平成から令和に変わってから初めての投稿です。
今後ともこの小説をよろしくお願いします
とある山林地帯で突如現れた人型の何かに工事現場の人達は窮地に陥っていた。
彼らの触手がタイヤをパンクさせ、窓ガラスを砕き、作業員を捕えるとそのまま森の奥深くに連れて行く。
必死に振りほどこうと抵抗してみても触手はしっかりと絡みつき、獲物を逃さない。
そのまま次々と彼の触手に捕らわれたまま、森の奥へと連れて行く。
現場監督は一人、作業車を乗り換え、作業道具を片手に応戦していたものの、部下達はあらかた捕らえられてしまい、その分攻撃が自分に集中する。
彼の体力ももうあと僅かしか残っておらず、必死に触手に応戦するも状況は絶望的でもうどうしようもない。
遂に監督の身体にも触手が絡みつこうとしてくる。
もうおしまいだと悟ったその時だった。
「リモコン下駄‼︎」
突然勇ましい掛け声とともに二つの下駄が駆け抜ける。
下駄は独りでに人あらざる者達の触手を弾いていく。
呆気に取られているところへ、その者は前に降り立つ。
「今の内に安全な所へ!!!」
「あ・あんたは……」
監督は突如自分の前に現れた少年に問いかけるも、不意に横から手を引かれる。
「こっちへ‼︎」
引かれる方へ思わず向くとそこには一反木綿に乗った猫娘とねずみ男がいた。
現状が飲み込めず、混乱していたが取り敢えず助かりそうなので現場監督は無我夢中で乗り込んだ。
得体の知れない者達は空中に逃げた獲物を逃すまいと再び触手を伸ばしてくる。
「だああああっ、危ね、危ねぇ!」
「うわぁ、もうしつこすぎるばい!」
ねずみ男は迫り来る触手をなんとか躱し、三人を乗せながらも一反木綿はさらに上空へと逃れようとする。
だが触手達は速い速度でどこまでも伸び、彼らに次々と襲いかかる。
鬼太郎の方はといえば10体ほどの得体の知れない何かを相手に奮闘している。
得体の知れない者はまるで糸を編み込んで作られた人形のような身体をしており、その内の一部をほどいて触手として操っている。
触手こそ厄介だが動きは鈍く、戦闘能力は鬼太郎からすればほぼ皆無に等しい。
髪の毛針やリモコン下駄、指鉄砲を駆使して襲い来る敵を次々と蹴散らしていく。
やがて、鬼太郎の奮戦が功を奏し、得体の知れない者達が後退し始めた時、ふと、彼らが何かを感じたのか、ピタリとその動きを止める。
一反木綿を仕留めようと伸ばしていた触手も体の一部へと収納していった。
何事かと思った次の瞬間、森の奥から強い風が唸り声をあげながら吹き荒れた。
そして鬼太郎の妖怪アンテナが先程よりも力強くピンっと張り、突風に抗いながらもその方向に向ける。
(なんて凄まじい妖気だ………)
高い妖力から生まれる風力に鬼太郎は思わず腕で顔を庇う。
「デテイケ…‼︎ココハワタシノヤマ…キサマラゴトキガ、ケガシテヨイバショデハナイ!!」
強い風に乗って声が辺り一面に響く。
そしてそれと同時に森の中から黒い触手がものすごい勢いで襲いかかってきた。
一反木綿は慌てて上空へと避難しようとするも、その触手が彼らを追いかけて来ることはない。
触手の主にとってわざわざ上へ向けて伸ばす必要はないのである。
触手は脇目も振らず、真っ直ぐに地面の方へと向かっていった。
そしてそのまま地面めがけて突き刺そうとした直前、鬼太郎はちゃんちゃんこを飛ばし、無数の触手を防いだ。
触手の先端は鋭い針になっており、高い防御力を持つちゃんちゃんこに深く刺し込まれている。
「一反木綿‼︎出来るだけ、影の映らないところを選んで逃げるんだ‼︎」
「でも…鬼太郎……」
「早くっ!!!!」
得体の知れない者達を相手にしながら鬼太郎は叫んだ。
