vs牛鬼軍団後半へと突入します。
(この話はアンチ・ヘイトが強いかもしれないのでお気をつけてください)
鬼太郎たちと離れ、援軍を呼んだ後、街の住民が避難している山に向かった猫娘は長老の孫に取り憑いていた牛鬼の前に窮地に立たされていた。
「貴様の体さえ手に入れれば、俺の目的は果たされたも同然!」
そう言いながら牛鬼は握りしめていた拳を開くと掌から糸を出す。
(今度こそ、
牛鬼にはあの日のことが頭によぎっていた………。
以前、鬼太郎の悪友であるねずみ男を乗っ取った時、彼の記憶を経由して鬼太郎の情報を手に入れた。
彼ほどの強大な妖力を秘めた体を手に入れれば、日本中の人間たちの恐怖を思う存分に喰らうことができる、そう判断するやいなやすぐに宿主であるねずみ男を利用して鬼太郎をおびき寄せた。
だが彼は愚かにも自分の身と引き換えにこれまで何度も裏切り続けたはずの、この薄汚い男の助命を願い出たのだった。
自分の体を奪われたら最後、どういう事になるのかわからないはずはない。それでもこの男は自分の身を差し出したのだ。
友人に手をかけることに苦しむ様を観て楽しみ、宿主が命を落とし、悲しみに打ちひしがれている隙をついて乗っ取る、といった算段を立てていた牛鬼はこんなにも簡単に計画を遂行できてしまったことから最初は拍子抜けてしまったが手間が省けて何よりとも思った。
そして鬼太郎の体を乗っ取った牛鬼は一緒に来ていた目玉おやじや猫娘を腕試しも兼ねて始末しようとした。
しかし猫娘の必死の叫びを聞いた次の瞬間、体が思うようにうごかせなくなった。なんと鬼太郎は自我を保っており、牛鬼の支配に抗い始めたのだった。
だがこの時牛鬼は心の中で余裕の笑みを浮かべていた。
(これはこれで面白い、俺が体の主導権を取り戻したら、自我だけが残っているうちにこいつらを始末してやる!)
自身の浅はかな情けと考えが結果自分の大切なものを目の前で、しかも自分の手で壊す事になる、それに絶望する鬼太郎はさぞ見ものだろう、そう高を括っていた。
だが鬼太郎の抵抗力は想像以上に強かった。
結果牛鬼は逆に乗っ取られ、火山の噴火口に身を投げる羽目になってしまい、更には島の守り神である迦楼羅に分離され、再び封印されてしまった。
結局のところ、鬼太郎は助かり、自分はまた封じられてしまったのだった。
牛鬼にとってこれ以上の屈辱は無かった。
常に他者を支配し、周りに恐怖を与えて来た自分が逆に支配されてしまうなど思い出すだけではらわたが煮えくりかえる。
(いずれ愚かな人間どもが俺の封印を解くはず!その時は目にものを見せてやる!)
