した後、中々住民が見つからずに困っていたところ、先程猫娘たちを連れに戻った一反木綿から猫娘たちがこの島から離れた都市で今回の依頼人が待っていると聞き、再びそこに向かって飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

その後、依頼人と港の船着場で合流した後、猫娘たちとともに近くのアパートで話を聞くことにした。

鬼太郎を前に依頼主、そして依頼主の隣に一人の青年が座った。

依頼主は蜘蛛島の長老で生き残った島の住人や家族と一緒に命からがら逃げてきたとのことだった。

 

「じゃあ早速本題に入りますが……。」

 

そう切り出した鬼太郎の顔つきはより一層険しくなり、長老は一瞬蛇に睨まれた蛙のように気圧される。

 

「…牛鬼がまた現れたという話は本当ですね?」

 

牛鬼………その言葉を聞いた瞬間、長老だけでなく猫娘や一緒に来た砂かけ婆や子泣き爺も顔を曇らせた。

牛の体に蜘蛛の体をした妖怪で、数百年前に瀬戸内海の島々を壊滅させた妖怪。そして数十年前にも蘇り、人々を恐怖に陥れた。

その時鬼太郎は牛鬼に乗っ取られた親友を助けるために自分を犠牲に牛鬼と化すも最後の力を振り絞って自我を保ち、自らの命と引き換えに道連れにしようと火口に牛鬼を放り込んだ。

その時は島の守り神である迦楼羅様に命を救われたことで無事だったが鬼太郎や目玉おやじ、猫娘やねずみ男はもちろん横丁の妖怪たちも、そして当時の島の人々にもその恐怖を知らしめた。

そして鬼太郎は事件の後、二度と牛鬼が封じられた牛鬼岬に近づかないよう島の人々に警告し、恐怖を目の当たりにした彼らはそれ以後絶対に近づかないことを固く誓った。

それなのにどうしてまた………。

 

「本当に……すまない………。」

 

長老は深々と頭を下げた。自身の不甲斐なさを悔いているのを鬼太郎たちは感じた。

 

「俺が不甲斐ないばかりにこんなことになってしまって……また、あんた達に頼ることになっちまって……。」

「一体…何があったんですか?」

 

鬼太郎の隣に座っていた猫娘がおずおずと口を開いた。

 

「聞いてください。事の始まりは二年前のことだった………。」

 

長老は我に返ったかのように言葉を正し、それから事件の経緯を語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

この島では近年高齢者の数が増え、子供の数が減っていく、いわゆる少子高齢化が問題となっていた。

しかし数年前にリゾート地として大規模な開発をした結果、綺麗な海に美味しい海の幸、島の守り神の伝承を売りとした観光名所となり、その結果、都会から移り住んでくる若者が増え、島はより一層栄えた。

だがその事で新たな問題も発生した。 世代ごとの考えの違いから、住民の話し合いの場で度々<古い世代>といわれる、長く島で暮らしてきた人たちと<若い世代>といわれる人たちとの間で新しく取り入れるべきだ、とかこれまでのしきたりをないがしろにしてはならない、といったようなことで意見の衝突が度々起きていた。

そんなある日のこと、TV局のリポーター全国放送でこの島の特集をしたい、という話を持ちかけてきた。島民たちにとってはこの島をさらに栄させる願っても無いチャンスである。会議中、何か他の島にはないインパクトのある場所はないかと皆議論を交わした。そんな中、「若い世代」の一人がこんな案を出したのだった。

「あの岬を立ち入りも解禁しよう。」と……。

あの岬………それは牛鬼が封じられた場所である牛鬼岬のことだった。

何百年もの間、禁断の地といわれこの島の人々は誰も近づかないよう誓った場所、それが牛鬼岬である。

前々から観光客には注目されており、島の守り神と戦った魔物が封印された場であるというのなら、それを探検の場として売りにするのがよいと考えたのだった。

その意見に<若い世代>の人々は皆賛成の意を示したが・・・

 

「だめだ!」

 

静かに、しかし突き刺すような鋭い声でそう断じたのは他でもない、長老だった。

 

「何度も言わせるな。あそこにはもう二度と立ち入ってはならない。あの日のことを繰り返してはならないんだ!!」

 

彼も数十年前は牛鬼岬の伝承を頭から信じておらず、結果牛鬼復活の片棒を担いでしまった。

しかし自分の祖父でもあった当時の島の長老や鬼太郎たちからその時のことを強く戒められ、自分の軽率な振る舞いが結果多くの人たちを恐怖に陥れてしまったことに責任を感じていた彼は後世にも自分たちの過ちを、そしてこの世には科学だけでは明かせない不思議なこともあることを伝えることを心に決めていた。

