好きな子と混合ダブルス組むために全国トップを要求された   作:小賢しいバドミントン

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10月に入ってやっと落ち着きました。
遅くなりましたが感想に返信させて頂きました。いつもありがとうございます。とても励みになってます。


今さらですが試合中のコートの前後は主に縦に三つに割って

ネット前(フォアコート)→サービスライン辺りまで
ミドルコート→コートの中央付近
リアコート→コート奥側

あとそれとは別に
ホームポジション→コート全体の中央(シングルスの基本の立ち位置)

って感じですね。シングルスとなると途端前後の動きが激しくなるのでこの辺りの単語が乱発します。



失っただけじゃない

勝ちたいという願望を持った綾乃の強さは圧倒的だった。小学校の時ずっと打ち合い、今はパートナーとして組んでいる弦羽早でさえ目を見開く程に。

 

第一ゲームは綾乃の圧勝。

 

第二ゲームも中盤に入っているが、既に疲労がピークまで達している薫子に対し綾乃は額から一滴だけ汗を垂らす。

ここまで薫子が一方的に疲れているのは、綾乃が与えるプレッシャーにあった。

 

綾乃のタッチの速さは常識を超えている。それは読みと反射神経、選球眼の良さから現れているのは薫子も理解していたが、今は以前にも増して重心の移動が速い。それらが彼女の作り出すゲームスピードの速さを作っており、薫子の思考力を奪おうとしている。

 

しかし薫子にとって思考力はバドミントンの最もたる基盤。綾乃のゲームスピードについて行くために脳をフル回転させ続けた結果、疲労の差がこれほど出ている。

 

「(…羽咲さんが疲れていない訳がない。ただ表に出さないだけ…)」

 

綾乃は体格から見て分かる通りフィジカル面で秀でているプレイヤーではない。

それは理解している。分かってはいるが、一向に上下しない肩に薫子へと掛かるプレッシャーは重くなる。

 

サーバーである綾乃はロングサーブを放つ。これまで二度程アウトかと思って見逃したが、そのどちらも入っていた。おそらくこの球も入っているだろうと、そう思い込むのもまた綾乃のペースに呑まれている証拠。

 

「(まずはラリーを続けることに集中。羽咲さんの得意な組み立てはカウンター。そこに付き合う必要はない)」

 

一先ずクリアーを上げて様子見をするが、この試合を見ている上級者たちはそれを悪手だと呟く。普段の薫子も今のプレイを見ていたら何をやっているんだと吐き捨てる程の。

 

クリアー自体は何の悪い球ではない。様子見、時間稼ぎ、後ろへ追い込むと、同じ種類の球にも複数の意図が存在する。

 

しかしこのクリアーは、本人からすれば様子見だったのかもしれないが、傍から見ればそれはどこから見ても”逃げ”だった。

 

このクリアー1打で綾乃は確信する。今の薫子は彼女のメンタリティ以上のプレッシャーを抱えていると。

 

ニヤリと歯を見せるように口を開いた綾乃は落下地点へと素早く入り込むと、高く前方へと飛んだ。

 

「(ジャンピングスマッシュ!? 不味いッ!)」

 

綾乃に強打がないと言っても、一切決め球にならないひょろっちい球なんて訳はない。筋力が無い分劣るというだけで、スマッシュは筋力が全てではなく、身体全身を使えば誰でも一定以上のレベルのスマッシュを打つことができる。

 

だから警戒する薫子の心境は当然と言えた。

咄嗟にホームポジション付近やや後ろに構え腰を落としてスマッシュに備える。

そして綾乃のラケットがシャトルに触れると共にグッとワンクッション置くが、ネット前へと静かに落ちていくそれに反応が遅れた。

 

「なっ!」

 

咄嗟に足を前に出して飛びつくが、シャトルはガットの先端部分に当たるだけでネットを越える所かろくに浮かびもしない。

 

11(イレブン)2(ツー)。インターバル!』

 

「ハァッ……ハァッ……」

 

疲労のあまりすぐには立ち上がる事のできない薫子だったが、既に弦羽早から渡されたスポーツドリンクを飲み始める綾乃を見て、これ以上スタミナに差を付けられてはいけないとフラフラとした足取りでなんとかコーチ席まで戻る。

 

「芹ヶ谷。徐々にお前らしさが無くなっている。一打一打に意図が見えない」

 

