暁新伝《BORUTO編完結》   作:モリッチ

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今回は短めです。


うずまきの石碑

 

 僕とボルトは夕飯時になったので、イワベエ達と別れ帰路に就いた。

 

「ただいまー」

「ご飯もう出来てるから、手洗ってきなさい」

「分かってるって」

 

 家に入ると焼き魚のいい匂いがした。チャクラ糸を伸ばして、脱ぎ散らかされたボルトの靴と一緒に自分のもそろえる。

 

「おーい、リオン。いつまで玄関にいるんだよ」

「リオン君もおかえりなさい」

 リビングからヒナタさんが顔を出す。

 

「ただいま」

 

 部屋に入ると、ヒマワリちゃんの姿が見えなかった。

 

「あれ、ヒマワリちゃんは?」

「ヒマワリは部屋から出てこないのよ。今日、家に帰った時から暗い顔をしててね、訳を聞いても話してくれないのよ」

「ヒマが?ちょっと、部屋に行ってくる」

 

 ボルトが二階へ行ったが、暫くして難しい顔で帰ってきた。何かあったんだろうか?ヒナタさんも様子をボルトに尋ねた。

 

「どうだった?」

「ありゃ、梃子でも出て来ねえな。様子を見るしかないんじゃね」

 

 そうこうしながら、うずまき家での二日目が終わり、三日目の朝となる。今日はアカデミーに行く日らしく、寝坊したボルトは朝から大慌てであった。

 

「やばいやばい、遅刻だってばさ」

 無理やり朝食を詰め込み、アカデミーに向かって怒涛の速さで走っていく。僕はいってらっしゃいと声をかけながら、まったり朝食を食べていた。

 

「リオン君は、今日はどうするの?」

 ヒナタさんが聞いてきた。どうしようか・・・いや、一つやることがある。

 

「そうですね。昔、木の葉にうずまき一族の区画があったと聞いたんですが、場所分かりますか?」

「ええ。でも、何でそんな所に?」

「ちょっと、調べたいことがあって」

 

 それにしても、ヒナタさんは料理上手だな。ドントさんも見習ってほしい。おいしいみそ汁にほっと一息つくと暗い表情のヒマワリちゃんが視界に入った。

 

「ヒマワリちゃん。浮かない顔をしてどうしたの?」

「ううん・・・なんでもない」

 

 励ますようにヒマワリさんが明るい声を出す。 

 

「じゃあ、私たちもおじいちゃんの所にでもいこうか」

「うん」

 

 やっぱり様子がおかしいな。何があったんだろう。ちょっと気にしておくか。

 

「それじゃあ、後でうずまき一族の区画への地図を書いとくわね。一応日向のお屋敷のも書いておくわ」

「ありがとうございます」

 

 

    *

 

 

 渦巻き模様があちらこちらに見て取れる一角。古風な家並みが並ぶ中、僕はあてもなく彷徨っていた。

 

 ここで僕は何を探したいんだ。何を求めているんだ。

 

 ヒナタさんの声がよみがえる。

 

『うずまき一族はもともと木の葉隠れとは別の隠れ里だったらしいわ。でも、突然滅亡したらしいの。だから、木の葉の郊外にあるうずまき一族の区域はその難民たちが創り上げた物で、あなたが知りたい情報はもう何も残されていないかもしれない』

 

「それでも、知らなければならないんだ」

 

 忘れ去れ、時が止まったような廃屋を一つ一つ見て回る。区画の最奥にある鳥居を抜け、さらに奥へ奥へと進んでいくと、遂にずっと昔に倒壊したかのような廃墟を見つけた。

 

「ここは・・・能面堂?」

 

 堂内の壁には不気味な鬼の面が至る所に飾られていた。角の生えたお面の一つに触れようと手を伸ばした時、突然床が輝く。

 

「何だ!?」

 

 床に浮かぶのは渦巻模様の術式。次第に渦は回転を始めどんどん底へ沈んでいく。行くしかない。

 