封印されている間、絶えず黒い炎を燃やし続けること数十年、思った通り誰かが封印を解いてくれた。
牛鬼は待ってましたとばかり即座にその人間に取り憑き、手始めに再び島の住人の恐怖を喰らって力をつけ、海を渡って街を襲い、騒ぎを聞いて駆けつけた鬼太郎を今度こそ仕留めてみせる、そう心に決めた矢先のことだった。
あの男が現れたのは……………………………………………。
「にゃっっ…!」
牛鬼の首を絞める力がより一層強くなったのか、猫娘は思わず苦悶の声をあげる。
牛鬼は憎々しげに彼女を見ていたがやがて狂気に満ちた笑みを浮かべた。
「あの甘い鬼太郎のことだ。お前が死ぬまで俺に支配され続けると知ればすぐに我が身を差し出す!!そうなれば後はもう俺の天下だ!」
もう二度とあんな無様な真似はしない、そのために新たな力を手に入れたのだから。素早い遂行が要であることを十分に理解していた牛鬼は左手の掌から出た糸を猫娘の顔に向かって近づけ始める。
「それは…どうかしらね………」
「……ッ!?」
この状況で急に不敵な笑いを見せる猫娘に少しの驚きと憤りを見せる牛鬼。
「ふんっ!そう強がっていられるのも……!」
そう言いながら左手を伸ばそうとしたその時だった。
突如猫娘が自身の首を締めていた手を両手でより強く掴んだと思ったら、両足を振り上げて顔を蹴り飛ばし、怯んだ隙に腕に絡めて自分の全体重を乗せ、そのまま腕をあらぬ方向へと曲げようとした。
「ぬおっ!!」
すっかり慢心していた牛鬼はこの一瞬の早業で完全にバランスを崩し、その場に倒れ、締めていた手を離してしまった。
拘束から逃れた猫娘は素早く距離を取り呼吸を整えから改めて戦闘体勢をとった。
「っ!この小娘がぁ!!」
こちらも体勢を整え直したのか、牛鬼は怒りの声を上げてこちらに向かって走り、鋭い爪をを突き出した。
しかし猫娘もこちらに向かって走って行ったかと思うとそのまますれ違い様に牛鬼の体を爪で引っ掻いた。
「ぬっっ!」
攻撃を受けたことで一瞬ひるんだもののすばやく方向転換すると今度は両方の掌から糸を出した。
両方の手から出されたいとは一本一本がそれぞれ別の生き物の様にうねりながら猫娘に迫ってくる。
しかし猫娘は素早い動きで全ての糸を回避するとそのまま一気に距離を詰めた。
「なっっ!」
予想を上回る猫娘の動きに牛鬼は驚きを隠せない。遠距離攻撃の最中に距離を詰められるのは致命的だ。
牛鬼は背中の八本の蜘蛛の足で迎え撃つ。
だが猫娘は迫って来た最初の一本の腕を踏み台にジャンプするとそのまま背後に回り、背中に強烈な蹴りをお見舞いした。
「ぐおっ!」
苦悶の声を上げながら吹っ飛ばされ、バランスを再び崩しかけるも八本の足で体を支え、そのまま宙返りして体勢を立て直す。
「ちっ、やはり今の状態ではこれが限界か………!」
静かにそう悪態をつきながら息を整えながら牛鬼はゆっくりと猫娘の方へと視線を向けた。
「なるほど、少しはやれる様だなぁ…!」
牛鬼は体についた土埃を払いながらニヤリと笑った。
猫娘は静かに、しかし力強く睨み返す。
「あんたが封印されている間、私だって何もしてこなかったわけじゃない!横丁のみんなが、鬼太郎が街の人たちを助けてくれるまでの間くらい、私一人で凌いで見せるわ!」
「言ったはずだ。仲間を呼んでくることも計算の内だと。貴様らはまだ我が軍隊の本当の恐ろしさをわかっていない。それに………………あの行脚僧と鬼太郎には期待しないほうがいい。」
そういう牛鬼の顔には依然として余裕の表情が浮かんでいた。
「「「「「グ・ググッ・グウウウウウウウウウウッ!!!」」」」」
黒鴉達と対峙していた牛鬼達が突如頭を抑えるかの様に苦しそうに唸り始めた。
何事かと思い、動きを止めた彼らだったがその直後に起きた現象に思わず戦慄を覚えた。
牛鬼の頭に向かってあの紫色の光が体全体を巡り始めたのだった。
光が全身を巡れば巡るほど、牛鬼は何かに怯えるように苦しみ悶え、光の方も循環していく度により濃く、より強く光輝いた。
寄生され、姿を変えらた後もこうやって恐怖を与え続けられているのであろう。
「どうして、この様な事を……!」
無関係の人間達にここまでの悪行をする牛鬼に黒鴉は憤りを隠せない。
「はあっっ!」
葵を筆頭に雪女達は牛鬼達を凍死しない程度に凍らせる。
苦しみに悶えていた牛鬼達はそのまま氷に包まれていくが・・・・・
「「「「「グッ・グゴアアアアアアアアアアアッ!!!!」」」」」
苦しみに耐えられなくなったのか、牛鬼たちが目を紫色に光らせ、これまでにないほどの大きな咆哮を一斉に上げた。
