暁新伝《BORUTO編完結》   作:モリッチ

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人柱力に憧れた男

「定刻だな」

 

 会議室は重苦しい雰囲気に包まれていた。室内にいるのは5人。鬼灯バトラ、ロウ、ホウイチ、トト、スケアである。

 

「どうやらここまでの様だなジジイ」

 にやつきながら、バトラが言った。もう既に、会議の行方が見えているからだ。それは、元纏め役トトもそうなのか、対照的に苦し気に表情を歪めた。

 

「ぐっ。だが貴様、雫を監禁しておるな」

「何の話だ?」

 

 嘘をついていることがバレバレの表情でとぼける彼に、青筋を立てる。

 

「とぼけるなっ、ここはわしの城。秘書から情報が入っておる」

「だから何だ?どの道ここに居ねえんだ。そいつはなあ、土の暗部の実力がクズだったって証明だ。裏の世界では力こそが全てなんだよ」

 

 バトラとトトの押し問答に嫌気がさしたのかロウが口火を切った。

 

「もうイイ。とっとと終わらせヨウ」

「ああ分かったよ、でもそう思うよなあ新入り?」

 

 バトラが僧侶の男に絡む。が、ホウイチは不透明な返事を返すのみであった。

「果報は寝て待て」

 

「あ?」

 

 変な空気になった会議室。沈黙が下りた一室をロウが再び動かし始めた。

 

「気にするな。俺はまとめ役としてバトラに投票スル」

「俺は俺に投票する」

 

 トトは覚悟を決めた。彼にとって、こんな結末に陥ってしまうのは心の底から不本意ではあったが、抗えぬ力の前にはひざまずくしかない。

 

「わしは、わしは・・・・・・」

 

 そこに秘書が入り彼に耳打ちする。目を見開くトト。しかし、その瞳にあるのは先ほどの空虚ではく、別の何かであった。突然様子の変わった元纏め役に一同は何言いだすのかと、構える。そしてついに、口を開いた。

 

「わしは雫に投票する」

 

 堪え切れず、バトラは噴き出した。余程おかしかったのか、笑う彼のでかっ腹がタプタプ揺れる。

「ガハハハッ。いよいよ老害となったかじじい」

 

 だが、実の代表者である僧侶が空気を凍り付かせた。

 

「私も土の暗部代表・雫に投票する」

 

 全員を衝撃が襲った。時が止まる会議室。身震いさえしそうなひんやりした空間にドロドロと激怒の炎がまき上がった。

 

「て、てめえ何を言っているのか分かっているのか?」

 

 怒りの余り声が震えるバトラ。動揺したのは彼だけではない、この場唯一のくノ一であるロウもまたそうであった。彼女にしては珍しく、声が上ずる。

 

「貴様何を考えてイル?」

「これで、二対二。雫自身の分を入れれば三対二じゃなあ」

 

 会心の笑みを浮かべるトトの表情に、バトラは押し黙った。不気味な沈黙が部屋を支配した。が、その沈黙は他ならぬ彼によって崩された。

 

「ク、ククククク。ああめんどくせえ。最初からこうすればよかったなあ。こんな回りくどいことしなくても、俺は七草の纏め役。闇の王者だぁ」

 

 バトラの体から溢れる高密度のチャクラ。その、圧はそのまま風圧となり周囲の人間を圧倒する。

 

「な、何をする気じゃ」

 

 秘書に庇われながら、懸命に吹き飛ばされるのを堪えるトト。うねるチャクラ体が受肉した。触手の蕾が花開く。

 

「全員死ねえ‼クズがあぁぁぁ!!!」

 

 おぞましい触手の鞭が、ここにある万物を押しつぶさんとす。その時、扉が爆ぜた。灼熱の業火が触手を滅却する。なめ尽くすように燃え盛る火炎の中を誰かが歩みゆく。

 

「お前は三つ勘違いをしている」

 

 炎に照らされ輝く真紅の髪をなびかせ、少年が爆炎を振り払った。

 

「まず一つ、クズはお前だ。二つ目に、纏め役はお前じゃない、僕は土の代表代理として雫に投票する。つまり、纏め役は彼女という事になる」

 

 確かに死んだはずの人間が再びその姿を現したことに、ロウは喘ぐ様に息を呑んだ。完全な未知・理解不能。生まれて二度目のそれをバトラはまざまざと感じた。一度目は第四次忍界大戦で、二度目は今ここで。

 

「て、てめえ何で生きてやがるんだ!だがなあ、俺は過去を克服した男。神の力を振るう者、真の人柱力なんだぞ‼」

 

 自分自身に言い聞かせるように声を絞り出す彼に、僕は冷たい薄笑いを浮かべた。

 

「そしてこれが最後の勘違いなんですが、僕にあなたの相手をするのは荷が重すぎると言いましたね?むしろ、逆ですよ。人柱力を狩る事は我々の得意分野だ」

 

 バトラは肌で感じた、本当の恐怖というものを、自分が獲物にされるとはどういうことなのかを。絶望の味を。

 

「いや、そんなはずは無い。この俺が、俺様が―」

 

