暁新伝《BORUTO編完結》   作:モリッチ

14 / 40
迦楼羅爆天

 雫は頬を膨らませて怒った。それを見ながら、彼女は怒った表情をするより、普通に無表情をしている方が怖いななんて場違いな事を思った。

 

「なんで私の巻物にあんなの入れるのよ‼」

「しょうがないじゃないか、封印するしかなかったんだ」

 

 雫は反省の様子が見られない僕の様子に顔を真っ赤にする。しかもお料理系巻物の中でも、お気に入りだった主菜の書に入れられたのだ。

 

「あんなの入るわけないじゃない」

「入ると思ったんだ。悪かったよ」

 彼女は怒りのあまり、左右のクロワッサンをわなわなさせる。

 

「そんなことせずに、全部吹き飛ばしちゃえば良かったじゃない‼」

 雫は若干目を潤ませながら、口を尖らせた。

 

「どこに雫がいるのか分からなかったんだから、そんな高火力の攻撃は打てないよ。それに、多分細胞が一欠けらでも残っていれば復活してきたかもしれないし」

 

 少女と少年のギャーギャーしたやり取りに、スケアは懐かしいものを感じながらも、鎮火作業に取り掛かった、こんなことをするのにも懐かしく感じたのだが。

 

「まあまあ、落ち着いて。リオン君、なんか策はある?」

「僕は万策尽きたって感じですけど、スケアさん何かあります?」

 

 正直、あんなでか物どうこう出来るものなのか?逃げちゃうのも有りな気がする。そもそも、巨漢の男みたいに再生能力があるならば詰みでは・・・。しかし、僕の考えとは別にスケアさんは何か手札を持っているらしかった。

 

「一つありますよ」

「何よ!出し惜しみしてないでさっさとしなさいよ」

 

 満を持して、彼が秘策の存在を明らかにした。しかし、満を持しての衝撃発言的な、まどろっこしいことが嫌いな雫は不敵に笑うスケアをど突く。

 

「それが、準備が整っていないみたいなんですよね」

 あは、あははと笑う彼であったが、策があるなら今すぐに下準備や次の手を打ちたい僕は、彼の笑みを切り捨てた。

 

「後、どれくらいで整います?」

「おそらく、もう少しかと」

 

 自分より年下からの冷たい扱いにグサッとくるスケアであったが、これも懐かしいと感じるのであった。

 

「じゃあ、取り敢えず整うまで生き残る感じですかね」

 城をも包み込む巨大なダイオウイカのような生物の触手がぶるぶる震えだした。

 

「来ますよ!」

 

 全員回避行動に移ろうとする。僕を除いて。単純に足腰に力が入らないのだ。

 

「雫。抱えて」

「こんな時に冗談言わないでよ‼」

「いや、チャクラが切れて立てない」

 

 冗談ではないのだ。もしかしたら、自前のではなく他人から移植した経絡系で戦う僕は、使えるチャクラ量が少ないのかもしれない。真面目にしんどそうな僕の様子に渋々、おんぶする雫。

 

「ああ、もうしょうがないわね」

「私が壁に穴を開けます。そこから脱出しましょう」

「壁って、外に行くまで何部屋あると思っているのよ。とても、一枚一枚壊してたら間に合わないわ」

 

 確かに、ここは恐らく城の中心部に近い。壁を壊しながら外に出るより、あのイカが触手を振り下ろす方が・・・

 

 その時、スケアの右手がバチバチと青く放電する。制御しきれないほどの膨大なチャクラが一点集中。その輝きが限界まで高まった時、彼は叫んだ。

 

「雷切!!」

 

 性質変化だけでなく、身体強化までしていたのか神がかり的な速度で壁を貫いていった。

 

「雫!」

「ええ」 

 

 僕をおぶりながら、雫が駆け抜ける。彼女が外に飛び出た直後、七夜城は真っ二つになった。城だけではない。その下の岩盤まで触手は叩き割っていた。

 

