目覚め
第四次忍界大戦が終わり幾年か経ち、忍の世界は安寧を取り戻した。忍達は争う必要がなくなり、今や忍術を使って大工になる者すらいた。しかしこの砂隠れ、北の国境にはかつての忍の姿があった。忍の数は三人、一人は青髪に、全体的に緑で裾がオレンジの服を着た青年、二人目はツインテールで背丈は小人より少し背が高いだけの茶髪少女。最後に一人は般若の面を被り、筋肉隆々にして並々ならぬ殺気を放つ忍であった。
最初に動いたのは青髪の青年。
「七天呼法・第三活性・・・解!!」
「土遁・・・多重土流壁」
青年が黄金の光を帯びたかと思うと、筋肉が急に膨張し服まで盛り上がる。般若の面の男が印を組んだ直後に現れたのは、異様な存在感を誇る土の盾。だがもう一人の忍びの飛び膝蹴りの前に、脆くも砕け散った。しかし、岩壁の隠れているはずの忍びはもういない。
「消えた? ヨメ!」
「分かってる・・・だめ、どこにもない」
ヨメは水滴を利用することで、数十キロ先まで見通すことが出来る。だから、砂の国境警備を任されたのだ。にもかかわらず、敵が発見が出来ないことに、シンは困惑していた。
「くそ、取り逃がした?しかし、砂隠れのしかもこんな辺境に何が目的で・・・」
「ごめん。シラ・・・」
この場唯一のくノ一であるヨメは、自分の役割を果たせず、申し訳なさそうにする。
「大丈夫だよ、ヨメ。それに、君の瞳でも発見できないなんてッ、取り敢えず風影様に―」
突如、弾丸のごとく地面から手が生える。その速度は七天呼法で向上した身体能力でも反応しきれないほどのものであった。
「シラ!」
「そうか、さっきの土流壁は防御の為ではなく、地中に身をひそめるためかッ」
「待って!今助けに行く!」
慌てて、援護に駆け付けようとするヨメをシラは制止した。
「大丈夫この程度なら」
シラは地面に縫い付けてくる腕は確かに剛力だが、七天呼法で強化された身体能力には及ばないと判断した。だが、それは覆される。
「土遁・加重岩の術」
突如、尋常ではない重さになった自重に引きずられ、地に沈んでいく。
「グアッ 体が」
並の忍びなら確実に詰んだ状況。だがなお敵は容赦しなかった。
「土遁・黄泉沼」
「この沼ただの沼じゃない。泥が粘着してきて、体がいうことを―」
青年の足下が一瞬にして底なしの沼と化す。彼はなすすべなく、沼に沈んでいくしかない。
「シ、シラ~‼」
叫ぶ少女の背後。地面から一人の忍が音もたてずに現れる。男は額当てはしていなかったが、代わりに般若の面をつけていた。
「あ、あんた何者なの!?何の目的で砂に来たの!」
「土遁・岩石封じ」
いつの間に現れたのか、直径六メートルほどの小隕石と言っても差し支えない岩がヨメを押しつぶさんとす。
「ちょっ、イヤッ」
突如として上空に現れた岩石は、轟音を響かせ落下した。少女は怯えて動くこともままならない。まさに絶体絶命。
夜、真っ暗闇の中、一陣の光が岩を薙ぎ払う。立っていたのは、黄金の光を纏うシン。彼の纏う光は数舜前とは比較にならない。それだけじゃない。足の裾についていたオレンジの飾りも無くなっていた。
「確実に沈む重さだった」
忍が訝し気に声を上げる。
「俺は、体に重りをつけていてね。大切なライバルからの贈り物なんだ」
「だから言ったじゃない!!そんな緑の服なんて脱ぎなって!」
安堵の反動で気が緩んだのか、少女がキャンキャンと文句を言った。しかし、当の青年に返事をしている余裕は無い。
「ヨメ、敵から気をそらすな!この忍び、術のランク、使い方共に強すぎる」
「どうするのシラ!?」
シラと面の忍の間に砂が吹雪く。砂漠の砂だ。一度風に舞えば、容易に視界を遮る。青年は確信していた。この砂が収まった時、勝負はつくと。
「少し危険だが、ここで決める‼」