監督から渡されたスポーツドリンクをひったくるように取ると、まるで砂漠の中で見つけたオアシスの水を飲むが如くゴクゴクと喉に流し込んでいく。

 

「芹ヶ谷。上げるなとは言わんが、逃げるな。確かに以前お前から聞いていた通り、羽咲には突出すべきエースショットは無い。だががむしゃらに守り続けて勝てる守備をお前はもっていないし、その程度で勝てる相手じゃない。ラリーの最中にスピードを変えていくんだ。そして得意のフェイントで前に落として上手く流れを掴め。お前だったら一から順に組み立ての説明をしなくともできるはずだ」

 

「はい」

 

水分補給と監督のアドバイスで薫子に冷静さが戻ってきた。

 

点差は9つ開いた状態で中盤に入ったが、インターバル直前の一手でジャンプのフェイントを使ってくれたのは不幸中の幸いだった。もはや冷静さを失っていたあの状況ではどの道点は取られていただろうから、相手の手札を一枚見れたと前向きに考える。

 

一方弦羽早はただ静かに水分補給をする綾乃の姿を見守っていた。

 

「…一応考えはあるけど聞く?」

 

「…うん…」

 

その肯定は意外だった。必要ないと言われると見込んでいた弦羽早は、いささか目を丸くしつつも、綾乃の集中を切らさない静かなトーンで。

 

「芹ヶ谷は頭の回る選手だ。おそらくこのインターバルで切り替えて、再びペースを掴もうとする。羽咲に対する向こうのエースショットはフェイント。それも強打に見せたドロップ。だから羽咲の思ったタイミングでネット前に詰めるんだ。

おそらく羽咲のドロップから入って、ネット前で崩してロブを誘い、そこからフェイントのドロップで来る。ゲームエンドまでの一回、どこかでこのパターンを仕掛けてくる」

 

綾乃は小さくコクンと頷くと、その振動で弱っていたヘアゴムがプチンと切れた。

試合をアリーナ入口から見守っていた理子がやってきて自分のゴムを貸そうとするが、綾乃は「これでいい」と、薫子に渡されたハンカチで髪を結ぶ。

 

「薫子ちゃんがいなければ、こんなに負けたくないって思える私には、なれなかったから…」

 

綾乃はそれから弦羽早の前へと歩み寄り、彼をジッと見上げる。その楽しさも疲れも見せない暗い顔色に弦羽早はゴクリと唾を呑み込んだ。

 

「秦野、見ててね…」

 

「え?」

 

「負けた私は、確かに強くなったってこと…。失っただけじゃないって」

 

「…ああ!」

 

綾乃にとってこの一戦はこれまでとは訳が違うのだろう。それは相手が強いからではなく、かつて自分が負けた相手であり、それが原因で大きく人生が狂ってしまったからこそ超えるべき壁だから。

 

弦羽早がリストバンドを付けた腕を前に突き出すと、綾乃はいつもの明るい笑みを浮かべて、リストバンドを合わせるように腕を交える。

 

「行ってらっしゃい」

 

「ん。頑張ってくる」

 

少しメンタルにブレを与えてしまったかと思ったが、コートの緑線を越えた瞬間に綾乃の雰囲気はまた静かで氷のように冷たい雰囲気へと戻る。

 

薫子も彼女に対して下手な言葉は交わさない。もはや声を出す体力すらも惜しい程に薫子もまたゲームに集中していた。

 

 

集中する二人の耳に審判のインターバル終了の合図は聞こえていなかった。

 

綾乃のロングサーブから再びゲームは再開される。

 

バドミントンはサーバーの点数が偶数であれば右、奇数であれば左から対角のサービスコートへとサーブを送る。

 

11点の現在、薫子のストレートは左利きの綾乃にとってバックハンドとなる。この一球で決まるとは微塵も思っていないが、少しでも圧を掛けるべくストレートにスマッシュを打ち込む。

 

綾乃はその球を自分の胴体より腕が前になるような位置で受け止めると、手首をクイッと捻ってクロスのネット前へとレシーブを落とす。

バックハンドでクロスを打つのは技術を要するのだが、このレベル帯となるとその一打で一々驚いていてはキリがない。

それにバックハンドでのクロスは、どうしても手首の曲がり方に限界があるので、シャトルの角度にもまた限りがある。

 

薫子の立つコート奥側(リアコート)とは対角線上のネット前に落ちるものの、サイドラインギリギリではないので十分に届く。

 

「(ここで上げて逃げるのは駄目。クロスヘアピンからのクリア)」

 