「あんなのを喰らったらひとたまりもないですね」

 スケアさんが冷静に分析をする。雫はパニックになっているのかわたわたしていた。

 

「わ、わ、わ」

「雫!落ち着いて」

 

 クラーケンの咆哮が響く。ただ叫んでいるだけなのに衝撃波が発生する。巨大な水魔の口腔付近の木々はほこりの様に舞い上がった。

 

「これは臭いが厳しいですね」

 

 スケアさんがイケメンな顔をゆがめて言った。僕も彼に同意した。

 

「見ました?歯がびっしり」

「どうでもいいわよ逃げましょうよ」

 

 一理ある。でも、城から出て初めて気づいたけど遠方に草隠れが見える。もし、僕たちが逃げたら・・・

 

「奴はきっとあそこに向かうと思う」

「それに、こんなのを放置なんて、できないですからね」

 

 僕とスケアさんに逃げる気が無いのを見て、彼女はため息を吐いた。人間たちは色々と考えていても、巨大イカには関係ない。森羅万象を砕く十本の触手が襲いかかる。直撃する前から、触手に押された空気の圧で動きが封じられる。

 

 だが、この程度でやられるような忍はここにはいない。上に避ければ風の勢いを利用して・・・何で雫は下に避けているんだ?

 

「雫そっちじゃない」

「どっちよ!」

「上だよ、上」

 

 怪物の手は慌てふためく雫を無慈悲に叩き潰さんとす。

 

「紫電‼」

 

 紫の稲妻が落雷す。触手二本まとめて焼き切った。その断面は熱でドロドロに溶け落ちる。

 

「凄い、性質変化と形態変化を同時にここまで完璧に!」

 

 危うくペチャンコにされるところだったのに、全く気にしない危機感の無さに思わずジト目になるスケア。

 

「君たちチームワークが足りてないよ!」

「うるさいわね」

 

 その時クラーケンの口が膨らんだ。

 

「来ますよ!」

 

 悪魔の口から膨大な質量の水が、渦を巻き吐き出された。爆流は轟音を立てながら全てを抉り取り、吹き飛ばしながら突き進む。

 

「二人とも私の後ろに下がって」

 スケアは指をかみ切った。

 

「口寄せ、多重羅生門!!」

 万物を防ぐ鉄壁の扉が立ち並んだ。扉に描かれる鬼の形相は何人も通さないという決死の決意。

 

 一筋の爆流が羅生門にぶつかり真っ二つに分かれる。水流は二つに分かたれたはずなのに何キロにもわたって森林を侵食し、地図を書き変えた。

 

「グッ、これ以上は」

 スケアが苦悶の声を漏らす。羅生門に広がっていく罅が刻一刻とその範囲を広げる。

 

「もうダメ‼」

 

 羅城門が吹き飛び、爆音と共に水が押し寄せリオン達を飲み込まんとす。が、激流が三人に到達することは無かった。

 

「よくやったな」

 漆黒の土壁を背にして般若の面の忍びが笑った。

 

「ドントさん‼」

「俺もいるぜ」

 

 つい数日前に見たはずなのに、彼のアフロを久しぶりに見た気がする。ニヒルに笑う彼を見て、無事に切り抜けることが出来て良かったと安心した。

 

「バオさんまで!」

「あなた生きてたの?」

「ひ、ひでえな。これでも、チャクラを振り絞って連れてきたんだぜ」

 

 同胞の無事を喜んでいる中、ドントさんが単刀直入に切り出した。

 

「で、どういう状況なんだこれは」

「七草の一人に封印されていたクラーケンが暴れだしました。確認された能力は、圧倒的な再生力と広範囲の水遁攻撃です。そこにいるスケアさんの策の、時間稼ぎをしている所です」

 

 改めて考えると、どう倒すか。彼の策が外れれば一巻の終わりだ。ドントさんは対処法を幾つか考えたのか、情報共有を求めた。

 

「なるほど、核のような弱点は?」 

「確信は無いですけど、恐らく有りません。人柱力も再生能力を持っていましたが、それらしきものが無かったので」

 