「「「くっっ!!」」」
その音量にその場にいる誰もが思わず耳を塞いだ。
牛鬼たちが唸り声をあげながら妖力をさらに上昇させていった。
そして次の瞬間、パキパキパキッという音がなったかと思うと身体にまとわりついた氷が一瞬のうちに砕かれてしまったのである。
「そんなっっ!?」
いくら力を抑えているとはいえ、地獄の炎程の火力でなければ早々容易く溶けたりはしない雪女の氷がいとも簡単に砕かれてしまったのである。予想だにしない出来事が起き、それによって彼女達に隙が生じてしまった。
牛鬼達はその巨体からは想像しがたいほどの素早さで敵との距離を詰め、ある部隊は前足を振り下ろし、ある部隊は糸を吐き出した。
「しまっっ……………!!」
「「「「「グオオオオオオオオオオオッ!!」」」」」
一方、猫娘と一旦別れた蒼坊主は街の人たちを呼子やろくろ首、そして彼女の夫である人間に任せ、途中まで彼女と同じ道を歩いていたが分かれ道のあたりで彼女が向かった方とは反対側に進んでいった。
この蒼坊主には実は重度の方向音痴という欠点があるのだが今は決して猫娘の援護に行こうとして途中で道を間違えたわけではない。
(ここら辺だな……………)
そう判断するとゆっくりと後ろを向いた。そこには誰一人もおらず、ただ鬱蒼と木々が生い茂っているだけだったのだが・・・・・・・・
「そこにいるのはわかってんだ。コソコソと隠れてねぇで出てきな!」
蒼坊主がそう言った直後の事だった。
それまで誰もいなかったはずのその場に、一瞬靄がかかったのかと思うと彼に声をかけられた相手はすうっとその姿を現した。
黒いマントに黒いフードを身にまとい、一体何者なのかはよくわからない。
「随分と素直に出てきてくれたな。あんたが一体何者なのか、教えてもらえないかな。」
目の前の相手は何も答えない。それどころかガックリと首をうなだれているだけでその場から身動き一つもしない。そのくせ全く隙を感じない。
相手の手の内がわからないうちに不用意に近づくのは自殺行為である。何度も戦いに赴いてきた蒼坊主はその事をよく理解していた。
その場に緊迫感に満ちた、重苦しい空気が漂い続ける。
(気味の悪い野郎だ……。)
蒼坊主はそう感じた。
これまでの敵は皆何らかの「生」を雰囲気からある程度は感じることができた。だが今目の前で対峙している敵にはその「生」というものが全くと言っていいほどに感じることができない。
誰かに操られ、精気を失っている者とはまた違った、もっと無機質で、もっと空虚な感覚に襲われる。
そのまま再び、深い沈黙が続いた。今の所向こうから仕掛けて着る様子はない。
「口を開く気がないなら、ちょいと手荒な真似をすることになるぜ」
そういうと蒼坊主は改めて戦闘態勢をとる。
一方黒フードの人物(?)の方もようやくその頭をあげた。
次の瞬間蒼坊主は絶句してしまった。
顔には仮面が付いていた。だがその仮面が表していたのは悲しみだった。それも日常でそう拝めるような悲しみではない。
理不尽に晒され、この世の全てに絶望しまい、壊れてしまった。
そうなってしまった者が浮かべる、あまりにも空虚で、あまりにも痛々しいものだった。
(こりゃまた随分と悪趣味だな………)
その余りの精巧さに蒼坊主は思わず引いてしまう。
そしてそのまま再び睨み合う二人。互いに相手の隙を伺うもお互いに付け入る隙がないため、攻撃の一手をなかなか出せない。
先に動いたのは仮面の者だった。蜃気楼のごとく、すうっと消えたかと思うと次の瞬間にはもう目と鼻の先まで距離を詰めていた。
そのまま仮面の者は左手を突き出した。
「くっ………!!」
蒼坊主は持っていた六角棒で弾き上げると回転させて相手の鳩尾をついた。
攻撃は見事に決まり、隙を作れるはずだった。しかし相手はうずくまることも怯むこともなくそのままの勢いで今度は右手を振り回してきた。
「なっ…うああああああっ!!」
咄嗟に右手で受けた蒼坊主だったが右手から発せられた衝撃に耐えきれず、数十メートル先まで吹っ飛ばされてしまった。
受け身をとって負担を減らし、再度身構えたがその時にはもう仮面の者は背後に回っており、再び左手を振り下ろしてきた。
「ちっ…!」
蒼坊主は振り向きざまに挙げ受けで攻撃を防ぐ。
だが次の攻撃に彼はさらに驚かされる事になる。
「ぐあああああっ!!」
腕の先から青白い光が一瞬見えたかと思った直後、強い電圧が蒼坊主の全身を駆け巡った。
(この技は……!!)
