暁新伝《BORUTO編完結》   作:モリッチ

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急転直下

 立秋の日、任務の受付所前のテーブルでミーティングが行われていた。椅子に座っているのは僕とドントさんの二人のみ。

 

「もう一度任務の確認をする。七草の会場は草隠れ。その道中の警護及び、会議中の護衛が任務だ」

「編成は?」

「リオン、雫、バオのスリーマンセルだ」

 

 あのアフロの人か。ドントさん無しでの長距離任務か・・・・・・若干不安だ。まあ、ここ数年七草で戦闘は無いらしいし三人で十分か。

 

「雫もある程度はやれるが、あくまで事務方だ。期待するな。バオに関しては心配するだけ無駄だ」

 

 それは、心配するだけ無駄なくらい強いってことだよな。

 

「他に何か質問は?」

 

 まあ、特にはないけど敢えて言うなら、

 

「戦闘になったらどうします?」

 僕の質問に少し考えた後、方針を話した。

 

「理想は敵の撃退」

「厳しいなら?」

「最悪の場合はこちらの情報の流出を阻止して、撤退。手段は問わないが、雫だけは連れて帰れ」

 

 ちょうどその時、ガチャッという音と共に二人部屋に入ってきた。

 

「安心しな。自分のケツくらい自分で持てる」

「相変わらず、あんたはシンゲン様と違って心配症ね。余計なお世話よ。大体、そんなに気になるなら新米君に任せずに、あんたが護衛に行けばいいじゃない」

 

 一度見たら暫く視界にちらつきそうな、オレンジのアフロのバオと、鷹でもそんなに鋭くないだろう眼差し、左右の青いクロワッサン、雫だった。

 

「いえ、一応戦闘の可能性も考慮しておかないと」

 口攻めで集中攻撃されている可哀そうなドントさんを庇う。まるで、家庭内で孤立している父親の如しだった。

 

「はは、ドントの弟子なだけはある。用心深いな」

 

 バオの方はただ軽口を叩きたかっただけなのか、ヘラヘラと椅子に座る。しかし、雫の方は椅子に座る様子はなかった。

 

「さっさと、行くわよ。後ドント‼私の留守中に暗部の未達成任務数を溜めたら分かってるわね?」

 

「……きっちり消化しておく」

「ふんっ」

 

 雫はそっぽを向き、部屋を出て行ってしまった。バタンと閉まるドアを男三人で黙って見つめる。

 

「嬢ちゃんの前じゃ、ドントの旦那も形無しだな」

 ドントさんが苦手にする理由が分かった気がする。胃が痛い。

 

「心配することねえよ坊。なんでかは、てんで分からねえんだが、雫があんなにあたりが強いのはドントだけだからよ」

 

 ポンポンと僕の肩を叩きながらバオが言った。

 

「・・・そうだといいんですが」

「じゃ、俺らも行きますか。ちんたらしてると、嬢ちゃんにどやされちまう」

 

 そう言って、彼は部屋を出ていった。

 

 

    *

 

 

 久しぶりに太陽を見た気がするな。いつもアジトを出ると星空だったし。昼の岩山の方が、視界が明るくなった分より広大に感じる。渓流の音が涼しく、夏と秋の境目の季節だけあって、緑の葉の中にところどころ黄色や赤色が見える。

 

「なにぼさっとしてんのよ」

 雫がジト目で睨んできた。眼光の鋭さのせいで見下されてるように見える。

 

「いや、ちょっと景色を」

「あなた気が緩みすぎじゃない?てろてろしてたら、七草に間に合わなくなるわよ」

 

 てろてろってどんな様子だよ。そんなにてろてろしてたのか僕。どちらにせよ、急いだほうが良いっていうのには賛成だ。でも、

 

「まあ十分間に合いますよ。飛んでいきますから」

 

 僕は左手から鋭い漆黒の杭を伸ばし、地面に向け突き刺す。

 

「何してるんだ?」

 バオが、僕の謎の行動に疑問符を浮かべていると、突如として茶色い地面が盛り上がりシンプルなフォルムのフクロウが飛び出す。

「な、なによこれ⁉」

 

 左手の中に杭をしまったリオンは得意顔で言った。

 

「僕は、物体にチャクラを練りこむことができましてね、ただそのために対象を自身の口で咀嚼する必要があったんですよ。結果として、粘土のような柔らかい物にしか練りこめないのが問題だったんです」

 

 先ほどまで地面を構成していたはずの、土くれが今や躍動感たっぷりにリオンを乗せて羽ばたいていた。それを見ていた、バオは合点がいった様子で口を開いた。

 