 一見、討伐不可能に思える状況でもあくまで冷静であった。

 

「では、時間稼ぎをしながら、核の存在の可能性も一応念頭に置きながらじわじわ削っていこう。流石に永遠に再生し続けるはずはあるまい」

「了解です。頼んだよ、雫」

 

「なんでよ!」

「チャクラ切れならこいつがあるぞ」

 

 ドントは懐から泥団子の様なそれを取り出す。

「・・・食べたくないです」

 

 雫は無言で兵糧丸を詰め込んだ。今すぐに、舌を浄化したい。なんで彼の兵糧丸はこう、後味がべとべとなんだろうか。くどいとかそういうレベルじゃない。舌にタコが出来る味だ。

 

「・・・雫も食べなよ」

「そんなの人間の食べ物じゃないわ」

 

 リオンは無言で兵糧丸を詰め込んだ。彼女の口が膨れ上がる。水魔の口も膨れ上がる。スケアが檄を飛ばす。僕は手から黒杭を伸ばして地に突き刺した。

 

「第二弾来ますよ!」

「みなさん、乗ってください」

 

 リオンの足元の地面が隼へと変わった。全員乗るや否や隼は急上昇する。間一髪であった。荒ぶる奔流が、眼下の土壁を丸ごと削り流す。取り敢えず、イカの上空で隼を旋回させる。

 

「触手の数は十本。一度に何本やれる?俺は二本だ」

 と言うドントさん。僕もそれに続いた。

 

「このサイズになると、今のチャクラじゃ二本ですかね」

「俺も二本分だ」

「私は二本ですね」

 バオとスケアが言う。自然と全員の視線が雫に注がれた。暫くの沈黙ののちおもむろに彼女は口を開いた。

 

「十分の一本かしら」

「無理だな」

 

 ドントが即断する。みるみる頬を染める雫。

「だって、昨日チャクラを使ってから、まだ一日経ってないのよ。回復しきるわけないじゃない!」

 

 どうしたものか・・・バラバラだといけないなら、

「僕が尾を一か所に纏めたらいけます?」

「それなら、いけるだろう」

 他のみんなも賛成の様だ。なら、やるしかない。 

 

「では僕が纏め次第、それぞれの最高火力を叩きこんでください。一瞬しか動きを封じれないのでタイミングが命ですよ」

 

 リオンは上空に身を躍らせる。自由落下で助走をつけ、爆遁で一気に加速。触手の一本に杭を刺す。暴れだす触手から飛びのき、杭と指から青いチャクラ糸を走らせた。空を滑るように躱してゆくリオンを捉えるべく、幾本もの触手がうねり狂う。しかし、立体的に動き回る僕に小回りの利かない触手が追い付けるはずも無かった。

 

「こんなものか」

 

 いつの間にか創られた、青のチャクラ糸の軌跡が美しい。

 

「韋駄天!」

 

 クラーケンの頭上を一気に駆け抜け、地上に跳躍する。何十メートルも地面を削らないと、止まれないほどの勢いを利用して触手を縛り付けた。

 

「今です‼」

 

 隼からドント達が飛び降りる。まず印を組み終えたのはバオ。

 

「火遁・火砕流」

 圧倒的な範囲の炎が束になった十本の触手を包み込む。その様は大規模な山火事といっても差し支えない。

 

「水遁・爆水水球」

 兵糧丸を詰め込んだのか、雫によってそこそこ大きな水球が宙に浮かぶ。

 

「紫電!」

 水球を紫色の閃光が駆け抜けた。水球は電気分解され水素となる。

 

「爆遁・爆龍の術!」

 爆竜が水素を喰らいその威光を示す。連鎖爆発に連鎖爆発。触手は無残に引き千切られ、或いは千切れかかった尾を煉獄の爆炎が滅却する。

 

「土遁・加重天地返し!」

 あたりの森ごと大地がひっくり返され、膨大な質量の地盤に触手が押しつぶされた。あたり一面がクラーケンの体液に沈み、異臭を放つ。

 