今自分が受けている技、それは幾度となく見てきたものだった。
電気で体が痺れ、動けなくなった彼の体に更なる衝撃が走った。
「あがっ………」
仮面の者が彼の鳩尾に強烈な突きを叩き込んだのだ。
蒼坊主はその場にガックリと膝をつけた。
そしてそんな彼に仮面の者は左手を前に突き出した。
指先から紫色の光が灯った直後、光の弾丸となって至近距離から容赦なく打ち込み続ける。
「うああああああああああああああああああああああああッッッ!」
蒼坊主は断末魔と供に銃弾の雨に飲まれていった…………。
「蒼兄さん……!」
合流地点に向かっていた鬼太郎は彼の身に良からぬことが起きていると直感し、思わず足を止めて振り返る。
今あちこちで戦いが勃発しているのを鬼太郎は妖怪アンテナで感じ取っていた。
「鬼太郎、蒼の事なら心配無用じゃ!わしらは早く猫娘たちのところへ!」
本当のことを言えば目玉おやじとて心配であった。
だが今ここで足を止めてしまっては皆の奮闘を無下にしてしまう事になる。今自分達がすべき事は街の人、そして島の人達と供に蜘蛛島に向かう事だ。
そこで迦楼羅様に祈りを捧げる、これこそが今回の事件の解決において最も良い方法だった。その為は島の住民や街の住民にも協力してもらわなければならない。
迦楼羅様はかつて二度も牛鬼を封印した島の守り神だった。
普段は神棚に祀られており、島の人々を見守っているが何か災厄が降りかかった時は島の皆で一心に祈りを捧げることで姿を現し、人々を守ってくれる、そう言い伝えられてきた。
だが時代と供に言い伝えも廃れていき、以前牛鬼が復活した時は島の人達は当時の長老を除いて誰一人として祈ろうとはしなかった。
その為迦楼羅様は島の人間に愛想をつかしてしまったと思われた。
しかし鬼太郎の危機に目玉おやじの必死の思い、ねずみ男や猫娘が鬼太郎の思いを無駄にせんと見せたその心意気に感心したのか、彼らを救ってくれたのだった。
あの時味わった恐怖、そしてそこからもう二度と言い伝えを破る事はあってはならない、そう学んだはずなのに時代と供にまた薄れていき、今回の事態を招いた。
そんな中また神頼みになってしまう事に、そんな人間達の前に迦楼羅様は現れてくれるのだろうかと正直鬼太郎は思っていた。
だが無関係の人達までもが被害にあうのは見過ごすわけにはいかない。初めは妖怪図鑑でもあり、妖怪封印するための札をを作り出すこともできる古今東西妖怪大図鑑(通称:ココン)の力で封印しようと考えていた。
しかしただ封印の札を貼るだけでは寄生された人間諸共封印してしまう事になる。そこで牛鬼を皆で協力して追い出し、出てきたところで夜行さんの発明品を用いて捕らえようとした。
作戦決行の直前のことだった。ある者が声をあげたのだった。
「鬼太郎さん、俺を蜘蛛島に連れって行ってくれ!」
それは島の長老だった。いや、長老だけではなかった。島の「古い世代」全員と半数ほどの「若い世代」が名乗り出た。