「そこで、杭の出番って訳だな。例えば硬い岩盤でも直接チャクラを注入できるようにしたってことか」

 

 これは、一見大した事の無いように見える忍具に思えるかもしれない。でも、咀嚼によって自身とは別の物にチャクラを練りこむという動作を、注射で代用するには数々の難題があったのだ。

 

「ゲンナイさんと共同開発したんです。この作品を作るまでに何度帰宅途中のドントさんを巻き込んだことか」

 

 バオの方は感心して頷いていたが、雫は別の事に驚いている様子であった。その表情は人々がポン酢にお酢が使われていないとか、鮭は白身魚だったと知った時のそれであった。

 

「あの、穀潰しの変人がまともな物を作るなんて・・・・・・」

 

 ・・・ゲンナイさんは何度、自室のドアを爆破したんだろう。

 

「じゃあ、いきますか。あっ、クッションは自分で用意してくださいね」

 そう言って、僕はクッションを口寄せした。

 

 

    *

 

 草隠れ。それは、火の国と土の国の間にある小国に所属する隠れ里であり、その名の通り面積のほとんどが草木に覆われている。その、奥深くには何人にもたどり着けない場所がある。誰もその存在を知らず、たとえ知ったとしても幾重にも張られた結界に阻まれる。その場所とは『七草』。闇を統べる者が集う場所であり、影の世界の法であり、無秩序の象徴でもある。

 

「ま、何とか侵入できたか」

 

 左右の目から上下に渡る紫の模様が特徴的な、自称抜け忍の忍びスケア。またの名をはたけカカシは呟いた。

 

「ん?なんか言ったか?」

 

 水の国の海賊の首領鬼灯バトラはその巨躯を揺らしながら、傍に控える忍びに話しかけた。

 

「いえ、何でもありません」

 

「そうか。てめえには期待してるぜ、スケア。最近の『七草』はだらしがねえ。屑だ。だから誰かが作り替えなきゃならねえ。つまり俺だ。そう思うだろ?」

 

 自信満々に豪語する彼は異様な姿をしていた。まず目につくのは鬼灯一族代々伝わるギザギザした歯。黄ばんだ瞳に赤茶の髪に髭を持ち、でっぷりとした腹につまっているのはおそらくただの肉ではないだろう。

 

「おっしゃる通りです。しかし、どうやってやるつもりです?」

「俺を誰だと思っている。もう手は打ってある」

 

 バトラは満足そうに頷き、眼前に広がる古城を睨みつけた。

 

 

   *

 

 

 土の国と草隠れの堺の上空を、通常ではありえないフォルムの鳥が飛んでいた。 

 

「ねえ、そんなにずっと風景ばっか見て楽しいの?」

「まあ、そりゃ絶景じゃないですか。見渡す限りの岩山もよく見ると一つ一つ造詣が違いますし。恐らく形成された年月や、自然作用が違うんでしょうね」

 

「つまんないじゃない。山ばっかじゃない」

 

 雫は退屈そうにボーっと体育座りをしながら、愚痴を言う。

 

「そうですね・・・・・・あっじゃあ、あそこにいる熊の親子なんかどうです?かわいくないですか」

「興味ないわ。後、その敬語やめてくれる?私たち見た所そう歳は離れてないでしょ」

 

 その時リオンが声を上げた。

 

「あっ、子熊が落ちそうにっ」

「えっ⁉」

 

「嘘だよ。やっぱり気になるんだ」

 

 雫は無言でリオンを蹴り落した。

 

「うあああぁぁぁぁ~」

 

 リオンの叫び声に、バオがむくっと起き上がった。

 

「ん?着いたのか?」

「知らない。って言うかいい加減クッション返しなさいよ交代制でしょ」

 

 硬い土で出来たフクロウに座り続け、お尻が痛くなったのかクッションを引っ張る。しかし、バオもそれは同じこと狸寝入りでこの場をやり過ごそうとする。

 

「zzzzzz」

 

 雫は無言でバオを蹴り飛ばした。

 

「だああああぁぁぁぁ~」

 

 

    *

 

 

「なんとか無事に着きそうですね」

 

 僕は遠くに見える古城を見ながら感慨深げに一言発した。ちなみに上空からだと結界の為入れないため、雫に突き落とされたのを機に陸路に切り替えた。そのまま、てくてくと明るい森の中を歩いていたのだが、バオが空腹を訴えたため、リオン一行は昼食休憩をする事となった。

 