「ギャアアアァァァァァ」

 

 空をつんざく悲鳴。ドントは確かな手ごたえを感じていた。

 

「相当堪えたみたいだな」

「いえ、今のは雫の叫び声です」

 

 人より繊細な嗅覚の持ち主なのか鼻を押さえのたうつ雫。微妙な空気もつかの間に、地面からもはや壮大とも言える触手が大地を貫き、天を衝いた。

 

「だめだ、まるで効いていない」

「ここまでの再生力とは・・・・・・」

 

 触手の一本から高水圧の水が射出された。水のレーザーが隼を切り裂き、射線上の雲すら切り飛ばす。

 

「僕の隼が・・・・・・」

「綺麗に爆発したわね」

 

 十本の触手が一斉にリオン達を向く。

 

「こりゃあ、いよいよ、拙くねえか?」

 

 触手の先端が次々膨らんでいく。

「スケアさんまだですか!」

「準備が整っていないみたいで」

 

 事ここに至ってなお呑気なスケアの様子に、流石の僕も引かざるを得なかった。どんな修羅場を潜り抜けたのかは知らないけど、半端ないな。雫の焦る声で僕まで焦ってきた。

 

「どうするのよ、このままだと全員死んじゃうわよ」

「死んじゃわないじゃん」

「カンクロウ‼」

 

 急に聞こえた、聞きなれぬ声に振り向くと歌舞伎役者のような風貌の忍がそこにはいた。

 

「遅くなってすまないじゃん」

 

 触手が一斉に水刃を解き放った。ドントが超高速で印を組む。

 

「土遁・金剛土流壁!」

 土矛を纏った鉄壁の盾がクラーケンの死の連撃を嫌な音を立てながら防いでいく。その隙に、カンクロウがスケアに巻物を手渡した。

 

「口寄せの術‼」

 煙と共に現れたのは巨大な砲台だった。雫の目はまさに真ん丸。

 

「何これ、大きすぎでしょ‼」

「これは雲隠れが戦争用に密かに用意した、チャクラ砲じゃん」

「借りられたんですね」

 

 スケアがホッとした表情になった。

 

「かなり渋々だったが、隠し持っていたことを突いたら許可したじゃん」

「それで、そいつなら奴を葬れるのかよ」

 

 バオが胡乱な目で聞く。

 

「ええ、こいつの半分の出力でも十分奴を消し飛ばせます。ま、あいつの未来は死ですね」

「そろそろ、土壁も限界だ」

 

 崩壊していく土流壁とは、反比例にチャクラ砲の砲身は青く輝き始める。それは確かに可能性を感じさせるものであった。

 

「みなさん今から発射しますので、衝撃から身を守って下さい」

 

 クラーケンも前方から感じられるチャクラに呼応したのか、口を膨らませた。

「悪いが一瞬で終わらせてもらう。チャクラ砲発射‼」

 

 スケアの号令に合わせてチャクラ砲から全力なら月をも破壊する一撃が放たれる。チャクラの光線がクラーケンを飲み込む刹那、悪魔の口が開いた。

 

 七夜城は衝撃で消し飛び、閃光が視覚を奪い、轟音が聴覚を奪った。

 

 

 

 ガラガラと土のドームが崩れる。

 

「大丈夫か、リオン」

「ドントさん‼」

 

 僕はドントさんのもとへ駆け寄った。予想を遥かに上回る爆発規模に彼が全員入れるシェルターを作ってくれたのだ。良かった、全員満身創痍だけど命には別条ない。

 

「俺のことは良い・・・・・・状況は?」

 

 リオンはそこでようやくあたりを見渡した。

 

 かつて裏の世界の中枢だった七夜城は見るも無残な姿となり、巨大なクレーターの一部となっていた。クレーターの中心部にはクラーケンの体液と一部と思わしき物があるのみであった。生ける者の住む場所ではなくなっていたが、それでも全員無事な様子だった。

 