島を開発する時も決して牛鬼岬には立ち入らないように業者の人たちに釘を刺しておき、観光客にも決して立ち入らない上で岬のことを語ってきた。

当時の人たちは自分たちも経験してきたこともあってか皆、長老の言葉に力強く頷き、それぞれが反対の意を示した。

 

「そういうわけだ。牛鬼岬については今まで通r「いい加減にしてくれよ」なにっ!」

 

牛鬼岬の話を切り上げようとした長老は別の声に遮られ、声の主の方に顔を向けた。

 

「いつまであんたらは古くさい迷信にしがみついているつもりだよ。そんなんだから時代に乗り遅れてしまうんだろうが。」

 

そういったのは<若い世代>の代表格であり、長老の孫である利明だった。

彼は都会の有名大学を数年前に卒業し、そこで得てきた知識を島の興隆に役立てようと意気込んでいた。

しかし提案すれば何かとしきたりがどうとかでなかなか自分の意見が通らないことが続き、自分の言う通りにすれば島のためになるというのに、と日々苛立ちを募らせていだのだった。

利明は忌々しそうに<古い世代>の人々を見回した。

 

「世界中の人とインターネットでやり取りするのは当たり前。再生医療で不治の病を克服出来るようにし、あまつさえ人をも作れるようになった今のご時世でそんな魔物が本当にいるわけないだろ。」

「利明、少し名の通った大学を出たからといって自分の知る世界の中でうぬぼれてはならないと前にもいったはずだ。とにかくあの岬に立ち入らない、今もこれからもだ。」

 

そう告げると不満と苛立ちを含んだ表情を浮かべる利明たちを無視して長老は牛鬼岬の話は切り上げた。

その後は代替案がいくつか出たもののまとめ上げるまでには至らなかった。

結局そのまま会議は御開きになり、皆ぞろぞろと部屋から出て行った。

それから間も無くのことだった、誰かが牛鬼岬で牛鬼の封印を解いてしまったとの知らせが入ってきたのは……。

 

 

 

 

 

「……封印を解いたのは都会から来た若者たちでそれも動画を撮るためだとかで………。」

 

そういって長老は自分でも気づかないうちに握りこぶしをしめていた。。

かつて自分も同じようなことをしたとはいえ、場をわきまえない軽率な振る舞いのせいで自分たちがこんな目にあっていることに怒りを感じているのだろう。

 

「それで牛鬼の封印は解かれ、あなたたちはここまで逃れてきた、そういう事ですね。」

 

長老がここまで話すと鬼太郎は静かにそういった。

実際前の牛鬼の件も本来は踏み込んではならない地に人間たちが勝手に踏み込んだことから始まった。

最近では若者たちの間でインターネットなどを通じて自身を発信することが増え、その結果注目されたいがために妖怪の地に踏み込んだり、封印を解いてしまったりといった事例が増えてる。

自分たちの生活や利益のために開発を進めようとする方がまだまともに思える、そう考えるほど鬼太郎はこんなことをする人間にほとほと呆れていた。

 

「いえ……その時は違いました。」

「えっ…?」

 

思わず猫娘はそんな声を出した。とはいえその場に居合わせた誰もが疑問を浮かべた。

 

「違うとはどういうことじゃ?牛鬼の封印は解かれてしまったのじゃないのか?」

 

砂かけ婆が少し身を乗り出した。

 

「はい、確かに牛鬼の封印は解かれた、それは間違いありません。しかし牛鬼は一向に姿を見せず、その若者のうちの誰かが牛鬼になったという話もありませんでした。」

 

そういって長老は再び説明し始めた。

 

 

 

 

牛鬼岬の一件後、不気味なほどに何も起こらなかったのである。

<古い世代>の人たちは皆で迦楼羅様に祈るなどして最初こそは警戒していたものの何事もなかったかのように日々が過ぎていったことでそのうち誰もが拍子抜けてしまった。

そしてそのまま半年が過ぎ、その頃を境に利明を筆頭に<若い世代>の発言力はこれ見よがしに増してきた

そんな中再びTV局から取材の話を持ちかけられたその日から<古い世代>の中からも自分たちの島の先行きを優先的に考え、岬の観光地化に賛同するものも増え始め、とうとう会議の場で牛鬼岬のこと立ち入りの解禁、そして観光地化が決定されてしまった。

無論、長老と何人かの仲間達は最後まで反対し続けてきたが多数決で決まってしまったのでもうどうしようもない。

開発が決まったその日の会議の終了後、皆が帰った後、利明は満足げな笑みを浮かべて近づき、そしてなだめるようにこういった。

 

「あんたがこの島のことを思っているのはよくわかる。けどよ、もっと時代を見てくれよ。今世の中は廻まじく変わってきている。いつまでも古臭い迷信や習慣に縛られていたんじゃ取り残されちまう。これからはもっと切り開いていかなきゃならないんだよ。」

 

利明は周りから長老を上手くなだめてやってくれと頼まれていた。

もう決まったことなのでわざわざそのようなことをする必要はないのだが、今後何か新しいことを始めるときに迷信のせいで好機を逃してはたまらない、彼はそう判断して説得を試みたのだった。

 

「利明、俺は誰がなんと言おうと絶対に認めない。最後まで抗わせてもらう。」

 

長老はこちらを見もせず、静かにそう告げた。

 

(この期に及んでまだそんなこと言ってんのか!)