 彼は何を言おうとしていたが、最後まで言い終えることはできなかった。彼の顔に黒杭がめり込んでいたからだ。

 

「喝」

 

 バトラの頭が潰れたトマトの様になる。しかし、彼の身体はぴくぴくと動こうとしていた。予想通りの状況に僕は頭を巡らせた。

 

 頭部を破壊してもダメか。まあ、方法はいくらでもある。取り敢えず、この巨漢は邪魔だなあ。一旦、ご退場願おう。

 

 僕は両手から黒杭を連続射出した。その全てが宙を駆ける。まさに電光石火。計六本の杭が巨漢の腹部に突き刺さった。

 

「喝」

 

 バトラが壁を突き破りながら、吹き飛ばされる。一瞥もくれることなく、僕はロウに向き直った。

 

「まずはあなたから消えてもらいましょうか」

 

 少年から感じる得体のしれない圧迫感にロウが後ずさる。だが、一人の忍がリオンを押しとどめた。

 

「いや、あの人の相手は私がしましょう」

「・・・スケアさん」

 

 暗に手を出さなくても十分だと視線を送る僕に彼はにっこり微笑み返す。

「行ってください。仲間を助けるんでしょう?」

 

 クナイを構えるスケアさんから滲み出る自信に僕はこの人なら大丈夫だと漠然と感じた。

 

「ありがとうございます」

 

 僕は駆け出した。

 

   *

 

 青空の下に輝く七夜城。伝統と歴史ある、金色の襖絵が爆炎で燃え尽きる。綺麗に敷き詰められた五百畳もの畳は、焼き千切れた触手の粘液によって見るも無残な姿であった。

 

「ここは、少し広い部屋ですね」

 

 赤髪の少年がきょろきょろとしながら、周囲を見渡す。天井や屏風には、松や竹、梅から桜まで、古風ではあるがどこか雅で色あでやかな絵が沢山描かれていた。特に松と雉の屏風絵なんか、ずっと昔に描かれた絵のはずなのにどこかトリックアート的で大胆かつ軽妙な筆遣いが絵師の技量を伺わせる。

 

 こんな時じゃなければ、ゆっくり見て回りたいくらいだ。むしろ、永遠に保存してコレクションにしたい。でも、一瞬で儚く燃やし尽くすのも有りかもしれない。

 

「調子に乗ってんじゃねえ!」

 

 完全に余裕の表情のリオンにバトラがいよいよぶち切れた。天井や床を完全に無視して縦横無尽に触手がうねる。巨木の様な太さにも拘わらず、鞭の様に俊敏な触手が僕を絡めとらんとす。

 

 ・・・ドントさんほどではないな。

 

 曲芸師の様に身軽な身のこなしで、その全てをすり抜けていく。触手の全てを軽快に躱し尽くしながら、印を組む。白煙を突き破って現れたのは巨大な白鯨。

 

「知ってました?クジラってイカを食べるんですよ」

 

 超弩級の巨体がバトラを触手ごと喰らいつくさんと、その咢を広げる。触手が白鯨を絡めとり縛り付ける、白鯨はそれらを食いちぎる。桁外れの攻防の余波が畳を吹き飛ばす。

 

 その光景を見ながら、リオンは狂気的な笑みを浮かべた。握りこぶしから人差し指と中指を伸ばす。

 

「喝」

 

 白鯨からスポットライトをまき散らすかのように光が拡散していく、その輝きが目も眩むほどになった途端、地獄の却火が全てを呑みこんだ。

 

 生物の生存すら厳しいのではという灼熱の中で、バトラがふらめく。

 

「・・・こ、この程度の攻撃で限界かよ」

 

 僕は無表情で答えた。

 

「まさか。でも、あまり爆遁ばっかりっていうのも芸が無いですからね。次は人形遊びでもしましょうか?」

 

 彼を囲んでいたのは百体の傀儡。それぞれ皆、赤髪の少年と瓜二つの姿であったが、瞳に生気は感じられない。それらが全て尾を伸ばした。

 

「なにする気だ」

「今に分かる」

 

 蠍の尾から響くのはカタカタカタという不気味な音。次の瞬間、尾の隙間から針が飛んだ。その様は雨というより、壁が落ちてきたと言った方が適切であった。いくら、面で飛んできたとしても、所詮は針。そう高を括ったバトラであったが、暫くして血反吐を吐くことになった。

 

「ぐお、なんだ、体が・・・・・・」

「致死毒のはずなんですが、やはり毒にも対応できるみたいですね」

 

 言いながら、僕は指を振る。それに連動して傀儡百機が一斉に尾に雷遁を纏わせる。

 

「殺れ」

 

 僕の合図に応じ傀儡達が触手の全てを切断する。それすら生えてくるが、直ぐに切り飛ばされた。

 

「くそお、俺をコケにしやがって」

 

 触手が上下左右から迫り、傀儡達を締め上げる。

 

「てめらをクラーケンの餌にしてやるよ!」

 

 狂気の笑みを浮かべた。すると、触手の吸盤が口を開いて百機全ての傀儡を呑みこんだのだ。だが、リオンは手持ちの傀儡を全て貪られても、なおその笑みを崩すことは無かった。