一人残ろうとする鬼太郎の身を案ずる猫娘だがそうこうしているうちに森の中から再び触手が伸び、得体の知れない者達もこちらに向かって来る。
一反木綿は速度を上げて更地から暗い森へと向かい、そのまま山の麓へと向かっていった。
当然敵はそれを見逃すはずはない。
尖兵達がまた自身の体を解いて触手を伸ばし、森の中からはまた新たな触手が現れ、一斉に襲いかかる。
鬼太郎はそうはさせまいとちゃんちゃんこを盾に触手達の前へ立ち塞がる。
無数の針がちゃんちゃんこに突き刺さるものの全てを防ぎきることはできず、何本かがそのまま一反木綿達へと向かっていった。
このままでは一網打尽だ。
鬼太郎はちゃんちゃんこで触手を振り払うと意を決して妖怪アンテナで位置を特定した後、指に妖力を集中させる。
指鉄砲は幽霊族の奥義と伝えられている。
基本この技は妖力で空気を弾く技で、普段はこちらを使用している。
だが今の鬼太郎は宿敵達との戦いを通じて、この技をさらなる高みへと上り詰めていた。
人差し指の先端が青白く輝き、妖力を込めていくとともにより強く光り輝いていく。
鬼太郎の妖力が高まっていくのを感じたのか、そうはさせまいと四方八方から触手が迫ってくるもののもう遅かった。
「指鉄砲っっ!!!!!」
鬼太郎のかけ声と共に指先から青白い妖力の弾丸が発射された。
弾丸は触手を次々と吹き飛ばし、そのまま森の奥へと突入した直後、爆発音と共に耳をつんざくような絶叫が響き渡った。
獲物を追っていた触手も追跡をやめ、森の中へと戻っていく。
「コノ…ママ…デハ……スマサナイ…………コノ…ヤマハ……ニドト……」
どうやら今の攻撃で敵に深手を負わせることができたようだ。
暗い森の奥から途切れ途切れに怨嗟の声が辺り一面にとどろく。
そして最後まで言い終わらないうちに森のざわめきが収まり、静けさが戻ってきた。
得体の知れないもの達もいつの間にかどこかへ消えてしまった。
だがこれは一時的に撤退したに過ぎない。
その証拠に妖怪アンテナは森の奥深くに僅かながら発している声の主の妖力を探知していた。
今回もまた激しい戦いとなるだろう。
鬼太郎はまたカラス達を呼び、彼らに運んでもらいながら麓の村まで下っていった。
「………おいおい、マジかよ……」
モニターに映った鬼太郎を見ながら男は驚きの声をあげる。
先程までカプセルのメンテナンスをしながら眺めていたのだが、鬼太郎がまだ本領を発揮していないとはいえ、今回送り込んだ妖怪を一人で撃退したのを目の当たりにして思わず手を止め、モニターへと向かった。
画面で鬼太郎が指鉄砲を放つ瞬間の映像でモニター端にある数値やグラフの変化を見て、男は思わず目を見開いた。
鬼太郎の妖力は予想以上の数値を叩き出していたのである。
今回送り込んだ妖怪はもともと牛鬼と同じく高い能力を持ち合わせていたのだが今回それを更に高め、かつ新たな力を与えて復活させたので鬼太郎達が来た所でそうそう容易く敗北するとは思ってなかった。
だが鬼太郎の成長は彼の予想をはるかに上回っており、彼は単騎で撤退までに追い込んだのである。
10年以上前の妖怪大戦争が終結し、今日に至るまで仮初めの平和を謳歌していたはずだ。
にも関わらず鬼太郎が更に力が増して来ている事に驚きを隠せない。
「鬼太郎…まさかここまで……」
「あらあら残念ね。お得意の計算に狂いが生じちゃったの?」
モニター越しに鬼太郎を睨みつけながら考え込んでいる彼を後ろから煽る声がした。
振り返ってみると部屋の入り口でショートヘアの女性が腕組みしながらこちらを見ている。
「なんだよ、戻ってきたのか…………」
男が少し不満そうに呟きながら再びモニターの方へ向いてキーボードを叩き始めた。
