土の暗部は岩隠れの郊外にあり、自然の要塞となっている。もっとも、これは裏の暗部の場所だが。その、内部は坑道と監獄が混ざり合ったような構造になっており、その最奥にあるのは厳粛な空気に包まれた古寺。その山門に立ち並ぶ阿吽像の前で、ドントはひざまずいていた。
「リオンは連れていかれたか」
「申し訳ありません」
謝罪にしては誠意のこもっていないように見えたが、それはお互いに今回の顛末は織り込み済みであったからだ。実際、シンゲンは微塵も動揺しなかった。
「よい。想定通りだ」
「準備が終わり次第救出に行こうと思います」
「それは他の者に任せよ。それと、木ノ葉に向かうのは一週間後でよい」
「・・・・・・どういうことでしょうか」
疑念と不満そして、忠誠心と信頼感。それらが渦巻いたドントであったが、それらを表情に一切出す事はしなかった。ただ、主の真意を問うのみ。
「お前には木ノ葉には行ってもらうが別の任務についてもらう」
「別の任務とは」
全身を黒いローブで覆った老人はその表情こそ見せない物の、僅かに嗤った。
「うちはマダラという者を知っておるか」
男は沈黙せざるを得なかった。“うちはマダラ”今でもその名は忌み嫌われ畏怖される。伝説は伝説だからこそ敬われた。一度現実の存在になれば、人々は恐怖しか感じなくなる。だが、主の質問に黙っているわけにもいかず、知っている情報を述べた。
「あのうちは一族の長であり、かつて九尾を操り初代火影・千手柱間と闘った伝説の忍。復活した後はその身に十尾を宿し、最強の瞳術・輪廻眼を用いて全忍びを相手に世界を惑わした最強の男」
「その男が最後どうなったか知っておるか」
ドントは話の先が見えず眉を顰める。
「いえ」
「その男はカグヤと呼ばれる存在に体を乗っ取られた後、十尾を奪われ死亡した」
カグヤが誰かは知らないが、あのマダラを乗っ取れる存在などもはや神しかいないように思われた。なんにせようちはマダラと、自分の任務にどういう関係があるのか彼には見当もつかない。
「それで、私はどうすれば?」
「うちはマダラの死体を回収しろ」
ドントは衝撃のあまり言葉が出なかった。口の中がカラカラに渇いた気さえする。しかし、シンゲンは大胆不敵にも淡々と任務内容を語りだした。
「表向きは厳重に処分した事になっているが、実際は木ノ葉の極秘の研究施設に安置されている。回収するのは奴の眼だけでよい」
「まさか彼の輪廻眼を手に入れられるおつもりですか?」
声が震えぬように細心の注意を払いながら、主の意向を伺う。
「そんな紛い物はいらん。あれは自らの力で覚醒してこそ価値のあるものだ。他人のものでは六道の力は扱えても、輪廻眼の固有瞳術は使えぬ・・・わしが欲するのは奴の万華鏡写輪眼の方だ」
「その様な物を手に入れて、どうされるおつもりですか」
もはや完全に理解不能の主の真意に、ドントは耐えかねて彼の目的を問い質した。
「もちろん十四年前、世界に絶望したそなたに約束した秩序ある理想の世界の実現よ」
重い沈黙が立ち込める。そうなのだ。自分は妻と生まれる事すら出来なかった息子か娘を失ったときから、覚悟は決めていたのだ。もう後戻りはできない。できはしない。自分に出来るのは、悲願成就の為に少しでも浮かぶ懸念事項を一つ一つ確かめ、潰していくことのみだ。
「先の大戦でマダラは土壇場になっても、万華鏡の固有瞳術が使われたという情報はありませんでした。彼のそれは有用性に乏しい物なのでは?」
「確かに復活後のマダラには無用の長物だろう。だが、わしが使えばその真価は発揮される」
シンゲン様はマダラの万華鏡写輪眼の瞳術すら知り得るというのか、いったい彼は何者なのだ。いや、今優先すべきは彼の正体などではなく任務達成のための障害を除くことだ。
「しかし、マダラの瞳をあの木ノ葉から奪うなど相当のリスクがあると思います。確実に現存する最強の忍・七代目火影が出てきますが。私でもありとあらゆる手段を取って、相打ちに持ち込めればそれでも奇跡です。火影だけではない、その部下たちもいるとなれば神の奇跡でも起きない限り―」
「奇跡は起きる。この日の為に神を拵えた」
神を拵えた?神とは何を指しているんだ。戸惑いが顔に出てしまっているドントを前に、シンゲンは邪悪に嗤うのみであった。
「は?」
「忌々しい火影。奴はその神にかかり切りになろうて、上手くいけば死んでくれるじゃろう。だが、奴らの到着は一週間後となる。じゃから、暫しの間待つのだ」
火影を殺しうる存在。そんなものがもし木ノ葉を襲うのなら、確かにマダラの瞳を奪うのも容易だろう。