「あれが七草・・・・・・」

 

 僕の目には木々の隙間に、石垣に囲まれた城が見えていた。目測ではあったが、一、二時間もあればたどり着けそうな距離であった。

 

「七夜城。別名人日城ともいわれる城で、里が生まれる以前の戦国時代に建てられた城らしいわ」

 

 雫が誰にと言うでもなく解説をする。

 

「そんな昔に造られたのに、まだ残っているだ!?」

「へぇー」

 

 リオンと違いバオは興味ないらしく生返事だった。

 

「何で、七夜なの?」

 

 興味を持ったリオンの様子に気をよくしたのか、雫は得意げに話し始めた。

 

「なんでも、チャクラを使わずに七日で建てられたとか、七日目は人を大切にするという意味がある事から縁起の為に付けたとか色々諸説あるのよ」

 

「おいおい、早いとこ食おうぜ。腹減っちまったよ」

 

 バオは、退屈と空腹のあまりしびれを切らした。

 

「はぁ~。本当に落ち着きがないわね」

 

 雫はいくつか巻物を広げた。

 

「なんだこれ?」

 

 バオが寝そべりながら聞く。

 

「作ったものはここに封印していつでも食べれるようにしたの。安心して巻物内では時間が経過していないから」

「凄い‼斬新だ」

 

 リオンはさっそく一つ手に取った。なるほど封印の巻物をこんな形で使うなんて、これさえあればドントさんのゲロまず兵糧丸から解放される。感動に打ち震える僕をよそに彼女が巻物を並べていく。

 

「これは、飲み物の巻物。リオンの持ってるのは主菜の巻物。こっちは前菜。デザートはこれね」

「何でも入るのこれ‼」

 

「まあね」

 

 雫のドヤ顔が光る。僕とバオはさっそく巻物を見た。

 

「すげえ‼じゃあ焼酎に、」

 バオは焼酎を呼び出す。

 

「任務中ですよ。バオさん」

 

 何とかバオの飲酒を阻止しようとしていると、雫が立ち上がった。

 

「私、ちょっとお花摘みに行ってくるわ」

「あ?花ならそこにピンクのが咲いてるぞ」

「そういう意味じゃないわよ‼」

「じゃあ、どう意味だってんだっ‼」

 

 いがみ合っている二人の頭に、突然直接リオンの声が響く。

 

『バオさん、雫』

 

 急に僕の声が響いたため、二人とも僕の方を見る。しかし、僕が口を開いていないことを見ると事態を把握した。

 

『何だこれ、坊の声か?』

『突然どうしたのよ、まったくもう。頭の中に直接響いて不愉快ね』

『疎通操作の術。傀儡の術の一種です』

 

 雫は術名には興味が無いのか単刀直入に説明を求める。

 

『何でもいいわよ、そんなの。どうしたの?』

『周囲に忍びの気配が感じられる』

 

 バオが何でもない風を装い周囲の気配を探る。

 

『囲まれてるな、こりゃ。よく気づけたな』

『恐らく、風の国の忍びですね』

『何で、そんなことが分かるのよ』

『あの花、忍だよ』

 

 先ほどバオが指さしたピンクの花が風にそよいでいた。どうみても、普通の花にしか見えない彼女は思わず懐疑的な声を上げた。

 

『忍?』

『あれは、アデニウムと言って別名、砂漠のバラとも呼ばれてる。この地帯に野生で生育することはまずあり得ない。恐らく忍が花に変化する際に、最もイメージしやすい植物に無意識で変化したんだろう』

 

 花なんか綺麗なら何でもいいと思っている雫には全くリオンが理解できなかった。

 

『まるで植物博士ね』

『で、どうすんだ?』

『風の国は風遁使いが多い。お願いできますかバオさん?』

『なるほど。俺の出番って訳か。よく俺が火遁使いって分かったな』

 

『その見た目で火遁じゃなかったら、おかしくないですか?』

 

 オレンジアフロをしておきながら、水遁使いだったら実際おかしくない?