「ドントさんのおかげで、全員巻き込まれて死ぬことにはならなかったみたいです」

「やったのか」

 

 バオが座り込みながら確認する。

 

「分かんないじゃん。何も見えなくなったじゃん」

「やったと信じたいですが、チャクラ砲が命中する寸前、見間違いでなければやつの口から出たのは・・・・・・」

 

 雫がげんなりした顔でスケアの言葉を遮った。

 

「あそこでクラーケンが水流攻撃をしたとしても、流石にあんな途轍もない攻撃とは張り合えないでしょ」

 

 確かにチャクラ砲の威力の前には、いくらクラーケンの水流でも無理がある。でも、あの瞬間クラーケンの口から出たのは水なんかじゃなくて、もっと圧倒的なチャクラを感じさせる紫色の球体だった気がする。

 

 スケアが深刻な表情で言った。

 

「お嬢さん、あいつが出したのは水なんかじゃない。あれは・・・尾獣玉だ」

 クレーターの中心部が盛り上がり、幾本もの触手が現れる。

 

「おいおい、嘘だろ・・・・・・」

 クラーケンが姿を現した。ぬめりと光る触手をうねらせ、その咆哮を轟かせる。

 

「なんてチャクラ量じゃん」

「あれが本当に尾獣なのか?」

 

 僕の疑念にスケアさんが答えた。

 

「有り得ない、尾獣の中にあんな奴は居なかったし、何より知性が感じられた。こいつにはそんなものは感じられない、まるで巨大な自然災害だ」

 クラーケンがゆっくりと口を開いてゆく。

 

「まさか、嘘でしょ」

 口の中央に赤と青のチャクラが集まりだす。いや、集まるというより凝縮、収縮、圧縮と言った方が正しい。自然の理に反した力が再び振るわれようとしていた。

 

「リオン。バオと雫を連れて逃げろ」

「おい、ドントてめえまさか」

 

 バオは何かを察したのか、いつもの軽薄な様子は鳴りを潜める。雫も止めに入る。

 

「勝手なことを言わないでよ‼」

「だが、もう全てやり尽くした。残された道は一人が囮になるか全員死ぬかだ」

 

 場を沈黙が包む。

 

「僕が行きます」

「リオン。意味が分かって言っているのか」

 

 分かっている。囮になる人は確実に死ぬ。でも、誰かがやらなくちゃいけない。

 

「お前は何か勘違いしているようだが、俺はお前を捨て駒の様に扱う気は微塵もない。お前にはまだ未来があるんだ。そう自分を粗末に―」

「これは僕が傀儡人形だからだとか、みんなの護衛が任務だからとかじゃないんです。絶対に仲間を見捨てないって決めた。・・・それにドントさんは僕の家族ですから」

 

 ドントさんが真剣な眼差しで歩み寄る。

 

「リオン・・・・・・」

 

 ドントは強烈な一撃をリオンの腹に叩き込んだ。突然の凶行に誰もが目を見張る。倒れ伏す、リオン。

 

「・・・済まない。おい、バオ後のことは託したぞ」

 

 ドントはクラーケンへ向けて歩き出す。しかし、誰かが彼の足を止めた。

 

「ドントさん。あなたは三つ勘違いをしています。一つ目、僕にあと一つ策があります。二つ目は、託す相手はバオさんじゃない。僕に託せ。最後に相手のことを理解しているのはあなただけじゃありません」

 

 そこには、気絶させたはずのリオンが立っていた。その青い瞳には覚悟以外何も映ってはいない。ドントが全てを察する。

 

「・・・お前、俺がこうすると分かって腹に土矛を仕込んでいたな」

「ドントさんは容赦ないですからね。傀儡の僕でも意識を持っていかれる可能性がありましたから」

 

 二人だけで通じる何かがあるのか暫く、ただ黙ってお互いを見つめあっていたが、雫が割って入った。

「本当に策があるのね?」

「ええ、チャクラ砲の残存チャクラと皆さんのチャクラを使った爆遁で奴を消し飛ばします」

 