「それならば、大丈夫ですが・・・本当に上手くいくのですか?今までの情報にどれか一つでも誤りがあればこちらが潰されます」
「安心せい。わしの情報と七草の情報だ」
主はそう言っているが、これほどの情報。恐らく、七草は補完だ。一体どうやって主は自前でこの情報を手に入れたんだ。・・・どうでもいいことか。俺はただ任務をこなすのみ。
「かしこまりました」
「奴の瞳が手に入った後は、我が大望の成就も目前だ」
*
受付所のロビーで雫はうろうろしていた。まさに、妻の出産を待つ夫の如し。
「あ~もう。なにシンゲン様とドントは話し込んでいるのよ。こうしている間にもリオンは拷問されているのかもしれないのよ」
「そんなに心配するなよ、坊の事だもう脱走してるかもしれないぜ」
バオは顔に雑誌を被せソファーで寝ていた。足で蜜柑を取って、口に持っていく。
「もう、何であんたはそう呑気なのよ」
その瞬間バンっとドアが開いた。ぼさぼさに爆発した白髪に防眼ゴーグルを装着した、科学忍具の専門家ゲンナイであった。
「リオン君が攫われたとは本当ですか⁉」
「お~ゲンナイ久しぶりだな。お前の忍酒製造機は本当に優秀だぜ」
バオの発言にこめかみがピクつく雫。彼女は暗部が収集した術も含め、全てを管理している身。つまり、貴重な予算を食いつぶすゲンナイは憎悪の対象なのだ。
「あんたまた変なもの作ってたの?予算の管理をするこっちの身になりなさいよ!で、ガラクタ製造機が何の用よ」
「リオン君が攫われたと知り居ても立っても居られず来ました。もし救出に行かれるなら私もお供させて頂きたい」
少女はチャンスだと思った。普段何を言っても反省しない穀潰しに灸をすえるチャンス。冷たい表情で言い放つ。
「あんたみたいな雑魚は足手まといよ」
「お前が言うな」
どこぞの悪役令嬢の様な冷徹な顔はバオによって脆くも崩された。
「うるさいわね。今回は反省しているのよ、今度から修行するわ」
「・・・確かに、私は足手まといかもしれません。ただ私は届けなければなりません」
バオが雑誌をどかしゲンナイを見る。
「何をだ?」
「私とリオン君の共同制作にして最高傑作を‼」
彼が取り出したのは大きな巻物であった。
「そんなもの、私が届けてあげるわよ」
巻物を受け取ろうとした少女から、ヒシとそれを庇うゲンナイ。彼はゴーグルを輝かせながら説得を試みた。
「いえ、ギリギリまで調整が必要なものですので。それに、こう見えて電子錠を開けたり監視カメラをハックするのは得意なんですよ。今牢獄で苦しんでいるであろうリオン君を助けに行きましょう‼」
「そこまで言うのなら、しょうがないわね。一緒に助けに行きましょう」
勝手に燃え上がっている、二人を横目で見ながらバオはぼやかずにはいられなかった。
「お前らが来ると成功率が下がりそうなんだが」
*
その頃、うずまき家は食事時。リオンは暖かいしゃぶしゃぶをつついていた。秋も始まった今の時期、外は少し肌寒くなっていたが、ここはとても暖かい所だと思っていた。
「美味しいですね」
「なぁ上手いだろ。かあちゃんの料理は」
ボルトが自分は皿を並べるくらいしかしていないのに、自慢げに話す。しかし、そんなことを気にする者はここには居らず、僕は舌鼓を打つだけであった。
「あちっ」
「こら、ヒマワリちゃんとふうふうして食べなさい」
ベロを触るヒマワリちゃんにヒナタさんがお茶を渡す。ボルトが快活な声で聴いてきた。
「リオンはどこから来たんだ?」
「土の国」
「どんなところなの」
ヒマワリちゃんが興味津々の顔で聞いてくる。
「んー。あたり一面、火影岩の何倍もあるような岩山に囲まれていて、所々にある緑の苔がきらきらしててね。巨大な水しぶきを上げる滝が轟々と流れてて、とても綺麗な所かな」
「へぇ~。行ってみてえ。木の葉はなんもねえからなー」
「そうかな、大通りを歩いてるだけでも、珍しいものであふれていた気がするけど」
ボルトは退屈そうな顔をして、宙を見た。
「まあ、土から来たならそうかもだけどよ、何年もここに住んでりゃ火影岩だって見飽きてくるよ」
「なるほどね。お父さんとはいつも何をしているの?」
彼はお父さんのことがあまり好きではないのか、むっとした表情で愚痴を漏らす。よっぽど気に入らないのか、顔だけじゃなくて全身で不満を表していた。
「あのくそ親父は火影の準備だとかで滅多に帰って来ねえよ。そんなことより早く食い終わって忍バウトしようぜ」
退屈そうな顔から一転、急に生き生きした表情でまくしたてる。雫と一緒でころころ表情の変わる子だな。というか、忍バウトってなんだ?