薫子は綾乃のリアコートをジッと見つめながら、ヘアピンの構えでシャトルを取る。

 

「(フェイント?)」

 

薫子の視線に気付いた綾乃はすぐさま前には出ずにジッと腰を下ろして構えた。バドミントンの上級者となると相手の視線を見てコースを予測したり、あるいはそれをさらに逆手にとって視線を使ったフェイントすら存在する。

 

今薫子が仕掛けているのはヘアピンと見せながらも、ネット前に焦点を当てずにリアコートを見る。そして綾乃の重心が後ろに行ったところでクロスのヘアピンで体勢を大きく崩すもの。

しかし綾乃の選択肢はフェイントを警戒してその場で待機だった。

 

「(流石。なら)」

 

動かないのならと、薫子は素直にストレートのヘアピンにプランを切り替える。

 

「(考え過ぎたか?)」

 

多少前にプレッシャーを与えてロブを誘導させた方が良かったかもしれないと少し後悔しながら、綾乃は素早く前に出てロブを上げる。

 

「(さっきのフェイントで少しテンポがズレた。ここで緩くせずにまたペース上げる!)」

 

薫子の配球は低めの攻撃的なクリア。

これで綾乃の体勢を多くズラすプランだったが、それは叶わなかった。

綾乃はミドルコート付近で飛び上がり、ラケットを目いっぱい伸ばしながらラケットに当てる。そして当たる瞬間に手首を大きく下に曲げて無理やり角度のあるドロップを行う。

 

本来ドロップの打つ位置というのは顔の少し前、つまりスマッシュと同じ位置で行うが、今綾乃は手が伸びる最大地点、耳の真横で手を伸ばして打っていた。

何故今の綾乃の打ち方が主流じゃないかと言うと、そんなフォームで打ったところでほぼドロップの一択になるので相手としては怖くないのと、単純に手首だけでコースを決めることとなるので、威力は弱くコースと角度も甘くなりやすい。

 

数少ない利点としては意外性のあるタッチの早さ。薫子としては本来リアコートまで綾乃を押し込むつもりだったが、ミドルコートで無理やり捉えることで、二つほどのテンポアップを薫子に要求させる。

 

しかもデメリットである緩くなりやすい角度が嘘のように、ネットスレスレでサービスライン前(フォアコート)に落ちる軌道で進んでいる。

 

「(速いドリブンクリアにつくづく常識外れな!こっちは学芸大会ではなくバドミントンをやっているのよ!)」

 

ここでヘアピンで返すのは流石に前に貼られているリスクが高すぎるので、素直に上げて状況をリセットさせる。逃げるなと言われたが、無謀と勇気を履き違えるほど、ことバドミントンに置いては薫子は愚かではない。

 

上げたロブに対する綾乃の球は正面へのスマッシュ。速さ、角度、コースどれもさして強くはないそれは、攻めてみせろとの綾乃の挑発。

 

ならば乗ってやろう……とはいかないのが薫子だ。

常に相手の嫌いな場所へと送る、考えるバドミントンが薫子のモットー。

飛んできたシャトルをギリギリまで引き付けて、同時に綾乃も前に引き付けると、パンと反対のリアコートへとレシーブを放つ。

 

「(ここで誘う)」

 

綾乃は一瞬だけコーチ席の弦羽早の方へ視線を向けると、ロブ球に対して面を切るようにして放つカットドロップを行う。

左利きのカットはリバース回転が掛かる事により特殊な軌道となり、ネットを越えた瞬間に急激に速度が落ち、ネットスレスレで落下。

 

「(来た!)」

 

ここまでのラリー。ついに流れを変える一手がやって来た。

綾乃の際どいカットドロップにも何とか足を踏み出してヘアピンで返し、前に誘導する為にすぐに中央に戻る素振りをする。

インターバル一回目のラリーで既に息が上がってきた薫子だったが、このコート中央(ホームポジション)に戻るという行為をサボれば負けに直結する。

 

綾乃もまたヘアピンで返してすぐにホームポジションに戻ろうとするが、読んでいた薫子はすぐに前に出た。あくまで体は後ろに下がっていたが、すぐに詰めれるように心がけていたのだ。

速いタッチのヘアピンは、薫子のコートに入ってすぐにストレートに返球される。

 

薫子の出の速さに遅れた綾乃は手足を目いっぱい伸ばしロブを上げるが、頭が下がっており体勢を整えるのに時間と労力を要す。

 