 ドントが重いため息を一つ吐いてから、再確認した。

 

「出来るんだな?」

「やるしかないでしょう」

 

 蠍の尾からチャクラ糸をチャクラ砲と忍達全員に伸ばす。スケアが警告した。

 

「クラーケンの尾獣玉もそろそろ完成しますよ」

「韋駄天!!」

 

 起爆粘土を手に取り、一気にクラーケンの目の前に躍り出る。

 

 通常の爆遁じゃ殺しきれない、やるなら一片の欠片も残さず消し飛ばさなきゃ。なら、全チャクラを収束しきる‼

 

 起爆粘土がチャクラの限界量を超え高熱を帯びてはち切れんばかりに膨れ上がる。余りの熱量に空気がリオンの周りから逃げ出してゆく。

 

 だめだ、形態を制御しきれない。それがどうした。無理やりにでも強制する。

 

「土矛‼」

 

 起爆粘土に土矛を纏わせ強引に球体を保つ。もう臨界点はとうに超えている。だが、チャクラの供給を緩めることは一切しなかった。

 

「これならっ!」

 

 クラーケンが全身を震わせ、尾獣玉を一回り巨大化させた。本来は海中の一生物だった存在にそれは重すぎるのか、十本の触手では支えきれずに地面ごと潰れていく。しかし、体が押しつぶされているにも拘わらず、尾獣玉はもう一段階大きさを変化した。

 

 くそおぉぉ!まだ巨大させるのか。右手を左手で押さえつけながらさらに、チャクラを過密化させる。あまりのチャクラ密度に純黒の球体が震え始めた。

 

 もっと、もっと、チャクラを・・・・・・

 

 突如、青いチャクラ糸が消えかけた。

 

「なっ」

 

 リオンは振り返るとチャクラ砲には罅が入り、雫達が今にも倒れそうになっていた。ドントさん達からこれ以上チャクラはもらえないな。

 

 僕はチャクラ糸を切った。

 

 ここまでなのか・・・・・・

 

「リオーン‼」

 雫の声が聞こえた。折れそうになる心を叩き直す。スケアさんから貰った鈴が響いた。くそ、見捨てないって決めたじゃないか‼どこか、どこからかチャクラを。

 

 その時、昔ドントさんの言ったことを思い出した。

 

『恐らくサソリはお前を傀儡にする際、風遁・爆遁の経絡系を移植した。結果、お前は一つの体に三人の経絡系を持つことになった』

 

 そうか、チャクラならここにあるじゃないか。自分の全チャクラを注ぎ込んでいく。生存に必要なチャクラまで使い果たそうとしたからか、体が透明になっていき消滅してゆく様な感覚を覚えた。

 

 土矛の純黒の殻すらすり抜けて光が漏れ始める。

 

 意識が消えていく。

 

 チャクラを使い果たし、命の灯が消えると思われたとき、

 

『リオン』

 

 ドントさん。雫。バオさん。スケアさん。

 

 リオンの体が虹色に輝き始める。

 

 なんだ?チャクラが集まってくる。どこから?

 

 リオンの意識が覚醒する。

 

「うぉぉぉぉぉ!!!」

 

 クラーケンの口から尾獣玉が発射される。掌の球体が虹色に煌く。

迦楼羅爆天(カルラバクテン)

 人知を超越した力がぶつかり合う。

 

 極光が全てを包み、爆炎は大気圏を超えその輝きは世界を照らした。

 




これにて七草編は終了です。読了ありがとうございます!

チャクラ砲についてですが、映画「NARUTO THE LAST」に出てきた奴です。

次に、迦楼羅爆天ですが、理論としてはデイダラが透明に消えてなくなる、自爆技COに謎のチャクラを利用したものです。

謎のチャクラについてはネタバレになるので控えますが、伏線はもう張ってあります。正体に気づけますかな?色はあまり気にしないでください。カッコ良さを重視しただけです。敢えて言うなら、チャクラが流れてきたのと虹色のチャクラは理由が別のものです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。