「こんな時まで頼ってばかりで情けないのはわかっている。今更迦楼羅様に頼るなんて虫のいい話かもしれねぇ!それでも俺たちは俺たちで出来る事をやらなくちゃいけないんだ!!」
島まで送ってほしい、その後は自分たちでなんとかする、そんな強い思いを秘めた目で島の人達は鬼太郎を見ていた。
その後も長老を始め島の人達は街の人達に今暴れている怪物のことを、そして皆が助かるためにも是非協力してほしいと頼み込んだ。
当然、あちこちから何故自分たちが危険を冒してまで、と声をあげるものは者は多かった事を途中、カラス達から聞いていた。
だがこれしか方法がない事、自分達でできる事を精一杯やるしかない事が最終的にはなんとか伝わったらしくほとんどの人々が合意したとのことだ。
今カラス達や鴉天狗などが彼らを島へ送り届ける間、自分が守る必要がある。
「そうですね。猫娘達の所へ急ぎましょう!」
そう言いながら止めていた足を再び前進めた直後の事だった。
突如頭上から妖力を探知したと思いきや、何者か姿を現した。
その場から慌てて飛びのいた鬼太郎の前に現れたのは先程蒼坊主が対峙していたのと同じ黒いマントに黒いフードを身に纏い、顔には仮面が付いていた。
ただその仮面が模していたのは悲しみではなく、怒りだった。憎くてたまらない、何もかも壊してやりたい、そんなぞっとする様な怒りだった。
仮面の者はゆっくりと鬼太郎に近づいていく。
黒いコートと仮面で何者かは分からないが、一歩一歩踏みしめて行く中で高まる妖気が妖怪であることを示していた。
「鬼太郎、用心するんじゃ、何者かは分からぬがこやつは……」
「はい、父さん………!」
そう言いながら鬼太郎は髪の毛を一本抜き取り、それを伸ばして刀にする。今まで以上に不気味な妖力を発している。とても暗く、空っぽな、所謂虚無といった所だろう。だが長年の経験からはっきりと言える事がある
こいつは手を抜いて勝てる相手ではない、と…………。
一方仮面の者も一定の距離を取りながら身構えた。
その時に見えた手はこれまた異様な形をしていた。
人間において親指にあたる突起物があるがそれ以外は丸みを帯びた長方形になっており、パンチグローブの様な役割をしている。
だがそれ以外はコートに包まれており、全く分からない。
一刻も早く合流しなくてはいけない。そう思えば思うほどそれが焦りとなって判断を急がせ、動きが単調になって読まれやすくなる。そうなると相手の思うツボだ。
鬼太郎は出来る限り冷静さを保ちつつ、相手の出方をうかがう。
一方仮面の者はボクシングフォームを取りながら時々手を前や上に向かって突き出している。まるで試合前にウォーミングアップしているかのようだ。
そして拳(?)を前に突き出した直後、ゆっくりと引き下げ、準備完了と言わんばかりに構えを取った。
(来る………!!!)