「忍びバウト?」
「ああ、すげー面白えカードゲームなんだぜ」
そう言って、ボルトはご飯をかきこむ。
「こらボルトもう少しお行儀よく食べなさい」
「はーい」
こうして、リオンのうずまき家訪問初日は過ぎていった。
*
五大国最強と呼ばれる火の国。しかし、実際は木ノ葉隠れの里の権勢に強く依存している。そのため、優秀な忍は木ノ葉へと集中していた。その結果、周辺地域では優秀な忍がおらず悲しい惨劇が起きていた。
「汝、ジャシン様を信ずるか」
「あなた・・・・・・」
血だらけの村長は妻を背に庇う。この村では突如現れた赤いローブの集団による虐殺が行われていた。
「クソッ、誰がそんなもの信じるか」
勇猛果敢な村長が必死の抵抗を見せていた。赤服の集団から、黒衣を羽織り首元に五芒星のネックレスをした黒色の髪を持つ男が現れる。
「では、異端者には天罰を」
「この村は俺が守る!」
村長は男に向かって全力で走った。
「賢い人は、獣の数字にどのような意味があるかを考えるがよい。数字は人間を指している。そして、数字は―」
男の詠唱と同時に黒本が宙に浮き開かれる。胸元から白銀のナイフを取り出し、自らの手のひらを切り裂く。血が溢れ黒本を汚した。
「うぉぉぉぉぉ」
村長は拳を振りかぶる。決死の特攻。彼の渾身の一撃が届く寸前、黒髪の男が囁いた。
「六六六(みろく)」
村長の額に六六六が浮かび上がり、白煙に包まれる。煙から現れたのは、漆黒の狼だった。見上げるほど巨大な狼はその額に六六六の刻印がなされていた。妻は夫だった獣に恐る恐る声をかける。
「あなた?」
「汝、隣人を殺戮せよ」
黒狼が牙を剥く。
「きゃああああああ」
この日一つの村が消失した。
*
雨が降っていた。
小さな洞穴に赤髪の親子が隠れている。
「このままずっと、雨なのかなぁ」
まだあどけない少年の声がか細く響く。降り続ける雨を見ながら、母親は息子の頭を撫でた。
「ここも見つかってしまったみたいね」
「おかあさん」
ちいさな男の子が不安げに母親を見つめる。
「大丈夫よ。お母さんちょっと様子を見に行って来るから、あなたは先に行って待ってて」
「嫌だよ、僕も一緒に行く。ずっと一緒がいい」
母親の裾を掴んで離さない少年に、母親は厳しい口調で言い聞かせた。
「駄目よ!この道をまっすぐ、ひたすらまっすぐに行って海を越えれば、木ノ葉っていう里があるの。そこまで行けばその赤髪があなたをきっと助けてくれるわ」
「嫌だ‼独りぼっちなんてこわいよ。そう言っておじさんも、おばさんも、父さんだっていなくなっちゃたじゃん」
母親は少年を抱きしめる。
「あなたは三つ勘違いをしているわ。一つは止まない雨は無いのよ。二つ目はあなたは独りぼっちなんかじゃない。いつかあなたのことを心から思ってくれる家族ができるわ。最後に、たとえ離れ離れでも母さんはいつも一緒よ。もちろん、おじさんも、おばさんも、お父さんもね」
母親は男の子を離し、顔の涙をぬぐう。
「行きなさい」
優しい笑顔でそっと肩を押した。
「・・・・・・うん」
男の子は雨の降る外へ歩き出す。
「最後にこれだけは守って欲しい約束があるの」
男の子が振り返ると、母親が真剣な表情をしていた。
「あなたの持っている特別な力。これだけは絶対に秘密にしておくのよ。どんな人にも」
「おい、おい、リオン、リオン起きるってばさ」
「う~ん」
目を開けると呆れた表情のボルトが立っていた。母親の教育の賜物なのか、部屋はしっかり片付けられており、壁にはポスターが貼ってある・・・そうか、僕は木ノ葉に連れて来られていたんだった。
「・・・おはよう、ボルト」
「おう、おはようだってばさ。お前寝相は良いのに、寝起きは悪いのな」
なんか、大切な何かを見た気がするんだけど思い出せない。
「おい、リオンあくびもしてないのに何で涙なんか流してんだよ」
「えっ、本当」