「言っとくけどこれぐらいは全然修正可能な範囲!今回の改造妖怪もまだまだ全然本領発揮しちゃいねーよ!」
「いくら隠された能力が凄まじくても倒されちゃ元も子もないわよ。まあ、あんた基本研究所にこもってばかりで現場にあんまり赴こうともしないし、才能の限界に達する日もそう遠くないかもね。」
「なんだよ、さっきから…現場視察は
男は己の才能に限界があると言われたことによほど自尊心を傷つけられたのか、より棘のある言い方に変わり、キーボードを叩く音も乱暴になっていく。
だが女の方は男を完全に無視しながらモニターの前に立つと映し出された鬼太郎の姿へと目を向ける。
「はぁ〜やっぱり鬼太郎ってほんっっと可愛い顔している〜♡それでもってこんなにも凛々しいなんて♡」
女は恋する乙女のようにうっとりとした声で言いながら、鬼太郎を眺めていた。
だがその目つきはまるで獲物を狙う肉食動物であり、鬼太郎を品定めしているようにも見える。
そんな彼女に呆れながら彼はキーをタップした。
鬼太郎の姿が瞬時に今回送り込んだ妖怪の画面へと切り替わった。
身体の倍以上の長さはある髪の毛で自身の体を支えており、歩き方もおぼつかなくなってきている。
そしてその周りを複数の仮面の者が取り囲んでいた。
「ちょっと‼︎何勝手に……」
「聞こえる?急いで
画面を変えた事に抗議する彼女を遮るように男はモニターに向かって大声をあげる。
そして彼女の方を睨みつける。
「
「あーはいはい、忘れてなんかいないわよ。ちゃんと
少々鬱陶しそうに言い放つと妖音は入口へと歩いて行った。
「どこにいくつもり?」
部屋を出ようとする直前、男はモニターを凝視しつつ彼女に問いかける。
「食事よ。今すっごく腹ペコだから♪」
妖音は軽く舌なめずりしながらそういうとそのまま研究所を後にした。
誰もいなくなった部屋の中で男はコンピューターをいじったり、カプセルの中にいる妖怪を眺めたりしていたがふとハァー、と深い溜息をついた。
「やれやれ、鬼太郎も厄介な女に目をつけられちゃったもんだよ。まっ精々頑張れよ〜」
男は哀れんだようにそう言いながらストレス解消も兼ねて、皿の上に乗った山盛りのピザにかぶりついた。
研究所を出た後、妖音は今日は何を
「そうだ…腹ごしらえのついでに鬼太郎に会いに行こうっと。」
うっとりとほおを赤らめ、身体をくねらせる今の妖音の顔にはとびっきりの笑顔が浮かんでいる。
だがその可愛らしい顔とは反対に彼女の目には狂気をおびていた。
妖音がゆっくりと目を閉じると髪の毛の一本が一人でにピンッ、と逆立ち、忙しなく動き始める。
「待っててね〜鬼太郎〜♡フフフフフフフフ♡」
麓の村にたどり着いた鬼太郎はそこで皆と合流した。そのまま依頼人の元へ向かい、玄関先でノックをしようとしたその時、家の中から怒鳴り声が響き、鬼太郎は一瞬手を引っ込めてしまう。
しかし直ぐにまた、少し強めにドアを叩くと怒鳴り声がピタリと止んだ。どうやらこちらに気づいたようだ。
鬼太郎は少し大きめに声を出した。
「ごめんください…」
数秒程間があったがすぐに玄関の扉が開いた。
しかし姿を現したのは先程の現場監督だった。
「あんたらはさっきの………」
少し驚いたように呟く彼だがすぐ後ろから年取った女性の声がした。
「おお…よくぞ来てくれました…鬼太郎さん。さあ、どうぞ中に……」
そう言って手招きしながらお婆さんは現場監督の方へと向いた。
「あんたもここで聞いた方がいい。さっきのこと、そして彼らの事を………」
監督は不満げにため息をついたもののどうやら話を聞くつもりらしい。
そのまま鬼太郎達と一緒に家に入っていった。
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