シラは全身に力を込め、大地を踏みしめた。逆立つ髪に盛り上がる筋肉。
「七天呼法・第六活性・・・解!!」
黄色いチャクラが砂塵をまき散らし、完全に二人の視界は遮られた。だが、般若の忍は視界の無くなる一瞬前に術を見切る。
「その術、見たところ八門遁甲のようだが、似て非なるものだな」
般若の忍は拳を握りしめる。
「土遁・土矛」
突如、忍の肌は夜の闇より黒くなる。その拳は不思議な重みをもち、全てを貫く絶対の意思を感じさせた。
「ガ―ッ」
先に砂煙から飛び出したのはシラ。後手の慎重さより、先手の速さを取ったのだ。
「・・・」
忍は黙って腕を構える。
凄まじい衝撃波。地面は割かれ、砂漠は爆発した。舞い散る砂塵が月光を遮る。
数刻ほどたった後。砂の小山一つ無くなり更地となった砂漠で動く者がいた。
「ゲホゲホ・・・もー砂が口の中を埋め尽くしちゃったじゃない」
少女はケホケホと咳き込みながら、ジト目で青年を見る。だが、眼前に倒れている青年の余りの容態に顔面蒼白となった。
「それくらいで、済んで、良かったじゃないか。俺なんか、指と、関節が、曲がっちゃったよ」
「大丈夫!?いま救護班を」
「大丈夫・・・何とか。とにかく、風影様に報告しないと」
*
見上げるだけで圧迫感を感じさせる、見渡す限りの岩山。その中で一際目立つ巨大な丸岩があった。その上に般若の面を被った忍が舞い降りた。
「解」
岩だったそれに穴が開き、忍はその中に消える。しばらくして、空いた穴は跡形もなく空き消え、再びただの岩に戻った。
左右に不安定に揺れるかがり火以外、一切の光源の無い薄暗い通路を歩いた先には、古い寺院があった。二柱の怒りの形相をした阿吽像に挟まれた門の真ん中に、一人、杖を持った老人が立っていた。老人の顔は全身を覆う黒いローブで見ることは叶わない。いや、もう一人いた。サファイアのような青の髪をもち、左右に縦巻きにした髪型の少女だ。
「例のものは見つかったのか」
声は確かに枯れた老人の声だったが、確固たる力強さを感じさせる声だった。
「はい。しかし、砂隠れの忍びに気取られました」
「確実に殺したか」
「いえ、任務の遂行を優先しました」
「隠密に遂行が当然。ましてや目撃者は確殺の掟だ」
老人から暗く濃い殺気が漏れる。
「申し訳ありません。殺れないことはありませんでしたが、片方は視認範囲だけならあの白眼に匹敵、もう片方は戦闘を続行すれば、任務に支障が出る可能性があるほどの体術使いでした。」
「無駄口はいい。それで、サソリの遺産は動くのか」
「機能は停止していますが、チャクラが無いわけではなく、流れていないだけのようです」
「では、流せ」
忍は、懐から一巻の巻物を出し、指をかみ切り、
「口寄せの術」
煙から現れたのは、白いローブを羽織い、唐紅色の髪を持った芸術品のように美しい少年だった。しかし、その肌に本来あるべき生気は感じられなく。まるで、死人のようだった。
「これが、本当に人形なの?」
少女が思わず疑問を投げかける。
「今は黙っていろと言ったはずだ、やれ」
忍は手に青いチャクラを纏わせ少年の胸を掌で叩く。瞬間、寺院は青白い光に包まれた。
声?男の声がする。意味も分かる。でも、何も見えない。いや、周囲が暗いのか。夜なのか?違う、洞窟、監獄のような場所か?でも何か違う気がする。男が二人いるな。いや、もう一人、女の子?
「ここは?」
「ここは、土隠れ暗部だ」
硬い男の声が聞こえた。
「僕は?」
「そなたは、今この時よりリオンと名乗れ」
こうして、リオンはこの世に生を受けた。
第一話からオリキャラばかりとなり、申し訳ございません。一応、シラとヨメについてはアニメ620話に出てきます。果たして覚えていらっしゃるお方はいるのか・・・