鬼太郎の緊張感がさらに高まり、それがさらに妖力を上昇させる。
緊迫した、重苦しい空気に包まれる。
刹那、二人はほぼ同時に動き出した。
互いに剣と拳を交えた瞬間、強い衝撃が大地を震わした。
力はほぼ互角だったのか二人は互いにその衝撃に吹っ飛ばされた。
だが先に体勢を整えたのは鬼太郎だった。
「髪の毛針!!!」
鬼太郎が髪の毛を針して飛ばし、追撃する。
しかし同じく体勢を整え終えた仮面の者は回避し、鬼太郎の頭上で拳を振り下ろした。
鬼太郎が素早く横に回避ことで拳は地面を突いた。
地面は中央からヒビが入り、表面がクレーターの様にくぼむ。
「リモコン下駄!!!」
鬼太郎は下駄を蹴り上げながら飛ばした。
下駄はひとりでに勢いよく加速し、標的へ突撃していく。
すると仮面の者は妖力を纏った拳を力強く前に突き出した。すると纏った妖力発射され、下駄を薙ぎ払いながら勢いを弱めること無く、そのまま鬼太郎を襲う。
「っっっ!!指鉄砲!!!」
鬼太郎は咄嗟に指先から妖気の弾丸を撃ち込んで軽減し、霊毛ちゃんちゃんこで身を守る。爆風が発生し、あたりに煙が漂う。
だがその爆風をかきわけ、仮面の者が拳を振りかざす。
「でややああああっっっ!!」
鬼太郎は足に履いていた下駄を素早く手につけ換え、妖力を秘めて突き出した。
今度は拳と下駄がぶつかり、先程よりも強い衝撃となって辺り一面に吹き荒れる。
妖気と妖気、力と力、これらのぶつかり合いで高いの腕が震え、スパークが発生し迸る。
今の所、戦局はどちらが優位であるとは決められない、互角の戦いである、かに思えた。
突如、仮面の者の目の部分が赤黒く光りだすと同時に妖気が増し、鬼太郎を押し始めたのだ。
じりじりと後退していき、今にも吹っ飛ばされそうになる。
「くっ……負けるか!!」
鬼太郎は足にに更に力を込めて踏ん張り、下駄に更に高い妖気を纏わせながら押し返す。再び両者の力が拮抗する状況へと突入する。
(こうしている間にも皆が………!!!)
一刻も早く合流しなければならない、そんな時にこう立ち往生していては……!そんな思いが鬼太郎を急かせ、徐々に焦りを隠せなくなってきた。
そんな彼を仮面の者は何の反応も見せることのないままじっと見据えていた。
とある施設で椅子に腰掛け、6画面程を映しているモニターを通してこの戦いを観ている者がいた。
左手にはコーヒーの入ったカップを、右手には生クリームとチョコレートがたっぷりとかかったドーナツを持っている。
一口コーヒーを飲んだ後、手に持ったドーナツに思いっきりかぶりつく。
ほろ苦いチョコと甘いクリーム、外はさっくりと、中はバターの風味豊かな生地の味が口の中で調和し彼を幸せな気分にする。
あっという間に1つ食べ終えた彼は次のドーナツを食すため、皿の上に乗った山盛りのドーナツに手を伸ばす。
つかの間、とろけそうな笑みを浮かべていたが鬼太郎が吹っ飛ばされたところで一旦カップとドーナツを皿の上に置き、モニター付近のコンピューターに情報入力を開始する。
「ふーん…まあ、思っていた以上にいい出来じゃないかな。でもやっぱりもうちょっと殺傷性が必要だなぁ〜〜〜。」
キーボードを叩きながら彼は不意に鼻で笑った。
「それにしても、本当に人間は間抜けだよなぁ。分別を知らない上に、自分達の信じてやまない科学が発展途上だと弁えないといけないのに、今の時点で非科学的だの、あるわけないだの。その傲慢さがこれを引き起こしちゃってるからね〜〜〜〜。」
そう言いながら更にキーボードを叩くペースを上げていく。
「生活が豊かになろうと心は貧しくなる一方!、闇はより深まり、互いにいがみ合い、首を絞め合う!!実に醜い!!!!でも、おかげで僕にとって更に面白い
一人でブツブツと呟きながらふと画面を見上げた。
そこには牛鬼軍団や仮面の者達に苦戦している鬼太郎達の姿があった。
「おいおい、そいつらに手こずっている様じゃ話にならないぜ。まだまだこれからなんだからさ!ゲゲゲの鬼太郎さんよ〜〜〜〜!」
他人を小馬鹿にする様な声を上げながら、彼は再びドーナツにかぶりついた。
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