 真っ暗な暗闇に飛び降りると、青い炎が一斉に松明に灯る。光に照らされたのは不気味な石碑と巻物の山。石碑にはびっしりと文字が刻まれていた。指でなぞりながら読んでみる。

 

 今より、数千年前に宙より種が落ちてきたり。そはやがて巨大なる大樹となり、人々は神樹と呼びき。天人の姫が実を食す。なるが、それはゆめ口にしてはいけぬ物なり。その実に宿る力は人々を狂はせ、争はせ、より強き力を求めさせん。次第に力はこの地に古来よりありし力を凌ぐやうになりき。我が一族はこの力を封印する為に、ありとあらゆる手を尽くしき。おぞましき異界の鬼と契約すれども、希望は潰えけり。なるが、いつの日か我が一族の真の力を持つものが―

 

「文字が読めなくなった?」

 途中まで読めるのに何故か先が読めない。仕方がないので巻物に手を伸ばす。

 

「金剛封鎖、四象封印、八卦封印、屍鬼封尽?」

 ざっと見ただけでも、どれも複雑でかなり高度な封印術だ。しかも、代償が大きく危険すぎる。こんな術で一体何を封印しようとしてたんだ?実に宿る力って何だ?

 

 取り敢えず、ここの巻物は全部持って外に出よう。あまり、長居しすぎるとよくない気がする。

 

 外に出ると、もう日が傾き始め少し肌寒くなっていた。これ以上遅くなるとヒナタさんが心配するかもしれないし、日向邸に寄りがてら帰るか。

 

 

    *

 

 そろそろかな。家々の屋根を飛びながら向かっていると、道端に男の子たち数名とヒマワリちゃんを発見した。あんなところで何してるんだ?あの周りを囲んでいる子たちはどうも友達に見えないし、少し様子を見に行くか。

 

 屋根から飛び降り、話しかけに行った。

 

「ヒマワリちゃん。そんな所で何してるの?」

「・・・リオンお兄ちゃん」

 予想外にしゅんとした声にいよいよ、周りの子は友達ではなく別の存在だと分かる。

 

「お前誰だよ。見ねえ顔だな」

 

 男の子の集団の中で一際大きく、体系が丸い茶髪の子が話しかけてきた。この子がリーダー格という訳か。顔のペイントといい、何か有名な一族の子なのかもしれない。

 

「最近、木の葉に来たもので」

「ふーん。で、何の用だ?」

 

 ぽっちゃり系のその子は、威圧的な顔で一歩前に出る。

 

「そろそろ帰る時間なので、迎えに来ただけだよ」

「おい、口の利き方に気を付けたほうが良いぜ、新入り。この方があの秋道一族の家系だと知っての態度なのか」 

 周りの取り巻きらしき子が喚いた。

 

「よせよせ、俺は寛大な男だからな。俺のテストに合格したら許してやるよ」

 言葉とは裏腹に、意地の悪い顔で秋道の子が言う。

 

「どんな?」

「簡単だよ。そこの気に入らねえ日向の子に言わせればいいんだよ、私の髭みたいな模様が変だってな」

 

 ヒマワリちゃんの目に涙が溜まりだす。・・・こいつ。秋道の子に向き直り笑顔で言い放った。

「僕は可愛いと思うけどね」

 

 僕がまさか逆らってくるとは思っていなかったのか、男の子達もヒマワリちゃんもハッとこちらに振り向く。

 

「どうします?」

 取り巻きがリーダーの様子を伺う。当の本人は眼や口元をぴくぴくさせながら、青筋を立てていた。

 

「ぶち殺す!」

 完全に切れてしまった秋道の子に怯えているのか、この期に及んで平然としている赤髪の少年に気後れしたのか、取り巻きが心配の声をかける。

 

「でも、相手も忍者かもしれませんよ」

「馬鹿野郎。額当をしてねえし、アカデミーでも見かけないってことは、アカデミー生でもないんだ。どのみちろくな奴じゃねーんだ囲んで殺るぞ!!」

 

 わらわらと、僕の周りを囲む。何人か腰が引けてるじゃないか。

 

「何やってんだ。早く行けよ」

「うわああああ」

 