あわてて、ごしごしと目を擦る。僕の意識が覚醒するのを見計らって、ボルトが威勢よく話し始めた。
「なあなあ、今日は俺の友達を紹介してやるってばさ」
「いいの?ありがとう。昨日の忍びバウトといい、ボルトにはお世話になりっぱなしだね」
ボルトは父親そっくりの顔でニカッと笑った。
「良いんだってばさ、それよりシカダイ、あっ俺の友達の事なんだけどさ、そいつらに会ったら昨日のあれやってくれよ」
言いながら、ボルトは決め顔で指をめちゃくちゃにふる。多分、チャクラ糸を操っているつもりなんだろう。
「はは、ちょっとボルトそんな指の動かし方だと糸が絡まっちゃうよ」
思わず笑ってしまった僕にボルトがむくれていると、トントンとドアを叩く音がした。
「お兄ちゃん、リオンお兄ちゃんご飯だよー」
「おう。行こうぜ」
「うん」
*
それにしても、凄い発展具合だな。左を見ても右を見ても商店ばっかりだ。
『雷門カンパニー主導の木の葉―湯の国間の路線がついに開通しました。一週間後の夜、雷門カンパニーのオフィスビルでその記念式典が開かれます』
うわ、何だあの巨大な大型ビジョン。映っているビルも巨大だしデザインも随分前衛的だな。
「ここが、俺おすすめのハンバーガーショップだ」
ジャンクフードの匂いがする。確かに、そろそろ昼時だし昼食には丁度いい。
「お~シカダイ」
声の先に眼を向けると、窓際のテーブル席に薄い黄色の髪に緑色の目の少年と、赤茶色の髪でぽっちゃり系の女の子がいた。あともう一人、黒髪でパイナップルみたいな髪型の子もいる。
パイナップルジュニアがボルトに声をかけた。
「ボルトか」
「ちょっと、ボルト。後ろの美少年は誰よ。ちょーあたし好みなんですけど」
ボルトは相変わらずだなという眼差しで、ぽっちゃり系の女子を見ながら紹介を始める。
「こいつはリオン。土の国から来た奴で今うちに泊まっているんだ。で、この黒髪がシカダイ、こっちがいのじん、それでこいつが」
「チョウチョウよ、よろしくね」
チョウチョウはポテチを食べながらウインクした。ポテチって初めてみるおかしだな。というか、カルビ味ってどんな味なんだ。
「よろしくね」
「にしても、珍しいな。お前いつもはサラダと一緒だろう?」
ボルトは友達の見慣れない組み合わせに違和感を覚えていた。チョウチョウがさらっと質問に答える。
「今日は蝶猪鹿とかいうフォーメーションの訓練とかでパパたちと修行なの」
「猪鹿蝶ね」
チョウチョウの確信犯的な間違いをいのじんが訂正した。
「え~それじゃあ遊べないじゃんか」
「こっちだって、めんどくせえんだよ」
がっかりするボルトにシカダイも文句を言う。心の底からめんどくさそうな彼の様子に、ドントさんの修行に付き合わされる自分が重なり軽く同情を覚えた。
「え~、それじゃあ今夜も忙しい感じかな?」
突然後ろからかかった声に振り返ると、色黒で赤いニット帽を被った少年とパソコンを持ち眼鏡をかけた少年がいた。
「お~イワベエにデンキどうしたんだってばさ」
「こいつの会社が一週間後にセレモニーをやるらしくてよ、手伝い頼まれてたんだ。旨い飯も食えるらしいからみんなを誘おうと思ってな」
かったるそうなチョウチョウの瞳に光が灯った。ボルトも乗り気になる。
「本当に!?訓練は夕方までには終わるから、サラダ誘って行くわ」
「俺も行くぜ。みんなも行くだろ?」
「なんだか楽しそうな話をしてるね」
色白で薄い青色の髪を持った少年が突然ボルトの背後から喋りかけた。僕はどこか不思議な雰囲気を持った子だと思いつつ、親近感も抱いていた。僕と同じで純粋な人間ではないような感覚がしたのだ。
「うわ、ミツキいつの間に来たんだよ」
「さっき、ドアから入って来てたよ」
あんまりびっくりした様子だったのでボルトにさっきから居たことを教えると、それまで彼を見てたミツキが振り返る。