 

「そんなの餌にしたら腹を壊しますよ」

 

 バトラは驚愕の顔で振り返る。

 

「Ⅽ4」

 

 触手がさらさらと崩れ去った。それだけではない、バトラの身体も塵と帰してゆく。

 

「グゥゥゥゥゥオオオオオオオァァァ‼」

 

 触手の断面がブクブクと音を立てる。ナノサイズの爆弾が爆発する速度と再生の速度が拮抗しているのか、ぐちゅぐちゅと触手が捻じれのたうち回る。

 

「そろそろ終劇にしましょう」

 

 リオンの両手や尾から百本ものチャクラ糸が迸り、バトラを触手に巻き完全に動きを封じた。

 

「操演・爆龍の術」

 

 橙色の爆炎を身体にした龍が煌きながらチャクラ糸を伝って包み込む。

 

「喝!」

 

 城の天守閣すら巻き込み、爆竜が天へ昇り極光を放つ。それは、真昼の青空に太陽が二つ輝いているようであった。

 

 僕は大広間でボーっと待っていると、消し炭が空から降ってきた。しかし、あちこちの部位を欠損しつつもバトラはなおも原形を留め再生しようとしていた。 

 

「ここまでして、なお再生力の方が早いのか」 

「俺を・・・・・・倒せると、本気で思っているのか?てめえの、チャクラが・・・切れる方が先だ」

 

 チャクラ糸で縛り杭を突き刺す。

 

「また、爆遁か!無駄だって言ってんだろ」

 

 もう、燃え尽きた炭の様になっているバトラであったが減らず口を止めることはなかった。

 

「無駄じゃないさ、お前は十分弱った。もはや抵抗する力は残ってはいない」

「無駄に決まってるだろう。後数分もすれば、また完全回復して、今度こそ、殺す」

 

 確かに、こいつは不死身だ。未来永劫、彼に死が訪れる事は無いだろう。・・・クラーケンとやらが、こいつの中にいる限りは。僕は印を組んでいく。見たことない印に嫌な予感しかしないバトラ。

 

「忍法・解尾法印‼」

 

 バトラの腹部から現れたのは、イカの如き化け物のチャクラ体。彼は必死に抵抗するが、ずるずるとリオンに引きずり出されていく。

 

「グアアア!てめえ何をする気だ!」

「お前のクラーケンを引き抜く」

 

 事も無げに言う、僕に唾をまき散らすバトラ。

 

「馬鹿な、そんな事ただのガキに出来るはずがっ」

「言っただろう、人柱力狩りは専門分野だって」

「や、やめろおおおおおぅぅううううおお」

 

 クラーケンを引き抜き、主菜の巻物に叩き込み封印する。あれだけ不死身を誇ったバトラであったが、あっけなくこと切れた。

 

「しぶとい奴だった・・・」

 

 完全にチャクラが切れ膝をつく。

 

 雫は?探さなくちゃ。

 

「彼女は三の丸らしいよ」

 

 背後から聞こえたのは、スケアさんの声。

 

「スケアさん!ここにいるってことは」

「ああ、ロウは拘束させてもらったよ」

 

 振り返り彼を見ると、服のあちこちは切れて血がにじんでいたが、いたって平気な様子であった。

 

「凄いですね、どうやって、見えない攻撃を見切ったんです?」

「まあ、ちょちょっとね。それより、行かなくていいの?」

「そうですね、では」

 

 リオンはよろよろと立ち上がろうとするも、膝に力が入らず倒れる。しかし、リオンが倒れ伏すことは無かった。新雪のように白い肌が少年の身体を支えていたからだ。蒼髪が揺れる。

 

「その・・・・・・ありがとう」

 

 そっぽを向きながらも、感謝を述べる彼女を見てようやく一息つくことが出来た。

 

「雫。良かった無事で。・・・これ返すね」

 

 彼女に主菜の巻物を手渡す。彼女は若干、以前より巻物が重くなった気がしたが気のせいだと思った。その様子を見守りながら、スケアが口を開いた。

 

「ま、これで一件落着か。ということで、リオン君だったかな?一つお願いがあるんだけど」

「何ですか?」

「それはねえ―」

 

 スケアが何かを言う前に、突然主菜の巻物が目も開けられないほど発光し始めた。

 

「な、なによ。なんなのよっ」

 

 巻物が破裂し、何かが飛び出す。城に激震が走った。

 

「何が起きたのよ⁉」

 

 全く状況把握が出来ていない雫と違い、リオンとスケアは全てを察する。

 

「天井を見て下さい」

「・・・巻物の容量が足りなかったか」

 

 天井の巨大な穴から覗いていたのは、これまた巨大な吸盤だった。

 




やっぱり、暁なんだから人柱力狩りは外せないよね。開尾法印は暁の裏のリーダー・オビトが木の葉襲撃の為、クシナから九尾を引き抜くときに使った術です。

出来る限り、毎日更新を目標にしていたのですが、昨日は出来ずに申し訳ないです。

これからも、暁新伝をよろしくお願いします!
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