平均数nmの物体を使役する男   作:入倒 淵座

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個性は【】、三人称視点における人物の心情は()でくくってみました


ムーンフィッシュ

夢を見ていた。

 

色んな国に行って、色んな人が苦しむ夢。

 

血を吐いている人もいれば顔面が真っ黒になって横たわっている人もいる。

 

その中心にいるのはいつも一人の男。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、俺か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 結果的に言うと試験は合格であった。試験ではロボットのポイントに加えてレスキューポイントと言うのを見ていたらしい。両方合わせて66ポイントでそこそこの成績で合格できたというわけだ。

 

 試験で合格できた代償と言ってはなんだが俺は今松葉杖生活を堪能している。原因はもちろん、ビルに下敷きになったからだ。本来であれば生きていることすら奇跡なのだが何故か生きていた。あとから聞いてみたら、どうやら俺が助けた二人が吹き飛び際に個性を使ってビルの瓦礫を払ってくれたらしい。ありがてぇ。

 

 こんな体になって気づいたことがいくつかある。それはあの不愛想な奴だと思っていた研究所の女が以外にも可愛げがあると言うことだ。俺が目を覚ましたら横にいたその女にいきなり怒られた。しかも怒っている途中で泣き始めた。体は痛いは意味わからないはで俺も泣きたかったが、女に「あなたが思っている以上に私たちはあなたが大事なんです」と言われちょっとびっくりしたのを覚えている。それは「研究対象としてか?」と聞きたかったが止めておいた。あの涙を見てそんなことを言えるのは鬼か悪魔ぐらいだろう。「すまん」と言ったら、それ以降泣き止んで不愛想な顔で「分かったらそれでいいんです」って言って言っちまった。その後男が来て「あんま無茶すんなよ」って言って去っていった。俺は泣いた。

 

 ともあれ一か月後には高校生活が始まる。それまでにやることは沢山ある。止まっている暇はない。

 

 

 

 

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 雄英高校入学式を2週間後に控えた初留はランニング兼買い出しのため町へと出ていた。以前までは研究所に住んでいたのだが何故か突然一人暮らしをしろと言われたのだ。住む場所は事前に用意されていたが余り納得はいっていなかった。案外研究所での生活は初留に安らぎを与えていたのだ。ともあれ言われたものは仕方ない。しぶしぶ了承して一通り生活用品を揃えた後、今の生活に至ると言うわけである。

 

(そもそも何で俺は研究所にいたのかさえわからないからなぁ。俺って一体なんなんだろなぁ)

 

 買い出しは順調に進み、初留は帰路へと着いていた。

 

 市街地を歩きながら初留はふと考える。自分の正体。自分は一体どういう人間でどこで生まれて何をしていたのか。所謂記憶喪失になる前の記憶のことを考えていたのである。自分と言う存在について考えると初留は形容しがたい不安に襲われることがある。それは以前研究所の男に自分の出生を聞いたとき「それを知る必要はない」と言われたことに起因している。普通の出生であればすんなり教えてくれるはずだ。教えてくれないと言うことは、その記憶事態に問題があり俺が研究所で寝ていたことと繋がっているのかもしれない。

 

 まぁ、ここでうだうだ考えても記憶が戻るわけではない。今の自分に出来る事をコツコツとやっていけばその内記憶も戻るだろうと初留はやや楽観的に思考を止めた。

 

 

 

 

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 町の外れに差し掛かかると日は降りており、冬の余韻を感じる寒さが辺りを支配していた。なにやらヴィランでも出てきそうな雰囲気だなと初留は考えながら足を進めていると、路地裏近くに数人の男たちが、なにやらもめ事を起こしていた。しかし、それは揉め事と言うには一方的で一人の男が複数人の柄の悪い男に殴る蹴るを加えられているという構図であった。当然ヒーローを目指している初留は声をかけた。

 

「おい、大勢で一人をボコるなんてダサい事やってんじゃないよ。お前らそれでも男かよ?」

 

 やや挑発色多めの声掛けに案の定柄の悪い男が突っかかってきた。

 

「ああん?てめえ俺たちになんか文句あんのか?俺たちはこの兄ちゃんからお金せびるのに忙しいのよ。分かったら帰ってママの乳でもしゃぶってるんだな、ぎゃはっはっはっ」

 

「おお、そう言う如何にもやられる不良が言うセリフ初めて聞いたぜ」

 

 言うとリーダー格の男が詰め寄ってきた。

 

「てめえ調子に乗ってるとマジで地獄みさすz」

 

 瞬間、男の背後で血飛沫が舞った。数本の刃物のような物がチンピラたちを襲ったのだ。

刃物の出所は恐らく襲われていた男からだ。耳を澄ますと男がなにやら口走っている。

 

「きれいだ。きれいだよ。きれいな肉面。もっと見せてよ」

 

 言うが早いが男は先ほどの刃物を初留とリーダー風の男に伸ばしてきた。初留はリーダー風の男を掴むと後方に投げ、刃物をよく見た。

 

 初留には【ウイルス】の他に5個の個性がある。その中の一つに【動体視力】と言うものがある。能力は単純で自分の動体視力を通常時より何倍か高めるものだ。ただ無制限に高められるわけではない。通常の2倍で15秒、それ以降効力を上げていくと維持時間は落ちていく。加えて【動体視力】で見ている間は自分の体もスローモーションになっている。そのため個性発動中に状況を把握し、次の行動に役立てるというのがこの個性の主な使い道だ。

 

 さて、場面を戻すと初留は【動体視力】を使って男の個性を観察していた。

 

(刃物は口から出ているな。本数は7、8本程度。歯から生えているのか?)

 

 【動体視力】のタイムリミットが迫る。右の方に多少空きがある。態勢を右方向に傾け、個性解除。体の左を刃物が過ぎていく。

 

 間合いを詰めつつ刃物を躱す。目標は脳天への一発。気絶させれば否が応でも個性は止まるはずだ。理由はともあれ一般市民に危害を加えたのだから拳の一発位許されるだろう。

 

 躱す、躱す、躱す、躱す

 

 刃物は直線的に伸びるため、【動体視力】を使えば躱すのは造作もないことだ。男が目前に迫る。拳を固め、なぐr

 

「ぐ……、ってぇな」

 

 脇腹に痛みが走った。見てみると腹から刃物が貫通していた。何故?

 

 どうやら男の刃物は方向転換可能らしい。初留を極限まで引きつけ、躱された刃物で背後から刺されたようだ。

 

(まんまとこの男の策略にハマったってわけだ)

 

 このまま行動を止めれば残りの刃物で串刺しにされるのは火を見るより確かだろう。

 

 前方に進み腹から刃物を抜く。激痛が走るが痛がるのは後だ。

 

 背後に警戒しつつ距離を取る。

 

(こりゃ思った以上にやっかいな個性だ。【動体視力】だけだとちときついな。…もう一つ、個性使わせてもらうか)

 

 迫る刃を躱しつつ初留は考えた。

 

(あと何秒でこいつは倒れてくれるかな?)

 

と。

 




因みに個性研究所の女性の人の個性は【自白】です。対象の脳に軽い麻痺をかけ、簡単な質問に強制で答えさせることが出来ます。発動条件は30cm以内で対象の目を見る事。個性にかかっている間は対象は動くことも考えることも出来ないので結構強いかも。
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