 図体の大きいリーダーに睨まれた一人が、叫びながら殴りかかってくる。僕は首を傾けるだけで躱す。勢いが強すぎたのか相手は止まり切ることが出来ずに、ただ曲げただけの膝に腹を打ち付け倒れこむ。

 

「うおぉぉぉおお」

 

 僕の後ろから、もう一人が腰にしがみつこうと突っ込んでくる。ままごとみたいな遅さだ。振り向きざま足を延ばすと、突進してきた取り巻きの胸に蹴りが入り、もんどりうって沈んだ。

 

 残り二人はクナイを取り出し、飛び掛かる。チャクラ糸を伸ばしクナイを取り上げ、切っ先を逆にして投げ返す。

 

「あう」

「うっ」

 

 いくら反対を向いているとはいえ、クナイが顔面に直撃した取り巻き達は成すすべも無く昏倒した。

 

「後は君一人だけどどうする?」

「な、なかなかやるじゃねえか。今日のところはこれくらいにしといてやるよ」

「そう」

 

 秋道の子を素通りして、ヒマワリちゃんのもとへ行き傷が無いか確認しようとする。

 

「危ない!」

 ヒマワリちゃんが叫ぶのと同時に、後ろで吠える男の声がした。

 

「なんちゃってなぁ。部分倍加の術!」

 

 人のものにしては、大きすぎる腕が迫りくる。が、僕はただ指を振るだけでよかった。なぜなら、先ほどすれ違う瞬間にチャクラ糸を相手の腕に付けていたからだ。そうとは知らない秋道の子は何故か自分を殴りつけてくる腕に、パニックになりながら逃げていった。

 

「大丈夫だった?」

「うん」

 

 改めて傷が無いか確認していると、ヒマワリちゃんから視線を感じた。

 

「どうしたの?ボーっとして」

「う、うんうん。なんでもない」

 

 そろそろ暗くなってきたな、ヒナタさんも心配するか。抱えて行った方が早いな。わたわたしているヒマワリちゃんを微笑ましく見ながら、話しかけた。

 

「じゃあ、お母さんの所にいこうか」

「え?わぁー」

 

 ヒマワリの眼下には木の葉の街並みが広がっていた。最近家に来た、不思議なお兄さんに御姫様抱っこをされたかと思うと、彼が空を飛んだのだ。背がちっちゃいヒマワリにとって、上空から見た夜の木ノ葉の里は秘密の宝箱のように見えた。

 

「そろそろ降りるよ」

「もうちょっとみたーい」

「え~」

 

 それからしばらく僕は少女のわがままに付き合わされたのであった。

 

    *

 

「許せねってばさ!」

 ボルトは自分がアカデミーに行っている間に、そんなことが起きていた事を知り激怒していた。

 

「でも、ありがとね。リオン君。家のヒマを守ってくれて」

「ヒマ。大丈夫か?なんなら、兄ちゃんが、ボコボコにしてきてやる」

 

 よっぽど、腹に据えかねているのか今にも家を飛び出そうとするボルトとは対照的に、ヒマワリは上機嫌でハンバーグを食べている。

 

「もう気にしてないから、だいじょーぶだよ」

「・・・ヒマがそういうなら別にいいけどよ。・・・でも、よく言ったリオン。ヒマはこのほっぺが可愛いんだよな!」

 

 ボルトの妹馬鹿ぶりにあははと笑いながら、僕も言った。

 

「そうだね。ヒマワリちゃんは可愛いもんね」

 

 しかし、ヒマワリは不満なのかほっぺを膨らませてすねてしまった。

「ヒマは可愛いんじゃなくて、お母さんみたいにきれいになりたいの」

 

 むくれるヒマワリの髪を撫でながら、ヒナタさんが優しく言う。

「ヒマはお母さんよりずっと綺麗になるわ」

「ほんとー?」

「ええ。綺麗で可愛いお姉さんにきっとなれるわ」

 

 僕はそんな幸せそうなうずまき家の様子を見ながら、無性にドントさんのゲロまず兵糧丸の味を懐かしく感じたのであった。

 




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