 

『・・・適当ね。敵の狙いは何なの?』

『それより今は、ここをしのぐことを優先しよう』

『俺が、囮になる。先に行け』

 

 どうする、バオさんと協力して蹴散らすか。いや、雫を七草に連れていくことが最優先だ。彼女を危険に晒すわけにはいかない。

 

『分かりました。七夜城で会いましょう』

『おう』

『散‼』

 

 僕の掛け声に雫は一気に駆け出す。その途端、前方と後方から暴風が吹き荒れる。

 

「火遁・火龍炎弾の術‼」

 

 炎は暴風を飲み込み、前方の林ごと燃やし尽くす。

 

「今だ」

 

 燃え盛る林の中を僕と雫は一気に駆け抜けた。

 

 

    *

 

 

 どんな話し合いにもまとめ役は居るものである。それは、『七草』とて例外ではない。『七草』の盟主にして七夜城の老城主・トトは秘書の報告を受けていた。

 

「今年は、火の国の御屋城エンは欠席、風の国のロウは出席、雷の国のウザイは出席、水の国バトラは出席。土の国シンゲンは代理出席、本年から無所属の組は実となり、代表者はホウイチという僧侶です」

 

 古城の外観に似合わず洋風の椅子に腰かけた白髪に下がり眉。長いひげに腰の曲がったトトは一口茶を啜った。

 

「ふむ、やはりあそこは実に乗っ取られたか」

「はい、前代表は暗殺されたようです」

「今時、乗っ取りができるほど活気の良い組織は珍しいの」

 

 また一口茶をすする。

 

「情報によると、老中暗殺も実の仕業という情報も上がっています」

「して、真相は割れたか?」

「申し訳ございません。今しばらく掛かるかと」

 

 老人がとった行動は、頭を下げる秘書を責めるでもなくポツリとした一言。

 

「我が七夜城も衰えたものよの」

「いえ、その様なことは」

「良いのじゃ。盛者必衰の理。老兵は死なずただ消え去るのみ」

 

 それきり静かになった部屋に別の秘書が入る。

 

「ミト様。バトラが参上したようです」

「うむ。貴賓室に通せ」

 

 ミトは茶を一気に啜り、羽織を翻して立ち上がった。

 

    *

 

 カカシは貴賓室に座る七草とその側近達を見て、予想を上回る事態に頭を悩ませていた。

 

 戦後の復興や発展の忙しさの為、それほど外に目を向ける余裕は無かったとは言え、まさかこれ程の忍たちがいたとは。それにしても、七草と言っても七人いるわけでは無いのか。

 

 現状いるのは三人。不気味なまでに痩せこけた僧侶と透明人間。最後に鬼灯バトラ。こりゃ実について調べるだけで済ましていい問題じゃないな。特にバトラ、俺の勘が正しいとするとこいつは恐らく・・・・・・行動はカンクロウの方の準備が整うまで待ちか。

 カカシが今後の作戦を再確認していると、扉が開き和服の老人が入ってきた。 

 

「これはこれは、今年も皆さま遠路はるばる来て頂き感謝を申し上げます」

 

 こいつが、七草のまとめ役か?これで、四人。

 

「御託は要らないワ。早く本題に入レ」

 

 背中の大きな風魔手裏剣と緑のマント、体に巻かれた包帯しか見えない不気味な忍が艶やかな声で喋った。声こそ美しいもののどこかカタコトであった。それでも、有無を言わさぬ迫力にトトが口を開こうとしたが、バトラがそれを止める。

 

「まあ、良いじゃねえかロウ。それに、御屋城エンはともかくだな、まだ雷のウザイと土の嬢ちゃんが来てねえじゃねえか。そう思うだろ新入りさんよう?」

 

 妙に頭が長く、病的に肌の青白い僧侶は静かに答えた。カカシは今の発言から、この透明人間がロウで僧侶が実の代表だと辺りを付ける。

 

「凶報は寝て待ちましょう」

「ん?何言ってんだ?てめえ」

 

 バトラが眉をひそめて微妙な空気になった所で、トトはおもむろに喋り出した。

 

「確かに、定刻は過ぎておりますが、ウザイ殿も雫殿も出席予定のはず。今しばらく待ちましょうぞ。そうだ、茶でもいかがですかな?」

 

 トトが手を叩き召使いの者を呼ぼうとした瞬間、扉が勢いよく開かれた。入ってきた秘書は額の汗を拭きながら言った。

 

「ミト様!大変です‼」

「どうしたのじゃ。騒々しい」

 

 秘書はトトに睨まれ、一旦一呼吸を置いた。

 

「それで、どうしたんじゃ」

「雷の国ウザイが死体で発見されました‼」

 

 一気に、部屋が騒然とした雰囲気となった。

 

「何じゃと⁉確かかそれはっ」

「雷の国と音隠れの堺で事故に合ったとの事!」

「おいおい、ほんとかよ。拙いことになったな」

 

 言葉とは裏腹にバトラはその巨体を背もたれに預け足を組んだ。

 

「まさか、あのマフィアの界隈にこの男ありとまで言われたウザイが事故などで・・・・・・」

 