「へえ、君僕が入ってくるの感知出来たんだ」
「君も気配を消す必要は無いんじゃないの?」
「僕は元々気配が薄いんだよ」
奇妙な空気が二人を中心に発生する。お互いにお互いを計りあっている。そんな雰囲気であった。
「てゆうか、流石に狭くね?」
ボルトが愚痴りだした。シカダイもそれに同意する。
「そうだな、さっさと出ちまうか。そろそろ修行の時間だし」
「おい、ところでお前誰だ?」
イワベエが訝しげに僕を見た。そう言えば、自己紹介の後に来たから僕の名前を知らないのか。
「土の国から来たリオンです。よろしく」
「土って事は土遁が使えるのか?」
「まあ、人並みには」
イワベエの顔が不敵なものとなる。デンキは友人の言動が予測できるのか、止めに入った。
「おもしれえ、ちょっとお手並み拝見といこうじゃないか」
「駄目だよイワベエ君、ここはお店の中だよ」
しかし、懸命に諌めようとするデンキの努力は、次のシカダイの一言により儚くも崩れ去ることとなった。
「なら、お前らも一緒に来るか?猪鹿蝶の訓練場」
「ありがてえ」
すでにイワベエは戦闘モードに入っており、このままいくと戦闘は避けられそうになかった。でも、ボルトにチャクラ糸を見せる約束があるしな・・・
「悪いけど、僕はボルトに傀儡の術を見せる約束が」
「俺は、別にいいぞ。何ならイワベエとの戦いの中で見せてくれよ」
「・・・分かったよ」
良かった木の葉の訓練場もコンクリートみたいな所じゃなくて。にしても、木々に川に自然豊かな訓練場だな。土の暗部は殺伐としてて、緊張感が半端ないからこっちの方が百倍良い。
「お友達かい?」
「パパ、彼リオンって言うの。今からイワベエと闘うらしいから訓練所を紹介してあげたってわけ」
訓練場には先客がいた。どうやらこの巨漢の男性が猪鹿蝶の訓練をする先生兼、チョウチョウのお父さんらしい。ボルトが代表して彼にお礼を言った。と、同時に待ち切れないのかイワベエが駆け出した。
「チョウジのおっちゃんサンキューな」
「じゃあ、いくぜ!」
イワベエが手に持っている棒を一振りすると、棒が先端から土に覆われていった。岩でできた槍のようなそれをみて、こっちも土遁で応戦しようと、性質変化を試みる。
「土矛・・・・・・だめだ、性質変化はできないか」
「なにグダグダ言ってんだ」
イワベエは飛び上がって、槍を振り下ろした。確かに当たれば少しは痛そうだな。でも、
遅すぎる。
彼の攻撃を時計回りに回避し、後ろに回り込む。
「速いっ」
「ちょっと、借りるよ」
僕の指から青い糸が迸る。弾丸の様に飛び出したチャクラ糸がイワベエの身体を乗っ取った。少年は急に体が言うことをきかなくなり、焦る事しか出来ない。
「なんだ、体が勝手に」
「土矛」
イワベエが印を組んだかと思うと、リオンの腕が黒化した。意味が分からず、ボルトが口を開く。
「何だってばさ、今の」
ミツキが答える。
「多分あのチャクラ糸でイワベエを操ったんだね」
彼らの戦いを黙って見つめていたチョウジが付け足して言った。
「あれはただ、操っているんじゃない。イワベエ君に術を使わせ、その効果をチャクラ糸を通して自分に付加したんだ。ただ者じゃない」
「すっげえ」
「くっそぉ、体が動いてくれねえ」
イワベエは体を動かそうともがいてみるが、指一本動かすことは叶わなかった。僕は静かに彼へ歩み寄り、岩の槍の先を掴み砕き割る。チョウチョウらアカデミー生はみな目を丸くした。
「すっごい、素手で岩を砕いちゃった」
「参った」
戦いが終了し、ボルトが駆け寄ってくる。イワベエも新しい土遁を見ることが出来て、大変満足した様子であった。
「なあなあ、俺に傀儡の術を教えてくれよ」
「俺にもその腕を固くするやつ教えてくれ」
「いいよ」
「でさ、その後は忍バウトやろうぜ」
「ここでかよ」
こうして、リオン達は一日中遊び続けた。