ストレス区からミケたちのいる場所までそう遠くはなく、馬で小一時間程度のはずだった。
だが、私の足はストレス区から出て直ぐに止まることとなった。
「………なんで、壁内に巨人が…?」
ストレス区から20分ほど馬で駆けたところで、私の視界には数十体に及ぶ巨人の影が現れた。
1度は破られたトロスト区だが、エレンの巨人の力によって塞がれたためそこから壁内に巨人が入ってくるなんてことは有り得ず、また超大型巨人や鎧の巨人が現れたという報告も上がってきていない。
「考えても仕方ない……っか。」
巨人の影は私から約1kmほど離れた所に固まっている。
全部が奇行種でないとするならばあの辺りに誰かいると考えるのが普通。
私は馬の手網を握り、巨人の影が密集している場所へと駆けた。
◇◇◇
(………あの巨人は…なに?)
馬を走らせること数分で、目的の巨人の影の密集地帯の付近に到着したのだが明らかに一体だけ達観した様子で歩き回る巨人が一体。
明らかに普通の巨人とは違うその風貌から、知性を持つ巨人。つまり、人間が巨人になっていると考えるのが普通だろう。
(……あれに気づかれるのは不味いか)
せめて、ここにミカサかリヴァイが居るのならばあれを駆逐しにかかるのも一つの手だが今の私には補給物資もない上に単騎であれに挑むのは少し無謀に思えなくもない。
私は1度馬から降り、ギリギリ立体機動が届く距離から例の巨人から見えない裏手から回ることにした。
出来る限り見えないように、地面スレスレを飛んで。
ピューッ
私が丁度裏手に到着したときに馬を呼ぶ甲高い指笛の音がした。
周りからする音からして、巨人の数は例の巨人を含め4体。そのうち3体がこの林の中にある家の周りにいる。
対して、心音含め人間は1人。発生している蒸気の数からかなりの実力があることは確かなためミケである可能性が高い。
(………取り敢えず合流かな)
ミケと合流しようと林を超えた所。
先程、ミケが呼んだ馬がこちらへと向かっている姿が例の巨人の足元を通過しようとした時のことだった。
「……馬を狙ったの!?」
知性のある巨人である可能性が高いことは分かっていたが、馬を狙うことをするとは思いもしなかった。
馬を掴んだ例の巨人はそのまま馬を握ると、まるで投擲の玉のようにその馬をミケ目掛けてぶん投げた。
ガシャンッ
例の巨人が投げた馬はピンポイントでミケのいる屋根へと突き刺さった。
ミケもなんとか避けたがそのまま屋根から落下してしまう。
「…あ、危ない!!」
私は1度混乱した頭を振り、急いでアンカーを建物へと突き刺しミケが落下する前に回収を試みる。
ドスッ
「ゲホッ…………あぶなぁ」
「ソラ!?何故お前がここに…」
急ぎすぎたが故か、勢い余ってミケを回収する際に思いっきりお腹に衝撃を受け私は手痛い思いをする羽目になった。
「……ゲホッ…ゲホッ……そんなことよりも大丈夫?」
「……あぁ。それよりも彼奴は一体……」
ミケを一応安全な屋根の上へと運び、1度落ち着こうとするがミケに奴の存在を出され嫌でも意識する羽目になる。
ミケの言うようにアレは、エレンともアニとも違う明らかに巨人になっても高い知性を保持している。
あの巨体で人間の知性とは……やってられない。
「さぁね……ともあれ、こっちに向かって来てるしどうする?」
万全の状態ならばアレを討伐するという考えもあったのだが、何せミケの立体機動上手く動くか分からない状態だし、私の肋骨はさっきミケを助けた時に何本か逝っている。
あれを殺るにはかなり不安がある。
「…………逃げるにしても馬がなければ無理だろう。せめて、あと一人腕のたつ奴がいればな…」
「………確かにね。せめて、ミカサかリヴァイが居ればなぁ」
ないものねだりとはこの事で、ストレス区にいるリヴァイやミカサを頼りにしている時点でもはや詰んでいる。
それでも抗おうとするのが、私たち調査兵団なわけで肋骨如きで戦えなくなる私ではない。
「……仕方ないか…殺るか。ミケ、立体機動の調子は?」
「動くには動くが、ガスの方が心許ないな…」
「……そっか。それじゃあさ、周りにいる3体頼んでもいいよね?」
「あぁ……それぐらいなら任されよう。」
「よしっ!!それじゃあ逝ってみよう!!」
私は腰から刃を抜き、1歩1歩近付いてくる猿のような巨人を迎え撃った。
今回もありがとうございました。
これぐらいの長さなら比較的、投稿頻度を上げられると思うので多分当分はこれぐらいの長さになるかと。
戦闘描写が少なく物足りないかもしれませんが、これからもよろしくお願いします