 騒然とする部屋の中で、テーブルを蹴り飛ばす音が響いた。バトラだ。突然テーブルをひっくり返した彼に全員の視線が集中する。

 

「俺からも、一つ報告があるんだがよ」

「何じゃ、この忙しい時に!」

 七草の纏め役である自分の眼前でのあまりの無作法にトトが青筋を浮かべる。だが、彼を本当に動揺させるのはこの次のバトラの発言であった。

 

「七草まとめ役ミト。てめえに不信任案を出す」

「何じゃとぉー?!馬鹿を言うな、それはお前ひとりで決められる―」

 

 トトの驚嘆と憤怒の声をロウが遮った。

 

「七草に出席した人数の過半数それが、条件ダ。そして、私も賛成しスル。これで四人中二人が賛成。つまり半数の達成ダ」

 

 怒涛の展開にカカシは喉を鳴らした。確かに、これで半数。だが、過半数ではない。どうする気だ。

 

「勿論。てめえも俺に賛成だよなあ、新入り?」

 バトラがねっとりとした殺気を漏らしながら僧侶に尋ねる。

 

「私も賛成しましょう」

 

 僧侶が同意した。バトラが凶悪な笑みを浮かべる。

 

「今この時より、七夜城城主ミトは七草の纏め役はあんたじゃなくなった。なら、次の纏め役をきめねえとなあ?」

 もはやトトはパクパクと口を開け閉めするのみであった。

 

「私は水の国、海賊の王バトラを纏め役に推薦スル」

 

 カカシは、思わずクナイに手を伸ばしかけた。何だ⁉何が起きているんだ。これは、いよいよ拙い気がするな。しかし、今動くのは危険すぎる。どうする!カンクロウはまだか!

 

「ま、待て、まだ土の代表雫が来ておらん!一時休止を要請するっ!」

 

 トトは動転する気持ちを抑え、悪あがきをする。

 

「ふん。往生際が悪いな。現状は三対一。雫の嬢ちゃんがきても三対二。てめえの不信任は揺らがねえし、俺の信任も揺らがねえ。だが、規定だからな・・・そろそろ日没か。なら、明日の正午まで待ってやる」

 

 バトラは巨体を揺らしながら、部屋を出て行った。

 

 

   *

 

 

 星は瞬き、空気は秋の訪れを予感させるさわやかさを帯びていた、しかし命がけで潜伏中の雫には縁のないことだった。

 

「バオは大丈夫かしら」

 

 突然の襲撃と追手からの逃走に疲労を隠せない様子の雫は不安気に言った。

 

「大丈夫だよ」

「なんで、そんなこと分かるのよ」

「ドントさんが、心配するだけ無駄だって言ってたし」

 

 気楽な様子のリオンとは対照的に、雫は深刻な様子だった。

「多分あの風の忍達はロウの手のものだわ」

「ロウ?」

 

 今回の襲撃犯かもしれない情報に僕は耳を澄ます。

 

「百年以上前から、風の国をメインに活動するスパイ兼暗殺集団の長よ。代々その集団の中で最強の忍びがロウを名乗ることを許されているらしいわ。砂漠のロウに狙われて無事だった者はあの初代火影・千手柱間だけらしいそうよ」

 

 千手柱間がどれ程の者なのかは知らないけど、今回の敵もヤバそうな相手だな。

 

「なるほど、でロウは七草の一人って訳か」

「恐らく、七草で今何か起きている。どちらにせよロウに狙われてるなら私たちの命はないわ。皮肉なものね、生まれ故郷の林の国で死ぬなんて」

 

 言い切って、リオンの方に目を向けると近寄ってきたイノシシの子に餌をあげていた。

 

「なんで、あんたはそんなに気楽なのよ」

 

 僕は傍によって来たリスや小鳥とたわむれながら言った。

 

「ドントさんのトラウマ空間に比べれば、ここは凄く居心地がいいからつい。なんか、鳥たちが勝手によって来るんだよね。何でだろう?」

「はあ~。で、どうするのよ」

 

 ぼーっと空を見上げる僕をジト目で見ながら尋ねた。どうするか?決まってるじゃないか。任務の遂行は絶対だ。

 

「絶対に雫は連れて行くよ」

「な、何よ急に。撤退とか考えないわけ?」

 

 二人の間を一陣の風が通り抜ける。

 

「どんな任務も必ずやり遂げる。だって、僕は忍だからね」

 

 リオンの強く光る青い眼差しに押され、雫は目を反らした。

 

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