「ッ!」

 

背中を少しだけ逸らしその体重移動を利用して素早く戻ろうと綾乃だが、中央に戻るよりもジャンプして跳び上がった薫子のタッチの方が速い。

 

「(ストレートのスマッシュ…。いや…)」

 

薫子の視線、体の向き、面の角度からひだり側(フォアハンド側)へのストレートのスマッシュだと読んで、ショットと共に左へ跳ぶために右足にグッと力を籠める。

 

その僅かな変化を薫子は逃さない。相手の思考を読むという点や、組み立てるバドミントンをするという点では彼女よりも優れた選手は全国にはまだ多くいるが、観察眼に置いては薫子は一際秀でている。

 

薫子の打ち放ったショットは先程綾乃がヘアピンを返した場所へのカットドロップ。

 

ガラガラのサイドコート、三回連続の同じ場所への攻撃。ストレートに見える体勢と視線から、最後の瞬間にラケットの面を逸らすことによる、スマッシュと予備動作の差がない完璧なフェイント。

 

加えて現在綾乃の重心は後ろ寄り、踏み込んだ足は右。いくら化け物じみた反射神経と瞬発力を持ったとしても、人間の動き的に取ることが不可能である完璧なタイミングと配球。

 

だが次の瞬間、まだ着地していない薫子は目を疑った。

 

綾乃は踏み込んだ右足で、シャトルが来た方角とは違う左へとほんの少しだけ跳んだ。これにより踏み込んだ右足の力をリセットさせる。

そして左足で着地すると共にその足で地面を蹴って、右前のシャトルの元まで跳び込んできた。

 

その動きに一切の無駄は無く、薫子が着地をして急いで前に出ようとした時には既に綾乃のラケットはシャトルを捕らえており、コートに入って来たドロップを叩くようにしてコート奥へと突き刺した。

 

『ポイント! 12(トゥエルブ)2(ツー)

 

ここまで粘りに粘ったラリーで得たものは無く、むしろカットドロップを見せてしまったことで薫子の手札が一枚減り、更に最後の綾乃の動きにラケットを持つ手が震える。

 

だが先程のインターバルで一度冷静になれたおかげで、動揺はすれど思考力は衰えなかった。

 

「(あ、あり得ない。並みの瞬発力と重心移動、思考の速さを持ってもあんな動きは不可能。考えられるとしたら読まれてた? でもわたくしのフォームは完璧。あれは予備動作で判断できるものではない。ならそこまでのパターンを読まれていた可能性がありますが、羽咲さんは読みの鋭さはあれど、そこまで長期的な組み立てた読みはできない。あるとすればドロップを誘ったか、あるいは…)」

 

チラリと綾乃のコーチ席に座っている弦羽早を睨みつける。

 

「(あいつの可能性か…。あれから彼の試合は少し見たけれど、そこまで試合中の組み立てが得意な感じではなかった。それでも要因を羽咲さんと考えるより、秦野弦羽早はコート外では組み立てが出来ると考えた方が自然。

…であれば、インターバルでの時間から考えて、もうアドバイスは無いはず。さっきの一点は素直に諦めましょう)」

 

大丈夫だ、まだ勝ち筋は残っている。静かにシャトルを構える綾乃へと、準備はできていると薫子もラケットを立てる。

 

再びのロングサーブが上げられる。

 

「(もう手の内は見せてしまったのだから、隠す必要はありませんわ!)」

 

薫子は攻撃的な顔つきから一転、行ったのは強打ではなく先程と全く同じクロスへのカットドロップ。

 

「ッ!?」

 

普通ならエースショットが失敗すればすぐには使わず、いくつかの球を交えて再びここぞと言う時に打ちそうだが、薫子は自分のエースショットをもうそこまで過信していない。

使える手はなんだって使う。

 

流石の綾乃も一歩出遅れ、シャトルは既に手を伸ばせばなんとか届くギリギリの状況まである。

だがそこで素直に返すほど綾乃は真っすぐではなく、地面にラケットを這わせるようにして行うクロスのヘアピンで返す。

従来のネットの高さで行うクロスのヘアピンに比べると浮き易いこの打ち方だが奇襲性は高い。

 

だが薫子もまた、綾乃をもう過小評価していない。

パシンとクロスを読んでいた薫子の一打が決まる。

 

『オーバー!3(スリー)12(トゥエルブ)

 

「薫子ちゃんナイスー!」

 