 

ここにきて日々積もりに積もった彼の苛立ちは遂に頂点に達し、そして同時に悟った。

この先どれだけ人類の文明が発展し、科学が進歩しようとこの老いぼれは自分の世界に閉じこもるだけなのだと。

 

「…もう、うんざりだ………!」

 

利明は握りこぶしを震わせながら吐き捨てるように呟いた。

 

「せっかくかわいい孫が心配して言ってやったのによ!だったら死ぬまで迷信にしがみついてろよ!!!」

 

利明は感情的に言葉をぶつけるだけぶつけると会議室を出ていった。

 

(まあ、じじいがどうしようが関係ないけどな!)

 

部屋を出てから彼は心の中でそう呟くと長老を待たずにそのまま家に帰っていった。

 

 

 

「では……ここからは僕が説明します………。」

 

長老がここまで話し終えた後、今度は利明が話し始めた。

 

 

 

そして数日後、遂に数十年の時を経て再び禁断の地に人間が足を踏み入れ始めた。雰囲気が出るとのことで牛鬼岬の撮影は夜に行われる。撮影の前日、利明は事前に長老が邪魔しないようにしてほしいと仲間に頼んでおいたので心おぎなく取材に応じれる。

いよいよ本番、利明は少し緊張しつつカメラの前に立った。

 

「皆さん、これから禁断の地といわれた牛鬼岬に我々は足を踏み入れていきます。」

 

芝居掛かったようにそういうと利明たちはゆっくりと入っていった。

すっかり辺りは暗くなり、そこはかとなく不気味さが漂っていると感じるほど静かだった。

 

「…そしてこれがかの牛鬼が封じられているという牛鬼岩です。」

 

そういって彼らはある岩の前に立った。

牛鬼が封じられているといわれる牛鬼岩、しかしそれはまぎれもない迷信だったことは半年前に証明されている。

あの日蓋の役割をしていた石は一応元に戻してあり、今朝方一応開けてみたものの、やっぱり何も起こらなかった。

利明はやっぱり自分が正しかった、迷信なんて糞食らえだ、と心の中でそう呟いた。

 

「さて、いよいよこの島の裏側にある牛鬼の住処に向かおうと…」

 

………とそこまでいったときだった。

遠くの方から何やらこちらに近づいてくる音が聞こえてきた。

最初は空耳だと思っていたがここにいる全員が皆同じような音が聞こたことからそれがそうではないとすぐに理解した。

暗がりでよく見えないがその音は段々と大きなり、ついには地響きで地面が揺れ始めた。

そして暗闇の中で何やら赤いものが光った次の瞬間、突如無数の糸がこちらに向かって一斉に伸びてきた。

 

「あ…ああ……。」

 

利明は一瞬何が起きたのかわからなかった。だがすぐに目の前の恐怖に慄くことになった。

暗闇の中から伸びる糸がまるで生物のようにうごめき、次々と取材に来た人たちを絡めとり、引きづり込んでいった。

 

「うああああああっ!」

 

ここにいたら命はない、そう判断した利明は一目散に駆け出した。

入り口にある鉄の扉に鍵をかけた後は必死に逃げて家まで駆け込んでいった。

 

「皆大変だぁ!!ば、ば、バケモノだ!バケモノが出たんだぁ!!」

 

あまりの恐怖で身体中がガクガクと震えていたものの、なんとか体制を保ち必死に声を張り上げた。

だが街の方にも既に魔の手がかかっていた。

いつの間に自分を追い越したのだろうか、あの化け物は街の建物を次から次へと破壊し、逃げ惑う島民をあの糸で絡め取って次々と食べていった。

その姿は街の灯りではっきりと捉えることができた。

牛の頭に蜘蛛の体をした人間の何倍も大きな生物、祖父から嫌という程聞かされた伝承に出てくるあの妖怪そのものだった。

 

「牛鬼……まじかよ、あの話は本当だったんだ……。」

 