『カ・オ・ル・コ! カ・オ・ル・コ!』

 

ダブルスパートナーであるミキと親衛隊の声援が耳に届く。

ようやく手に入れた三点目。点差は丁度四倍で、その疲労具合でも薫子の圧倒的不利。だが薫子は勝利までのパターンを考えるのを止めない。

 

「(ショート?いや、サービスを取った。ここは少しでも走らせる)」

 

ここは素直に打たせる為に一番後ろの線(バックバウンダリーライン)までのロングサーブを放つ。それに対して綾乃の選んだ一打は、再びブレの無いフォームからのジャンプ。

控えるように言ったのにと、コーチ席では弦羽早が、コートから少し離れた場所では健太郎が呆れたように額に手を当てるが綾乃は気づかない。

 

バシュン!とスイートスポットから放たれたクロスのスマッシュ。従来の綾乃のスマッシュよりも角度のついたそれは、薫子のバックハンド側へと進む。

素早く右足を出して取ろうとする薫子だが、現在の自分の位置とシャトルの角度と軌道、そして慣れないジャンピングスマッシュであることを考慮に入れた上で見逃した。

 

「ッ!?」

 

『えっと?』

 

コロコロと転がるシャトルに審判は困惑した眼差しで、線審をしている選手二人とは別のクラブチームの少女へと視線を向ける。しかし彼女もまた際どすぎるその一打に困惑しており、首を傾げながらも両手で目を隠した。

 

こちらでは判断できない、という合図である。こういった時最終的な判断は審判に下されるが、座審も薫子のラケットが陰になっていたのもあってハッキリとは見えない。

 

「ラッキーラッキー!」

 

「ナイッセー!薫子ちゃん!」

 

こういう時観客の何気ない一言が審判の判断を煽ったりする。審判もまた人間。世界大会ならともかく、地区大会の審判はただのボランティアでプロではない。

点差もあるし薫子に点をつけようかと審判が口を開こうとした時、薫子はシャトルを拾って綾乃へと渡した。

 

「…入ってましたわ」

 

「……そう」

 

『オーバー 13(サーティーン)3(スリー)

 

チャレンジシステムのないこの会場においてはこういった線審でも判断できなかった球に対しては、いかに自然を装うかで一点が変わったりする。

だがこの目でライン上にコルクの下半分だけが掠めたのを見た以上、プライドの高い薫子はこのショットを自分の点数にするなど死んでもお断りであった。

 

もしかすれば別の誰かが相手であれば、薫子も素直に貰っていたかもしれないが、相手はずっとライバル視してきた綾乃。

 

「(あと少し、もうほんの少しで掴める。羽咲さんが身に付けてしまった勝ちたいと思う心(欠陥)を。そこをッ!)」

 

しかし彼女がそこを捉えたのは余りにも遅すぎた。

 

それから流れを大きく変えられることはできず、21‐4という圧倒的な点差で薫子は敗れた。

 

 

 




ダブルスとはいえ全国で準々決勝まで上った薫子ちゃんとミキを一桁台で倒せる綾乃ちゃんってやっぱヤバい。
あとこれまでのスコアは原作とそこまで大きな変化はないです。
まあバグ扱いされてるし。


はねバドアニメついに終わってしまいましたね。
原作とは違う展開が多かったりキャラの改編などはありましたが、別のはねバドとして楽しく見られました。
作画は滅茶苦茶良かったですし、リアル寄りのバドミントンをやってて、音や体育館の暗さなどがまたいい雰囲気でした。
あと綾乃ちゃんがとことん性格悪くて凄く可愛かった。ひねくれ方が可愛かった。天使か。

アニメの企画が決まった時がまだ5~6巻と、作画が大きく変わって綾乃の心境が掘り下げられ始めた段階だったので、雰囲気を5巻辺りに寄せて改変を行ったみたいですね。1クールで収める点としても良かったと思います。

ただ唯一納得できないのが、理子vs望戦のバックハンドが苦手な設定を望につけたのが本当に納得できないですね。
インターハイに出場するバスケが利き腕でしかドリブルできないみたいな。その実力帯でハイバックはともかくバックハンド苦手はないだろと。倉石も修正させるだろうと。
これが大人の都合か…。

望本人は作画も声も可愛いかったですし、なぎさ戦も良かったです。

アニメが無ければこの作品書き始めてないくらい、原作は勿論ですがアニメもそれくらい楽しんで見てました。ただバックハンド苦手(略




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