祖父の話は本当だった、自分がどれほどとんでもないことをしでかしたにようやく気づいた。だがあまりにも遅すぎた。

その後、島中は逃げ惑い、捕らえられ、無事に島を脱出できたのは利明とその家族を含めてほんの数世帯のみだった………。

 

 

 

 

 

 

「……というわけで、僕らは、命、からがら、ここ、まで、逃げてきたと、いうことです。」

 

利明は俯きながら、途切れ途切れながらも事件の全容を話し終えた。

その顔はすっかり青ざめており、長老の話によるとあの日の恐怖でまともに眠れない日が続いているらしい。

 

「利明君、自分が何をしてしまったのかわかるよね。」

 

鬼太郎は静かに目の前の人間を見据えた。利明は相変わらず俯いたままだ。

 

「あの、迦楼羅様には島のみんなで祈らなかったのですか?」

 

猫娘が長老にそう質問したが長老の話によるとあの日と同じく、皆逃げることで精一杯であり、祈ろうとした人たちもいたもののその大半は牛鬼に捕らえられたという。

 

「父さん…。」

 

鬼太郎がそう呟くと、彼の髪の毛の中からひょっこりと目玉おやじが姿を現した。

 

「これはまたなんとも厄介なことになったのう。」

 

目玉おやじは鬼太郎の頭の上で腕を組みながら頭を悩ませた。

牛鬼は非常に妖力が強く凶暴であり、その上頭も切れる妖怪だ。

その強さはもちろんのことだが、一番の脅威は牛鬼の持つ特殊能力だ。牛鬼の本体は妖力の気体の様なもので他の生物に寄生することであの特徴的な姿になる。そして宿主が命を落としたりするとそこから脱出し、他の生物にまた寄生することで生きながらえることができるのである。

ただでさえずる賢く、強力な力を持っている上に迂闊に倒すわけにもいかない、なんとも厄介な相手である。

 

「とりあえず、何か方法を考えましょう。このままにしておくといずれこの辺りにも上陸してくる。」

 

それを聞くと利明は顔を上げ、さらに恐怖に満ちた顔つきをみせたが鬼太郎たちはあえて無視した。

 

「まずは牛鬼を封印する手立てがないか調べましょう。今からココンを…」と言った直後のことだった。

鬼太郎の頭の髪の毛が突然ピン!とアンテナの様に立ったかと思うとすぐに左右に激しく揺れだした。

これは妖怪アンテナで鬼太郎の髪の毛は妖力を探知すると髪の毛が一本の線のように張って妖怪の存在を知らせてくれる。

 

「この妖気は………!」

 

間違いない、牛鬼だ!鬼太郎がそう告げるのと外が急に騒がしくなったのはほぼ同時だった。

猫娘は素早く窓の方へ向かって外の様子を確認しに行き、砂かけ婆と子泣き爺は互いに力強く頷くと戦闘態勢をとりながら外に向かっていった。

 

「父さん、これは……。」

 

妖怪アンテナの尋常じゃないほどの動き、そこから予測できる事態に鬼太郎は驚きを隠せない。

 

「鬼太郎ー!見て!!」

 

窓の方から猫娘の緊迫に満ちた声が響き、急いで外を見る。

そして次の瞬間思わず言葉を失った。

 

 

 

 

 

「どうして………なんで……………こんなにも多くの牛鬼が…!!」

 

猫娘が目の前の光景に慄いた。

彼らの視界に移ったのは街を破壊し、人々を襲う何十匹もの牛鬼の大群だった。

 

 

 

 

港から牛の顔に蜘蛛の体をした妖怪、牛鬼が次々と人間たちの街に向かって進撃を開始した。その数は20は軽く上回る。

陸に上がるとすぐさま港や街を壊し、人間たちを捕らえてはたあることをしていった。

街は瞬く間に地獄絵図となり人々は皆恐怖に怯えた。

そんな中、街はずれの山からその光景を静かに見つめる者がいた。

そのものは黒いマントで身を覆い、顔には骸骨を連想させる仮面をつけていた。

しばらく街の光景を眺めてた後、小さく後ろを向いたかと思うと再び正面を向いた。

 

「……イケ!!」

 

低く、無機質な声を後ろで佇んでいるものたちに告げた瞬間、それまで死んだ様に動かなかったものの目が赤く光りを灯したかと思うと目にも留まらぬ速さで街へ駆け下りていった。




この小説においては5期14話の後日談で鬼太郎は牛鬼は火山の中で完全に消滅したと思っていましたが目玉おやじが迦楼羅様が袋を持っているのを見たというのを聞いた当時の長老から牛鬼は迦楼羅様が鬼太郎から引き離し、それを再度封印しただけで実はまだ生きている、と教えられています。
ついでに牛鬼についても教えてもらい、再度封印されたことも確認しています。
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